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(21)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~HSC・HSP編~


 つづきです。
 
 ここからお伝えしたいのは、HSCさん、HSPさんにぜひ本をたくさん読んでほしい…というお話です。
 

〈40代でわかった、私はHSP・・・もっと早く知りたかった!〉

 
 ほんの数年前―40代に入ってから気づいたことなのですが、私は元HSC(Highly Sensitive Child)で、今はHSP(Highly Sensitive Person)
 いわゆる「繊細さん」と呼ばれる心の特徴の持ち主。

 診断のようなものを受けたことはありませんが、自分の特徴は間違いなくこれに当てはまると思います。
 HSC(大人になるとHSP)は、人一倍自分や他者の感情に敏感で傷つきやすく、生きづらさを抱えることが多いと言われています。今はメディアでも取り上げられるようになり、関連本も多く出ていますよね。かなり周知されてきたなぁと感じています。
 
 私がはじめに気付いたのは、新聞の子育て欄がきっかけでした。
 長女がまだ小さく、毎日あたふたしていて本を読む時間はありませんでしたが、新聞だけは育児に関する新しい制度や施設・イベントの情報が役立つので、できる限り目を通していたのです。
 
 ある時目についた記事、それが
「あなたの子どももHSCかも・・・繊細な心に気を配ってあげて」という内容で、特徴がいくつか紹介されていたのですが、その時の衝撃といったらありませんでした。
 
 ―これは私じゃないか・・・!
 
 子どもの頃から人一倍「気持ち」に敏感で、他人の感情まで気になって苦しくなってしまう。
 無神経な発言をする人を見ると辛くなる。
 親は優しかったけれど、親の感情を乱すことが辛いのでワガママを極力言わないようにしていた子ども時代・・・。
 
 成長してから誰かにそのことを話しても、大抵は「そこまで考えなくてもいいのに」「気にしなくて大丈夫」という答えが大半でした。
 
 私はおかしいのか・・・と思ったこともありましたが、HSPの記事を読み、「自分は少数派・・・だけど、おかしいわけじゃない」とわかったとたん、救われた気がしたのです。
 
 ―もっと早く知りたかった!  
 
 私はずっと、自分のことが謎でした。
 なぜ40代という年齢になり、子育てをしている今になってわかったのだろう。もっと早くわかっていれば…。
 
 ―と思う反面、記事を読んで良かった!とも思いました。
 考えても仕方がない。今、わかったことをこれから生かすしかないんだ。
 
 そしてこの後、急速にさまざまなメディアでHSPが取り上げられるようになっていきました
 たまたま目にしたテレビ番組では、繊細な自分の心に悩む小学生の男の子が、おばあちゃんと一緒に飲食店へ行き、忙しく働いている店員の心情に配慮して「すみません」と声をかけられないでいる様子が紹介されていました。
 おばあちゃんは「人のことを気にしてもしょうがない。自分がしっかりしていれば大丈夫」と叱咤激励するのですが、男の子は「そういうことじゃないんだって…」と涙を浮かべています。
 
 ああ、これは私だ。…大丈夫だよ、と声をかけたい気分でした。
  人の感情が可視化されてしまうんですよね(本当に見えるわけじゃないけど)。
  気にしなくていい…ということではなく、いちばん気になることなんです。
 だから気になることを認めてもらったうえで、どうするかが問題なんです。
  
 ちなみにその後男の子は、おばあちゃんに心の特徴を理解してもらい、「今までわかってあげられなくてごめんね」という言葉をもらって笑顔になっていました。
(なんの番組だったかうろ覚えなので…たしかこんな内容だったと記憶しています)。
  

〈インタビュー取材に役立ったHSP気質〉

 
 ところで私のこの気質は、ライターの仕事には大いに役立ちました。
 ライター時代、さまざまな職種の人にインタビューをしたのですが、相手のちょっとした表情や仕草などで、「この質問は嫌そう」とか、「さっきの修行時代の話はもう少し深掘りできそう」とか、「趣味の話の時がいちばん目が輝いていたな」…というのがよくわかり、取材のイロハを習得してからは限られた時間内で(自分なりに)型どおりではないその人らしい言葉を引き出すことができたりもしました(と勝手に自負しています)。
 
 なので、心の特徴を仕事に活かすことは十分にできると思います。

 できあがった記事を見てもらうと、相手から「今まで何度か取材されたけど、こんな風に自分の言いたいことをちゃんと書いてもらったことは初めてです」…と喜んでいただけることもあり、少しでもお役に立てたのかなぁ…と幸せを感じました。
 
 ですがその反面、相手の心に引き込まれてしまうので、1時間も取材をするとぐったりと疲れてしまい、仕事仲間からは「そこまで相手に入り込まなくてもいいんだよ…」と心配されたこともあります
 
 でも、どうしようもないのです。そうなってしまうのです。
 だって、人の感情が見えてしまうから。
 
 だから一時期、休業したりもしていました。
 

〈そんな私は何に救われたって…読書なんです〉

 
 HSCやHSPの体験談を読むと、多くの人が苦しさを抱えています。
 まだ「自分がそうだ」とわかっている大人の場合は対処法…というか、生き方の工夫ができるのかもしれませんが、子どもの場合は周囲に理解者がいないと深刻なこともありますよね。
 
 私の場合は、たぶんもともと繊細の度合い(?)が重度ではないかもしれない…のと、母親が「この子は感じやすいから、気を付けて育てないと」とある程度気にしてくれていたようなので(大人になってから聞きました)、それが幸運だったのかもしれません。
 
 …が、それを差し引いても、「あの時どん底に落ちたけど・・・どうやって浮上したんだっけ」と思い返した時、私を常に支え「こういう考え方もある」「明日からも生きていこう」と応援してくれていた存在があったことに気付いたのです。
 
 ―そう、本でした
 本は、間違いなく私の応援団でした。
 
 
 いえ、誤解のないように言うと、何かショックなことがあった時、友人がたくさん励ましてくれましたし、死なずに生きてこられたのは周囲のリアルな人達のおかげです。
 それでも、私も含めて人というものは、良くも悪くも「自分の経験から」言葉や励まし方を生み出すもの
 その時々の相手の状況に応じて「どんぴしゃ」なエールが送れるとは限りませんよね。
 
 そこへ、その時々で「ああ、私はこういうふうに考えて、こうやって生きていけば何とかやっていけるかもしれない…」
 と沼から確実に引き揚げくれたのは、私の場合ことごとく「読書」から得た「考え方のパターン」や「生きる勇気」でした。

 
つづきます。
 
 
 
 
 
 
 
 

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