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中1娘にスマホを買って、やっぱり小学生までは読書中心で大丈夫…と心底思った9つの理由

 この春、悩みに悩んだ結果、我が家では中学1年の長女にスマホを買い与えました。もちろん、「スマホはあくまで親が子どもに貸しているもの」という大前提で、ルールなども一緒に考えました。

 本当に、スマホに対して抵抗があったのです(私が)。
 でも、いろんな理由や事情、生活の流れを検討した結果、「あれば便利・楽しい」ではなく「ないと不便」という結論にならざるを得えませんでした。連絡用のキッズケータイはありましたが、それでは用をなさなくなったのです。

 私はハラハラ、娘はルンルン。

 長女はいま現在、スマホを使い始めて約1カ月。基本的に、放課後限定で友達とのやりとりや、調べものをするために使っています。

 そしてその様子をみて私は、思いもよらなかった、ある恐ろしい事実(笑)・・・に気付いてしまったのです。

 今から、やっぱり小学生までは読書中心で大丈夫・・・と心底思った9つの理由について、書いていきたいと思います。

(1)子どもは持った瞬間からスマホを使いこなすから

 
 そうなるかも・・・と思ってはいましたが、想像以上。
 思えば、長女が小学3年生の頃に学校でひとり1台パソコンが与えられ、週末や長期休みに家でそれを使う様子をみていましたが、私はパソコンの操作について娘からほぼ一度も尋ねられたことがありません(現在小学3年生の次女も学校で与えられたパソコンを使いこなしています)。

 もちろん学校で指導がありますし、限られた学習方法でしか使わないので当然と言えば当然なのですが、子どもとデジタルの馴染みっぷりには、以前から脅威すら感じていました。

 そしてそれ以上に、中1長女がスマホを使いこなすまでのスピードは驚異的でした。限られたアプリの使用や、基本的な操作しかしないものの、私が「わからないことがあれば聞いてね!」と前のめりで関わろうとしても、「・・・大丈夫」と言うばかり。
 ある時、ガマンできずに私が「操作方法でわからないことはないの?」と尋ねると、「わからなかったら友達に聞くし、スマホでも調べられるから」との答え。

 ショックでした。なんということでしょう(笑)。
 私はほぼアナログ人間ですが、それでもパソコンやスマホを使ってきた年数は圧倒的に娘を上回ります。なのに、操作方法について教えてあげられることがほぼない。娘にとって私は、デジタルの先輩ですらないのです。


(2)親の役割はスマホの操作や便利な使い方ではなく「社会」を教えることだから

 
 
 当たり前ですが、子どもはまだ社会を知りません。どんなに賢い子でも、経験がないのです。社会の暗部や、お金を稼ぐことの大変さ、怖い大人が本当にどれだけ怖いのか――を、実感として知らない子どもが簡単に社会と繋がることができ、時には取り返しのつかない失敗に繋がりかねないデジタル機器を、簡単に手にしてしまうことに私はもともと恐怖すら感じていました(います)。

 それだけでなく、単純に「中毒のようにスマホを触る」「生活が乱れて寝不足になる」ようなことも避けたい。

 スマホを与えるうえで、そんな話を長女にはじっくり伝えました。わかってくれていると信じてはいますが、やはり心配です(私が日頃からクドいので、長女は耳にタコの様子でした)。


(3)時代に合った「専門家によるわかりやすい本」が信頼できるから

 
 というわけで、スマホを買うにあたって私は長女に1冊の本を渡しました。「スマホを使うのは、この本を隅々まで読んで、内容をしっかり頭に入れてからね」という念押しとともに。

 それがこれ。

『ネットが最強のパートナーになる ネット・スマホ攻略術』

(著者・山崎聡一郎/監修・藤川大祐/漫画・茅なや/講談社/税別1400円)

 『こども六法』(著者・山崎聡一郎/絵・伊藤ハムスター/弘文堂/税別1200円)の著者としても知られる教育研究者の山崎聡一郎氏によるものですが、これ、素晴らしい一冊です。

 初めてスマホを持つ中学生をメインターゲットに、中学生の視点に立ってインターネットやスマホの「便利さと怖さ」をわかりやすく伝えています。漫画が多用されていて、読書が得意じゃない子でも読みやすい。

 本全体のコンセプトをお伝えするために、山崎氏による「はじめに」の文章を部分的に引用させていただくと・・・。

はじめに 
「夢」のような時代を生きるみなさんへ


 この本を手に取っているみなさんにとって、インターネットやスマートフォンは、生まれたときからあたりまえにあるものです。(中略)
 その一方で、先生や親から言われるさまざまなマナーやルールが面倒くさくてうんざりすることも、きっとあるでしょう。(中略)

 この本は、単にインターネットを使ううえで「あれはダメ、これもダメ」と細かいルールを押しつけていく本ではありません。「これだけはやめとけ!」というポイントを押さえながら、基本的にはあなたがインターネットを自由に使いこなせるようになるために、必要な心掛けを伝授しようと思って書きあげました。この本の目標は、あなたがインターネットに振り回されず、意のままに操ることができるマインドを身につけること。そして、インターネットトラブルで大人が右往左往しているときに、ヒーローとして助けてあげられるようになることです。(後略)

『ネットが最強のパートナーになる ネット・スマホ攻略術』
(著者・山崎聡一郎/監修・藤川大祐/漫画・茅なや/講談社/税別1400円)p2-3より


 私も読んでみたのですが、この本にはソウタやアカリという中学生が登場し、実際にやってしまいそうな失敗や、巻き込まれそうなトラブルが漫画でリアルに紹介されているだけでなく、コンピュータ部部長のツカサというキャラクターが、彼らに対してその解決法やスマホの正しい使い方を親身になってアドバイスするという内容に感動しました(アドバイス役が先生や大人じゃないところも今風です)。

 こうした視点は、親からは難しいもの。助かりました。


(4)もともと読書習慣がある子には「これ読んでみて」と言いやすいから

 
 この本を2~3日かけて読み終えた長女の感想は「読んだ、わかったよ」というものでしたが、もちろんまだ12歳、この先何かしら失敗をしないとは限りません。けれど、ここにきて私が心底「よかったな」と思ったのは、次の3点でした。

・もともと読書習慣があったので、親として気軽に「これ読んでみて」と本を渡せた
・子ども自身も「本から正しい情報を得る」という考え方に慣れていた
・今後親子で話し合う際、「あの本にもあったよね」という意思確認の材料に使える

 
 私が自分の子どもに対して5歳頃から本の楽しさを伝えてきたのは、「賢い子にしたい」からではなく、「本ほど面白い娯楽はない」と自分自身が思うからです。
 子ども自身が「本を読んだら面白かった!」という経験をするには、デジタル漬けになる前の5歳から10歳くらいが大切では・・・と考えて家に本をたくさん置いて過ごしてきました。繰り返しにはなりますが、「賢い子にしたい」という親の思惑が透けてみえると、子どもはあまり本を読みたがりません(少なくとも我が家では)。

 ただ、それでも「教育上よかった」と思うのは、親(私)の知力や語彙力ではとても伝えきれない物事について(いっぱいあります)、プロがわかりやすく書いた本を「読んでみて」と手渡すことができること。家庭のなかに読書の空気がもともとあれば、手渡すほうも受け取るほうも気軽です。


(5)スマホを持たせた途端「読書教育の時間はもう、ほぼない」と実感するから

 
 スマホ問題を脇に置いたとしても、長女は中学生になって急に忙しくなりました。
 いえ、我が家だけでなくほぼすべての中学1年生が「小学校とは比べものにならないくらい忙しい・・・」と感じていることでしょう。心も体もいっぱいいっぱいかもしれません。勉強のレベルアップはもちろん、思春期の人間関係の難しさ、人によっては部活や塾や習い事で毎日フル活動じゃないかと思います。

 そんななか、スマホで好きな動画やアプリを楽しんだり、友達とラインのやりとりをしたりすることが気分転換になるのはわかります。また、ネットやスマホを正しく活用することは勉強や情報収集、我が身を救うことにも役立ちます。だから、使うのはいいんです(最近はあの本のおかげもあって、私もそう思うようになりました)。

 
 ただ、中学生の忙しさをみると、この段階から「読書は素晴らしいもの、どんなのが好き? よかったら読んでみて」といちから読書習慣を身に付けてもらうのは至難の業・・・と親として思います。仮に意欲があっても、時間と体力がもちません。

 中学生は忙しいと想像はしていましたが、実際はそれ以上(高校生はもっとでしょう)。振り返って比べてみると、小学生(特に6歳から10歳くらい)は、やっぱり自分にかける時間がとりやすいと思います。この時期を有効に使わないのは、もったいない。
 

 個人の体験ではありますが、子どもたちには「本を読んだら面白い」という体験をさせてから、ゲームや動画視聴を取り入れました。アナログの上にデジタルを積む・・・という流れは、我が家では効果がありました。どんなにデジタルに触れても、土台に「読む」があれば、いつでも読書に戻ることができるのです。


デジタルに慣れるのは本当に一瞬


(6)「スマホはそろそろやめて本でも読んだら…」は本好きな子にしか言えない言葉だから


 また、小学生のうちに読書習慣を身に付けていたことの良さとして、次のようなものもあります。

 長女がスマホに夢中になっていて、「そろそろ時間オーバーかな」と思うとき、私はよく「スマホはそのくらいにして、本の続きでも読んだら」と言うのですが、これはもともと「本が楽しいもの」と思っている子にしか言えない言葉です。でなければ、ただの嫌味になってしまいます。

 
 そしてまた、読書を気軽な娯楽や気分転換として取り入れられることは、メンタル的にも本人の強みになるのではないでしょうか。

 勉強漬け、デジタル漬けになると、子どもだって知らず知らずのうちに疲れます。いくら親しい友人同士でも、ラインのやりとりに疲弊することはあるでしょう。誰にも邪魔されず、文字を追いかけ、本の世界に没頭するのは楽しいものです。読み終わったら達成感も感じます(本にもよりますが)。

 「この本面白かったよ」「どういうところが特によかった?」「そうだね・・・」という会話をするとき、子どもの表情からは満たされた感覚が伝わりますし、ちゃんと頭をつかっているなぁと感じます。スマホは便利な道具ではありますが、読書は自分の内側を耕す行為。時間の使い方としては、まったく違うというのが個人的な実感です。

 もちろん、忙しいとはいえ中高生で「この一冊」に出会って読書にハマる人だっているでしょう。そうなったらすごくいいなと思います。


(7)「いずれ使う人間になるんだから早いほうが…」は、やっぱり正しいと思えないから

 

 じつは、長年の疑問がありました。
 それは「いずれみんなデジタルを使いこなす人間になるんだから、早いうちからスマホやゲームに触れても問題ないでしょう」という親の意見です。たまに聞きます。
 
 いえ、人の子育てに意見を言う気はまったくありません。そうではなく、私が以前少し不安に思っていたのは「デジタルスキルは早期に身に付けたほうがいいのか、デジタルに触れるのが遅いために、デジタルスキルが人より劣る、ということはあるのか?」ということです。

 
 デジタルスキルが人より劣る、という可能性について考えれば、我が家の子どもたちは明らかに周りの友達よりデジタルに触れる機会は少なく、遅かったと思います。
 それでも私は、「いまはまだ触れさせない」という自分なりの考え(というか感覚)があって、家でも親がスマホを使う姿をあまり見せませんでした。

 そして中1で初めて自分用のスマホを手にした長女は、1週間も使うとあっと言う間に「デジタルの先輩」である私(笑)を簡単に抜き去っていきました。今では私がスマホの使い方を長女に聞くほどです・・・(私のスキル問題も多分にありますけど)。


(8)本当はいちばん子どもに読ませたかった本に書いてあったこと


 『スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠』(著者・川島隆太/宝島社新書/税別900円)という本があります。
 著者である東北大学教授・医学博士の川島隆太氏のこの本や研究内容はインターネットの記事でも読んだことがありましたが、改めて一冊を読み切ると、衝撃的な内容でした。

 本当は最初、前述した『ネットが最強のパートナーになる ネット・スマホ攻略術』ではなくこちらの本を長女に読ませようかとも思いましたが、いろいろ考えてやめました。『スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠』のほうは、まだ私の蔵書に留まっています。

 有名な研究ですし、この内容について詳しく触れることはいまここではしませんが、私がいちばん衝撃を受けた箇所を引用したいと思います。

ジョブズもゲイツも子どもにスマホを禁止した

 じつは、デジタル機器が子どもの脳に及ぼす影響を開発者たちはよく知っているのではないかと思います。
 というのも、iPhoneやiPadを世に送り出した、アップルの創業者のひとりでカリスマ的なCEOであったスティーブ・ジョブズが、子育てではローテク主義を貫いたというのは有名な話です。
 ニューヨーク・タイムズの記者がiPad発売直後の取材で、ジョブズに「あなたの子どもたちはこの製品をどんなふうに楽しんでいるのか」と質問したところ、「うちの子たちは使っていない」と答えたそうです。さらに「自分の子どもたちがデジタル機器に触れる時間を厳しく制限している」と明かしたのです。
 テクノロジーで世界屈指の大富豪となった、マイクロソフトの創業者のひとり、ビル・ゲイツも子どもたちには14歳まで携帯電話を持たせず、夕食のときは取りあげていたと語っています。
 ジョブズやゲイツのローテク子育ては、シリコンバレーの成功者たちの例外ではありません。
 欧米のハイテク企業のトップたちは、(中略)子どもたちが6年生になるまでコンピュータートレーニングを受けさせないといった子育てを行っているそうです。

『スマホ依存が脳を傷つける デジタルドラッグの罠』(著者・川島隆太/宝島社新書/税別900円)p66-67より


 私はこれを読んだとき、ため息が出ると同時に、思わず笑ってしまいました。
 ――なんだこりゃぁ。
 これは、たとえば農家が「自分の畑で作っている野菜は我が子には食べさせない」と言っているのと同じではないでしょうか。

 そもそもスマホは子どもが使うようにできていないのでしょうね。
 たとえば、元は大人向けに書かれたギャグ漫画が、いつしか子どもたちの間で大人気となり、親が「下品だから子どもに見せたくない・・・」と困っているのと同じ構図ではないでしょうか。個人的な印象ですが、なんだか考えさせられます。

 
 スマホやインターネットは、あくまで道具なのだと思います。当たり前ですが「どんな人間が」「何のために使いたいか」が大切ですから、それが曖昧な状態の子どもが持ったときに何が起り得るのか、親として考えることをやめたくない・・・と思っています。


(9)小学生までは読書中心、のデメリットがやっぱり見つからないから

 
 もう、子どもたちがスマホやインターネットを使うことを、とめることはできません。少なくとも個人の力では難しい。
 だから『ネットが最強のパートナーになる ネット・スマホ攻略術』の本が示してくれたように、一緒に考えていくことが大切なのかなと思います。大人たちの大きなうねりが、子どもたちを巻き込んだのですから。上記の本の帯には、「加害者にも被害者にもならないための最強の持たせ方!」とありますが、本当にその通りだと思います。

 ただ、本音としては思うのです。
 やっぱり少なくとも小学生までは読書中心でいいんじゃないかと
 パソコンの授業をやめてほしいというのではなく、「本・文章・小説を読むこと」を学校や社会全体としてもっと真剣に取り組むことができたら・・・と。

 これほどのデジタル社会のなかでは、読書こそ自然に身に付けるのが難しいスキルです。
 読書を重ねることは子どもにとって「自分という人間」の形成にも役立ちますし、自分自身に「心」や「思考」があると知ることにも繋がります。自分にあるから、相手にもある。
 おおよその人格形成を経て「こうやってデジタルを活用したい」という認識が生まれ、そこからデジタル中心の教育や生活に移行しても遅くはないのではないでしょうか? 

 12歳からでも14歳からでも、子どもはきっと触れた瞬間から、デジタルを使いこなしていきます。
 なんといっても当のスティーブ・ジョブズが我が子にローテク生活をさせていたというのですから・・・。これは本当に考えさせられるエピソードです。
 
 たくさんの子どもたちが、少なくともデジタル漬けになるより先に、「本を読んだら面白かった」という体験をしてくれたらいいな・・・と日々、考えています。読書習慣はデジタル中毒の抑止にも繋がると思うのです。

 そして私は忍者のように長女の様子をうかがいながら、今日もさりげなくこう言うでしょう。
 「スマホはそのくらいにして、本の続きでも読んだら?」と。

 

両方楽しく活用できるようになるのがいいですね


このワクワク感は忘れたくない




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