デザインに力を入れなくてもいい事業とは?
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デザインに力を入れなくてもいい事業とは?

サンポノ / Sunpono

みなさん、こんにちは。デザインと写真の事務所「サンポノ」の江口です。今日は、知り合った人からよく質問される「うちもデザイン(ブランディング)に力を入れなきゃいけないの?」という質問に答えます。

早速解答。

今回も解答から書いてしまいますが、広義的なデザインという意味であれば「力を入れた方がいい」となりますが、狭義的な意味であれば「事業形態に依る」となります。と言うのも、広義的な意味でのデザインやブランディングであれば、企業活動全体のことを指すので、個人事業や上場企業などの事業規模に関わらず、力を入れた方がいいです。けれど、ロゴやホームページを制作して、広告を打つ必要があるかという狭義的な意味でのデザインであれば、事業形態に依るのです。

広義的なデザインとは。

最初に、広義的な意味であれば、デザインに力を入れた方がいいとなる理由を説明します。まず前提として、デザインというのは社会の営みの中に存在します。これを表すように、自然界にあるものについては、私たちはデザインとは言いません。例えば「ロゴのデザイン」や「ビジネスプラットフォームをデザインした」と言うように、「犬のデザイン」や「カブトムシをデザインした」とは言わないでしょう(仮にこのように言われたら、違和感を持つのではないでしょうか)。そして、ロゴをデザインするように、ビジネスもデザインされるものなのです。経営・事業・コミュニケーションに至るまで、私たちはデザイナーとして関わり、デザインをします。すると、企業活動に一貫性が生まれ、他社と差別化ができるので、これをブランディングと言うのです。

サンポノが行っているデザイン活動。

また、たとえロゴなどを制作しなくても、力のあるデザイナーに頼った方がいい理由があります。一例を挙げると、デザインには「流暢さ効果」というものがあり、その業種に適したフォントを選び、文字組みをすることで、ユーザーの評価が上がるというデータがあります(フランス料理ならフランス料理に適したフォント、スポーツ用品ならスポーツ用品に適したフォントというように)。それ以外にも、デザイナーはコミュニケーションに関わることを制作しているため、他の業種よりも危機察知能力が高くなり、事業や経営の方向性についても、よき相談相手となります。つまり、どんな事業においても、デザイナーに頼る意味があるのです。

狭義的なデザインとは。

一方で、どんな事業でもロゴやホームページなどを制作した方がいいかと言うと、これが先程書いた「事業次第」ということになるのです。つまり、ロゴ制作やホームページ制作に当たることは、狭義的な意味のデザインとなります。こういうことを話すと、私の売上げが下がったり、同業者から嫌われそうですが、嘘をついても仕方がないので、正直に書きます。

なぜ事業次第になるのか理由を説明すると、事業とユーザーとの接点で必要になる順番は、「1:ホスピタリティ、清潔感」「2:デザイン(ロゴ、Webなど)」「3:広告」となるからです(もちろん、商品やサービスのクオリティが大切になるのは、大前提なので、この順番には入れていません)。

この順番が逆になると、ユーザー評価が下がったり、リニューアル時のマーケティングコストが増えることになる。

このときの「デザイン(ロゴ、Webなど)」は狭義的な意味のデザインとなり、「1:ホスピタリティ、清潔感」「2:デザイン」「3:広告」のすべてを指しているときは、広義的なデザインとなります。

順番を意識する。

この順番は、町の飲食店と観光地にある飲食店を比べてみると、分かりやすいです。私の事務所サンポノでも、観光業のブランディングを手伝っているので、この違いを意識しています。

1番目:ホスピタリティ。

例えば、家の近所にあるような中華料理のお店があります。所謂、町中華と呼ばれる店で、味はそこそこ美味しのですが、駅からは遠く、人通りが少ない道にあり、立地は恵まれていません。また、営業時間も短く、土日祝日はお休みです。それでも、開店と同時に満席になり、すぐに行列ができます。

実は、このお店は私の近所にあり、私も月に何度か通っているお店なのですが、行く度に軽い感動を覚えます。それは、接客態度が素晴らしいのです。家族経営のように見えますが、お店の方全員の挨拶で出迎えられ、水出しや料理の提供の仕方も丁寧です。会計からお店を出るまでにも、気持ちのいい笑顔とともに、「ありがとうございました!」と声を掛けてくれます。店内は普通の町中華なのですが、薄暗くなく、掃除が行き届いていて清潔感があり、女性一人のお客もよく見かけます。

実は、これと似たようなことを、ある高級料亭でも感じています(ランチが5,000円〜10,000円ぐらい)。予約をしないと入れないお店で、何度か訪れたことがあるのですが、いつ行っても、気持ちのいい接客をしてくれます。もちろん、料理や飲み物もとても美味しいです。

話が長くなるので、これ以上は割愛しますが、実はこれと同じことを海外でも感じたことがあり、これらはすべて事業規模が異なるので、「デザイン」や「広告」で比べることはできません。しかし、リピーターが多いということは、共通しているところがあるということです。それが、「ホスピタリティ」と「清潔感」です。どちらの店舗も、自分の大切な人を連れて行ける清潔感があり、真心を感じる気持ちのいい接客をしてくれます。

2番目:デザイン(狭義的な意味)。

その上で、単価が高く、近所以外の人もお客にしなければならない店舗の場合は、見た目で信用されるデザインが必要になります。これは、海外や観光地にある店舗などがそうです。外観や内装にこだわったり、写真に力を入れるのも、ホームページのデザインをしっかり作るのも、これら以外に、未体験の人に信用される手段がないためです。レビューを書いてもらうにも、まずは体験してもらわなければなりません。宿泊施設であれば、試泊プログラムを組んだり、飲食店であれば試食を提供することも可能でしょうが、それでもホスピタリティや清潔感だけで遠方からの集客を望むのは、なかなか難しいものがあります。

3番目:広告。

さらに、より多くの人をお客にしなければならない場合は、広告が必要になります。例えば、飲食事業が軌道に乗り、通販事業を始めようとしたとき、自社でECサイトを立ち上げただけでは、お客さんはなかなか集まりません。既に多くの人が集まっているモール型サイトに登録して広告の役割を担ってもらったり、実際に広告を打つ必要があります。SNSを使ったり、ブログを書くのも、広告のひとつと考えることができます。

しかし、この順序が逆転して、デザインが悪く、ホスピタリティや清潔感がなく、商品やサービスの品質が悪いまま広告で集客すると、低いレビューが目立ったり、デザインリニューアルのコストが上がったりするのです。商品やサービスのクオリティは大前提として、「1:ホスピタリティ、清潔感」「2:デザイン」「3:広告」の順番は間違ってはいけません。

この順番はすべての業種に当てはまる。

今まで書いたことは、飲食業や観光業に限らず、すべての業種に当てはまります。例えば、Webサービス(SaaS)やアプリを提供している会社の場合は、事業内容としては、自分達のことを知らない人がユーザーになり、事業規模としては、より多くの人に利用してもらわなければならないので、優れたデザインや広告が必要不可欠になります。しかし、企業の中にいる人たちにホスピタリティがなく、サポートセンターの対応が酷ければ、アプリストアのレビューが低くなります。現代は企業についても、ネット上で評価を見ることができるので、社内でのホスピタリティが低ければ、これも暴かれてしまいます。そのため、まずは経営者や従業員のホスピタリティを育てることが必須となります。また、優れたデザイナーに協力してもらわずに、デザインを制作してしまうと、クオリティの低いロゴ等がユーザーの脳裏に刷り込まれてしまい、リニューアル時のマーケティングコストが増えてしまいます。優れたデザイナーは報酬単価が高いですが、リニューアル時のコストを考えれば、安くなります。ちなみに、2018年に経産省から発表された『「デザイン経営」宣言』によると、デザイン投資に対する利益率は4倍であり、デザインを重視している企業とそうではない企業との成長率は約2倍もの差があると報告されています。
参考資料:「デザイン経営」宣言https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/pdf/20180523001_01.pdf

私の事例の話。

ここからは私の事例について話をしようと思います。立ち上げから協力している「里山まるごとホテル」では、飲食事業において地元客と県外から来る観光客が対象となっていたので、しっかりと分けて考えてブランディングに取り組みました。実は観光客以外にも、行政や他の企業からも信用を得られるようにデザインしています。この案件の詳細は、別の記事に書こうと思っているのでここでは割愛しますが、はじめから地元客と観光客を分けて考えながら、まとまりが出るようにブランディングを進めたので、経営や事業の部分でもその考え方を浸透させることができました。そして、ユーザーとの接点となるロゴや店舗のツールなどのコミュニケーションデザインに一貫性が生まれ、整っています。その成果は、世界的なデザイン賞の受賞や、岸田総理の表敬訪問、数々のメディア取材の他、高いレビュー評価として表れています。

他にも、農業体験スクールでは、リブランディングによって集客が5〜10倍に成長したり、社団法人のブランディングでは、5団体での立ち上げから一年で50団体以上に成長しています。

これらはすべて、デザインに力を入れた企業ですが、納品後、私たちの役目が終わることはありません。先ほどの図にもあるように、私たちの仕事は、経営や事業、人材育成にも関わってきます。クライアントが新しいことを始めようとするときには、私が相談相手になったり、社内でデザインを内製する場合は、制作物のレビューやコーチングをすることもあります。コーチングは、デザインのみならず、ビジネスマナーに至ることもあります。

私の仕事はデザイン制作が大半を占めると思われがちですが、デザイン制作は全体の3割ぐらいです。他の7割はブレーンワークで、考える仕事です。例を挙げると、デザイン顧問としてのブランディングコンサルティングや、事業相談、デザインディレクション、人材育成になります。最初の話題に則って言い換えると、狭義的な意味のデザイン仕事は3割、広義的なデザイン仕事は7割となります。私のようなデザインの専門家の仕事の本質的な部分は、クライアントの先にいる生活者に喜んでもらい、その結果、クライアントの利益が向上するお手伝いをすることです。だからこそ、「デザインが一番大事」とうそぶくことはせずに、ホスピタリティや清潔感といった、人として根源的な部分を大切にしているのです。

最後に。

今回は、よく質問を受けることへの私なりの見解でした。しかし、冷静に世の中を見渡せば、この通りだと思います。そして、社会の営みの中にあるデザインだからこそ、それを行う人のホスピタリティが大切になると思っています。

サンポノの仕事に興味が湧いたら、ホームページをご覧ください。企業活動のすべてに関わっているのがデザイナーです。何かお困りのことがございましたら、ご依頼ください。最後までお読みいただき、ありがとうございます。それでは、また次回お会いしましょう。

サンポノHP:https://www.eguchimasaru.com/

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