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ビジョンについて

(読み終わるまで約8分)

はじめに

企業にはビジョンが必要だと言われますが、いったいビジョンとは何でしょうか。
いわゆる企業理念と似たものだとは想像できるかと思います。
多くの企業のホームページには企業理念、経営理念、ビジョン、ミッションなどが記されています。
これらはなぜ必要なのでしょうか。ビジョンがあると何が良いのでしょうか。

ビジョンとは、辞書には1.理想像。未来像。展望。見通し。2.まぼろし。幻影。と書いてあります。
ここでの意味は1にある理想像、未来像のようなものと言えるかと思います。あなたの会社に理想像、未来像がありますでしょうか。それでは、その会社の理想像、未来像はなぜ必要なのでしょうか。

ビジョンは企業理念と密接であり、会社によっては、しばしば同義でもありますが、そんなものはお題目であり、企業にとって大切なのは利益だという考えの方もいらっしゃるでしょう。たしかに利益が出なければ会社は存続できません。いくら立派なビジョンがあっても、利益が出なければ、ビジョンも色あせて見えるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。

ビジョンはまず、その事業は何のためにやっているのかということです。利益があがったとします。しかし、その利益はお金、あるいは数字でしかありません。資産といえるものですが、それを使って、結局何がしたいのでしょうか。資金があれば投資ができます。では、何のために投資するのでしょうか。新たな資産を生むためという堂々巡りが、答えにならないのは自明です。

会社の存続に利益は絶対条件ですが、十分条件ではありません。あるいは利益は必要条件と言えるでしょう。しかし、それは会社の目的、存在理由にはなりません。何のために事業をするのか、会社は何のために存在するのかを考えることがビジョンの第一歩です。そのために、自己について深く認識する必要があります。自分にしかできないことをすることが市場で求められるからです。何が強みなのか、自分はどんな人間で、何が得意で、人に評価されるのかを調べること、アイデンティティを検証することが必要です。ここで企業を一人の人に例えることにします。企業は人によってつくられるもので、創業者、経営者の想いが浸透することが多いからです。また、創業当時はどの企業も小さく、多くは一人の想いからつくられるからです。

自分と向き合う

自分はどういう人間なのか今一度今までの人生を思い返して見ましょう。人には生まれながらの才能があります。これはどうすることもできないものだとも思います。生まれつき苦手なことを無理して練習しても人並みにもならなかったりします。反対に意識しなくてもできることがあって、自分ではたいしたことではないと思っていても人から見るとすごいと思われたりします。

得意なこと、強みを生かしていくことが大切です。そして、その強みをどう人のために、社会のために役立てていくかを考えることは義務であり、社会参加の条件でもあります。社会は人々の協力によってつくられています。弱い立場置かれて、支援を受けるしかないという状況はあります。それは社会が助けていくべきです。しかし、その社会をつくっていくものは、一人ひとりの強みを生かした責任であり、より良い社会をつくっていくことが、すべての人を助けることに繋がり、自分も助かることにもなります。また、弱い立場に置かれていても精一杯生きることが人に非常に大きな勇気を与えることもあります。存在自体に尊厳があるのです。自然界でもすべては与え与えられる関係です。人間の吐く二酸化炭素は植物が吸収し酸素に変えていて、やがて身が滅びても、土に帰っていく円環の中に存在しています。

自分は何がしたいのか、何ができるのか。まず、ありのままの自分が何をしたいのかを純粋に考えてみましょう。自分に嘘をついていると後で矛盾が生じどうしようもない問題が発生してしまいます。何かの条件、組織、市場などに当てはめるのではなく、純粋に自分から溢れてくる意欲、能力、資質、価値は何か考えてみましょう。自分の人格や育ってきた環境、今までの人生がヒントになるでしょう。
わたしはそのための身体や精神をつくるために呼吸法と瞑想をおすすめします。そして、思いついたことをノートにデジタルでも紙でもかまいませんので書いてみることをおすすめします。

社会と向き合う

次に自分ではなく、社会と向き合ってみましょう。
今ある自分が社会と向き合ったとき、何ができるのか、自分の資質、強みを活かして何を提供できるのか考えてみましょう。人々はあなたがいることでどんなことが助かるでしょうか。何か問題のあること、困っている人、求めている人、人の願いに対し、何が提供できるか考えてみましょう。

今の社会はどのような問題や状況をかかえているでしょうか。日本では、大きな問題として人口減少社会に伴う少子高齢化があります。また、テクノロジーはますます急速に発展し、AIや仮想現実の世界が広がるでしょう。また、グローバル化はさらに進み、その結果、利益を得る人々と取り残される人々に二極化していくでしょう。このように明らかに予測できることがある一方、コロナパンデミックがそうであったように予測できない事態が起きることも当然あるのが現実です。そうした現在と未来を見つめたとき、あなたにできることはなんでしょうか。また、もし社会をよくできると考えるならそれはどのような社会でしょうか。

あなたの思う良い社会とはどのようなものでしょうか。様々な問題のなかで特に解決したいと願うことは何でしょうか。理想の社会はどのようなものでしょうか。人々にどのようになってもらいたいと願いますか? もし、その理想の社会が実現するなら、それはどこで、どのようになされるものでしょうか。そして、そこで、あなたの持っている資源、資質、能力、才能で提供できることは何でしょうか。

もし、あなた自身のアイデンティティのなかから湧き上がる願いと、社会の課題が重なるのであるなら、それはあなたの生涯のミッションである可能性があります。それが実現されたものがビジョンです。

人々と共感する

企業は社会の中でしか存在することはできません。ビジョンはあなたのものであると同時に社会のものです。顧客のものだと言ってもいいでしょう。あなたが自分自身と本当に向き合い、自分自身のありのままの想いを認識することができたら、必ず、それに共感する人々がいるはずです。なぜなら、人間はこの社会で生きている限り、影響し合い、同じような想いを感じていることがあるからです。人間は皆同じなのだという真理があります。自分のアイデンティティを深く認識するほど、人それぞれ異なる存在であると同時に、自分も人も同じなのだということが感じられることがあります。それは究極的には、自分も人も一度切りの人生を生きていて、心をもっているということです。

あなたの思い描くビジョンは、人も願うビジョンです。それらの人々はあなたの仲間であり、顧客であり、大切な人々です。そのビジョンを実現することであなたの価値が最大限に発揮されます。それがあなたの使命=ミッションです。

崇高な価値観

あなたの存在にかけて、思い描くビジョンは、崇高な価値観のもとにあるべきです。なぜなら、それはあなたの尊厳に関わっているからです。もし、その価値観が、利己的なものであったり、倫理的に問題のあるものであったり、投げやりなものであったりしたなら、あなた自身の存在を貶めることになってしまいます。また、あなた自身は他の人々と繋がっているため、それらの人々をも貶めてるものになってしまいます。人々の尊厳にも関わるものなのです。そもそも、価値観の低いものに人々は共感してはくれません。崇高な価値観があるからこそ、人々は感動し、心を動かされ、それを実現したいという共通のビジョンを持つことができます。あなたのビジョンは多くの人々と共同して実現されるべきものです。

あなたが心から願い、人々とともに社会を変えるビジョンを実現するには、あなた自身はどうあるべきでしょうか。どのような態度で臨むべきでしょうか。その行動は崇高な価値観のもとにあることで、力強いものになります。一緒に実現することに協力してもらう仲間にもその崇高な価値観を共感とともに共有してもらう必要があります。逆に言うと、この価値観を共有することができる人々こそが仲間です。この価値観をバリューと言います。バリューは、あなたが言葉と行動で人々に見せていくものです。ビジョンを実現するためにバリューをもってミッションを実行していきます。

形骸ではなく、存在

ビジョンとは、ただの飾っておくための言葉ではありません。また、言葉自体でもなく、あなたの、企業の、組織の、存在そのもので表していくものです。固定的でなくてかまいません。むしろ、いろいろな方法で表現し、常に更新していったほうがいいでしょう。それでも、それがアイデンティティに立脚したものであれば、変えようのないものが込められているはずです。

ビジョンは一度つくったら完成ではありません。常に頭において、毎日確認し、行動と判断の指針としていくものです。常に耕し、磨き、深めていくものです。

今、ビジョンがあるなら、これらの視点からもう一度見直してみましょう。まだ、つくられていないのであれば、まずは、自分自身は何者なのかというところから、見つめ直していくのがいいと思います。目をつぶり、今ここに自分がいるのはなぜなのか、心をオープンにしてありのままの自分を見つめてみましょう。


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