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(27)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~

 お手紙、つづきです。
 
 「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」
              ・・・というお話をしています。
 
 低学年までは動画やゲームがなくても家で楽しく過ごせます。
 「みんな見てる」「そういう時代」は少し横においといて・・・
 読む楽しみとすんなり出会える時期を大切にしたいなと思います。
 
               
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(26)5歳頃から〝積読本〟と暮らすことが「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
 

 今日は

「本は子ども時代から私の毛布  

  ―『繊細さん』に本を読んでほしい理由―」

 ・・・というお話です。
 

 さて、シオリさん。 
 シオリさんは子育てしていて、「感じやすい子だな」「怖がったり心配したりするのが人と比べて過剰かも・・・」「人の気持ちに敏感なのは良いけれど、考えすぎじゃないかな」・・・なんて、思ったことはありますか?
 
 もしそう感じることが多ければ、お子さんはいわゆる「繊細さん」の可能性があるかもしれませんね。
 
 ――私も、そうなんです。

 私自身がHSP(Highly Sensitive Person)で、いわゆる繊細さんと呼ばれる気質の持ち主。
 これは40代になってメディアの情報からわかったことで、「あなたのお子さん、繊細さんかも・・・」という記事を読んだ時、「いやいやこれは私じゃないか!」と気がついたのです。

 それまではHSP(子どもの場合はHSC ―Highly Sensitive Child―)という概念はなく、子どもの頃から「どうして自分はこうなんだろう」と疑問を感じながら生きてきたのですが、その謎が急に解けた瞬間でした。
 
 HSPやHSCは病気でもなんでもなく、もともとの性格や性質。
 人の感情に敏感で、アンテナが多すぎて物事に対する情報を多く受け取ってしまったり、深く考えすぎて疲れてしまうことがある・・・など、最近ではこうした情報もかなり浸透してきましたよね。関連本も多く出版されています。
 
 感受性が強く、共感性が高すぎて生きづらさを感じてしまう・・・という当事者の体験談もよく聞きますが、その反面、相手に対してこまやかな配慮ができたり、芸術作品などに深く感動できたりもして、特徴を生かせば悪いことばかりじゃないですし、職業的にも生かせるのではないか・・・と私は思っています。
 
 ・・・思っているのですが、じつは私が自分の気質に対してこう前向きに考えられるようになったのは、子どもの頃から積み重ねてきた「読書」のチカラのおかげなのだと、最近気づいたのです。

 
 40代で「私はHSPで、HSCだったんだ・・・」と気づいた時、その特徴の紹介文で1か所だけ「これだけは当てはまらないかも」と感じた箇所がありました。
 
 それは「HSP、HSCさんは相手の感情に配慮するあまり、対人関係において『悪いのは私だ』など自分を責めがちで、ネガティブ思考に陥りがち、自己肯定感が低くなりがち」・・・というところ。
 
 確かに私は人の感情をすぐに察して辛くなりますし、怒った人や怒鳴り声を聞くと涙が出そうになり、基本的になんでも話し合いで解決しようとします。それは人格的に優れているからではなく、単に争いごとが苦手だから。

 ――ただ、それによって「自分だけが悪い」とか、「自分はダメな人間だ」と(むやみには)思ったことはありません。
 
 もちろん、失敗は反省しますし、ダメなところはたくさんあります・・・が、ダメな部分や弱い部分があることと、ダメな人間であることは違います

 生きづらさを感じることは多々ありますが、HSPだから立ち直れない・・・ということは、あまりなかった気がします。決して、浮き沈みのない人生を歩んできたわけではないのですが・・・。

 
 ――なぜだろう、何が自分を支えてきたのだろう・・・と考えた時、すぐに答えが出ました。  

 読書です。

 読書による「考え方・生き方のパターン」がたくさん頭の中にあり、また「世の中(本の中)には自分のように考えすぎる人間がたくさんいて、孤独じゃない」という実感があり、また「そういう人間が人を救えることもある」ことや、「そういう人間の生き方」がすっかり・・・とは言えないまでも、読んだ分だけは頭の中に入っていたのです。

 
 ――それが、猛烈に、力強く、私を支えてきてくれました。
 
 反省すべき行いはあっても、もとからダメな人間などいない・・・というのも、読書で得られた考え方のひとつです。


 本の登場人物は、たいてい問題や困難を抱えています。
 それはフィクション、ノンフィクションに関わらずそうですし、その問題解決を読み進めると、「こういう生き方もある」「こういう考え方もある」という自分にない発想が、どんどん心に届いてきます。

 
 また、物語には「物事を深く考える人」がたくさん出てきます。
 
人が何を考え、どう行動したかを文章で表現しているのが物語なので、とにかく「考える」人が多い・・・それも本の特徴です。
  
 また、

 本の世界では「深く考えて、人の気づかないことに気づく人」は、得てして主人公だったり、脇役であっても問題解決を担う人

・・・だったりします。


 具体的には、ミステリーなら探偵だったり、冒険ものなら主人公にナイスな助言を与える友人だったり、企業ものであれば悩みながら道を切り開く経営者だったり。
 「深く考えて、人の気づかないことに気づく人」がネガティブな存在であることが、あまりないんですね(むしろ、ちょっとネガティブな性格でありながらも、その気づきから人の心を癒したり、事件を解決してしまう探偵さんもいますよね)。
 
 ――そんなふうに本の世界では、深く考えること、繊細な心を持っていることが、美点や利点として表現されていることも少なくないんです。

  
 もちろん、本をたくさん読んだからと言って現実が変わるわけではなく、生きていれば傷つくことや、落ち込むことはたくさんあります。

 
 ただ、物語がたくさん頭の中にあることで、私はわりと若い頃から、身に起きた出来事を客観的にとらえるクセがありました。

 「今日の出来事はたまたま不運が重なっただけで、特定の誰かのせいではない」とか、「私は気にするけど大抵の人は気にしない出来事なんだろう」・・・というふうに、出来事や感情を体系化することで、心では気になるけれど、頭では気にしなくて大丈夫だと理解し、むやみに傷つくのをやめることにしたのです。

 脳の構造や心理学の本もとても役に立ちました。
 人間とはこういう時にこういう行動をするものだ・・・という全体的な知識があるだけで、「あの人は私を傷つけるためにやったわけじゃないんだな」と理解できたりもしたのです。
 
 こういう、心の整理、起こった出来事の整理には、読書が本当に役立ちました
 
――そんなわけで、HSP(元HSC)の私は知らず知らずのうちに、読書に心を鍛えてもらっていたのです。
  

 子どもの頃から、何かあると、とりあえず本を読みました。
 そのうち話に引き込まれたり、時には思わぬ励ましの言葉に出会うこともあり・・・気がつくと問題の解決法が浮かんだり、元気を取り戻したりしていたのです。  

 本は子どもの私にとって毛布のような存在でした。
 いつも温かく心を包み、癒してくれたのです。




  ーーそして、もう少し、お話させてください。 

 物語・小説のもつ共感・共鳴のチカラの話です。

 
 読書には、ものを考えるプロ(作家)が書いた物語に共感・共鳴する・・・という魅力もあります。
 
 私は、作家という人達は、人並みはずれて「ものを考える人」だと思います――これ、否定する人はたぶんいませんよね?
  
 たくさんの人と同じ経験、見聞きをしても、人一倍何かを感じるからこそ、言葉やストーリーが浮かんできて、書かずにはいられなくなってしまう・・・そんなふうにして世の中に誕生した物語って、たくさんあると思うんです。
 
 多数派とは違う角度でものを考えるからこそ、読み手が「おもしろい」と思える物語が誕生します。
 浮かんだ物語を、どんな言葉や表現方法で、どんなエピソードの順番で、どんな風にテーマをしぼって、書き出しやラストはどうするのか・・・と、考えることは山ほどあるでしょう。
 
 そうやってたくさんの作家が世におくりだしてきた物語・小説が私は大好きです。
 この話、本当によく練られているな・・・史実をもとにしているんだろうけど、この人を主人公にしたのはうまいな・・・なんて、考えながら読むのは、読み手にとっても最高に楽しいもの。

 それはつまり、共感・共鳴しているということなんだと、私は思います。
 


  ――自分がHSPだと認識した時、いっそう強く感じました。

 私は子どもの頃からずっと、「ものを考えるプロ」である作家が書いた物語・小説に共感・共鳴してきたんだな・・・と。
 
 共感・共鳴することは、子どもにとって(いや誰にとっても)癒しになります。

 なので私は、繊細さんの子どもには特に読書をお勧めしたいのですが、
手あたり次第読むのではなく、好きな作家やシリーズものを見つけることが、より有効だと思うのです(何度かお話してきましたね)。
 

 「この作家の作品なら楽しく読める」とか「このキャラクターの活躍をずっと読んでいたい」・・・というのは、つまり子どもがストーリーや登場人物に共感・共鳴しているということ。
 それが何冊もあることは、子どもにとって心の安定や癒しにつながるのではないでしょうか。
 

 本は、ゲームや映像作品と違って自分のペースで読み進めることができるので、そういう面からも繊細さんや、心の安定を求める子どもにぴったりな趣味、娯楽だと思います。
 
 
 さらに読書を重ねれば、たくさんの言葉を覚えて語彙が豊富になります。  
 そうすれば繊細さんに多く訪れる「モヤモヤした感情」に名前をつけて自分なりに整理することもできますし、言葉で表現できるようになると、団体生活や組織に入った場合、人づきあいの具体的なスキルにもなっていきます。・・・きっと、役立ちます。
 
 ――本を読むのは繊細さんにとって素敵なことばかりではないでしょうか・・・少なくとも私は、そう思っています。
 少しでも生きやすくなりますように。
 
 
  お手紙、続きます。
 
 
〈紙と文字 本は私のスピードに寄り添い優しいと知る十歳〉


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