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令和4年度 文部科学省予算(案)を発表 学びの環境、ICT活用、教員の質向上はどうなる?

令和4年度 文部科学省予算(案)が発表された。新型コロナウィルス関連の一歩先を見据えた取り組みは、どのように予算に反映されているのだろうか。

今回の予算案は、オンライン上で学習・アセスメントができるCBTシステムの活用推進などの「GIGAスクール構想」に代表される「令和の日本型学校教育」の推進、協働的な学びの実現や学校における働き方改革の推進に向けた「教師等の指導体制の充実」などがポイントとなっている。

また、コロナ感染症対策支援の継続に加え、ポストコロナ時代にいかに質が高い教育を実現できるかという観点も見える。

学びの環境整備について

内閣府が掲げるSociety5.0時代やポストコロナ時代を見据えた取り組みとして、学校施設整備推進プラットフォーム構築事業がある。これは、1人1台端末環境や個別最適な学びと協働的な学びの一体化実現のため、学校施設整備の事例を蓄積したポータルサイトを作り、助言ができるアドバイザーや自治体などの担当者間の情報交換を実現しようとするものだ。

引用元:大臣官房文教施設企画・防災部 「05 令和4年度予算(案)主要事項及び説明資料(PDF:997KB)

また、小学校高学年における教科担任制の推進、小学校における35人学級の推進なども、新しい時代の学びの環境整備として目標とされている。高等学校については、普通科に学際領域学科地域社会学科を設置するための支援、通信教育を活用した新たな方法による学びの実現、高校を改革するための地域・関係団体等をつなぐコーディネーターの全国的なプラットフォームの構築などにも予算が組まれる。また、産業構造や仕事内容の絶え間ない変化に対応できる人材育成の核となる「マイスター・ハイスクール」の指定・推進も重視されている。

「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」では、Society5.0やSDGsの達成をリードする人材育成のため、高校教育改革として主に以下の取り組みが掲げられる。

  • 海外をフィールドにグローバルな社会課題の解決に向けた探究的な学びを実現するカリキュラム開発

  • オンラインでの海外フィールドワークなど、世界規模で生じた豊かなオンライン環境を駆使したカリキュラム開発

  • 大学等と連携した大学教育の先取り履修

  • 個別最適な学習環境を構築

引用元:初等中等教育局 「07-2 令和4年度予算(案)主要事項(PDF:6,021KB)」

GIGA スクール構想は今後どうなる?

既に1人1台端末環境が広く展開され、運用面の支援が更に求められているという背景がある中、今回「GIGAスクール運営支援センター」を各都道府県に整備し端末の故障やICTに関わる人材不足の解消を図る取り組みにも焦点が当てられている。また、端末の効果的な活用による学びの充実に向け、下記の施策が掲げられている。

  • アドバイザー等による自治体支援事業

  • ICTを活用した指導力向上支援事業<新規>(各教科ごとに効果的な活用方法をまとめた動画の作成・提供など)

  • 情報モラル教育推進事業

  • 児童生徒の情報活用能力の把握に関する調査研究(令和3年に実施した調査の結果分析)


また、学びの保障・充実のための学習者用デジタル教科書実証事業では、令和3年度補正予算と合わせて、原則国・公・私立の小学校5・6年生、中学校全学年が対象となる。また、学習者用デジタル教科書のクラウド配信や効果・影響等に関しての検証事業も引き続き行われる。デジタル教科書については、学習者用デジタル教科書を活用した教師の指導力向上、デジタル化に対応した教科書制度の見直しに向けた調査研究事業についても見逃せない。

児童生徒がオンライン上で学習・アセスメントができるCBTシステム(MEXCBT:メクビット)の拡充・活用推進については、令和3年度に希望する学校において活用が開始されているが、更なる利便性向上などを実施し活用を推進する必要がある。令和4年度からは、小中高校に加え大学等における活用も試行される見込み。機能なども順次追加・改善される。

引用元:総合教育政策局「06 令和4年度予算(案)の概要 ~総合教育政策局関係~(PDF:13,859KB)」

また、学術情報ネットワーク(SINET)の高速性を活かした質の高い教育の実現に関しても盛り込まれている。SINETへの接続方法や運用について検討を行う必要があるという背景の中、令和4年度は新規で、クラウド化・アクセス制限・認証などの実証研究を実施し、ネットワーク構成方法について整理することなどが掲げられる。

教員向け施策について

ICTを活用した教師の資質能力の向上を図るための施策、また外部人材の活用校長のマネジメント能力にも切り込んだ取り組みも掲げられる。以下は教員向け施策の内容だ。

  • 教職員支援機構の環境整備

  • 大学における教員の現職教育への支援(教師不足解消にむけた外部人材の活用を促す研修の提供 )

  • 研修受講履歴管理システムの構築(学習コンテンツの質保証、情報提供プラットフォーム、学びの成果の可視化が期待されるシステムの設計に関する調査研究+構築)

  • 新任校長オンライン集合ハイブリッド研修


「多様な専門性を有する教職員集団の構築」という目標に向かって、教師の「個別最適な学び」を保証するため、下記3つの仕組みが組み込まれた研修受講履歴管理システムが必要だが、令和4年度はシステムの設計と要件定義が行われる予定だ。

  • 学習コンテンツの質保証

  • ワンストップ的に情報を集約しつつ、適切に整理・提供するプラットフォーム

  • 学びの成果を可視化するための証明


引用元:総合教育政策局「06 令和4年度予算(案)の概要 ~総合教育政策局関係~(PDF:13,859KB)」

令和3年度から引き続き行われる施策だけでなく、令和4年度に新規で行う取り組みやさらなる拡充の予定が組み込まれる結果となった。これらの施策を前提とする中で、引き続き学びの環境への試行錯誤が続いていくだろう。

高校では、令和4年度より新学習指導要領が本格的に導入される。具体的には「知識と技能」だけではなく、「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力・人間性」をバランス良く、総合的に向上させていくことが強調されている点が特筆すべき変化である。主体性、生涯学び続ける姿勢、対話、学びの深さなど、新しい時代に必須となるであろう能力を育てようという意図が読み取れるが、果たして現場でどのように実践されていくのか。また、高校版のGIGAスクール構想は、まだまだこれからである。端末の導入や活かし方など、今後の動向をさらに注視する必要がある。

もちろん小中学校においても、1人1台環境が整えられた中で、より発展的な学習を行うことが求められ、その効果を立証していく必要があるだろう。教員個人の感覚でとらえられがちな「効果」だが、「効果的な活用」について、どのように定義され、それがどれだけ普及していくか?新時代の教育に必須となるだけに、本気の取り組みが必要である。

そして、それらを支えるために重要な教員の質向上を目的とした研修は、教員自身の時間や研修に投入される費用の確保と、どのように折り合いをつけていくのか。令和4年度も、引き続き新たな取組みへの流れが良くなるよう期待したい。

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