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動物園の「Amazonほしいものリスト支援」について

Amazonの「ほしいものリスト」で、一般の方に動物の飼育に必要な物の寄付をお願いする方法が公立の動物園でも普通に行われるようになりました。

動物園はどこも運営費がカツカツですから、オンラインでしかつながっていない人や、ある動物種や動物個体のファンの方が遠隔地から支援をしてくれるのであれば、経営上こんなにいいことはありません。

特に地方都市の公立動物園では、居住人口、特に子供の人口が減り、入園者数が落ち込む中で、入園者ではない関係人口(ファン)を増やして応援を依頼し、収入を確保しよう、という取り組みは大変重要です。理解できます。

しかし大原則として、本来、必要なものは予算を組んで購入すべきです。

ほしいものリストによる寄付に対する依存が恒常化してしまうと、本来予算計上すべきものまで「寄付してもらえばいいじゃん」となり、削減対象になる可能性が出てきます。

はたしてこれは良い流れでしょうか?

行政から言わせれば、「動物園はもっと自助努力をせよ」ということなので「ほしいものリストお願い作戦」は妥当な解決策とも考えられるのですが、寄付ありきの予算建てってけっこう危ういですよね。

特に「ほしいものリスト」の中身は、飼料や建材、作業道具のようなものよりも「動物たちのために」を前面に出して、動物福祉・飼育環境改善のジャンルに必要な消耗品や備品をお願いしていることが多い(ような気がする)ので、この取り組みが進めば進むほど動物の福祉向上のための予算が削減され続け、動物の飼育環境の向上は寄付者の熱意にかかってくる、という本末転倒の状況になるように思われるのです。(あくまで予算上の話ですが。)

さらに施設側の取り組み方について問題点を言うなら、寄付を得やすくするために、人気のある特定の動物種や特定の動物個体のために!お願いします!と写真入りでお願いされていることも多いのです。ここが結構気になるポイントです。

ぶっちゃけて言うとシステムがホストクラブに似ています

「推しの動物のために何かしてあげたい」という感情を過剰に引き出す演出は、施設管理者ー飼育動物ー来園者、という三角形の形を大きく歪ませる可能性を秘めています。具体的に言うなら、高額寄付者が物言う株主のように施設側に意見をすることが正当化される、という可能性です。

特定の動物個体名を挙げて多額の援助を募った場合、その個体が搬出されたり死亡したりした際にはどのようなことが起こるか、想像に難くありません。

そんなわけで、この「Amazonほしいものリスト支援に運営が依存すること」についての答えは私の中ではまだ出ていません。

依存しすぎない範囲ならいいとも思うのですが、依存しすぎない範囲というのもよくわかりません。

何万円までならいいのか、とか、園全体に対しての寄付のお願いならいいのか、とかの線引きですね。

そんな私のモヤモヤなど関係なく、このおねだりシステムの先行事例が周囲の園館で増えると、行政当局からは当然のように取り入れるよう圧力が加わるのではないか、とドキドキしています。

(※保全のための巨額のクラウドファンディングとどう違うんだ!という問いの答えは別途思案します。)




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