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「誕生日プレゼント、ね」
「ああ。※へなにか、買おうと思ったんだが、生まれてこのかた一度も選んだことがなくて。シンヤの意見を聞こうと思ったんだ」
僕とシンヤは、向かい合って座っていた。ここがどこかはわからない。いろいろな景色が混ざって浮かんでは消えて、僕は考えるのをやめた。どうせこれも夢なのだから、考えるだけ無駄なのだ。
「プレゼントなんて言っても、人が人にあげられるものなんて三つくらいしかないよ」
「そんなことはないだろ」
シンヤは珍しくとてもおとなしかった。テーブルの上で手を組み、組んだ手から目線を動かさなかったのだ。シンヤが言う。
「金、感情、思考リソース。人があげられるのなんてせいぜいこのくらいでしょ。×××××がお※さんにあげたいのはどれ?」
「……あげるのはモノであって、金やらを手渡すつもりはなかったんだが。一体どういうことだ?」
僕はシンヤの瞳を覗き込もうとしたが、シンヤは頑なに目線を合わせようとしない。シンヤの話は続く。
「金はもうそのまま、『本人が買おうとしたものの代金を肩代わりする』もの。本人に希望を聞くと、だいたいこうなるわよね」
「感情は『祝いたい気持ちを表現している』もの。Twitterとかで見る記念イラストとか、あとはギフトカード類を日付変わった瞬間にすぐ届けるのとか、その辺りが該当するんじゃないかしら」
「思考リソースは『相手が喜ぶように合うものを選定した』もの。サプライズで買うってのとかがこれかしらね。ものの良し悪しももちろんだけど、そうやって悩んだんだなって形跡があるとわかりやすいわ」
「ね、×××××。あなたはお※さんに、何をあげたいの?」
シンヤはやっと目線を上げ、こちらを向いた。僕は苦々しい表情になる。
「……わかんないよ。…‥そんなの、もらったことなかった」
「ほんと? ふふ、贅沢なこって」
シンヤが目を細める。
「その薄汚れたマグカップ、いつまで使うつもり?」
戸棚の中、ツギハギだらけのウサギが少し悲しそうな顔をした。
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