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Reunion

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#詩のような散文

空に堕ちる

空に堕ちる

「その夢も また大変興味深いものですね。」

飯塚さんは 実におもしろいなぁ。とも独り言ちた。

「はぁ そうですか。。
僕はこの夢たちのおかげで
空と海が怖くて仕方ないのです。

果てのない空を覗くと 堕ちていきそうで怖くなるし
深く底の見えない海の映像を見るだけでも 
自分がどこにいるのか分からなくなってしまって怖いんです。」

腕組みをして何やら真剣に考えてくれてる飯塚さんの
グラスが空にな

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おそらく一番最初の僕

おそらく一番最初の僕

夢の研究をしているというその男性は

飯塚さんと言った。

お酒の勢いもあってか 飯塚さんの人柄に安心したのか

僕は誰にも話したことのなかった

真っ白な空間の夢の話をした。

飯塚さんは 僕が一通り話し終えるまで

黙って聞いていてくれた。

そして しばらく考えたのち静かに

「時間軸の空間。」

と なんだかとても嬉しそうに少し興奮しながら言った。

「おそらく その夢の中であなたは
時間

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夢のはなし

夢のはなし

記憶の断片とは違うかもしれないけど
僕には 良く観る夢がある。

まずは その夢のはなしを書いてみようと思う。

どこまでも続く
真っ白な空間。

360度 果ては見えない。

その空間に 僕はいる。

姿はないけど 意識がある。

真っ白な空間には
茶色の玉が 無数に浮かんでいて
それぞれが流れるように動いている。

夢を見る日によって
茶色の玉が速く流れてる時もあれば
留まっているときもある。

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あの森のはじまりの場所

あの森のはじまりの場所

大好きなあの森の見える席に着く。

「ブレンドコーヒー ひとつ。」

始めて入ったカフェ。

森を訪れるたびに 気になっていた場所。

今日は勇気を出して 時の流れを感じさせるドアを引いてみた。

カランカラン。

懐かしい音がした。

店内にいるのは
今主流のカフェでは浮いてしまうような
客ばかりだ。

皆 思い思いのことをしている。

分厚い本を開いたり
タバコをふかしたり
新聞を読んだり。

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