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読書記録:『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで (GA文庫) 著 岩柄イズカ

【親愛と恋愛、その狭間で揺れながら結びたかった絆】


【あらすじ】

男だと思っていたゲーム友達が、実は白い髪がコンプレックスの内気な女の子だった。

オンラインゲームで相棒としてやってきたユーマこと杉崎優真とシュヴァルツ。
男同士、気のおけない仲間だと思っていたが、リアルで対面した彼は、引っ込み思案な女の子だった。

生まれつきの白髪がコンプレックスで友達もできたことがないという彼女・上城ゆいの為に、友達作りの練習をすることにした二人。
友達として信頼してくれる彼女を裏切るまいと自制するが、無自覚で距離の近いスキンシップに、徐々に異性として意識してしまう。

無自覚・無防備な女友達と織りなす、甘くて、もどかしい青春ラブコメ。

あらすじ要約

 
ゲームで男だと思っていた相棒が実は女子で、優真は親友を越えた関係を築きたいと試行錯誤する物語。


親友は人生を彩る一番の宝物。
趣味が合い、言い合えて、やりたい事を共に出来る。
喜びも哀しみも半分ずつに分け合える。
親友が居れば、人生は何とかなる。
しかし、その親友を恋愛の対象に見てしまえばどうなのか?
優真とゆいは思春期の通り雨の様な関係で。恋愛とするなら下心と罪悪感もある。
それでも、この感情に気付かせてくれたお返しがしたい。 

その「好き」は友情なのか?
はたまた、恋愛なのか?
友情というものは何よりも尊いものである。
そして異性の友達もまた、ラブコメにおいてはテンプレとも言える存在でもある。
だがしかし、永遠に変わらない友情というものは果たして本当に存在するのであろうか?

鴨長明による『方丈記』の一節が示すように。
移ろいゆくのが人の心であると言うのなら。
果たしてその友情は本当に不変でいられるのだろうか?

まるで本当に異世界を冒険しているかのような自由度とゲーム性が売りのMMORPGである「グランドゲート」。
主人公であり、かのゲームにおいてトップクラスの腕前を持つ事以外は普通の少年である優真は、中学二年生の夏休み、ゲーム内でシュヴァルツと名乗るプレイヤーと出会う。

当時は全く知らぬ相手、しかし共に巻き込まれた突発的レイドバトルの中で背中を自然と預け合う。
何故か、二人でいると様々な幸運に見舞われて。
そんな二人が仲良くなるのも、ゲームの中での相棒同士となるのに時間はかからず。
打てば響くかのようなやり取りを繰り広げながら同じ時間を過ごして、あっという間に二年の時が経過した。

そして、高校入学を控えた春休みに、オフ会と称した待ち合わせで、同性の親友だと思っていたシュヴァルツが、実は異性のか弱い少女であった事を思い知る。 

アルビノという先天性の障害により、生まれつきの白髪を理由にいじめられて、心を閉ざして、こもりがち。
そんな彼女にとって優真こそが、唯一の友達。
そして、初めて自分の容姿を否定する事なく、認めてくれて接してくれた優真に、好印象を抱いたゆい。

改めて自分を変えたいと願うゆいの想いを知って、 
優真の義姉であり経営者でもあるネネの力を借りて、ゆいの改造計画を始める。
その克服の日々の中で、互いの変化の芽がゆっくりと芽生えていく。

時には、今までとは違う自分を見せたり、家にお泊りに招いたり。
どこか無垢で、しかし、大胆に。
距離感の近さを自覚できないままに彼と接していく。

そんな日々の触れ合いの中、ゆいの心の中、まだ初恋も知らない、無垢な心に想いは芽生えていく。
何故か彼の事が気になっていく、彼に自分以外の友達の影が見えるともやもやする。
どんどんと目が離せなくなっていく。

長年ゲームを一緒にやってきた親友として接するものの、少しずつ自身の気持ちが変化していく。
自分の感情に蓋をして、湧き上がる葛藤を耐え忍ぶ優真。
友達としての好きが異性としての好きに変化していく過程を踏んで。
友達を恋愛の対象として見てしまう自分を戒める。

髪の色のせいでコンプレックスを抱えて、自分を卑下するゆいに、「変わっているというのは、劣っているという事ではない」と懇々と諭していく。
そんな言葉を受けて、徐々に自分に対して自信を取り戻していくゆい。

距離が近付くほどに、優しくて甘い砂糖菓子のような関係が形成されていく。
こんな関係は、稀有であろう。
同じような境遇で巡り会える確率は、まさに奇跡でるし、運命と呼べる。

青春のさらに手前の、良い意味で幼く純粋な、互いが互いを想いあう気持ち。
優真の献身的な想いと、その想いに100%の好意で応えてくれるゆい。
自信がついたゆいと共に、引きこもりから脱して、新しい人付き合いが出来るように。
いきなり、全ての問題をリアルで解決しようとするのではなく。
ゲームのチャットを織り交ぜて会話する配慮も忘れない。

順風満帆な交流ばかりではなく、時に、無自覚に彼女の地雷を踏んでしまうアクシデントも経験する。
しかし、ぶつかる事を恐れて、踏み出す事を躊躇してしまえば何も変える事は出来ない。
間違ったと思ったなら、素直に謝って和解していく。

互いを大切に思う無二の親友同士であるからこそ、
信頼と好意を言葉にして、誠実に付き合っていく。
無防備に甘えてくれるのも、こちらを信頼してくれている証。
不登校から、学校に通う事で広がる素敵な人間関係を示して、ゆいが学校に行けるように、コミュ障克服の為に、奮闘する。
友達として、手を繋いでゆいと学校に行けるのが、優真の唯一の夢。

変わらない絆と変わる想い。
そして、芽生える想いが咲かす花。
大切だからこそ、相手の心に少しずつ踏み込んで。
不器用に触れ合いながら、変わっていく。
まだ、学校に通うという大願は成就していない。
人より遅れをとっても、始まったばかりの変革の一歩。

そして、積年の想いは芽吹いて、「初恋」と言う名前の花となる。
鏡合わせのように、等しく特別な想いを与え合って。
丁寧に絡めて、深めていく尊い想い。 
色付く想いが、溢れ出してとまらない。
無垢な少女の心は初めて知る。
恋と言う名前の本物の想いを。

果たして、いつの日か、この友情が恋と言う花に変わる時が訪れるのか?
そして、これから二人一緒にどんな高校生活を始めていくのか?

二人の問題を解決した今、紡がれてきた絆で、青い春をどうやって乗り越えるのだろうか?






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