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映画「土を喰らう十二ヶ月」料理抜粋レビュー

映画「土を喰らう十二ヵ月」を観て感じたことなどをまとめていく。ネタバレあり。水上勉著「土を喰らう日々」を原作とした映画である。沢田研二や松たか子など著名人を役者に迎え、四季折々の精進料理とともにストーリーが進み、生きることは食べることを実感させてくれる。


立春(2月初旬)

・炙った小芋と日本酒
まだまだ寒い時期。舞台となっている長野では雪の下に隠れている芋を収穫し、火で炙って日本酒に合わせる。ジャガイモではなく里芋か?冬の土の中で保存しつつ食べるときに収穫する。
皮は向いていても、少し残った皮の部分から土の味が自然と想像できる。

・干し柿と抹茶
江戸時代、干し柿以上に甘い食べ物は存在しなかったと聞く。そのため、和菓子では干し柿を超える甘さはないらしい。渋柿であっても干して甘みが増すので、庶民でも味わえる甘味だった。抹茶と合わせて編集者であり恋人関係(?)のマチコをもてなす様子が見られる。

啓蟄(3月)

・ほうれん草のゴマ和え
啓蟄(3月初旬)はまだまだ寒い時期。ほうれん草を雪の下から引っこ抜いて根元の泥を水で洗う。手が冷たいので、根元を包丁で切り落としていた小僧時代。和尚さんからは「ほうれん草の一番美味しいところを・・・」と小言を言われたが、叱るではなく、大変な思いをすることで素材の美味しいところが食べられるという教訓じみた話である。

清明(4月)

・ウドの蒸し焼き(味噌)
とくに料理名はないが、ウドを濡れた新聞紙に包み焚火の中に入れておく。火が消えたら取り出してみるとホクホクと蒸し上がっている。それに味噌をつけて食べる。主人公ツトムが父親から習った食べ方である。

・セリの混ぜご飯
炊きたての白飯に刻んだセリを混ぜて菜飯にする。食べてないけどセリのいい香りが想像できて美味しそう。

小満(5月)

・筍の煮物
竹林での筍の取り方をお坊さんから教わる。土から顔を出している筍は育ちすぎ。土が膨らんでいるところを探す。周囲を掘ってから鍬で根元から収穫する。周りの皮は土に帰って肥料になるので、収穫したその場で皮むきをする。米ぬかで茹でてから味付けのために、再度煮込む。
刻んだ山椒の葉を振りかけて出来上がり。
色が関西らしく薄めである。

立夏(5月初旬)

・白飯とたくあん(山椒の佃煮?味噌和え?)
沢庵をおかずにひたすら白米を食べる。文字にするとお粗末な昼食だが、昔の人の食事ってこのくらい簡素だったんだろうなと感じる。
ツトムの義母だから年代的には、さもありなん。山椒の佃煮も登場するが、ツトムは食べさせてもらえない。どちらにせよ一品で白飯だけをひたすら食べるシーン。

・ぼた餅
亡くなった妻の月命日でもらったぼた餅、簡易な仏壇にお供えしてから食べる。お供え物をする感覚ってなんだろうな・・・独り立ちして仏壇のない生活で、忘れてしまった祖先や故人への気持ちを思い出す。

・手作り味噌
義母であるチエの手作りの味噌。貨幣経済よりも前からずっと続いていたおすそ分けの文化や自分の作物を物々交換して支え合う文化。
後で登場するお葬式のシーンでも、決して裕福ではなさそうで、偏屈なチエさんが味噌を通じて地域と交流を持ち人望があったことがわかる。

小暑(7月)

・手作り梅干し、梅ジュース
梅干しは手作りすることで、塩加減や熟成の度合いなど家庭ごとに味わいが異なっている。実際、お寺でお世話になったおかみさんが亡くなっても、60年前の梅干しだけは残っていた。梅干しを食べながら、亡き人と自分の子供時代を思い出す。
赤紫蘇をつかって漬け込む梅干しを水で割り、梅ジュースとして飲む。

処暑(8月下旬)

・ゴマどうふ
京都のお寺で習った精進料理である。お葬式の参列者からも美味しいと評判になる。都会でしかいただけない本場の料理で盛り上がり、お葬式は無事終わる。亡くなった方を痛みながらも美味しい料理で満足し、故人について語らう。葬式のあるべき姿のように感じた。

・ミョウガの炊き込みご飯(おにぎり)
偏屈で孤独だと思っていた義母のチエが地元では周囲からの人望が厚いとわかり、想像以上の参列者が訪れる。急ごしらえでミョウガを畑から収穫して炊き込みご飯でおにぎりを作る。

・味噌きゅうり
チエさんの自家製の味噌にきゅうりを添えて。味噌をつけながら旬のきゅうりを食べる。葬式の参列者は味噌の味で、チエさんの味噌だとわかり、お供え物にもチエさんから習った味噌を供える。
まさかこんなにも周囲から愛されている人物だとは親族側が驚かされる。

霜降(10月下旬)

・なめこ鍋
恋人マチコとの関係が終わる際、マチコに食べ物の話で話題を変えようとする、相手の方を見られないツトム。キノコ狩りをしながらのエピソードここから急展開。エピソードに大きな山はないが、人間関係模様が見て取れる。

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