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(14)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~読む力は生きる力編~


 つづきです。

 本を読むと読解力、文章力、語彙力がなぜアップするのか…。
 
 いやいや、特に説明されなくても、そんなのなんか当たり前じゃない? と思うかもしれませんね。

  でも、今現在小さなお子さんを育てている方、また、「自分はあまり本を読まない」という方に向けて、今一度「本」「出版物」の文章の素晴らしさについてお話できたらと思います。
 

〈出版物は磨き上げられた文章・言葉の宝箱〉

 
 紙に印刷された本の文章にはあって、インターネットに頻繁かつスピーディーにアップされている(あらゆる人が書いた)文章にないものは、なんでしょうか?(キンドル版の話はちょっと置いといて)
 
 何度も何度も推敲され、磨き上げられた文章です(ネットの文章を否定する気はまったくなく、あくまで出版のシステムの話です。磨き上げた文章をネットに投稿している人も多数います…念のため)。
 
 作家や、文章のプロと言われている人達は、当たり前ですが素晴らしい技術やセンスの持ち主です。
 そうした人達が本を出版する場合、本人はもちろん、何人ものプロがその文章を読んで、わかりづらい表現や間違いがないかを見直します
 
 著者が文章のプロではない場合も、編集者が読みやすくなるよう構成を考えたり、校閲や校正をします(出版の当然の手順として行われます)。
 
 私達が印刷された本を読んで、もしも「特別すごい(特徴的な)文章とは思えないな・・」と感じたら、それは不特定多数の人に対して読みやすい文章を心がけているからです。
 また、子ども向けに軽いタッチで書かれた文章は、子どもが理解できるようあえてわかりやすい言葉を選んでいます
 
 簡単な言葉で書かれたわかりやすい文章は、実は素人には簡単に書けません。
 作り手、書き手が文章を磨きに磨き、どうしたらテーマが伝わるか、考えて世に出しているのが一冊の本。
 
 そんなふうにして作られた本を繰り返し読んでいたら、知らず知らずのうちに文章力、語彙力が磨かれるのは当たり前なんです。
  
 

〈読書習慣で「書き言葉」が自然と身に付きます〉

 
 学校では「読書感想文」や「作文」を書くことがしばしば求められますよね。
 読書習慣がある人は、「登場人物の気持ちや出来事」が文章で表現されることに慣れているので、書きたい内容をイメージすると、それが文章となって手が動きやすくなります。
 
 もちろん優れた書き手になるかどうかは別問題ですが、読書をしていれば少なくとも「文章」というものを肯定的に捉えるようになります
 
 ところがこれに慣れていない子どもに「文章を書いて」と言うと、話し言葉をただ文字にするだけになってしまい、苦労します。
 
 子どもを理系に進ませたいと考えるパパ、ママもいると思いますが、当然のことながら理系にも文章力、読解力は必要です。
 理系のセンスはあっても文章力に乏しければ論文や何かの発表にも苦労するでしょうし、前述したように、近年では小学校低学年の算数でも読解力を要する文章問題が増えました。なかにはよく読まないと間違えてしまう「引っかけ問題」のようなものもあるので、子ども達も大変です。
 
 また先日、中学受験の塾の資料をたまたま見ていたのですが、「文章力&読解力をつける!」という集中講座があり、幼少期から読書習慣がある子とない子では、スタートで差がついているかもしれないな・・・と思いました。
 読解力を後天的に学問として身につけるのって、個人的にはけっこう難しいのではないかと思います。

〈その人が最も書きやすい文体・文章の土台とは…〉


 ちなみに、結果的に文章を書くことを生業とした私個人の感覚かもしれませんが、「その人が書く文章・最もスラスラ書ける文体」は、もしかしたら成長期にたくさん読んだ文章・文体が土台になっているかもしれません。
 
 私個人は中高生の時にひたすら「堅い推理小説」を読んでいたので、いちばん書きやすい文体が「だ・である調」で、エッセイであっても最後に「なにかしらの謎が解ける」ような文章をついつい書いてしまいます。
 ―良い悪いは別として、完全に体に馴染んでしまっています。
 
 裏を返せば成長期に「汚い言葉遣い」「文脈の薄い文章」ばかりを読んでいると、それが話し言葉だけでなくその人の「書き言葉」の土台になるかもしれません
 
 正しく丁寧な言葉遣い、文脈のしっかりとした文章を操れる人間が、それをあえて崩した文章を書くことはスタイルとして可能ですが、逆は難しいと思います。
 
 ちなみに、読書習慣があれば正しい敬語もある程度自然と身につき、社会人になっていちから覚えるという苦労も減るのではないかと思います。
 
 ただ、これらを踏まえても、学力向上のために「本を読んだほうがいいかな…」と仕方なく読むのと、「楽しい」から読むのとでは熱量がまるで違います
 
 「勉強してる!」と思わないで勉強している時がいちばん幸せではないでしょうか。だから子ども時代に「おもしろいと思える本」にたくさん出会ってほしいのです。
 
  

〈親子の会話から漏れた情報を本が補ってくれる〉

 
 子育てをしている方は、「子どもに教えなきゃいけないことって多いな・・・」と毎日のように思いませんか?
 
 子どもの年齢にもよりますが、日常生活のあれこれに加えて、特に現代はいじめ、ハラスメントの問題やインターネットの使い方、子どもに関わる世の中の動きや法律、性教育など、親世代が「追いつかない!」と焦るほど日々「常識」にあたる考えが変わっていきます
 
 子どもから「これはどうなの?」と聞かれても自信を持って即答できないことだらけで、結局ちゃんと返答できないまま時間が経ってしまった・・・なんていうことも私しょっちゅうあります。
 
 そこで頼りにしているのが本です。
 少し探せば、「子どもと法律」「年代に合った性教育」「インターネットの使い方」・・・などなど、専門家がわかりやすい語り口で伝えてくれている本が実にたくさん
 絵が多用されていたり、マンガで描かれているものも多く、「そうそう、こういうことを伝えたかったの!」と整理された情報が満載。子育ての心強い味方です。
 
 私はこういう本を買うと、「ママ今、こういうの読んでるんだ」と軽くアピールしてから、「本棚に入れておくね」と子ども達に伝えます。

 その時は「ふ~ん」くらいの反応でもOK。

 やがて暇な時、読書習慣のある子なら本棚から「読んでない本あった~」くらいの軽い気持ちで手に取る可能性が大です。

 親に言われれば「お説教か…」「なんか恥ずかしい」「興味ないし」と思うようなことでも、自分で手に取った本に載っている情報と思えば、受け入れやすいもの

 しかも、「ママも読んだ」というワンクッションがあることで、「このページおもしろかったよ」と話しかけてくれることもあり、親として補足したい内容があればそのタイミングで会話しやすくなります
 
 我が家の娘達はこの方法で「いじめは法律で罰せられる可能性もあるくらい大変なこと」「ネットにはこんな注意点がある」「女の子に生理がくるのは当たり前」ということを(あくまで基礎知識ですが)、いつの間にか覚えていてくれました。
 たまに何かの注意点を話すと、「それ本で読んだよ」と答えてくれることも・・・。
 そういう時は心から「素晴らしい本をありがとう!」と感謝します。
 
 難しい問題に関して「本任せでいい」とは思いませんが、手助けしてもらう、親にとっても良きアドバイザーになってもらう、という発想はいいと思います。
 
 良い本を作ってくださる方々、本当にありがとうございます。いつも助かっています。
 
つづきます。
 
 
 
 
 

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