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月と猫と終わった恋と:La luna e la gatta/Takagi & Ketra

イタリア語で聴く「月と猫」
なるほど、ロマンチックじゃねーの。

気軽な感じでイタリア語を聴く仲間を増やすべく、こつこつ布教活動を始めてこれで3回目なんですが、さっそく1回目でご紹介した Takagi & Ketra に再登場してもらうことにしました。

なんだかブロードウェイミュージカルの「キャッツ」を彷彿とさせるダンサーの姿が見えますね。

タイトルの「La luna e la gatta」は「月と猫」という意味。発音は ラ ルーナ エ ラ ガッタ となっています。
日伊辞書を引くと、猫は gatto/ガット と出るんですが、イタリア語の名詞には性別が表れるので、男の子だと gatto で女の子だと gatta になります。
語呂が悪いですけど、もっと正確に訳すと「月と雌猫」。
一般的に女性名詞だと a の音で終わるので、同じく女性名詞の「月」と組み合わせるとルーナとガッタで a の音が韻を踏んで、イタリア語のタイトルはいい感じの響きです。

発表されたのは、2019年3月21日。
まだ肌寒い春のはじめ。
手放した恋を想って月を眺めるにはいい季節です。

身も世もない恋の終わり
でも後悔することなんてなにもない
ただ息ができないだけ

ここからは前回と同じく、飛ばし飛ばしに歌詞をご紹介しながら、あらすじのようなものを追ってみたいと思います。
まずはやっぱり冒頭から。

Gli alberi pescano pescano
l’anima di questo mondo
木々はこの世の魂を釣り上げる
emergendo le radici e abbracciando l’Equatore
根っこを浮かばせながら、赤道を抱きながら
vorrei tu facessi lo stesso
con la mano sul mio cuore

きみも同じようにしてたらいいな、僕の心のうえの手でもってさ
quando mi guardi negli occhi vorrei finire nel frullatore
きみの眼で見られると、ミキサーのなかで消えたくなる

いきなり幻想的で、訳すとなると取り扱いに困ります。
でもこういうの大好きです。
ペスカノペスカノって聞こえるところは、pescare/釣りをするっていう単語をくり返してるんですが、これは木々が赤道のところまで根っこで探って、この世界の核のようなものを引っ張り上げようとするイメージでいいんでしょうかね。

ma dimmi come si può stare bene anche quando si è lontani
言ってよ、どうやったら元気でいられるのさ、遠く離れたとき
e non sento la tua voce ormai da troppe settimane
もう何週間もきみの声を聴いてないよ
dimmi come si può stare vivi anche senza respirare
言ってよ、どうやったら生きてられるのさ、息もしないでさ

盛り上がってまいりました。

posso soltanto deglutire singhiozzare
cantare nella testa

僕が出来るのはただ飲み込むこと、すすり泣くこと、頭のなかで歌うこと
questo motivo che mi fa
stare come la gatta
che guarda dalla finestra

これが僕を窓の外を見る猫みたいにさせるんだ
la luna che cade in un lago dipinto di blu
e ci caschi anche tu

月は青く塗られた湖に落ちて、きみもそこに落ちるんだ

コーラスで in un vaso っていう言葉が入ってるんですが、これは直訳すると「壺のなかに」なんですよね。なにか慣用句でもあるのかなって調べてみたものの、どうやら違うっぽいですね。
細切れにしてみると、どんな猫みたいにさせるのかっていえば〈窓から(壺の中に)月を見ている猫〉で、どんな月を見てるのかといえば〈青く塗られた湖のなかに落ちる月〉なので、もしも詩じゃなかったら頑張って一息で訳していたかも知れません。

この曲、すごく好きなので、自制しないとすべて訳しちゃう……。
自制心の強い人間でよかった!
ここから最後に飛びます。

amore non è una scusa
愛しい人、これは言い訳じゃない
ma giuro mi sono perso
でも誓って僕は夢中だった
non è stata una bella avventura
però mi è piaciuta lo stesso

美しい冒険じゃなかったけど、でも僕は気に入ってた
c’era la luna in un lago che emanava il suo riflesso
湖のなかに月があって、じぶんの輝きのなかに浮かんでた
e una banda suonava lontano una musica blues
それからバンドが遠くブルースを弾いていた
ci saresti cascata anche tu
そこにきみも落ちていったんだろうね

これ、最初の一文のところ〈愛は言い訳じゃない〉って訳しかけてたんですが、冠詞がついてないから一般名詞じゃないのかな~って思うと、呼びかけのアモーレかなって判断してます。冠詞って難しいですよね。
私が〈夢中だった〉って訳した perdersi という単語も、いろいろな訳が考えられるんですけど、迷うとか混乱するとか、あとは消えてなくなってしまうとかいう表現でも使います。
この場合は失われた愛のことを歌ってるので、いわゆる「身も世もない」っていう状態なんですかね。

一言一句を追うのはどうかなって思ったので、大きく飛ばしちゃったところもあるのですが、そこもやっぱり美しくて、未練がましく言及しちゃいますね……。
ロマンチックな夜の中で、ヴィーナス(金星)がオリオンにキスをしたり、愛が数光年の宇宙を飛んで行ったり、これをオッサンという年齢に達した男性アーティストがしみじみと歌うところがすごく推せます。

ジョヴァノッティをはじめ、
歌手は超大物ぞろい

前回のL'esercito del selfieでも、歌手は Takagi & Ketra じゃありませんよというお話をしましたが、今回も同じです。
張り付けた動画のタイトルは「Takagi & Ketra – La Luna e La Gatta (feat. Tommaso Paradiso, Jovanotti, Calcutta)」ですが、Takagi & Ketra は楽曲を作っているグループで、歌っているのは feat. から先の歌手の皆さんです。
カタカナで表記しておくと、順番にトンマーゾ・パラディソ、 ジョヴァノッティ、カルカッタとなっています。
……Calcuttaさんの発音は、むしろカルクッタかな。

ジョヴァノッティは日本でも有名ですよね。
たぶん、少なくともイタリア語学習者のあいだでは。

この「ベッラ」っていう曲、いつだったか授業で歌った気がします。
肩の力が抜けるような温かさがあってオススメです。

イタリア語を聴いてみたくなりました?

古典芸術を愛する方々だとか、美食家さんだとか、あとはアーティストさんやサッカーの愛好家さんだとか、特定のモノにものすごい熱意を傾けるパッションに溢れる人が手段として勉強することの多いイタリア語ですけど、もっと気軽に楽しんでくれる同好の士がいたらなぁ~って思って、こんなnoteを書いています。

なんとなく耳に心地いいなぁ、もっと聴いてみたいなぁって感じていただけたら、ひとりで寂しくキーボードを叩いてみた甲斐があったというものです。
これからも気が向いたときに、なにかステキだと思ったものをご紹介したいと思いますので、よろしければまた遊びにいらしてください。

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