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eliaの本棚、最初の本たち。

 神保町にある共同書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」で、小さな本屋さんをはじめました。


オープンに向けて選んだ本たち

 本棚オープンに合わせ、過去のnoteの記事を振り返り、記事の中で触れた本の中から選んだ7冊をご紹介します。旅をテーマに選びました。

『遠い太鼓』 (村上春樹)

 ギリシャに行きたいな、と思わせてくれた一冊。1986年から3年間という、村上さんが、ちょうど「ノルウェイの森」などの大作を書き上げたころのエッセイだ。この時期、ギリシャ、イタリアに住んでいた村上さん。ここを拠点に、小説を書き、時折ヨーロッパを旅し、見たもの、食べたもの、感じたことを軽やかな文体で書いている。
 エッセイは小説にはないユーモアが満載で、ちょいちょい「毒」も効いていて、やっぱり文章がうまい。村上さんは食べ物を美味しそうに書くというのも有名だが、ギリシャの新鮮な魚、珍しいご当地ワイン、よく冷えたビール、イタリアのこりっとした野菜なども登場し、「遠い太鼓」はグルメ本としての役割も果たしている。
(Noriko)

▼「太宰の津軽、春樹のうどん」

▼「遠い太鼓に耳をすまして」

『ミトンとふびん』 (吉本ばなな)

 海外を旅する日本人を描くことが多いばななさん。こちらは、台湾、イタリアなどへの旅を描く短編集だ。表題作「ミトンとふびん」は、フィンランドが舞台。ばななさんご本人もよく、「自分の小説は、変わった境遇の主人公が出てくるちょっといい話が多い」と語っていて、今回も言ってしまえばまあそういう話(笑)。
 けれどフィンランドの空気感、そしてそこからもたらされる人生への気づきが、いちいち鋭く素晴らしく、これがばななさんなんだよなと思う。冬のフィンランドは、実際に私も旅をしたことがあるので、あのときの寒さを「寒い、冷たい」だけではなくこんなふうに展開するなんて、これぞ作家。(Noriko)

▼「人生と旅と物語―私の「ばなな愛」」

『新版-犬が星見た-ロシア旅行』 (武田百合子)

 読んだのは随分昔だし、手元に本がないから紹介が難しいけれど、筆者のすごく素直で飾らない人柄が出ている。他の旅行客も一風変わっていたり。旅行記なんだけれど、そこに出てくる人が面白かったのかもしれません。
(Mihoko)

『深夜特急1 ー 香港・マカオ』 (沢木耕太郎)

 初めての海外旅行は大学生のとき。その後、海外を旅する多くの若者が手にしたであろうこの本と出合い、夢中になって読んだ。私もいつかこんな旅をしてみたい。バックパッカーに憧れて、地図を広げ、旅程を練った。数年後には、初めての海外ひとり旅も経験した。
 シリーズ1冊目となるこの本では、日本を発ち、最初に訪れた香港やマカオでの刺激的な日々が描かれる。こんな印象的な一文で、「深夜特急」の旅は始まる。 (Shoko)

 ある朝、眼を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ。

『深夜特急1 ー 香港・マカオ』 (沢木耕太郎)

▼「ちゃんと距離を感じる旅」

『かもめ食堂』 (群ようこ)

 大好きな映画の一つ、荻上 直子監督『かもめ食堂』の原作。フィンランドの首都・ヘルシンキで食堂を営む日本人女性サチエ。それぞれの事情を抱え、この地を訪れた2人の日本人女性ミドリとマサコは、サチエの店を手伝うようになる。3人の何気ないやり取り、おいしそうなごはん、地元の人たちとの交流。店の看板メニューは「おにぎり」だ。
 この作品の舞台となったヘルシンキには、大学の卒業旅行で1泊だけ滞在した。海辺のマーケットを覗き、路面電車が走り、教会が立つ街並みを眺めた。私が旅した真冬の寒々しい風景と違って、明るい白夜の夏が描かれる。心がほんわかあったかくなるような小説だ。 (Shoko)

▼「映画と本とフィンランド」

『津軽』 (太宰治) 

 たしか高校の国語の教科書に一部が掲載されていた。このnoteで一緒に書いているShokoと、東京都三鷹市で「太宰足跡めぐり」をする際に、予習として初めて全文読んでみた。
 『津軽』は、太宰が生まれ故郷の津軽を旅する紀行文だ。戦争の真っ最中にも関わらず、訪問先では盛大にご馳走され、お酒を飲む。お酒を飲みすぎて、「ああやってしまった」と反省する茶目っ気のある姿が印象的だ。
 太宰というと、どうしても『人間失格』『斜陽』といった「重たい」作品が有名。若かりし頃は夢中で読んだ太宰だけれど、大人になったいま、小説の世界でまで落ち込みたくないので、実のところ太宰は避けてきた。けれど『津軽』は違った。なんでも、大人の太宰ファンに人気なのが『津軽』だそうだ。太宰再読の第一歩に、『津軽』をぜひ。 (Noriko)

▼「三鷹で太宰めぐり」

『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』 (山本文緒 著)

 2021年に亡くなった、直木賞作家の山本文緒さんが、病が発覚してから亡くなるまでの間につづっていた日記。ちょうど1周忌に合わせて出版された。この本と山本さんの数々の作品についてはnoteで熱く語り、「#読書の秋2022」コンテストにて、ありがたくnote賞を頂戴した。ぜひこちらをお読みいただきたい。 (Noriko)

▼「一周忌での“新作”「無人島のふたり」~山本文緒さんを改めて悼む~」

eliaの本棚

 神保町にある共同書店「PASSAGE by ALL REVIEWS」の3階、「PASSAGE bis!」に私たちのお店があります。近くへお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
 「PASSAGE bis!」は、シェアラウンジ兼PASSAGEの支店。ドリンクや甘いものと一緒に、読書を楽しめます。

▼「PASSAGE bis!」「クロード・モネ小路 2番地」

 この後も、新たな本を追加予定。noteでもまたご紹介したいと思います。

(Text:Shoko & Noriko&Mihoko , Photos: Shoko) ©︎elia


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