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2022年アメリカ中間選挙の最新情勢(11月1日)

 こんにちは。雪だるま@選挙です。この記事では、来週11月8日(火)に迫ったアメリカ中間選挙の情勢を分析していきます。

 中間選挙はバイデン政権にとっては2年間の「審判」となる選挙で、下院435議席、上院35議席が争われます。いずれも現在は民主党が多数派で、選挙後も維持できるかが焦点です。

全体情勢 共和党が反転攻勢に

 共和党は9月末から支持率を上昇させ、民主党を10月中旬にかけて逆転しました。現在は、共和党が0.9ポイント上回っています。


民主党・共和党の支持率(FiveThirtyEightの集計)

 共和党が支持率を上昇させている背景には、有権者の関心が経済に回帰していることが挙げられます。
 6月末に米最高裁が全米での中絶権を保障していた「ロー対ウェイド判決」を覆したことで、中絶権の保障を主張する民主党の支持率は7月以降に回復しました。
 しかし、バイデン政権下で続く記録的なインフレは夏頃にピークを迎えたという見方があったものの、その後も長引いており10月の消費者物価指数も改善が見られていない状況です。夏頃には中絶問題に向いていた世論(特に無党派層)の関心は、再び経済に集中し始めたと考えられます。
 さらに、9月下旬に共和党は中間選挙の公約を発表し、経済や治安対策に選挙戦の焦点を絞りました。共和党の戦略と有権者の関心が一致したことで、共和党は支持率を伸ばしたと考えられます。

 一方で、共和党の反転攻勢には地域的な偏りがあります。最高裁判決で中絶禁止法が施行された地域では、そうでない地域と比べて支持率の伸びが小さい場合が見られます。
 これは、中絶禁止法が施行された地域では依然として中絶問題への関心が高く、共和党が支持率を上昇させるうえでのストッパーとして働いていいる可能性を示すものです。ただし、この仮説にあてはまらない地域もあり、直ちに正しいと言えるわけではありません。

例えば、中絶禁止法が施行されていないネバダ州では情勢が変わっていませんが、中絶禁止法が施行されたフロリダ州では共和党候補が支持率を大きく伸ばしています。中絶禁止法の有無以外にも、選挙の情勢を決定する要因があると考えるのが自然だと思われます。

 また、共和党が重点を置く争点には「治安対策」も挙げられます。白人警官による取り締まり中に黒人が死亡する事件が相次いでいることを受けて、民主党知事の州では警察の活動が抑制されており、治安が悪化していると指摘されていることが背景です。
 ミシガン州やニューヨーク州など、共和党が差を縮めている州では、討論会などでも共和党が治安対策を攻撃する場面が目立ちます。
 特に、これまで民主党が支持基盤としていた低所得の労働者は、居住地域の治安が悪化した影響を強く受けるとされ、この層の取り込みを図るために共和党は犯罪率の増加などを厳しく批判しています。

下院の情勢

 下院では、定数435議席がすべて改選されます。現在は民主党が221議席、共和党が212議席、欠員が2議席となっており、民主党が過半数を確保しています。
 下院の議席は人口比に応じて配分されていますが、民主党が過半数を獲得するためには支持率で2~3ポイント上回ることが必要であると考えられています。

 現在は共和党が上回る状況で、しかも共和党は最終盤にかけて支持率を伸ばす傾向があります。ここ1か月の反転攻勢を踏まえても、残りの1週間で民主党が逆転するのは困難であり、共和党が過半数を奪還する見通しです。
 議席の予測は、接戦区の世論調査が少ないことを踏まえると正確な数字を算出することは困難ですが、共和党が220議席台後半~240議席、民主党が190議席台後半~210議席程度になると考えています。

上院の情勢

 上院の定数は100議席で、現在は民主党と共和党が50議席ずつを分け合っています。上院議長を兼ねる副大統領が民主党のカマラ・ハリス氏であることから、民主党が多数派となっています。今回の選挙では、上院は全体の1/3にあたる35議席が改選されます。

 上院の情勢も、共和党の攻勢に伴って大きく動きました。9月時点では、民主党が多数派を維持する勢いでしたが、現時点では拮抗状態ですが共和党が優位だと考えています。10月30日に更新した、最新の情勢は次のようになっています。

 民主党は47議席、共和党も47議席でリードしていて、接戦は6議席となっています。接戦と判定した州の情勢を見ていきます。

 アリゾナ州やペンシルベニア州は、民主党が優勢でしたが10月に入ってから共和党が支持を伸ばしています。特に、ペンシルベニア州の民主党・フェッターマン候補は討論会での失敗が響いており、既に共和党が逆転している可能性があります。
 ネバダ州とジョージア州は、今回の選挙で最も接戦になるとみられます。ネバダ州は共和党新人と民主党現職が激しく競り合っています。ジョージア州は得票率で50%を獲得する候補が現れず、決選投票(12月6日)になる可能性が高いと分析しています。
 ノースカロライナ州は、多くの予測サイトで共和党勝利と予測されています。都市化が急速に進展したことで民主党が勢力を伸ばしていて、いずれ民主党優位の州になると考えられていますが、それが今年になるかはタイミングの問題ともいえるでしょう。世論調査の情勢などから、筆者は接戦になると予測しています。
 オハイオ州は、近年保守化が進んでいましたが、今年は接戦になっています。共和党新人が支持基盤を固められていないことが要因ですが、保守州で民主党候補が支持を伸ばすのには限界があり、共和党が僅差で勝利すると予測しています。

 結果として、現状では共和党が51議席、民主党が49議席を獲得し、共和党が上院も奪還すると考えています。ただし、ジョージア州は決選投票に進んだ後、民主党が勝利するとしています。

知事選の情勢

 知事選は上院議員選に比べて世論調査の数が少なく、正確な情勢が掴みにくいですが、その中で接戦になっている州の情勢について分析します。

 ネバダ州とウィスコンシン州は、民主党現職が再選を目指していますが、共和党新人との間で接戦になっています。ネバダ州は、上院と同様に接戦となっています。ヒスパニック労働者の離反が指摘されていますが、他にも大卒人口が少ないことなどが理由として考えられます。
 ウィスコンシン州は、ラストベルト3州の中で最も共和党寄りの州です。民主党が勝利した2018年の中間選挙で当選した民主党現職は、今回逆風の中で共和党新人の激しい追い上げを受けています。
 オレゴン州は、本来は「青い州」で民主党がかなり優位ですが、今回は穏健派と急進左派で民主党が分裂し共和党との間で三つ巴の接戦となっています。調査の数は少ないですが、共和党リードを示すものが多い状況です。ただ、民主党支持者が共和党候補を勝たせないために「戦略投票」を行う可能性があり、実際の結果は世論調査とは異なる可能性があります。
 共和党優位のオクラホマ州、民主党優位のニューメキシコ州でも接戦の可能性を示す世論調査が発表されています。調査の数が少なく、現時点での情勢分析は困難ですが、番狂わせが起きる可能性については留意が必要です。

今後の予測

 選挙まで1週間となり、焦点は民主党が情勢を好転させられるのかに絞られてきました。共和党は反転攻勢を続けてきた上、一般的に共和党は最終盤に支持率を伸ばす傾向があります。民主党にとってはここから情勢を好転させることは難しいのが現状です。

 下院は共和党が過半数を奪還する見通しとなっていることから、民主党が勝機を見出せるのは上院のみになっています。民主党はペンシルベニア州を落とす可能性が高まっているため、ネバダ州かノースカロライナ州で逆転することが必要です。
 ネバダ州は現職が出馬しているだけに、民主党はまずネバダ州に照準を合わせるべきだと思われます。中絶禁止法が施行されていないため、中絶問題に関心を引き付けることは難しく、民主党が苦手とする経済や治安対策の分野でイメージを改善する必要があるでしょう。

 中間選挙の争点に関しては、次の記事をご覧ください。

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