たかはし@富山

地元の農山村の鳥を細々と調べています。 某動物園職員。 Twitter https:/…

たかはし@富山

地元の農山村の鳥を細々と調べています。 某動物園職員。 Twitter https://twitter.com/eagleduck

マガジン

  • 応用動物園学試論

    動物園の日々を変な方向に深く考察します。

  • 脱力系スピノチストの黄昏

    オランダの哲学者、バールーフ・デ・スピノザの哲学「神とは自然、自然の法則そのものである」という思想を受け入れて「スピノチスト」として生きている動物園・鳥類学関係者が、身の回りのあれこれをスピノザ的に解釈してなんとか人生をやり過ごそうとしているエッセイ集です。

  • 新鳥文庫

    鳥にまつわったりまつわらなかったりする創作スペースです。ジャンルはバラバラ。

  • 野鳥沼探検記

    野鳥観察という沼にはまってしまった哀れなひとが鳥を中心とした日々をつづるフォトエッセイです。

  • 調査報告書

    富山県内の野鳥について調査した報告書類です。共著含みます。

最近の記事

動物園をほかの何かに例えることで分かってしまったつもりになる現象について

前回、動物園が「Amazonほしいものリスト」で支援を受けることの是非というか影響を考えたのですが、その思考の中でやはり思ったのが「エンタメ化の助長」という傾向と、「主目的のための財政基盤」のバランスでした。 で、やっぱりこの話に戻ってしまいます。「動物園とはいったい何なんだ?」です。 世代を超えてもう何周も回っている問いですし、動物園不要論や廃止論に行きついてしまう動物園職員もそこそこいるくらい出口のない議論です。 動物園には、図書館や学校や博物館とは違い、法的に定め

    • 動物園の「Amazonほしいものリスト支援」について

      Amazonの「ほしいものリスト」で、一般の方に動物の飼育に必要な物の寄付をお願いする方法が公立の動物園でも普通に行われるようになりました。 動物園はどこも運営費がカツカツですから、オンラインでしかつながっていない人や、ある動物種や動物個体のファンの方が遠隔地から支援をしてくれるのであれば、経営上こんなにいいことはありません。 特に地方都市の公立動物園では、居住人口、特に子供の人口が減り、入園者数が落ち込む中で、入園者ではない関係人口(ファン)を増やして応援を依頼し、収入

      • 動物展示の著作権 ――オマージュとパクりの狭間で

        動物園や水族館を巡ると、以前他所で見たものとよく似た展示、というのに出くわすことがある。 例を上げるなら、 ・水槽の中のトンネルをくぐりながら魚を見上げる ・放飼場の中に顔を出せるトンネルがある ・アクリルに一部穴が開いていて、動物が手を出せる ・大型ネコ科動物を真下から見上げる ・園路の上空を横切るように霊長類の綱渡りが配置されている ・肉食獣がロープで吊り下げられた餌やデコイに向かってジャンプする ・霊長類の放飼場にあるのと同じジャングルジムが人間側にもある ・「人間

        • バタフライエフェクトとスピノザの神

          バタフライ・エフェクト(蝶々効果)という言葉があります。 南米のジャングルの小さな蝶のはばたきが、北米大陸の巨大竜巻の遠因になりうる、という例えで、元来は「ごく小さな力が加わることでも、力学系全体に多大な影響を及ぼし得る」、という、気象予報や温暖化の予測不能性の例えとして使われている言葉ですが、歴史に「if」を持ち込む語としても定着しています。 ・もしもヒトラーが美術学校に合格していたら、第二次大戦は起こらなかっただろうか? ・もしもナポレオンがモスクワを攻略していたら

        動物園をほかの何かに例えることで分かってしまったつもりになる現象について

        マガジン

        • 応用動物園学試論
          30本
        • 脱力系スピノチストの黄昏
          3本
        • 新鳥文庫
          21本
        • 野鳥沼探検記
          52本
        • 調査報告書
          17本

        記事

          SNSの『映え写真』と80年代ポップアートの収斂進化

          私見ですが、インスタグラムを中心とした写真系SNSで流行っている写真には、彩度やコントラストが高いビビットな作風が多いです。 例を列挙すると、 ・マジックアワーと呼ばれる、夕焼け空のグラデーション ・チューリップ畑と菜の花畑と桜並木と雪山が横4列に並んだ写真 ・気嵐(けあらし)に包まれた朝焼けの海と岩と山脈 ・アジサイを手水にみっしり浮かべたやつ ・傘や風船や気球やランタンやキャンドルの群れ ・イルミネーションやプロジェクションマッピング ・めっちゃ青い空とめっちゃ青い海

          SNSの『映え写真』と80年代ポップアートの収斂進化

          自己複製子は永遠の夢を見る ~スピノザとダーウィニズム

          【前回までのあらすじ】  哲学者スピノザはいろいろ考えた結果、唯一絶対の神とは「自然そのもの、自然の法則そのもの」であると確信するに至りました。そうするとすべては自然科学の法則によって決定された化学反応の連鎖でしかなく、自然の一部である人間も、神=自然の法則の中でしか生きられない、どう頑張ってもあがいても「その頑張りやあがきの度合いすらも神が事前に想定した運命、その結果も決定付けられた自然の営みであって偶然などはない」となるのであるが、じゃあ人間はどう生きればいいっていうん

          自己複製子は永遠の夢を見る ~スピノザとダーウィニズム

          富山県生物学会の宣伝をします

          我が富山県には「富山県生物学会」という任意団体(学会)があります。 なんだか小難しい名前ですが、年会費3,000円さえ払えば誰でも入れます。 元々は大正時代に富山師範学校(現・富山大学)の生物学系教員が作った「富山博物学会」が前身だそうで、来年で設立100周年を迎えます。 富山県から「レッドデータブックとやま」の改定作業、調査業務を委託されていたりもする、専門家集団でもあります。 この学会を運営している中心メンバーは ・魚津水族館の人たち(事務局で会長は前館長) ・富山

          富山県生物学会の宣伝をします

          子撫川の鳥類

          子撫川の鳥類 富山の生物 63(2024)33-40 富山県生物学会 要約:2022年9月から2023年8月までの間、富山県の子撫川流域において鳥類の生息調査を行った。調査 の結果78種の鳥類が確認された。本調査地の鳥類相の特徴として、ラインセンサス場所には森林・灌木 性の種が多く農村部の種が少ないこと、冬期の子撫川ダム湖には魚食性の水鳥が定着することが挙げら れた。

          脱力系スピノチスト宣言

          私はお寺にも神社にも行かない無宗教無信仰ですが、いちおう家には神棚があり、浄土真宗の門徒ということになっています。しかし、どちらにも自ら手を挙げて入信した覚えはありません。 私が学生時代から20年くらいいろいろ学んで結果自分で選んだ宗教は「スピノチスト」、それも「脱力系スピノチスト」です。 もちろんそんな言葉はこの世にありません。私が勝手に作って勝手に信じている信仰です。 本稿では、脱力系スピノチストとその素晴らしさについて記載していきます。 1.スピノザという哲学

          脱力系スピノチスト宣言

          迷子の行動学

          大型連休になると、動物園は混雑します。 そして動物園に来てテンションが上った子供は、先へ先へと走りがちです。 結果として、迷子が発生します。これは動物園の必然です。 全ての子供が終始落ち着いて行動し、一件も迷子が発生しない動物園は、どこか根本的に間違っています。 動物園と迷子は、居酒屋と焼きおにぎりのように切っても切れない関係なのです。 そこで本稿では、動物園での迷子について、⓵保護者から迷子の捜索依頼を受けた場合と、⓶迷子の子供を保護した場合に分けて、行動と対応につ

          鳥類記録 2024/5/2

          【調査地】富山市ファミリーパーク 目撃記録 【天候】晴れ 【観察日】2024年5月2日 【観察種】 [種名] [数] 1.カルガモ 2 2.ホシハジロ 2 3.キンクロハジロ 7 4.カイツブリ 2 5.キジバト 1 6.カワセミ 2 7.コゲラ 1 8.サンショウクイ 6 9.ハシボソガラス 2 10.ハシブトガラス 1 11.ヤマガラ 7 12.シジュウカラ 5 13.ツバメ 3 14.イワツバメ 6 15.ヒヨドリ 8 16.ウグイス 2 17.ヤブサメ 2 18.エナ

          鳥類記録 2024/5/2

          伊吹山アベンジャーズについて

          鳥が好きなだけなのに。 いやもう、ほんと、みんな偉いわ。偉すぎるって。 SNSなんて本来気晴らしの場じゃん?特にツイッターなんて「今日はこんなご飯を食べました」「子供がなんか面白いことを言いました」「雲がうんこの形に見えました」って報告し合って、クスってするの。それが仕事や学業の合間の正しい過ごし方でしょうに。 鳥が好き、猛禽が好き、イヌワシが好き、な人も、その道でご飯を食べている人も、ちゃんと正論をもって諭そうとしてるんだもの。対価無しで。仕事や学業で疲れてるのに。本

          伊吹山アベンジャーズについて

          「動物園がネバーランドすぎてなかなかフィールドに卒業しない」という謎ジレンマの正体

          一個の怪物が動物園界を徘徊してゐる。 「動物園は野生動物や自然環境に目を向けてもらうための施設」 「だから動物園にだけ通っている人よりも、フィールドで野生生物の観察もしている人のほうがレベルが上」 「何ならフィールドを生業としている狩猟者さんや研究者さんがピラミッドの頂点で、すそ野の皆さんはその高みを目指すべき」 「動物園は入門者向けの楽しいゲレンデで、一定以上のレベルになったら野生・野外・屋外を志向するものだ(べきだ)」 「よって、ずっと動物園にだけ通い続けている人が増え

          「動物園がネバーランドすぎてなかなかフィールドに卒業しない」という謎ジレンマの正体

          「あの動画」から動物園について考えてみた(試論)

          枝にとまるカワセミが画面下(におそらくある水面)に飛び降り、魚をくわえて戻ってくる。すると、同じ枝にとまっていたメジロがその魚を奪い取り、飲み込んで食べてしまう―― 2024年3月初頭にSNSに出回った、非常にインパクトのあるショート動画です。 これが話題になりました。そして、物議を醸しました。CGを使ったフェイク動画ではないのか?捕まえて閉じ込めた個体ではないのか?等々の「批判」が主でした。 で、私が思ったのは、「もしもこの動画が動物園で撮られたものだったら、世間の反

          「あの動画」から動物園について考えてみた(試論)

          明治時代の理科の教科書がやたらと道徳的だった話

          凶悪な未成年犯罪が起こると、そのたびにワイドショーは「心の教育が不足しているのではないか」という論調に流れます。 道徳教育の時間を増やそう、とか、戦前の教科「修身」を復活させよう、とか、年配のコメンテーターは懐古主義的な意見をよく並べますが、次の大きなニュースが来るとすぐに忘れられて、数年後にまた少年による残酷な事件が起こると復活してくるので、これはもう数年ごとに起こるブームのようなものでしょう。 ところで、でも本当に「昔の教育は今よりも道徳的だった」のでしょうか?

          明治時代の理科の教科書がやたらと道徳的だった話

          ライトハウス英和辞典で遊ぼう 第4話 ホワイト氏の野望

          (※最初から読みたい方はこちらへ) 主な登場人物 ホワイト氏  政界進出と大きな野望を持つマルチビジネスマン。 ブラック氏  様々な団体で顔役を務める、地元の名士。ホワイトの成功の鍵を握る人物 【第1章 政界への野望】 senior【上役の】 Mr.White is senior to me in our firm. ホワイトさんは会社では私の上役です  会社ではかなりの地位にいるホワイトさん。 absence【不在、欠席】 Mr.White in in char

          ライトハウス英和辞典で遊ぼう 第4話 ホワイト氏の野望