マガジンのカバー画像

心の壁を越えるために

85
岡山県にある長島愛生園をフィールドに,ハンセン病問題について,その歴史的過程(排除・排斥・隔離の歴史)と実態(なぜ差別されたのか)の解明などを通して,我々が将来に向けて何を学ぶべ…
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

湯峰温泉とハンセン病

和歌山人権研究所に書籍を注文したところ,書籍とともに「和歌山の部落史編纂会だより(2号)…

藤田孝志
2年前
2

本との出会い

参考文献や引用文献から本を注文することが多いのだが,その約3分の1は期待はずれのことが多…

藤田孝志
2年前

光田健輔の「患者観」(3):善意と誠実

光田健輔の自伝を読みながら,彼の考えと行動を軸に,日本のハンセン病政策-絶対隔離政策の歴…

藤田孝志
2年前

ハンセン病とは

ハンセン病に関しては,多くの書籍やサイト上に解説が掲載されている。私もHP上に簡単にまと…

藤田孝志
2年前
1

『特殊部落調附癩村調』

1916年,ハンセン病療養所全生病院は,北海道庁および各府県に対して,市郡単位で「私宅療…

藤田孝志
2年前
4

対岸から

長島を対岸より初めて眺めた。 先日,友人と「岡山いこいの村」を訪ねた。このレジャー宿泊施…

藤田孝志
2年前
2

ハンセン病と被差別部落

『ハンセン病問題に関する検証会議 最終報告書』(日弁連法務研究財団)の「社会に流布したハンセン病観」に,ハンセン病と被差別部落を結びつけた俗説に関する記述がある。 1.民衆のハンセン病観 …被差別部落にハンセン病患者が多いというのは,事実ではない。しかし,そうした俗説が存在したことは事実である。ハンセン病を遺伝病とみなしたうえで,差別による婚姻忌避で被差別部落には「近親結婚」が多いため,ハンセン病も多発するという論理である。 実は,この論理は近代初期から存在する。福沢諭吉の

死者達の沈黙が語るもの

ハンセン病問題に関する検証会議が明らかにした成果と課題,これを我々も自らの課題として受け…

藤田孝志
2年前
2

史資料の解釈

ハンセン病問題に関する2つの史資料を紹介する。 1つは「癩予防ニ関スル件」である。最初の…

藤田孝志
2年前

本に導かれて

10年ほど前の拙文であるが,埋もれた史実として知ってもらいたいと願って再掲する。 …………

藤田孝志
2年前
3

何を残すか

ハンセン病療養所に入所されている方々は,芸術や文学の世界に素晴らしい作品を多く生み出して…

藤田孝志
2年前
2

解放とは

林力先生の著書にあった一文に誘われて島比呂志氏の著書を買い求めて読んだ。読み始めてすぐに…

藤田孝志
2年前
2

光田健輔の「患者観」(1)

―全国にはどのくらいの病者がいるのか見当もつかない。おそらく十万人くらいはあるとさえ考え…

藤田孝志
2年前

光田健輔の「患者観」(2)

『島は語る ハンセン病市民学会年報2010』に集録された「総括座談 島の当事者の声を聴いて」より,徳田靖之氏と内田博文氏の発言から光田健輔の考えを検証してみたい。 1 「孤島隔離論」1915年,光田健輔は内務省に「癩予防に関する意見書」を提出する。その中で,光田はハワイのモロカイ島のような絶海の孤島にハンセン病療養所を設置して患者を収容すべきであるという考えを明らかにする。翌年,内務省は光田の考えを正式に採用する。 徳田氏は,なぜ光田が「島」を選択したかについて次のように推