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広島で被爆建造物から戦争の記憶を引き継ぐ3選



 1945年7月20日、原子爆弾ファットマンの模擬爆弾となるパンプキン爆弾が新潟・茨城・東京に投下された。これはファットマンとほぼ同一の形状と質量をもつ爆弾で、弾道特性や慣性能率等の事前データ採取を目的に製造されたものである。7月20日から8月9日に長崎にファットマンを落とすまでの間に18都府県30都市に52発投下され、全体で死者400名・負傷者1,300名を超す被害を受けた。



広島の相生橋




 B-29爆撃機 エノラ・ゲイの機長は広島市の上空から見える特徴的なT字型の相生橋を「最も完璧な照準点」と呼んだ。1945年8月6日午前8時15分、投下された原子爆弾リトルボーイは上空600mで爆発し、半径3km以内にあった建物90%以上が破壊、または消失した。死者は14万人を超え、負傷者数は79,130人に及んだ。その3日後、8月9日午前11時2分に長崎市にB-29爆撃機 ボックスカーによって原子爆弾ファットマンが投下され、死者数は73,884人、負傷者数74,909人に及んだ。


おりづるタワーから見える相生橋



 1946年の市勢要覧によれば、広島市の被爆時の人口は35万人だったが、一時的に14万人を割り込んだ。とある米科学者は広島市は70年間は不毛の地になると言った(70年不毛説)。しかし、実際、爆心地で受ける残留放射線は24時間後には1,000分の1となり、1週間後には100万分の1となった。その8ヶ月後、人口は17万人を超え、1954年には36万人を超え、2024年1月時点では118万人を超えている。





 広島の原爆に関する被爆建造物は原爆ドーム以外にも残っているが、老朽化に伴う取り壊しなどで年々数が減少している。私は戦争の悲惨さについてはメディアを通してしか知らないが、なるべく痕跡が分かるような場所を選び、記事にした。記事の後半はエッセイであり、私の平和に対する思いが伝われば幸いである。




①袋町小学校平和資料館(爆心地から460m)



 広島市の中心地にある袋町小学校は被爆当時、避難場所や救護所として使用された。人々は床に散らばるわずかなチョークを使って、焼けた壁に消息を知らせる伝言を書いていた。その後、復旧し校舎が改修され、伝言が書かれた壁の上に壁が塗られたまま使用されていたが、老朽化に伴う校舎の取り壊しの際に外側の壁を削いで伝言の書かれた壁を取り出し、保管して平和資料館として開館した。





②三瀧寺(爆心地から3.18km)


三瀧寺の鎮守堂


 広島市西区の三滝山の中腹にある歴史的なお寺。境内の建物で被爆したのは三瀧寺・想親観音堂・鐘楼・稲荷社・三鬼権現堂・鎮守堂。原爆の爆風が斜面を駆け上がり、これらの建物に大きな被害をもたらした。



 これは三瀧寺へ登る道路沿いにある三滝墓苑にある被爆者の無縁仏。無縁仏とは亡くなった方で身寄りのない、身内の人が分からない人を供養するためのお墓のことである。ここにある無縁仏は元々、三滝墓苑に墓地を持っていた方の身内が原爆で亡くなり、無縁になった墓石を集めたのがここの墓地となる。





③マツダ宇品工場(陸軍船舶練習部)(爆心地から4.16km)



 広島市南区の下丹那駅跡付近から見える、マツダ宇品工場内にある被爆建造物。当時は陸軍船舶練習部として使用されており、原爆の被害は比較的軽いものだった。黒く見える壁は被爆跡ではなく、当時の戦時迷彩がそのまま残っている。戦時迷彩とは空襲の被害を避けるために建物に施されるカモフラージュのことである。







 核実験が初めて行われたのは1945年7月16日のアメリカのニューメキシコ州アラゴモードの砂漠である。同年、8月6日にリトルボーイが広島に、8月9日にファットマンが長崎に投下された。1946年、広島市の比治山の山頂にアメリカのABCC(原爆傷害調査委員会)が設置され被爆の調査が行われた。

 その4年後、1949年、ソビエト連邦の初の核実験「RDS-1」がカザフスタンで行われる。アメリカはソ連の核保有の予想を1953年、イギリスは1954年としていたが、それよりも大幅に早まった。

 1952年、イギリスが初の核実験「ハリケーン」をモンテベロ諸島で行った。1954年、ビキニ環礁のアメリカの水爆の実験で第五福竜丸が被爆した。1955年、広島の爆心地から1.4kmで被爆した下田隆一さんら3人が国を相手に、アメリカの原爆投下を国際法違反とすることを求めて訴訟を提起した。判決は原告の請求を棄却した。


 1960年、フランスが初の核実験「ジェルボアーズ・ブルー」をサハラ砂漠で行う。1964年には中国が初の核実験「596」を新疆ウイグル自治区のロプノールで行った。これで国連安全保障理事会の常任理事国5ヶ国全てが核保有国となる。


 1965年、アメリカの国防長官ロバート・マクナマラが核抑止の最も有名な理論である「相互確証破壊」を発表した。相互確証破壊とは、対立する2つの核大国の一方が先制攻撃を受けた場合、攻撃を受けた国が破壊されずに済んだ残存核戦力を使って、相手側に確実に報復できる状態のことを言う。これは米ソの核戦争の危険性を抑制されるために考え出されたものであるが、2023年1月の時点で核の保有数で最も多いのはロシア5,889発、次にアメリカ5,244発、その次が中国の410発で、米ロの核保有数が突出している。


↓核兵器保有数の推移(2013~2023年)



 1968年に5ヶ国以外の核保有を禁止する核拡散防止条約が締結される。1969年、広島の爆心地から1.3kmで被爆した桑原忠男さんが、脊髄円錐上部症候群で原爆医療法による認定申請を行ったが却下された為、却下処分の取り消しを求めて提訴したが敗訴した。

 1973年、広島で0.7kmで被爆した石田明さんが原爆白内障の認定却下処分の取り消しを求めて提訴、勝訴した。1974年に国連非加盟国のインドが平和的核爆発(土木工事や採掘が目的)という名目で初の核実験「微笑むブッダ」を行う。1979年、アメリカの核実験監視衛星が南極大陸沖プリンス・エドワード諸島付近で「二重の閃光」を探知した。これは南アフリカとイスラエルの共同核実験の説が有力とされている。

 1987年、広島で1.8kmで被爆した小西建男さんが白血球減少症と肝機能障害で認定申請をめぐり提訴、結果、白血球減少症のみ認定される。1988年、長崎で2.45kmで被爆した松谷英子さんが、3歳5ヶ月の時に爆風で飛んできた原爆瓦による右半身不随麻痺の認定却下処分の取り消しを求めて提訴、勝訴した。

 1991年、湾岸戦争で劣化ウラン弾が使用される。劣化ウランとは核兵器製造や原子力発電で生じる放射性廃棄物で、「湾岸戦争症候群」の原因の可能性が指摘されている。1998年、インドの隣国パキスタンが初の核実験「チャガイーⅠ」を行う。1999年、長崎で1.3kmで被爆した東数男さんが肝機能障害の原爆症認定を求めて提訴、勝訴した。

 2006年に北朝鮮が地下核実験を行ったと発表した。映像の発表はないが、核実験独特の地震波が観測されているため一定の成果があったと考えられている。2009年、2013年、2016年、2017年と北朝鮮付近を震源とする自然地震ではない可能性のある地震波を検知。これらはいわゆる人工地震とみなされている。

 2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵攻が勃発。2024年現時点においてロシアは核を使用していない。これは欧米の核抑止が機能している証拠という意見もある。日本の核武装は行われていないが、必要であれば1年以内に核兵器を製造することは可能だとされている。ウクライナ侵攻を受け安倍晋三元首相は日本の核共有を訴えたが、2022年7月8日11時31分頃、奈良市の大和西大寺駅北口付近にて銃撃され、67歳で死去した。




比治山のABCC(原爆傷害調査委員会)は日米共同の放射線影響研究所へ改組した



 私の同い年の友人に広島の被爆3世の男がいる。彼とは十代の終わり頃に知り合い、ともに旅に出たこともある間柄だ。昔、一緒に鳥取砂丘を見に行ったが当日はあいにくの雨だった。それでも最初は砂丘の雄大な景色にはしゃいでいたが、彼は途中で飽きたのか、後半から明らかテンションが下がっていたのを覚えている。彼が被爆3世であることを私に教えてくれたのは確か、その旅よりも前だった。戦跡の話をしていて、彼がやけに詳しいので色々聞いてる内にふとした拍子で自身が被爆3世であることを告げた。私は「え? あ、そうなんだ」と少し驚いたのを覚えている。

 次はどこどこへ行こうと話したが、結局、お互いの都合が合わないまま時が過ぎた。それでもたまに連絡を取るし、メシも食う。戦跡巡りが趣味で、かなりマニアックなネタを提供してくれる。またいつか、彼と旅に行けたらと思う。



──2017年2月17日に広島の被爆2世22人、2月20日に長崎の被爆2世25人が「被爆2世の援護を求める集団訴訟」を提訴した。長崎の被爆2世は1審、2審で請求を棄却され、2024年3月12日に上告した。広島の被爆2世は1審で請求書を棄却され、2023年2月16日に控訴した。

 現在、被爆について遺伝的な影響は確認されていない。







 



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 終わり

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