地上最強の生物『嫁』
嫁と喧嘩になった。主に、お金の件でだ。
正直、そこまで言われる筋合いは無い。
僕は今、ムカついている。
ストレス発散に、勢い任せにこの記事を書いている所である。
僕の嫁は、陸上の生物の頂点に君臨している。
食物連鎖のトップだ。彼女の性格は、暴虐武人で傲慢、自分勝手で、まさに暴君である。彼女は、理性や、都合などでは動かない。怒りを覚えたら、そのままに怒る。本能に忠実に、怒りを露わにするのだ。
自分に不都合な事があると、それはそれは、尋常ならざる勢いでキレる。自分の事は棚に上げ、キレる。無かった事にしてキレる。それが、鮮やかすぎて、気づかない事が多い。喧嘩して1週間後くらいに『待てよ、俺悪くなくない?』みたいな事が、多々ある。
猛々しい。
今回の喧嘩も、僕は悪く無い。
どう考えても、僕は悪く無い。
なのに何故だ。
何故、そんなにキレる事が出来るのだ。
僕は『怒り』に弱い。
周囲から怒りを感じると、過度にストレスを感じでしまう。幼い頃から、人の顔色ばかり伺ってきた所為か、少しの怒りでも敏感に感じ取ってしまう。
怒りに苦手意識がある。だから、自分が怒りを感じる事すら、極端に避けて来た。コミュニケーションを取る上での怒りは、恥とさえ思っていた。運転中、多少の事で、お大袈裟にクラクションを鳴らしてみる人がいるが、あんなのは馬鹿のやる事である。恥ずかしい。
何があっても『怒らない』と、ルールで決めていた。自分が我慢すれば、済む。それ以上のストレスがかからないから、むしろ楽だった。そのルールを継続していくと、次第に怒りが湧いてくる事すら無かった。
今になって思うのは、ずいぶん極端な考え方だったな、と思う。
過去形にしているのは、過去の事になって来たからだと思う。
これも一重に、嫁のおかげだ(所為でもある)。
彼女から、英才教育を受けた為、過去形にする事ができたのだろう。もう尻込みして、自分の意見を言わない非力な僕ではない。王から直接、志を受け継いだ。
現代社会でだって、そう簡単に負けはしない。
7年前、結婚の挨拶で、初めて嫁の家に行った。初めて会う嫁パパと、嫁ママ、嫁妹。緊張で心臓がもぎ取れそうだった。
実家での挨拶を済ませると、皆んなで、ご飯を食べに行くとの事だ。両親が所有する5人乗りの車に、嫁家族4人と僕。
目的地まで約1時間。
何を話せば良いのだ。
僕は、話題を探した。必死に探した。嫁の近況報告を交えながら、僕の地元との違い、東京での生活の大変さなど、多彩な球種で、その場を盛り上げた。正直、答えなど聞いてない。次の質問を考えるので精一杯だった。
すると、なにやら、1つの意見の食い違いから、4人は喧嘩を始めた。どんどんボルテージが上がっている。これは、大喧嘩だ。
5人乗りの車内で、物凄いパワーの意見交換が行われている。
僕は怖かった。気まずい。どうするのがいいのだ?止めに行くべきか?黙るべきか?怖い。どうしよう。
嫁も、かなりの表情と声量で、キレている。嫁は、東京にいる時の6倍激しい。
僕は思った。
アレで、手加減していた、だと?
初めて、家族との食事会。
お店についても僕は萎縮してしまっている。
最悪の雰囲気のまま、食事を食べる。
もう帰りたい。隠れて、小さな小さなため息を吐いた。
料理が運ばれてきた。
すると、料理のクオリティに全員が感動して、何もなかったかのように会話を楽しみ始めた?
何だ、何が起きた。
仲直りは『はい、仲直りして』という学級委員長が、強制的に握手させる儀式か、パピコを半分こにして『ん』と渡さないと出来ないはずだ。
何が起きたんだ。
その後嫁に何が起きたか聞くと
これがウチのコミュニケーションだから、という。
そんな訳あるか。
そこから数年、嫁と生活を送っていると
分かった事がある。
『言いたい事は言う』
嫁はこの信念を徹底しているのだ。最近、大切な事な気がして来ている。
勘違いしてしまわないようにいうが、自分の怒りの欲求を発散させる事がいい事だとは思わない。
でも、確かに、自分の気持ちを汲み取ってくれなど、烏滸がましい事だなと、思って来ている。
何故、僕は、あんなにも意見を言えなかったのだろう?
『自己中心的』
多分、この言葉に呪われていたんだろう。
自分の意見を言う事は、よくない事と思ってきたが
そうではない。
自分の意見と相手の意見が交わり合い
新たな関係が生まれる。
そうでもしないと、自分を大切に出来ない。
そして、自分を大切にしないと、相手を大切になど到底出来ない。
こういうと分かりにくいかもな。
自分を大切にしないと、他人を大切にする方法など理解できないし、
自分を大切にしないと、大切だと思う人を、大切になど出来ない。
僕は変わった。
もう、今は怒りが抑えれない。
自分の利益を優先に、無理やり車線変更してくるタクシーを見ると、クラクションを止める事が出来ない。
恥ずかしく無い。
間違いない。嫁に取り憑いていた悪魔が僕に取り憑いたのだ。
この生活で、僕も意見するようになった。でも、不思議な事に喧嘩が減った。(まあ我慢してくれるようになったのだろうが)
真逆の人間と結婚してよかったんだと思う。
尋常じゃないストレスが掛かる。
が、その先に、明るい未来が待ってるぜ、男子諸君。
よし、喧嘩の続きしてくる。
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