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東京郊外で、老障介護真っ最中。私、75歳。長女51歳。知的障害、自閉スペクトラム症。てんかん。躁病。生活介護通所施設利用中。母は長女が通所している間に、映画や海外ドラマを見たり、編み物や刺繍をして、自分を保って暮らしています。

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躁病の家族と暮らすということ

鬱病の闘病記や、鬱病の家族の手記や漫画などは目にする機会が多いが、躁病の家族の記録や手記は、少ないように思う。 「楡家の人びと」や「夜と霧の隅で」などの作者、北杜夫さんは躁うつ病で、そのことを娘さんの斎藤由香さんが、「パパは楽しい躁うつ病」と言う本で書いているのは知られているが、それ以外はあまり聞かない。  海外ドラマでは、「ER」や「ホームランド」など、映画では、「世界にひとつのプレイブック」に双極性障害のある人が登場する。本人の生きづらさ、家族や周りの人たちの戸惑いや困

    • ほどよく香るわたしのジャスミン

      私が植えたジャスミンが、空き家となっているお隣との境のフェンスにつるを伸ばして、さらに、上へ上へとお隣のベランダの柱をよじ登り、ついにお隣のベランダを占拠してしまいました。 そして、いま、鮮やかに、ピンクの蕾をゆらゆら揺るがせ、そして白い花を咲かせ始めました。 そうすると、あの、香りが漂い始めます。 私が旅番組で見て憧れた、モロッコのカスバを包むジャスミンの香り。 朝、二階の窓を開けると、飛び込んでくるお隣のベランダのジャスミン。 実に見事な眺めとなりました。 お隣だから

      • 私は絶望して失望してちょっと希望

        障害のある長女を育てて、はや51年。 長女51歳。 さぞや、母親としてしっかり生きているのだろうと思う人もいるようですが、実は、まだまだ、(もしかして、もう)ふらふらです。 絶望の淵からは、全く抜け出すことができず、毎日、失望の連続です。 なぜなら、長女は、毎日変化し続けており、その都度、障害の現れ方が違っているので、「昨日と同じ」ではないからです。 朝の起こし方も毎日違います。 相手の出方を見て、音楽かけたり、お化けごっこしたりするのですが、躁転の兆しが見え始めると、そ

        • お隣の空き家 ジャスミン屋敷になる

          それはいつだったか。 そう、もう、20年以上は前くらい。 テレビの旅番組で、モロッコのカスバの特集をしていた。 そして流れた一つのフレーズに心が止まった。 「ジャスミンの香りに溢れた街。」 ジャスミンの香り溢れる光景に、心惹かれた。 私もジャスミンの香り溢れる庭にしよう。 と思い立った。 そこで、鉢植えのジャスミンの花が終わりに近づいてきたので、庭に植えることにした。 場所は、台所口から出てすぐの、フェンスぎわ。 北側だけど、フェンスにジャスミンのつるが絡まって、いい感

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          もうすぐお母さんの休日やってきます

          毎年開催される、水泳カウンセリング研究所の合宿。 水泳の先生のご自宅に、数人お泊りする恒例行事。 五月の連休と、お盆休みの年2回。 障害のある長女も楽しみにしています。 それよりもっと、お母さんが楽しみにしている恒例行事です。 今年は、合宿のお知らせが届くのが遅くて、ハラハラしましたが、お手紙がやっと届きました。 先生もだんだん歳を重ねて、大変になってきていると思うので、どうなることやら、まさか、中止なんてこともあるのかな、なんて心配してました。 そうしたら、今年は三泊四

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          特別支援学校のスクールバス

          毎朝、生活介護の通所に通う知的障害の長女を、最寄りのバス停まで送っていきます。 バス停の斜め向かいあたりに、体育館と公園があります。 その公園の入り口には、お迎えの幼稚園バスが止まって、本当に小さな小さな子が、お母さんとさよならして、バスに乗って幼稚園に向かうのでした。 その様子を、長女と一緒にいつも眺めていました。 えらいねえ、あんなに小さな子が、お母さんと別れて、幼稚園にいくんだね。 でも小さいから、バスの窓から頭が見えないね。 なんて思いながら見ていました。 その場

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          未明の砦 太田愛

          太田愛は、いわずとしれたドラマ「相棒」の脚本家たちの一人である。 彼女の脚本の回は、とても人気がある。 特命係という、まあ、警視庁の中のお荷物というか、あってもなくてもいいような部署なんだけれど、でも、本当は、頭脳の中心みたいな曖昧な存在を描くことができる、力のあるライターである。 今までも、長編小説を多々書いてきているが、どれも、読みごたえがある作品となっている。 そして、「未明の砦」である。 私は「ロストケア」(葉真中顕)を「最後の砦」を描いた小説だと思ったが、この作品

          未明の砦 太田愛

          トニー・レオンやら、錦戸亮やら

          悲情城市、恋する惑星、インファナル・アフェアなどなどと、ずっとずっと、トニー・レオンを見てきた。 「悲情城市」の、声を出すことができないトニー・レオンの無言の表情。 歴史に翻弄され、声を上げても声が届かない無念の台湾の置かれた状況。 「恋する惑星」の警官663号。 クリストファー・ドイルのエッジのきいたカメラに、少し困惑気味の顔をむける。 窓から見える飛び立つ飛行機。 複雑な家庭環境に生まれ、さらに複雑な潜入捜査官の悲しい後ろ姿。 「インファナル・アフェア」の無間地獄。

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          靴の裏に桜の花びらがくっついてくる

          私の家の前は、延々と続く桜並木です。 ですから、この季節は毎日がお花見です。 歩くときは、つい、上を向いてしまいます。 昨日今日は、ふわふわの桜の花びらが、雪のように舞い降りてきて、ああ、もう、メルヘンの世界にいるようです。 先週の嵐のような風の日は、激しい桜吹雪でした。 遠山の金さんが出てきそう。 桜が散りだすと同時に、葉が出てくるので、今は、薄ピンクと黄緑が半分半分くらいで、とてもきれいです。 なんだかおいしそうです。 うちのほうは、のんびりしていて、歩いている人もゆっ

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          カッチンカチン、お地蔵さんみたい

          先日、知的障害のある長女ほかろん、「シヨートステイA」の面談に行きました。 2月くらいから、NとAの二つのショートステイの申し込み手続きを始めていたのです。 「ショートステイN」の方は面談も終わり、契約までこぎつけました。まだ、お試し「日中ショートステイ」があるけど。 そしていよいよ、残るもう一つの「ショートステイA」の面談です。 ああ、ここに至るまで、2カ月以上かかりました。 この間、母は、パッチンパチンに緊張の糸が張り詰めていて、少しの刺激で、プッチンと切れてしまいそう

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          あつあつのゆでたまごはおいしい

          今日は、ショートステイAの面談の予約の日です。 知的障害のある長女ほかろんは、とても緊張が強い人なので、面談の予約の話は、前の日とかには言えません。 緊張しすぎてパニックおこしてしまうかもしれませんから。 なので、今日の朝、連絡帳を書くときに伝えました。 「きょう面談があるので、1時半に迎えに行きます。」 「どこ?」 「Aです。外周清掃で行く市民球場の向かいです。」 「しらないところ。」 「そうね、始めていきます。すぐ終わるから心配ないです。」 という会話をしたのですが、

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          ええい、こらえしょうのない

          歳をとってくると、気が短くなるのか。 それとも、もう、いいお母さんぶりっ子するのやめたからか、私は、最近すぐ腹が立つ。 こらえしょうがなくなって、きれやすくなってきたように感じる。「ように感じる、」くらいだから、それほど、きれやすい人になったわけでもないような。 いままでが、あまりにも、我慢強かったような。 しかし、長女ほかろん。 今年に入って、いまだかってない穏やかな生活をしていたのだが、最近ちょくちょく、「ヤダさん」がおいでになってきたんである。 着る服の「ヤダーヤダ

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          グッドドクター名医の条件 父になる

          アメリカ版グッドドクター、名医の条件シーズン6。 いよいよ、サヴァン症候群で自閉症のショーンが父親になりました。 グッドドクターは、2013年に韓国版、2017年にアメリカ版、2018年に日本版がつくられています。ここまでは、私も視聴していますが、その後、トルコ、中国、イタリア、インドなどたくさんの国でリメイクされています。 なんで、こんなに、人気があるのでしょうか。 アメリカ版、「グッドドクター名医の条件」の毎回の出だしのナレーションで、 「さらなる試練がショーンを待ち

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          春はくせもの

          ライオンのようにやってきて、羊のように去っていった3月のあとには、嘘で固めた4月がやってきた。 桜も、チューリップも、スミレも、水仙も、みんな一斉に咲きだして、なんだか気分がウキウキする。 ウキウキだけならいいのだけど、ここがくせもの。 急に暑くなったり、寒くなったりして、何を着ていいのかわからなくなる。 自分のことは、何とかなるが、何とかならないのが、知的障害のある長女のほかろんさん。 明日着る服を、今日の朝に用意するから、今日が暑かったら、明日は暑い日の服になるが、現実

          春はくせもの

          ああ、それだけは、言わないで。

          今日は、長女のほかろんさんのクリニックへの通院の日。 「きょうのしゃしんは、なんにんかな。 わたしはひとりだとおもう。」 とウキウキ楽しそう。 長女が通うクリニックの入り口のエレベーターのところには、大衆演劇のポスターが、張られているのです。 出し物によって、毎月のようにポスターは張り替えられています。 そのポスターに何人の役者さんが写っているのか、ほかろんさんは気にしているのです。 「ひとりだとおもうよ。」というほかろんさん。 なんだか、どきどきしているようす。 こういう

          ああ、それだけは、言わないで。

          お地蔵さんで待ち合わせ

          私は、51歳の知的障害のある長女と暮らしている。 毎朝、長女をバス停に送り、また、日曜日には水泳カウンセリングの付き添いや、お買い物に一緒に出掛けたりする。 出かけるときは、長女が玄関から先に家を出て、私が家じゅうのカギをかけてから、台所口から外へ出る。 玄関を出る時、長女は必ず聞く。 「どこでまってたらいいの?」 そこで、私は答える。 「お地蔵さんで待ち合わせ。」 私の家を出たところには、桜並木に面して、お地蔵さんがたたずんでいる。 今の季節だと、桜の花が満開で、ピンク

          お地蔵さんで待ち合わせ