株式会社エデュテクノロジー
ロードマップ作成から半年。 教育データ利活用の進捗状況は?
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ロードマップ作成から半年。 教育データ利活用の進捗状況は?

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GIGA スクール構想により 1 人 1 台端末の整備が概ね完了した現在、全ての子どもたちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現していくため、学校現場の更なる ICT 利活用の強化が必要とされている。

2022 年 1 月に策定された「教育データ利活用ロードマップ(以下、ロードマップ)」は、国が教育をデジタル化する際のミッションとして掲げている「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」を実現することをゴールに、新たな学習環境における教育データ利活用に向けた様々な論点をまとめたものである。

ロードマップが示されて約半年が経過する中で、教育データ利活用の議論はどのように進展しているのだろうか。

2020 年 7 月から 2022 年 5 月までに合計 9 回開催されてきた教育学や情報学といった専門知識を有する大学教授、教育委員会関係者、弁護士などから構成される「教育データ利活用に関する有識者会議(以下、有識者会議)」では、次の 3 つの検討事項について議論されている。

①教育データの標準化
②学習履歴(スタディ・ログ)の利活用
③教育ビッグデータの効果的な分析・利活用

有識者会議での検討事項を、これからの学びに関連付けて整理すると以下のように表現できる。

これからの学びには「③ 教育ビッグデータの効果的な分析・利活用 」が必要不可欠である。そのためには、収集する教育データの種類や単位が標準化されていること、すなわち「 ① 教育データの標準化 」が図られていることが前提となる。また、標準化が図られた日々の学習活動の記録を蓄積し、活用する「② 学習履歴(スタディ・ログ)の利活用 」を繰り返し取り組むことで、個々の教育データが、教育活動と関連付けられた教育ビックデータとして蓄積される。蓄積された教育ビッグデータを用いて個に応じた適切な学びを実現する。

このように有識者会議における3つの検討事項それぞれが、これからの学びにおける教育データ利活用を実現する重要なキーワードであることが分かる。これ以降、実現したい「③教育ビッグデータの効果的な分析・利活用」を支える「①教育データの標準化」並びに「②学習履歴(スタディ・ログ)の利活用」の2つのキーワードについて確認していく。

教育データの標準化


「教育データの標準化」に関しては、有識者会議での議論を踏まえ、文部科学省が 2020 年度に第 1 版、 2021 年度に第 2 版として公表している。

下図に示す通り、教育データは①主体情報、②内容情報、③活動情報の 3 つに区分されており、第 1 版では、学習分野の共通事項である学習指導要領にコードを付与した「学習指導要領コード」と、全国の小中学校等に固有のコードを付与した「学校コード」が公表された。第 2 版では「主体情報」を中心に公表しつつ、児童生徒、教職員、学校等におけるそれぞれの属性等の基本情報が定義されている。第 3 版は、内容情報と活動情報を中心に2022年度秋頃に公表される予定である。

引用元:『文部科学省 教育データ標準 3教育データ標準の枠組み』


学習履歴(スタディ・ログ)の利活用


「 学習履歴(スタディ・ログ)の利活用 」の先進事例として、高知県の取り組みが注目されている。高知県では、Google Workplace for Educationを導入し、Googleのクラウドサービスである Big Query ( 教育データ分析基盤 ) を活用した高知県独自の学習支援プラットフォーム「 高知家まなびばこ 」の開発・運用を推進している。学習支援プラットフォームの開発・導入に当たっては、全公立学校での 1 人 1 台端末整備、小中高校の ID を連携し学習データの連続性を確保など、学習支援プラットフォームを核としたスタディ・ログの活用が円滑に取り組める環境も整えている。高知県のような学習履歴(スタディ・ログ )の利活用は、一部の都道府県において実現できているが、全国展開には至っていない現状にある。

引用元:『【資料1-1】高知県資料(学習支援プラットフォームの構築)p5(第9回教育データの利活用に関する有識者会議)』


教育データの効果的な分析・利活用


教育データの分析・利活用に関しては、 MEXCBT 事業の進捗状況についても注目していきたい。 MEXCBT とは、文部科学省開発の教育データを分析・利活用をするための CBT(Computer Based Testing) システムである。

MEXCBTは、2020 年度から施行版を開発、 2021 年度には希望する全国の学校約 8,500 校、約 300 万人が登録して活用している。 2022 年度は、これまで MEXCBT に蓄積されていた全国学力学習状況調査や高卒認定試験に加え、自治体独自の学力調査問題等をさらに追加するなどして機能を拡充する予定である。これと並行して、 MEXCBT におけるデータ分析事業も 2021 年度から開始されている。

引用元:『【資料1-2】調査研究報告(教育データの分析)p2(第9回教育データの利活用に関する有識者会議)』

 
2021 年度の事業報告では、 データの利活用によってもたらされる効果、特に学習履歴( スタディ・ログ )等の分析・検討や、データモデルの検討による成果が示されている。

事業報告の最後には、これらの事業成果を踏まえ、MEXCBT を学校教育に本格導入していくためには 各種ステークホルダーの意見も踏まえた MEXCBT の機能改善の整理等が必要とある。こうした記載からも、 MEXCBT が全国で本格的に活用されるためには継続的な議論とともに機能面の改善が必要なのかもしれない。

文部科学省では MEXCBT 事業のほか、GIGA スクール構想による 1 人 1 台端末の活用が進む中で、目指すべき次世代の学校・教育現場等を見据えつつ、教育現場で活用し得る先端技術や教育データの効果的な利活用を模索する「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業」が今年度取り組まれる計画である。

この事業では、初等中等教育が抱えている効果的なカリキュラムマネジメントの実施や、校務の効率化などの重要課題に対し、先端技術(AR・VR・センシング技術等)や教育データを効果的に利活用することによる改善策・解決策を明らかにするものである。その際、先端技術や教育データの利活用に必要なコストと得られる成果や、成果を横展開するための方策の分析、更には利活用にあたっての自治体内・学校内の体制の在り方についても併せて分析・検証を行うとしている。本実証の成果についても注視していきたい。

■令和4年度 次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業


個人情報の取り扱いとセキュリティ体制


ロードマップでは、短期( 2022 年頃)までに実現を目指す姿として、教育現場を対象にした調査などのオンライン化で校務負担を軽減することなどが示されている。しかし、校務をデジタル化する上で、個人情報を含む教育データの取り扱いが整理できていない現状がある中で、教育における改正個人情報保護法の解釈や、その取り扱い等について、 2023 年 4 月の全面施行に照準を合わせて整理する必要がある

引用元:『【資料2-2】小崎委員提出資料 p6(第9回教育データの利活用に関する有識者会議)』


上記の資料は、有識者会議において、奈良教育大学 教職大学院 学長補佐 小崎 誠二氏が提示した資料の一部である。この資料は、奈良県内の 1021 名の教員を対象に、2017 年 6 月~ 2019 年 9 月に実施されたアンケート調査をもとに作成されたものである。この資料には、個人情報の取り扱いに関するルールが不明確、教職員のセキュリティに関する知識不足、教職員が取り扱う情報量増加による負担が増している現状など、教育データを利活用する上での課題が整理されている。

有識者会議では、これらの課題を一つ一つ検討し、ガイドブックの作成や研修会の開催など、教員をはじめとする教育関係機関へのフォローアップが急務であるという意見が交わされた。

また、学習コンテンツサービスを提供する事業者からも、教育データを利活用していくに当たり同様の課題やその対応策について意見が出されている。

 1 点目は、個人情報の取り扱いについてである。現時点では、学校設置者や学習コンテンツ等のサービス提供事業者によっては、個人情報の取り扱いが明確に定められていない状況も見受けられる。これからのデータ駆動型教育においては、児童生徒や教員、保護者、学習コンテンツ提供事業者等がデータを活用するユースケースについて整理しつつ、個人情報の取り扱いを明確にしていく必要がある。その際、個人情報の取り扱いに関するガイドブックや FAQ などでまとめて行く必要があるとの意見が出された。

 2 点目は、教職員の負担増とならないようなセキュリティ体制の確立である。パスワード管理が難しい教育現場において、人的運用による対策を講じるとなれば教職員の負担はますます大きくなると考えられる。そのため、人的運用に頼るのではなく、パスワードレス認証の導入などシステムによって現状より運用負荷を下げつつ、セキュリティ強度が高まる仕組みの導入が必要であるという意見も出されている。


まとめ


以上から、教育データ利活用に関する国での議論の進展、また、学校等教育機関における教育データ利活用の実態等をまとめると、以下の通りである。

◯ 教育データの標準化は、第 1 版、第 2 版においてすでに公表済みで、最終版とされている第 3 版が 2022 年度内の公表予定である。

◯ すでに学習履歴(スタディ・ログ)の利活用を実践している自治体がある。

◯ 個人情報を含む教育データの取り扱いは、 2023 年 4 月に全面施行される改正個人情報保護法に基づいて整理する必要がある。

◯ 教員の個人情報の取り扱いやセキュリティに関する理解の促進を図るため、教育現場での個人情報取り扱いに関するルールを明確にしつつ、教員研修などのフォローアップを充実させていく必要がある。

◯ サービス事業者と学校設置者の間で契約をする際の個人情報取り扱いルールを明確にする必要がある。

◯ 不正アクセス対策等のセキュリティ体制を強化する必要がある。セキュリティ体制の強化に当たっては、教員の負担増につながる人的運用による対策ではなく、パスワードレス運用などのシステム側の対策が必要である。

ロードマップが示されて約半年が経過し、教育データ利活用に関する議論は進展してはいるものの、ロードマップが掲げるゴールに向けて課題は山積している状況にある。有識者会議での議論は今後も継続されていくものと考えられるが、これからの学校教育における教育データ利活用がどのように進展していくのか引き続き注視していきたい。


株式会社エデュテクノロジーでは、GIGAスクール構想で実現された一人一台環境での学びが与える、児童生徒の教育効果を測る「 ICT × 学びアンケート(以下、アンケート)」を提供している。アンケートは、児童生徒が学習活動を経て身に付けていく力を定量的に明らかにする、まさに、「児童生徒の学習変容」という教育データを可視化するサービスである。株式会社エデュテクノロジーは、アンケートをはじめとしたこれからの学びに必要不可欠な教育データ利活用、更には教育の質の向上に向けた支援をしていきたいと考えている。


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