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(28)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~

 お手紙、つづきです。
 
 「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」・・・というお話をしています。

 
 低学年までは動画やゲームがなくても家で楽しく過ごせます。
 「みんな見てる」「そういう時代」は少し横においといて・・・
 読む楽しみとすんなり出会える時期を大切にしたいなと思います。

                
・お手紙(27)はこちらからどうぞ。
(27)5歳頃から〝積読本〟と暮らすことが「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
 
 
 今日は

「AIの時代だからこそ、読書量が『子』と『個』を創る」

                  ・・・というお話です。
 
 
 さて、シオリさん。
 私達が出会って子育てについて話した10年前には、まったく予想できなかったものが、いま世の中に浸透しはじめています。

 そう、チャットGPTなどの生成AI・・・対話形式の人工知能です。
 
 まさかこういうものが子ども達の目の前にやってくる時代になるとは・・・10年という歳月に驚きと、少し怖さを感じます。
 
 ――リアルに子育てをしている親として、どう感じていますか?
 
 チャットGPTがいいとか悪いとか、どう利用するべきか・・・という議題はほかにお任せするのですが、私は子どもに読書を勧める親として、どうしても「こうなるだろうな」と思わずにはいられない、ごく近い未来の姿があります。
 
 それは、AIの時代だからこそ、読書の質と量が子どもの学びに大きな影響を与え、個性を育む土台に、よりなっていくのではないか・・・ということです。
 
 どういうことか・・・を、お話させてくださいね。
 
 生成AIの使い方に関して、教育現場ではこう、家庭ではこう・・・という使い方の工夫や規制はあれこれ行われていくものと思います――が、遅かれ早かれ「パソコン・スマホ利用者の大多数が生成AIを当たり前のように使う時代」がやってくると思います。

 
 ――すると、どうなるでしょう?

 
 「文章はAIが書いてくれる」「アイディアのベースはAIが作ってくれる」から、みんなラクになって、みんな成績が上がって、みんな恩恵にあずかれるのでしょうか? 
 

 社会人ではなく、子どもの話です。


 
 もちろん、ラクになったり、使い方によって成績や作業効率が上がることはあるでしょう。

 ただそれは、みんなそうなると思うのです。ここが大切です・・・。

 どんなスキルも技術革新も、最初の頃は「使いこなせるかどうか」で差がつくものが、だんだん「ある程度みんなが使いこなせるのが当たり前」の時代になると、「そのうえで頭角をあらわせる人」「使うだけで終わってしまう人」・・・に、必ず分かれていくと思いませんか?
 

 ――ちょっと思い出してみてください。

 
 ひと昔前は、日常会話程度でも英語ができる人は、日本人のなかでは
「すごい!」と尊敬を集め、英語が生かせる職業につくべきだ・・・と大勢が感じていましたよね。
 ところが今は英会話ができる人が増えたので、その人達の中に入れば
「日常会話程度で、具体的なビジネスに役立たなければ、特別すごいスキルとも言えない」・・・というステージにだんだんなってきています(それでも英会話ができる人を私は尊敬しますが・・・)。
 
 パソコンも、数十年前に出始めた時は「操作できるだけですごい」、スマホも当初は「持っていて使いこなしているだけでカッコいい」・・・という時代がありましたが、今はパソコンやスマホで「どんなことができるか」、それによって何を生み出せるか・・・が重要になってきています。
 

 生成AIは便利です。数字や固有名詞のまちがいを訂正し、自分なりに完成させれば、ある側面での作業効率はぐんと上がります。ビジネスの世界では使いこなすスキルが必須になるでしょう。
 

 ――と、いうことは、です。
 
 逆にいえば、将来的にAIができること程度のことしかできない人は、
それだけの人になってしまいます。
(チャットGPTに限らず、既にいろんな仕事がロボットに代わられています。それが不幸という話ではなく、そういう時代・・・ということですね)

 
 子ども達がもし、「AIがやってくれるから、作文なんてそれでやっちゃえ」とか、「考えるの面倒くさいから、これでいいや」となったら、その時はラクで、嬉しいかもしれませんが、後で間違いなく、ラクではなく、嬉しくないことが待っている・・・と思います。

 
 誰もがある程度の文面を用意できたとしても、自分の中にある知性・知能がそこに書かれているもの以下であれば、そもそも使いこなすことができません
  
 これは、おとななら大部分の人が理解しています・・・が、子どもにそういう将来的なイメージを持たせるのは難しいでしょう。

 目の前に便利なものがあれば使います。それが子どもだからです。


  生成AIがやってくれるなら、もう読解力や語彙力を身につける必要はない ーー本なんて読まなくていいーー という発想が、これから子ども達の間でもっと広がっていく可能性もあります。

 
 それでもおとな達は言い続けるでしょう。
 「最後は自分で考えなくてはいけないよ」・・・と。


  ーーわかってもらえるでしょうか?

 けれどそんな言い聞かせをする、もっとずっと前から、子どもが「本を読んで楽しい」という経験を積み重ねていれば、この問題はずっとクリアしやすくなるのではないかと思います。
 
  
 読書が与えてくれる夢中な時間は、嘘をつきません
 子ども時代に一生懸命読んだものは、心に残ります。


 人間は、自分のなかに積み重ねてきた知識や想像力、自分で調べた経験があるからこそ頭の中の回線がつながり、学びや仕事の場で「あ、そうだ!」というひらめきが生まれるものだと思います。
 
 それは、人間がこれからも生身の肉体で生きていく以上、変わらないでしょう。
 

 私は子ども達にたくさん本を読んで勉強して、エリート街道を歩いてほしいわけではありません。
 ただ、自分で考えて行動できる人生のほうが、何倍も楽しいからです。
 
 
 自分で歌うから、自分で踊るから、自分で絵を描くから、自分で考えるから、楽しい。
 これは人情論でも道徳論でもなければ、「人間のアナログ的な素晴らしさを残したい・・・」という希望の話でもなく、ただ人間ってそういうものだからです。

 
 ――シオリさんは、どう思いますか?
 
 私は今までこの場所で、自分が生きて感じてきたことを頭の中から取り出し、指を動かして文章にして、「この言葉のほうがもっと伝わるかな」と考えて書いてきたからこそ、今とても充実感があります。
 
 なんというか、指を動かしているだけで、ワクワクするんですね。
 つたないものであっても、それは構わないんです。
 ひとまず「できた」と思い、記録に残す。
 これが私の「個」だからです。かけがえのないものです。

  
 子ども達が、自分だけの生きる喜びや知性、想像力を持ち、
そのうえで将来的にAIを使いこなせたら、それは素敵な未来になるでしょう。
 
 ――生成AIよ、そうきたか。じゃあ自分は、こういくぞ・・・。
 そんなふうに対峙できたら、おもしろいかもしれません。
 
 
 お手紙、つづきます。

 
〈AIの文には決して書けぬもの 我の目と耳 手でつかむ生〉

 

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