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レッドグローブのはなし

たったの10分でテレポーテーションしたみたいだった。今乗っていたのは間違いなく総武線の車輌なのに、突然にそれの10倍くらい値段のかかる乗り物に乗っている気分を味わえたのでラッキーだった。車内の換気のために開けていた窓から吹き立ての風がぐわっと入ってきたのと、河川敷の緑が揺れている景色のせいだ。

降りるとさっきの心地よかった風は、褒められたからと調子に乗って新小岩の街をぶいぶい言わせている。葛飾区には県境がどうのという理由でヤンキーが他と比べると多く居ると聞いた。当然、そのせいで風が荒れているわけでもなければ、わたしは実際にその姿を見たことがないくらいたまにしか訪れない。

強いていうのであれば以前こちらにきた際に、幼稚園児3人とそのママ友たちが大通り沿いのカクヤスの前(入り口の小上がりの階段を雛壇にして)で何かの記念撮影をしていた時に、唯ならぬ「ヤンキーの街」を感じた。
それも通りすがる人にシャッターを依頼するくらいには形に残したかったのだろうか。
だとしたら何故ここで。
わたしはその疑問をつい世に放って、隣を歩いていた妹は「さすが新小岩!」と言って誇らしそうだった。この人は少しこういうヤンチャなところがある。

商店街の八百屋に並んでいる野菜はどれも立派で破格だった。毎日ここで買い物ができたら何キロ太ってしまうだろうと勝手に想像して怖がった。スッキリしたものが食べたくて果物コーナーを見ると、すぐにレッドグローブ購入の意思は固まった。

家に帰るとすぐに皮をよく洗ってしばらく氷水によく浸した。
わたしが一粒食べると皮がプチッと口の中で弾けたので、もういい頃合いだと母に食べるよう促し、皮ごと食べられるそれを、丁寧にむき始めたので「いいから、いいから」と結局強引にそのまま食べさせるとわたしは満足した。

途中、「皮が汚そうなんだもん」と言われたのでよく洗ったことを満を辞して説明したら何か物言いたさげな顔をされた。
信用されないほど日常の雑さを晒していたことをこの小さなレッドグローブに思い知らされるとは意外だった。

それでもわたしは種が3つも4つ入っているものだから、食べるのに手こずったせいで、気が済んだ。

p.s.
2020/06/10 晴れ
暑い。今までの暑さは気のせいだった。
引き続きドライの機能を満喫して、冷房を入れるより背徳感がないのですきだ。
心の余裕をこんなところで感じるとは。

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