見出し画像

ウィル・スミス平手打ち事件考察⑵ ~私が「どちら派でもない」理由~

こんにちは、シンガーソングライターのエミーです。

普段芸能人のゴシップとかは全く興味ないのですが、「ウィル・スミスさんのビンタ事件」はアメリカと日本の文化の違いだったり、対人コミュニケーションの在り方について非常に考えさせられるトピックだったので、取り上げて考察してみます。というわけで、前回の続きになります。

ウィルとクリス「どちら派でもない」理由

まず、私がウィルとクリスのどちら派なのかという立場を示すならば、どちら派でもありません。こう言うと、どっちつかずで安全な立場を選んだズルい奴だなと思われるかもしれません。

しかし、今回の出来事については、
どちらかが100%悪かったといえるものではなく

「ウィルのこの部分は、良くなかった」
「クリスのこの部分は、良くなかった」

と部分的に考えるからです。法的・モラル的にアウト!と一刀両断してしまうのは、ある意味とても簡単なことです。

そして、実際、あの20秒足らずの映像を見ただけでは、分からないことが多すぎるからです。彼らの人生背景を知れば知るほど、「外見のことを揶揄された妻の尊厳を守るために、感情的になって手を出してしまった話」という、単純な話ではなさそうだ、ということが見えてきました。

最終的に「今回の件は、誰も責められないのではないか。こういう出来事が起こってしまう人間社会の在り方が根本的な問題だ」という結論に至ったのです。(飛躍しすぎかもしれませんが、最後までシリーズを読んでくださったら、納得していただけるように順を追って書いていきます!)

英語のことわざ「相手の靴を履く」

いずれにせよ、どちらが正しくて、間違っていたかを裁断しようとする世の中の風潮は、正直怖いな…と思いました。「こりゃあ、戦争がなくならないわけだわ~」って。

いや、私も実際、自分が誰かと喧嘩したりしたときは、この「二極化思考」に陥ってしまってよく苦しむので、そういう考え方になってしまう気持ちもよく分かるのですが…自戒も込めて(^^;)

ましてや当事者でもない私たちが、あの数十秒の表面的な映像だけを見て、彼らの人生背景を十分に知る前に、善悪の判断を下そうとするのは大変おこがましいことだな、と思ったのです。

英語には【to put yourself in someone’s shoes】ということわざがあります。直訳すると、「相手の靴を履いてみなさい」ですが、つまり「相手の立場になって考えてみましょう」ということです。相手の靴を実際に履いて歩いてみると、自分とはこんなに大きさや形が違うのだと、今まで見えてなかった世界が見えてきます。

というわけで、私が今回この記事を書いた目的は、どちらが悪いのかを議論するためではなく、ウィル、ピンケット、クリス…もし自分がそれぞれの立場だったら、どのような気持ちや視点でこの出来事を見るか、彼らの人生背景なども踏まえながら、できる限り想像してみるということをやってみよう!という試みです。

私自身の考察の過程を、みなさんにも共有するので、「ウィル派」の人も「クリス派」の人も「どちらでもない派」の人も、是非一度、「それぞれの登場人物の靴を履いて」一緒に考えてみてほしいなと思います。

私は最初、ウィルの肩だけを持っていた

日本でニュースになる前から、ほぼリアルタイムであの映像を見ていた私は、一体何が起こってるのかさっぱり分かりませんでした。ウィルがクリスに「おまえ、いくら冗談にもほどがあるぞ!」と、ちょっとこづいて釘を刺したのかな?くらいに思っていました。しかし、ステージを降りて着席した後も真顔で放送禁止用語を連発するのを見て「あ、ウィルマジで怒ってる」と。。。

そして、あとからニュースでウィルの奥様のピンケットが脱毛症で苦しんでいたことを知った瞬間、完全に気持ちはウィルとピンケットの肩を持ち始めました。

「あー、これは私でもブチギレるわ~。病気が原因で丸刈りにすることは、どれだけピンケットにとって悲しかっただろう。それを、ずっとそばで見て支えてきたウィル…よく平手で我慢できたな。クリスはいくらコメディアンとはいえ、無神経にも程がある!」

というように。

本当に「奥様のため」だったのか?

しかし、どこか違和感と腑に落ちない感じが引っ掛かっていました。クリスがピンケットにジョークを言ったとき、最初はウィルも他の観客と一緒になって、笑っていたからです。その後、カメラが切り替わり、ウィルが登壇してクリスを平手打ち・・・

この間、カメラの映ってなかったところでピンケットがウィルに「ちょっと、あの男のこと一発殴ってきたよ!」とウィルに頼んだのか何なのかはわかりませんが、「本当にウィルは奥様を守るためにやったのかな?」という疑問が残りました。もし本当に奥様のことを想っていたのなら、クリスが品のないジョークを言った時点で、ウィルの顔も同時に曇るはずです。

(ピンケットが嫌がっている顔を見て、気が変わったのかもしれませんが…でも、さっきまで一緒になってジョークに笑っていた人が、急に手が出るほどの怒りモードになる?と。だから今思えば、私はリアルタイムで見ていた時「一体何が起こっているのかよく理解できなかった」のだと思います。)

とするならば、2つのことが考えられそうです。

1つは、あの行為は奥様のために一肌脱いだヒーローを演じた"愛のパフォーマンス"だったということ。

2つめは、今回の件とは別のストレスまで一緒に爆発させて、半ばクリスに"八つ当たり"してしまっていたということ。

私は、おそらくこの両方だったのではないかな?と思います。私だけじゃなく、違和感を感じた人は、少なくなかったのではないでしょうか。

ウィルのメンタルはずっと前から崩壊気味だった

その後、私がたまに見ているアメリカ出身の黒人Youtuberの方が、今回の事件を取り上げている解説動画をアップしていました。こちらの動画の解説を聞く限りだと、私の予想はけっこう的を突いているかも…と思いました。


彼曰く、「アンガーマネジメントができなかったウィルのことは擁護できないけど、それだけウィルの私生活が上手くいっておらず、鬱や自殺寸前までメンタルが崩壊していた。ウィルが愛するほど、ウィルのことを愛してくれないピンケットのために、いつまでも身を削っているウィルの将来が心配だ」という趣旨の説明をしてくれていました。

ピンケットは"彼らの息子の親友"と不倫したり、ウィルとの性生活が満足できないといった家庭的な内情まで赤裸々にテレビ番組で喋ってしまったりと、ウィルは完全にピンケットに振り回されており、ずいぶんとメンタルを削られていたようです。それでも、ピンケットに認められたい一心で男としての器を広げ「オープン・マリッジ」(結婚後も互いの不倫を公認する)というスタイルで結婚生活を続けています。去年出版した初の自叙伝『Will』でも、鬱病になったり自殺寸前まで追い込まれていたことを独白しているそうです。

日本の私たちは、ウィル自身やピンケット夫人との関係はよく知らないので(もはやウィルに奥様や子供がいたこと自体、知らなかった日本人も多いのでは)あのニュースだけを見れば、"ウィルが奥様を守ったヒーロー"のように見えてしまいますが、スミス夫婦の関係性を日頃のニュース等でよく知っているアメリカ人の目からすれば、ウィルが純粋にピンケットの尊厳を守ろうとしたというより、ピンケットの気を引くために"いい男"を演じようとしていること、そして普段から抑圧していたストレスが爆発してあのような行動に結びついてしまったことは、容易に想像がついてしまうようですね。

クリスを叩いて、怒りのスイッチが本格的にオンになってしまったウィル。着席した後も「俺の妻の名前を口に出すな!」と放送禁止用語を交えて、クリスに向かって激しく2回もシャウトしていたのは、もしかしたら、ピンケットの憎き不倫相手の男性と重ねて鬱憤を晴らしていたのかもしれないなぁ、、、なんて勘ぐってしまいます。(これは私が深読みしすぎかもしれませんが。でも、そうだとしたら、先述した急に怒りのスイッチが入ってしまったことも納得できるのです)

そう思うと、完全にとばっちりをくらってしまったクリスは、運が悪かったというか・・・ちょっと同情しちゃいますね(^^;)

もちろんあのクリスのジョークは相手を傷つける「言葉の暴力」になってしまった時点で、大失敗なんだけどさ。。。

というわけで、長くなったので次回はクリス側に焦点を当てて語ってみようと思います!ぜひ皆様の感想も、お聞かせくださいね!

▼スタンドFMの音声配信でもこのトピックを語ってます▼

◆ウィル・スミス平手打ち事件考察シリーズバックナンバー◆

#1 アメリカと日本のリアクションの違い
#2 私が「どちら派でもない」理由
#3 "いじりジョーク"は信頼関係の上に初めて成り立つ
#4 もしピンケット本人がクリスにビンタしていたら?
#5 アメリカで身体的暴力が絶対悪な理由

サポートいただいた分は、よりこの世界を豊かにするための活動資金に使わせていただきます!活動のキーワード #音楽 #英語 #イラスト #旅 #自然