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ドッペルが流れる瞬間、変わる空気

先日、子どものバイオリン合奏練習につきそいました。
保護者は伴奏のCDを流したり、ごほうびにお菓子をあげたりする形で参加します。基本、お当番制。和気あいあいとした雰囲気です。

ふだんのピリッとした個人レッスンとは異なり、みんなで音を合わせて楽しむ時間。保護者も楽しみ。それでも練習が4時間近く続くと、疲れが見えはじめてきます。

「最後に、何の曲を弾こうか?」

今回の合奏は参加人数も多め。来月からは受験で、今日を境にお休みに入る子が多いのです。

さいごに、皆でバッハのドッペルを弾くことになりました。「ドッペル」はドイツ語でダブルの意味、「二つのヴァイオリンのための協奏曲」のことです。

バイオリン練習曲の十八番で、私も大好きな曲です。ほぼ毎回、合奏で聞く定番曲。家でもよく流していますし、子どもも口ずさめるくらい身近に感じる曲です。

さて子どもたちが半々ずつ、1stと2ndに分かれました。お互いの音を聞きながら、合わせながら演奏します。まるで対話するかのように。ドッペルを合わせて弾けるほどにみんな習熟したと思うと、感無量でした。

曲に聞き入る母親もいれば、目を閉じて音色に身体を預けている父親も。

まだ弾けない子は指揮者ごっこしたり、楽譜を目で追ったり。目を閉じて、弾き真似をする保護者もいました。それまで眠そうだった子も目覚めるくらい、ドッペルの演奏が始まると空気が一変するのです。

かつては、上級生だけが演奏する合奏曲でした。ですが、いつの間に自分たちで弾けるようになっていたのです。

集中して奏でられる音色は、とても上手でした。目標だった曲が弾けるようになったよろこびや、皆で弾ける楽しさを分かち合える特別な曲だって思えます。

定番なだけに何度も練習、何度も耳にする曲。忘れることはありません。聞くたびに、聞こえ方が変わるのです。

かつての目標曲をみんなで弾く姿を目の当たりにし、習熟するまでの年月や、子どもながらに圧倒的な量を練習してきたであろう努力を思うと、心動かされずにいられません。

人知れず、子どもから元気をもらえました。一変した空気は、きっとみな同じ思いであったと思っています。

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