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財前ぜんざい@オリジナル小説
2022年4月19日 22:54
「おぉ!雅臣、戻ってきたか!」 私たちが部屋を出てきて、すぐに声を上げたのは眞琴だった。隣には英莉もおり、No.3の和之、佐々木と話をしていた。その脇には怯えた顔をした清水と圭もいる。 「なんだ。お前たち来てたのか」 清水と圭を見た雅臣は鼻で笑った。 「眞琴に捕まったんだよ」 清水がそう答えると、圭が「助けてくれ、雅臣……」と顔を青くして呟いた。 「紅羽さんは薙刀ができるんだって
2022年4月17日 21:42
「だが問題が一つ残ってる。雅臣」 私とは対照的に、雅臣に対して彼は冷たい目を向けた。雅臣は「はい」と低い声で返事をして、その場に立ち直した。 「お前はNo.6に恨まれるようなことをしたの?」 私は身を縮めた。話の流れが雅臣を責めるような方向へ、流れていってしまったような気がしたのだ。 「いいえ。常にランキング変動の、下からの脅威は感じていましたが、1度もナンバー戦を申し込まれたことはあ
2022年4月16日 20:42
「はじめまして。紅羽さん」 一つに束ねた髪は片側に寄せ、耳にはシルバーと赤いピアスをしている。優しい目でこちらを見る姿は神々しく、何か大きな力を感じた。 なんて美しい人なのだろう。私は彼から目を離すことができなかった。 「憑依能力者組織へようこそ。私はこの組織を統括している、憑依者No.1の岸浦です。よろしく」 私は大きな勘違いをしていた。組織のトップというから、てっきり年配の人間か
2022年4月14日 19:14
「ここだ」 それまで番号の振ってあった扉とは明らかに違い、組織のトップの部屋にふさわしい高級感のある、重たそうな扉だった。 「本当にいいのか……?」 扉に手をかけた雅臣が、最後の確認のように尋ねてきた。 今まで納得していたはずだったのに、私は最後の最後で心が揺らいだ。この一歩が、私の人生を大きく変えてしまう一歩になりはしないか、と。 「大丈夫です」 私は自分の服の裾を掴み、俯い