2022年アメリカ中間選挙の注目点 開票のポイントと結果が与える影響
こんにちは。雪だるま@選挙です。この記事では、11月8日(火)に行われるアメリカ中間選挙について、最新の情勢や争点、注目点について見ていきます。
上下両院と知事選
中間選挙は、4年に1回行われる大統領選挙(前回は2020年、次回は2024年)の間に行われる議会選挙と知事選挙のことを指します。
連邦議会の下院は435議席全てが改選されますが、上院は1/3の議席が改選されます。今年は、任期終了を迎えて改選される34議席に加え、引退する議員の補欠選挙が行われるため35議席が争われます。
知事の任期は4年で、今年は36州で知事選が行われます。アメリカでは州知事が大きな権限を持つため、民主党・共和党の双方にとって重要な選挙となります。
下院は民主党が220議席、共和党が212議席、欠員が3議席で、民主党が僅かに過半数を上回っています。上院は、民主党と共和党が50議席ずつを分けあっていますが、ハリス副大統領が上院議長を兼ねるため、民主党が多数派です。
最新の情勢
共和党は9月末から支持率を伸ばしていて、民主党を支持率で上回っています。11月3日時点では、次のようになっています。
下院は支持率を反映しやすく、共和党が過半数を奪還する見通しです。共和党の議席数は、過半数の218議席を上回って225議席~240議席台となる可能性が高いと考えています。
上院は政党だけでなく候補者の資質が重視される傾向があるため、下院に比べると民主党が善戦しています。上院は共和・民主の両党が拮抗する情勢ですが、共和党が51議席を獲得して勝利すると予測しています。
激戦州ごとの情勢は、次の記事をご覧ください。
選挙の争点
中間選挙の争点は、経済、中絶問題、治安対策などになっています。
バイデン政権下で記録的なインフレが続いていることから、アメリカ国民の関心は経済対策に集中しています。特に、共和党支持層と無党派層でこの傾向は顕著で、共和党が支持を伸ばしている背景にはバイデン政権に対する政策的な不満があると考えられます。
また、共和党は民主党に比べて「経済に強い」というイメージを持たれているため、経済に関心が集まることで有利になるとみられます。
中絶問題は、米最高裁が6月末に全米での中絶権を認めていた「ロー対ウェイド判決」を覆したことで関心が集まりました。中絶権の保障を主張する民主党は、この判決以降に支持率を回復させることに成功していて、共和党が支持を伸ばした現在でも6月以前の水準よりは善戦しています。
治安対策は、共和党が力を入れている分野の1つです。白人警官による取り締まり中に黒人が死亡する事件が相次いでいることを受けて、民主党知事の州では警察の活動が抑制されており、治安が悪化していると指摘されていることが背景です。
選挙の争点については、次の記事もご覧ください。
中間選挙の注目点
ここからは、開票状況を見る上での注目点や、実際の選挙結果が与える影響などについて考察していきます。
増加する事前投票 “レッド・ミラージュ”も予測
2020年の大統領選では、開票の初期段階では共和党のトランプ氏が先行し、最終段階になって民主党のバイデン氏が逆転する州が相次ぎました。
この現象を「レッド・ミラージュ」(赤い蜃気楼)と呼ぶことがあります。レッド・ミラージュが発生するのは、期日前投票や郵送投票などの事前投票が増加しているためです。
事前投票を利用する人には民主党の支持者が多いですが、事前投票の開票分が遅れて加算されると、開票終盤に民主党の票が一気に積み増されることになります。さらに、民主党が優勢な都市部では大量の票をまとめて報告することも多く、レッド・ミラージュをより極端にすることがあります。
この現象を巡って、トランプ氏が根拠のない主張を展開したため、2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件が発生するなど、政権移行をめぐって大きな混乱が起きました。
2022年の中間選挙でも、事前投票が増加しています。そのため、レッド・ミラージュは十分に発生すると見込まれる状況です。
特に、投票日まで事前投票の開票が禁止されているミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州の3州ではレッド・ミラージュが確実に発生すると考えてよいでしょう。
具体的は、開票率70%台後半の段階で共和党候補の先行がピークとなり、そこから開票率90%頃に向けて差が大きく縮小・逆転していく可能性があります。
ウクライナ支援への影響
共和党には、ウクライナへの支援に慎重な議員がいるとされます。
トランプ派の議員や候補の一部は、ロシアに親和的な発言を繰り返していていて、ウクライナ支援の予算を承認しない可能性があります。
また、共和党員は相対的にウクライナが戦争に敗北すると考える傾向が強く、支援が無駄になってしまうことを懸念しているとも考えられます。
さらに、共和党は伝統的に歳出削減を主張していて、ウクライナ支援の内容を精査すべきという考えの議員もいます。このような考えを持つ共和党候補が当選した場合、ウクライナ支援の予算が議会を通過しにくくなる可能性を指摘する声があります。
一方で、バイデン政権がインフレ対策に苦慮する中、国内問題に注力するべきだという文脈で「口を滑らせた」と思われるような発言も多く、実際に当選した議員がウクライナ支援を滞らせるかは不透明です。
さらに、ウクライナ支援に慎重な議員は民主党の急進左派にも存在し、共和党でもペンス前副大統領は支援の続行を主張していています。このため、共和党が多数派になったことで議会がウクライナ支援を縮小させる方向に進むとは現時点で断言できません。
2024年大統領選への影響
大統領選挙の予備選は、中間選挙が終わって年が明けてから出馬表明が相次ぎ、春にかけて本格化するのが通例です。この例に従えば、2023年に入れば出馬表明する候補が続々と出てくるでしょう。
しかし、次回の大統領選は民主党はバイデン大統領、共和党はトランプ前大統領が態度を明らかにするまで大きな動きが出ることは考えにくいと思われます。
バイデン大統領は、不出馬が既定路線だと考えています。年齢も考慮すれば不出馬が前提になっていますが、中間選挙で敗北すれば不出馬の公算がさらに高まります。
バイデン大統領が出馬しなければ、後継を巡って民主党内の争いが活発化することになります。1期目が折り返しを迎えた中で、支持率次第ではバイデン大統領が求心力を失う可能性も出てきています。
トランプ前大統領は、出馬が確定的です。トランプ氏が共和党予備選を勝ち上れるかには、中間選挙の結果も影響してくると考えられます。
具体的には、各州で擁立しているトランプ派候補が民主党に勝利できるかどうかは、トランプ氏が依然として「勝てる候補」なのかを判断する大きな材料になります。
また、トランプ氏に対抗する存在になり得るフロリダ州のデサンティス知事も今回改選を迎えていて、デサンティス氏が対立候補にどれだけの差をつけられるのかも焦点となります。
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