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読書記録:ランジェリーガールをお気に召すまま4 (MF文庫J) 著 花間燈

【勘違いから始まった共同戦線、期せずして深まる関係の絆】


【あらすじ】

激動の夏休みが明けて、 下着ブランド・リュグのデザイナーを務める浦島恵太とリュグのモデル女子達との間には、どことなく微妙な空気が流れていた。
なにせ恵太は、後輩である雪菜から告白されてしまったからだ。

そこに、パタンナーの瑠衣と恵太が婚約関係にあるという情報まで飛び込んでくる。
早くも修羅場到来かと思いきや、婚約の話は瑠衣の父親の勘違いだと判明して、胸を撫で下ろす。

しかし、いざ恵太が誤解を解こうとすると、恋愛関係にないなら瑠衣の一人暮らしは許可できないと断言されてしまう。
今の関係を保つ為には、全力でカップルを演じるしかない。

あらすじ要約


瑠衣の父親に誤解される事で、嘘の婚約関係を結ぶ事になった恵太は、欺く為の試練を乗り越える物語。


前回、雪菜の告白を引き出した事により、恵太達「リュグ」の面々に波乱が起きてしまっている現状。
しかし、雪菜は皆を動揺させたくて、爆弾発言をしたのでない。
その秘め続けた告白は、思いがけずポロッと漏れ出た、紛れもない本心。
変に取り繕わず、飾る事のない本心だからこそ。
その想いはどうしよもない等身大の気持ちであって。
その真っ直ぐな気持ちは、だからこそ、破壊力を秘めていて。
恵太とリュグのモデル女子達の心にも波乱を呼び起こしていく。

そんな波乱の中で、瑠衣からもたらされた彼女と恵太が婚約するという衝撃的な一報。
だが、よくよく皆で顔を合わせて相談してみると。
それはどうやら、彼女の父親である悠磨の、はた迷惑な思い込みの強さによる早とちりであったらしい。

とりあえず、その誤解を解こうとしたら、恋人ではないなら一人暮らしは容認出来ないと突っぱねられる。
しかし、そのにべの無い態度を受け入れてしまえば、最悪、瑠衣を「リュグ」からの離脱に招いてしまう。
それは是が非でも避けたいと考えた恵太は、行動を起こす。
ラブラブカップルを演じながら、水族館にデートへ繰り出して、証拠画像を見せたらば。
今度は暴走した父親が、勝手に婚約発表の段取りへと繋げてしまう。

ひとまず、それも回避しなければ。
考えあぐねた恵太は、瑠衣の母親であるレベッカに協力を依頼して。
婚約発表を別の大規模イベントに塗り替える計画を立てる。
事情を理解してもらうのは、なかなかに骨の折れる交渉だったが、なんとか納得を勝ち取る恵太。
だがそれでは終わらないとばかりに、今度は絢花が新作のモデルを拒否するという異常事態が巻き起こる。

勘違いで思い込みの激しい父親に婚姻関係にあると誤解された瑠衣と恵太。
あくまで、仕事のパートナーだった筈の瑠衣と、ラブラブなカップルを演じる事になろうとは。
周囲の視線が痛い中、それでも、関係を維持させるには、瑠衣と愛を育むしかない。
それが原因で、絢花にコラボのメインモデルを拒否されてしまう。
恐らく、今の優柔不断な恵太の態度に腹が立ったのだろう。

あまつさえ、 絢花に明確に避けられ始めて。
それどころか、自分を拒絶する言葉まで投げかけられ、自己嫌悪と失意に沈む恵太。
そんな兄を見かねた妹の投げかけた言葉。
自分がどうしたいか見つめ直し、仲直りしたいという目標を改めて掲げる。
いつもの部屋に誘い出して、聞き出した事情は。
恵太が解釈していた答えとは違っていた。
それはダイエットをしたら胸から瘦せてしまった、という物であったのだ。

見た目を尊ぶ女の子だからこそ、小さな変化も気になる物。
ましてや、彼女はモデルである。
そんな些細な変化を許してしまった自分にも苛ついていたのだろう。
しかし、その根底にあったのは、小さいけれど確かな嫉妬心。
最初から彼の傍に居たのは自分だったはずなのに。このままでは恵太を、瑠衣に取られてしまう、という焦燥感と切実な心境。

もう既に恋の種は、それぞれの心の中に蒔いてあった。
恋心は発芽してしまっていた。
いつも通りの仲間、というのは、もう見せかけのハリボテで、それぞれの心境に、激情の嵐が吹き荒れていたのである。
彼らの心中にお構いなしに、文化祭、そしてハロウィンといったイベントが差し迫る。
様々なイベントを、表面上は、いつものメンバーと切磋琢磨しながら、和気藹々と乗り越えて行く中で。
心中の裏側では、巡る恋は深まっていき、取り返しのつかない混迷は加速していく。

そうやって、乗り越えるタスクの多さに、目を回してしまう恵太だったが。
やるべき事をちゃんとやらなければ、父親の権力で、大切なパタンナーである瑠衣を永遠に失ってしまう。
仕事での共同作業、社交パーティーでの立ち回りなど胃の痛くなる展開が迫り来る中で。

そんな共同作業が、瓢箪から駒のようなコラボ企画を手繰り寄せる。
瑠衣と恵太、同じデザイナーを志す者だからこそ、時に方向性について、反発し合い、いがみ合う事もあったが。
それでも、良いデザインを産み出したいと、抱えてる物を共有しながら協力し合う中で。
価値観が刷新されて、共に成長し続ける。
洋服と同じように、下着業界も、季節ごとに目まぐるしく新作が発表されて、移り変わりの激しい業界。

そうやって、苦悩を分かち合って、業界の裏側を知る事で、偽りだったカップル契約が、熱を帯び始める。
好きな物と好きな物を掛け合わせると、可能性は無限大。
好きな物に対しては、いくらでも熱く語り明かせる二人。
拙い言葉を紡いで、不器用な絆を結んでいく中で。
二人に訪れる思いがけない試練。

自分が好きな物を世の中に受け入れてもらう事は、そんなに簡単な事ではない事。
受け入れてもらう為に、自分の言葉で出来る限り、皆に理解してもらう為に、プレゼンテーションを行っていく事。
下着のコンセプト、材質、デザイン、どの年齢層をターゲットとしているのか。
自分なりに一途に仕事に向き合って、試行錯誤しながら、制作しているつもりでも。
制作会社の代表の首を縦に振らせる事が、なかなかに出来ない。
リテイクにつぐリテイク、改良につく改良といった、自分が当初抱いていたデザインのコンセプトから、かけ離れていく事に葛藤を覚える。

しかし、どれだけ自分が良いと思ったデザインのランジェリーでも、それを万人の女性が着たいと思わなければ、意味がない。
自分なりの着心地の良さであったり、求められている機能性など、しっかりと調査していく為には、男性である恵太には限界がある。
だからこその、共同作業。
女性である瑠衣の意見と力を借りて、本当に良いランジェリーを作っていく。

そして、下着作りの仕事と並行していく瑠衣の父親を欺く為の、ラブラブカップル計画。
瑠衣のツンツンした態度に打ちのめされながらも、へこたれる事なく、悪あがきのアプローチを繰り広げる事で。
彼女のデレも引き出す事が出来た。
しかし、パタンナーの瑠衣にとって、告白よりも重い言葉を無自覚に投げかけてしまった恵太。

その無自覚な言葉が波紋をもたらす罪深き関係。
創作をする者としては、どうしよもなくライバルだが。
恋人として、お互いの良さもちゃんと理解している。
しかし、下着馬鹿すぎる、デリカシーのない恵太の発言によって。
関係性はどんどん混沌へと深まっていく。
お互いに言いたい事を消化出来ずに待ち受けるは、二人の関係性に複雑な想いを抱く父親。

既に対決の火蓋は落とされている。
二人にとっての正念場であり、この戦いが今後の二人を分ける分水嶺となる。
果たして、下着ブランド・リュグのヒロイン達に抱かれた複雑な感情を背負い歩いて。
あくまでも、仕事のパートナーとしての立ち位置を変える事なく。
誘い来る恋愛の火の粉を、恵太を乗り越えられるのか?

そして、恵太の父親である太一もある想いを秘めていた。
立ち上げた「リュグ」を恵太に継承させるつもりがなかったという事。
そんな頑なな意志を貫く父親に、この会社を続けさせたいと願う恵太の想いは届くのか?

瑠衣と育んだ偽物の愛情と絆を武器にして、難攻不落の試練を乗り越えるのだろうか?














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