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おそらく一番最初の僕

夢の研究をしているというその男性は

飯塚さんと言った。

お酒の勢いもあってか 飯塚さんの人柄に安心したのか

僕は誰にも話したことのなかった

真っ白な空間の夢の話をした。



飯塚さんは 僕が一通り話し終えるまで

黙って聞いていてくれた。

そして しばらく考えたのち静かに

「時間軸の空間。」

と なんだかとても嬉しそうに少し興奮しながら言った。

「おそらく その夢の中であなたは
時間軸の空間にいるのかもしれないですね。
地球上では普遍的だと言われている時間の流れは
宇宙にはありません。
夢…というより宇宙視点から 
地球の人々の重力や時間の流れというものを
観ている状態なのかもしれません。」

「宇宙には 時間てないんですか?」

「継続的な流れがないんです。その瞬間しか存在しないというか
全ての瞬間が同時に存在するというか。」

「んー。。。理解はできないけど
なんとなくわかるかも。です。」

僕には もうひとつ たまに見る印象的な夢がある。

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その夢の中で 僕は何でも知っている。


今度は真っ白な空間ではなくて

360度足元までも すべて真っ暗な闇のなか。



やはり姿はなく 意識だけの存在。

周りには何もないのだけれど 

全てが在る。



僕は全てを持っている。

全てを持っていることを知っている。

全てが在る事を知っている。

そして すべてを知っている。



僕以外の存在はいない。

だけど すべての存在を感じている。


いったいこれが どんな状態か想像できる?


とても静かなんだ。

穏やかで。

永遠で。

一瞬で。



始めは僕だって何も感じなかったさ。


でも あるときふと氣付いてしまった。


大きな大きな くしゃみをした瞬間だった。

ひどく
ひどく退屈なことに。


なんにもなくて
なんでもあるということが。


永遠にこのままだという事が
急に堪らなく耐えがたいことに感じた。


くしゃみと同時に
拡がった大きな波紋の先を見てみたくて
僕は 旅に出ることにした。


くしゃみのはじまりは
この真っ黒な空間のはじっこ。
きっと最果ての地。


真っ黒な空間を さまよっているうちに
僕の欠片は少しずつあちらこちらに散らばっていった。


だんだんと ちいさく
だんだんと わからなくなっていく。


それでも漂って漂って
どれくらい経っただろうか。


僕はひどく小さくなり
知っていることも とても僅かになった。


あ、もう少しで
くしゃみのはじまりに届きそう!


遠くに 闇の色ではないなにかが見える。

だんだんと 最果てに近づき
見ていられないくらい鮮やかに感じるようになった。


もう少し。

もう目の前だ。






いつもここで目が覚める。




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