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院内集会に行ってみた!

6月6日、芸能従事者協会さんにお誘いいただいて、勉強会「芸能従事者・クリエイターの事態と課題」(於 衆議院第一議員会館多目的ホール)に行ってきました。これまで省庁に資料を届けに行ったことはありましたが、議員や官僚の皆さんのところに”要望”という形でお邪魔したのは初めて。
当日、どのようなことをお話ししてきたかご報告します。

院内集会とは?
国会議員に直接声を届ける集会を、院内集会と言います。議員会館の中で開催され、誰でも参加することが可能。立法府に当事者の声を届けるために、日々様々な院内集会が行われています。

今回は、10名以上の議員や、総理大臣補佐官、各省庁の担当官僚の皆さんが話を聞きに来ており、熱心にメモを取られていました。

今回の院内での勉強会は一般社団法人日本芸能従事者協会さんが企画され、様々なコンテンツ製作支援につながる施策が検討されている今、各業界が抱えている問題を置き去りにしないでほしいという趣旨で様々な問題点をまとめ、要望書として各省庁へと提出するというものでした。

誰でも参加できた!

私からは、これまで意見交換会などで聞いてきたおはなしから、女性の働き方の問題、また業界全体の問題は特に長時間労働が第一の原因だと考えていますので、その点に絞って少しお話ししました。下記に記しておきます。

議員会館の多目的ホール、広い。(芸能従事者協会さんの画像より)


国会へ声を届けよう! 芸能従事者・クリエイターの実態と課題 近藤スピーチ(2024/6/6)

元助監督で、現在は映画やドラマなどの撮影現場で働くスタッフのマネージメントをしております、近藤香南子と申します。特に映像制作の現場で働く女性スタッフの働き方を改善したいと考え、意見交換会を行い、実際の声を聞いております。私からはフリーランスの女性スタッフが置かれている状況などについてお話しします。
映像業界で女性がキャリアを積んでいくにあたり、自分では解決し難い幾つもの障壁がありますが、やはり大きいのは出産・育児との両立が極端に難しいことです。

その理由としては、まず第一に、「長時間労働・休日がないこと」です。
2023年4月に、経産省のもと業界内の自主的取り組みとして日本映画制作適正化機構「映適」により、初めて働き方のガイドラインが定められました。その労働時間規定は「1日13時間、2週間に1度の完全休養日」です。ここから計算した1ヶ月あたりの労働許容時間は312時間、大幅に過労死ラインを超えています。この労働時間で、保育園のお迎えに行けるのか、小中学生が家で何時間留守番をしなくてはいけないか、そもそも性別を問わず健康で文化的な生活が送れるのかを、想像してみていただきたいと思います。

さらに1日13時間のうち前後の1時間ずつは「準備と片付けのみなし時間」のため、撮影の内容や部署によっては到底13時間に収まりません。特に女性が多い衣裳、メイク、美術、装飾、小道具などの部門は準備や片付けに時間がかかることが多いですが、全て前後1時間とみなされてしまうのです。しかも、集合してからの移動時間はこの13時間に含まれません。

つまり、現状の労働時間はもっと長いということです。これは制作予算1億円以上の映画制作が対象であり、多くの小規模映画やドラマ撮影などは特に規定もない状況で制作されています。すべての部門の女性で出産を機に離職せざるを得ない人が多く、キャリアのために子供を持つ選択をしない人も多いです。働いている時の報酬が同じでも、結果的に生涯の収入に賃金格差が生まれます。

女性の問題のみならず、とにかく長時間労働が最大の問題と感じています。新人育成の時間も取れず、若手は辞めていきます。「自主的取り組み」ではなく、この長時間労働の問題が法的に是正されなくては、ハラスメントや若手育成などの諸問題も前進せず、コンテンツの海外展開の強化などの言葉も虚しいだけです。映像コンテンツの量に対し、支えるマンパワーが明らかに足りていません。異常な状態です。

フリーランスである以上、育産休制度における給付金がない、ということもあります。妊娠中から出産前後、育児中と、仕事を離れている間は無職の状態になります。そのため保育所へ入り早く復帰しようと考えても、会社員よりも多くのハードルを超えなくては保育所にも入れられません。

フリーランスの働き方には、時間や場所を自分で選べる業種もありますが、こと映像制作においては、発注者側が決めたスケジュールに沿って、毎日指定の場所へ行かないことには仕事になりません。フリーランス新法における出産育児介護への配慮義務も、現状6ヶ月以上の業務委託に限られます。多くの撮影は半年以内に終わることが多いため、“配慮”すら受けられないのです。

加えて、物価、税金は大幅に上がっていますが、30年以上報酬の相場が変わっていません。むしろ下がっています。先ほどの映適ガイドラインでの月312時間を東京都の最低賃金で計算すると347,256円ですが、この金額は3年程度キャリアを積んでも、もらえるかどうかという額です。新人の頃は、この半分ほどしかもらえません。業務にかかる装備などの経費、社会保険料や税金を支払った後の可処分所得はかなり少なくなります。さらにはインボイス制度の導入。手元に残る額面を想像していただきたいと思います。安心して働き続けるためには長時間労働と合わせて賃金についても調査され、なんらかの制度をもって是正されるべきだと考えます。

こうした状況で、離職せざるを得ない、復帰ができない女性スタッフ、仕事を続けられない人がたくさんいます。キャリアの積み上げが難しいゆえに、意思決定層に入っていって自ら改善することも簡単ではないです。また、こうしたフリーランスの働き方の先の老後というのも、性別を問わず非常に厳しいものがあります。問題は山積しています。

歴史的な映画文化というアドバンテージを持ち、I Pコンテンツやアニメーションなど、世界の市場で勝負できるはずの映像文化の担い手は、長らく疲弊しきっているのです。新たなクールジャパン戦略を謳うならば、それを支える人々が安心して生活でき、その恩恵を国家ではなく国民一人一人が享受できるということを大前提としていただきたい。間に色々なものが入ってお金を掠め取っていき、下支えする人間の手元に何も残らないようなことが繰り返されないよう、この機会に強くお願いいたします。


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と、このようなことを超早口でお話ししてきました(持ち時間五分)。
最後はマジで税金の使い方が狂っていると日々感じているので、キレ気味になってしまいましたが…。
企業努力や個人の努力ではどうしようもない段階にあると思いますので、なんとか法的なところで改善につながるよう、参加された皆さんの意見が取り入れられたらいいなと思います。

お招きいただいた芸能従事者協会さん、貴重な機会をありがとうございました!

ちなみに、芸能従事者協会さんではめっちゃこまめにアンケート調査を行い、各省庁に提言を届け続けています。国の調査やパブリックコメント、こうした民間の調査にも、どんどん答えて実情を可視化、届けていくことが労働環境の改善につながると思いますので、ちょっと電車で移動中にでもポチポチ回答いたしましょう!

現在行っているアンケート↓
フリーランス芸能従事者の労災と安全衛生に関するアンケート2024
昨年度一年に起きた 長時間労働 、ハラスメント、AIやインボイスの影響を調査。
文化芸術・メディア・芸能従事者の人権に関するアンケート
各テレビ局が人権ガイドラインを作成して6ヶ月程。人権に関わる状況を調査。

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