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GDPを理解する①基礎から分かる国民経済計算(SNA)

■ 対象読者

・ GDPの計算方法について興味がある人

■ 背景

・ GDPの定義は、「一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値」
・ 付加価値とは、生産額から中間投入物を引いたもの。
生産額や中間投入物が実際にどう定義され、何のデータをもとに、どう集計されているか、の詳細な情報について整理する。

GDPの元データは?

・ 国民経済計算
   ┗ 「四半期別GDP速報」と「国民経済計算年次推計」の2つからなる。
   ┗ 「四半期別GDP速報」は年に8回四半期別に作成。
   ┗ 「国民経済計算年次推計」は、フロー/ストック合わせて、年に1回作成。
   ┗  内閣府が作成。
(ソース:https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/contents/sna.html)

国民経済計算を理解するために

・ 国民経済計算の計算方法を理解するためには、SNA(System of National Accounts)と呼ばれる、国際的に共通な国民経済計算の計算体系を理解する必要がある。

SNAについて

下記のリンクにまとまっている。
・ 基礎から分かる国民経済計算
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/kouhou/93kiso/kiso_top.html
・ このリンクの情報を端的にまとめる。

1.SNAとは

・ 国民経済のフロー面・ストック面を記述するための国際的な基準
・ 68SNA,93SNA,2008SNAなど改定年ごとに名前がある。

2.SNAの体系

・ 5部門ごとにA.フローとB.ストックを複式簿記で記述。
(1)非金融法人企業
(2)金融機関
(3)一般政府
(4)家計
(5)対家計民間非営利団体

A.フローはA-1.所得支出勘定とA-2.資本調達勘定からなる。

A-1.所得支出勘定
  ・ 各部門の所得支出を計上。
  ・ 差分が貯蓄となる。
  ・ ここに記述されるやり取りを経常取引と呼ぶ。

A-2.資本調達勘定
  ・ 貯蓄と調達により集めた資本の持ち方を計上。
  ・ 資本は、実物への投資か、金融資産としての保有に分類される。
  ・ ここに記述されるやり取りを資本取引と呼ぶ。

A-1.所得支出勘定の所得側は2つに分類され、その中にそれぞれ5つと3つの要素がある。

A-1.所得支出勘定の所得側の分類
第一次所得の受取(=生産活動から得られる所得)
  ┗ 雇用者所得
  ┗ 営業剰余
  ┗ 財産所得
  ┗ 純間接税
  ┗ 海外から受け取った要素所得の純計額

再分配所得(=部門間の所得のやり取り)
  ┗ 直接税・社会負担(家計・企業→政府)
  ┗ 社会保障給付・社会扶助給付(政府→家計)
  ┗ その他(損害保険の保険金など)

A-2.資本調達勘定は、2つの取引に分類される。

①実物取引
  ┗ 蓄積と調達の2つからなる。
  ┗ 蓄積には、総固定資本形成(設備投資と住宅)や純計(土地の購入と在庫)がある。
  ┗ 調達には、A-1.所得支出勘定で算出された貯蓄、固定資本減耗、資本移転の3つがある。
  ┗ 調達から蓄積を引いた差分が、②金融取引へと流れる。

②金融取引
  ┗
運用と調達の2つからなる。
  ┗ 運用は、現金通貨・預金、債券、売上債権等など資産の形態別に計上される。
  ┗ 調達は、①実物取引の調達から蓄積を引いた額と、債券、株式、借入金、買入債務等など調達の形態別の負債の純増額が計上される。

B.ストックは部門別にB-1.貸借対照表に記述される。

・ 貸借対照表を資産側と、総負債・正味資産側に分かれる。
・ 資産は下記2つに分類される。
    ┗ ①非金融資産
      ・  在庫
      ・  固定資産からなる生産資産
      ・  土地
      ・  地下資源
      ・  漁場
    ┗ ②金融資産
      ・  現金・貯金
      ・  株式 等

・ 正味資産は(非金融資産)+(金融資産)-(負債)として定義される。
・ 一国全体の正味資産は国富と呼ばれる。

・ 前年末の貸借対照表に、資本調達勘定を取り込むことによって、党年末の貸借対照表が出来上がる。

■ 今回のまとめ

・ GDPは国民経済計算から算出される。
・ 国民経済計算には国際的な計算体系(SNA)がある。
・ SNAでは5つの部門に対し、フローを所得支出勘定(経常取引)と資本調達勘定(資本取引)の2つで計上、ストックを貸借対照表で計上する。
・ 上記の一連の勘定によって、各部門の第一次所得の受け取りから、資産の形成までの流れが可視化される。


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