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(13)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟ー「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~読む力は生きる力編~

 
 つづきです。

 さて、ここからは子ども時代に読書の筋力を鍛えると何がいいのか…ということを、個人的な考えではありますが、「生きる力」の面からお話したいと思います。
 

〈最近の試験問題は「読解力」が必須…でも!〉

 
 「おもしろいから」「読書でワクワクできることを知ってほしいから」…本を読んでほしい、好きになってほしい…これは大前提として、変わりません。
 
 それでももちろん、たくさん読んだ結果として子どもの学力向上に繋がることは、大いにあり得ると思います。
 
 その一番大きなものが、今子ども達の間で圧倒的に足りないと指摘されている「読解力」ではないでしょうか。

 もっと言えば、読解力、文章力、語彙力、表現力…すべて同一線上の能力だと思います。
 
 実際、今あらゆる試験問題でこれらの能力が求められるような出題傾向に、確実になっていますよね。
 入試や学力テストの問題を新聞で見たりしましたが、こんなに読解力や文章力が求められるのか…とちょっと驚きました。
 
  我が家の小学6年生はもちろん、小学2年生のテストを見ても、「よく読んで、理解してからじゃないと答えられないな…」という問題が、「算数」でも見られるのです。う~ん、時代は変わったな…と思いました。
 
 そういえば、次女が1年生の終わり頃にもらってきた先生からの「おたより」にも、「算数の問題で、足すのか引くのか、文章をよく読まないと解けないので、みんなちょっと苦労しているようです」と書かれていました。
 
 1年生の算数ですよ!
 いかに「よく読む」ことが求められる時代になってきているのか、実感します。
 
 確かに読解力、文章力などが身に付くと、どんな教科でも成績向上につながると思いますし、これからの受験対策にも必須だと思います。子どもの頃からたくさん本を読んでいる子は、読解力の集中講座などを受けなくても、ある程度国語の点数は取れるのではないでしょうか。
 

〈読解力は成績だけでなく「生きること」全体の支えに〉


 ただ…私は思います。
 それでも、読解力や文章力、語彙力や表現力は、幸せになるために…よりよく生きるために、たくさんの子どもに身に付けてほしいのだ…と。
 
 高得点をとれば嬉しいですし、試験にも合格できますが、高得点をとるのが人生の目的ではないはずです。
 
 自分はどういう人間で、どう生きたいのか、何をしている時が幸せなのか、心にどんなものの考え方があれば生きていきやすいのか、自分も相手も大切に思うことができるのか。
 自分の心を整理し、気持ちを言語化し、相手に伝えて、相手の気持ちを理解し、自分も相手もできる限り傷つけないで生きていくこと…。
 
 読解力や語彙力、文章力や表現力は、そういう風に生きていくためにも、大いに役立ちます。少なくとも私は、そういう生き方のほうが好きだなぁと思います。
 
 ワクワクする本、勇気や元気をくれる本、役立つ知識や知恵を与えてくれる本…を子ども時代にたくさん読むことで、読解力や語彙力、文章力や表現力を蓄えることができたら…と願います。
 
 だから私は、「本を読むと頭が良くなるよ」と子どもに言いたくないのです。
 「本が好きになると楽しい時間がいっぱい持てて、心が元気になるよ」と伝えていきたい。
 知識や能力は、「持っていることが幸せ」なのではなく、「どう使うか知っている」ことが幸せなのでは…と思うからです。
 
 

〈本を読んで育まれる「想像力」って何でしょう〉


  本を読むと想像力が育まれる・・・とよく言われますよね。
 今さらですが、想像力ってなんでしょう?
 
 私は、あえて言うなら
 「自分はものを考える人間で、相手もものを考える人間である」
  ―ということ、さらに
 「私は大切な存在で、あなたも大切な存在だ」
 
と思えることが、いちばん大切な想像力でではないかと思います。
 
 例えば物語の登場人物は常に「ものを考えて」いますよね
 起こった出来事を受けて登場人物が「何を考え、どう行動したか」が文章で表現されているのが本で綴られる物語。
 当たり前ですが、すべて文章、言葉の世界です。

 主人公だけでなくその友人や脇キャラも「ものを考えて」いますし、人間には当たり前のように「心」があり、「行動の理由」があるーということが語られます。
 
 たとえばそこに教訓があるとしても、優れた物語ほど胸躍る展開のなかで描いていますから、読み手は「教訓を得た」「勉強している」という意識がありません
 
 親がどんなに「人に優しく」「勤勉に!」と口を酸っぱくして言っても、それは子どもにとっては少々鬱陶しいもの。
 でも、優しく勤勉なキャラクターがやがて幸せになる物語を読んで心が動けば、子どもはそれだけで大切なことを理解します。
 だから昔の大人は、「物語」を便利に使ったのでしょう。
 
 もちろん現実は物語のような起承転結があるわけではないですし、わかりやすいハッピーエンドも少ないですよね。
 けれども子どもは大人と比べて圧倒的に人生経験が足りませんから、読書体験がその代わりとなり、積み重なっていくと思うのです
 
 特に長めの物語で、「さまざまな出来事や感情がひとつのラストに向かって収束していく」…という経験を頭の中に積んでいくのは本当に楽しいものですし、読み重ねることによって、「こうだから、こうなった」「これが、あれに繋がった」という論理的な思考や解釈が身に付くようにもなります。
 
 自分を含めた世の中の事象は「点」ばかりではなく、「線」や「立体」でできているのだと、物語で理解することもあるでしょう。
 
 「想像力」というとファンタジー的な、現実にはない世界や出来事を想像する力のように思うかもしれません。
 もちろんそれも素晴らしい想像力なのですが、人間関係に必要な「相手の心について考える」想像力も、子どもに育んでほしい大切な力ではないでしょうか。
 
 
〈物語をたくさん読む子は絶望しづらい〉
 
 物語をたくさん読む子は絶望しづらいのではないかと思います。
 あくまで私の実感であることをご了承いただきたいのですが、この理由は大きく分けて三つあります。
 
 1つ目は、困難を乗り越えるヒントを得られること。
 本にはさまざまな困難や問題を抱えた人が登場します。これは当然で、課題がなければ物語が生まれないからです。

 そして例えば主人公は、さまざまな考え方や具体的な行動でそれを乗り越えていきます。
 また、物語には欠点や弱点を抱えた人が多く登場するもの。
 完璧な人が完璧な生活をする物語なんて読みたいと思いませんよね。
 
 人間は完璧じゃないのが当たり前。
 生きていれば困難があるのが当たり前。
 
 世界に数え切れないほどある優れた物語は、突き詰めればそのことを繰り返し教えてくれているようなもの。ネガティブな考えを跳ね返したり否定するのではなく、悩みながらも前に進むヒントを与えてくれます。
 
 2つ目は、視野の広がり。
 本にはあらゆる世界、生きる場所、考え方、悩みや困難、あらゆる過去、想像しうる限りの未来・・・が溢れています
 ありきたりではありますが、悩みを抱える子どもにとっては「1人じゃない」「別の角度から考えたらどうだろう」など思考のきっかけを多方面から与えてくれます。
 世界は広いです。
 どうしようもなくなると人は極端な思考に陥りがちで、「こうなったら死ぬしかない」とか、「すべて自分のせいだ」と考えるようになったら危険です。
 本を読んでいて常々思うのですが、「ほんとに心底、自分の体験なんてまだまだだな」・・・と思えるような人や経験談が数え切れないくらい世の中には溢れています。
 ぜひたくさんの子ども達に本を読んで視野を広げてほしいですし、簡単に絶望しないヒントが本に散りばめられていると伝えたいです。
 
 当然ながら、読書がすべてを解決してくれるわけではありません。
 それでも、視野は広がります。視野が広がれば、今まで見えなかった「生きるヒント」が見えるようになります。
 
 

〈本の世界に没頭すると時間があっという間!〉

 
 物語をたくさん読む子は絶望しづらい・・・3つ目は、退屈しないということ。

 世の中には途方もない数の本があり、大抵の本好きは「死ぬまでに読み切れない!」と感じていますから、時間さえあればおもしろそうな本を探します。 
 人間、暇だとよくないことを考えますが、本は私達にヒマを与えてくれません
 ゲームなら何時間でも没頭できる!…という人もいると思いますが、子どもが1日中ゲームをしていれば大抵の親は叱りますし、体力的にも長時間やれば負荷がかかりますよね。けっこう、大変だと思います。

 そこで本を読んでみてほしいです。特別な予定もなく、時間を持て余す日は陽気な本でも読んでみましょう。ワクワク、ドキドキしながら過ごせるかもしれません。
 

〈「あなたは大切」「長い目で見る」というメッセージ〉

 
 ここで想像力の話をもう少し。
物語を通して、あなたは生きるに値する人間―と繰り返し語りかけてくれる本はたくさんあります。
 そして「そうなんだ」と感じられること自体、素晴らしい想像力だと思うのです。

 また、本を最後まで読むことは人の話を最後まで聞くことに似ています
 「私の話は適当に聞き流すのに、好きな本は真剣に読むんだから・・・」というママ(パパ)さんがいたとして、私だったら「本に夢中なんて作者の話を真剣に聞いているじゃないですか!」と褒めてしまうかもしれません(内容を確認する必要はありますが…)。
 
 物語には作者が込めたメッセージが何かしらありますから、最後まで読んで「こういうことだったのか」と受け取れることも多々あると思います。いや、「誰々が幸せになってよかった」・・・くらいの感想でもいいんですけどね。
 
 また、今の世の中すぐに「結論を出す人」が多いように感じます。
 もちろん人生のあらゆる場面で早く結論を出すことも必要ですが、もう少し長い目で物事を考え、調整や挑戦をしてみることも大切。子ども時代はそういう思考を学ぶ時期でもあると思うのです。

 本にはそういう・・・「長い目で見る人」がたくさん出てきます。
  
 つづきます。
 

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