もしや、村上春樹の世界と。


今日も朝から雨が降っています。
庭では椿の木が、重たそうな赤い花を、ぽったりぽったりと落としている。

子どもたちは、部屋の中でまた騒々しく野球をしている。
時々ボールが飛んできても、私は身動きひとつしない。


なぜなら。


久しぶりに、小説の世界にどっぷり浸かりすぎて……というより、溺れながら活字を必死で手繰り寄せるように、先へ先へと読み進めていたから。


あぁ、もったいない…もっと一文一文をじっくり味わいたいのに。
比喩表現をひとつずつ取り出して、眺めるだけでも楽しめそうなのに…。
なんて思いつつ、前のめりにならざるを得なかった、という感じ。


村上春樹著『騎士団長殺し』、文庫4冊のうち3冊、あっというまに読み終えてしまいました。
帰省の際に、最後の1冊だけ家に残し、3冊を持ってきたのです。


村上ワールド全開!とあるとおりに。
登場するキーワードは馴染みのあるものばかり、そして繊細に重厚に重なりあい、あらゆる方向に広がりを持つ(ように私は感じる)独特の世界は、彼の小説の中でしか体験できない…。

3冊読んで繋がってはきたけど、どこに結末が向かうのかはわからない。
しかも、わかりやすい結末を望んでもいない、読者の自分。

むしろこの作品、正直なところ、読みやすすぎるのではないか…とちょっと不安(不満)すら抱いています。

でも。
まだラストの1冊残っているので、感想はこのへんでやめておきます。



途中、長男が春休みの学習帳を開いて、宿題を始めました。
国語の文章問題を解いている。


没頭している私に、時々声をかける。
これ、どういうこと?と聞いてくる。

本から顔を上げてそのページを見ると、捕鯨に関する説明文だった。

え…

「エイハブ船長は鰯を追いかけるべきだったのかもしれない」

『騎士団長殺し』3 より


まさに、「白鯨」にまつわる会話の一文を読んだところだったのです。


そしてまたしばらくして、呼ばれて顔を上げる。

今度は、イルカに関する文章だ。
「イルカやカモメは、左と右の大脳をかわるがわる眠らせながら、泳いだり飛んだりしていたのです。」


あ…

「イルカは左右の脳を別々に眠らせることができるんだ。知らなかったか?」

『騎士団長殺し』3 より


これも、さっき読んだ…。

こんな内容を、偶然同じタイミングで目にする…?
しかも、続けて。


なんだか一瞬、村上春樹の世界とぐにゃりと混ざり合ったような不思議な感覚に……。



そんな午後。
集中できる読書の時間、ありがたいことです。


今日も読んでいただき、ありがとうございます。





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