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私たち夫婦はシェアハウスで知り合った。

私たち夫婦は、73人が暮らす大規模なシェアハウスで知り合った。

そのシェアハウスに入居する直前、私は結婚を意識して同棲しているパートナーがいた。交際は順調に進んでいると私は思っていたが、彼はある日を境にしてほとんど家に帰ってこなくなった。帰ってこなくなった理由を調べてみると、彼は私の他に6人の女と付き合っていることが発覚した。

甲斐性のないその男と別れ、失意のままにたどり着いたシェアハウス。そこは地下にシアタールームがあり、屋上には菜園があるようなかなり大規模なシェアハウスだった。

今でこそシェアハウスは珍しくなくなったが、当時はソーシャルアパートメントと呼ばれはじめ、社会人同士のゆるいつながりを重視したシェアハウスはかなり珍しかった。新しい物好きの社会人が集まってきて、毎日がサークル活動のようだった。毎晩何人かで体幹トレーニングをし、大きなキッチンで寄り集まって一緒に料理をしたり、時間帯が同じものたちが一緒にごはんを食べたり、毎週月曜日は“シネマンデー”と称して映画鑑賞会をしたりした。

73人もいると、その中で自然とグループが出来上がっていき、やがて、グループごとに飲みに行ったり旅行に出かけたりするようになった。私は恋愛に疲れていたので、恋愛をするつもりなど毛頭なかったのだけど、歳の近い人たちと接し、生活を共にするうちに、1人の男性とお付き合いすることになっていった。それが後の夫である。

そのシェアハウスは、みんな大変仲が良く、居住者同士で結婚したカップルが何組かいた。


そのうちの1組が結婚してシェアハウスを出ることになった際、ちょうど私も契約更新の時期だったこともあり、私と彼、その夫婦と4人で一軒家を借りてシェアすることになった。

一軒家でのシェア生活が始まって半年ほど経ってから、私と彼は結婚した。2組の夫婦でのシェア生活は、思いの外楽しかった。

結婚する前に一緒に住んでみると、擬似的に夫婦生活を体験することができるのでよい、とよく言われるが、確かにその通りだと思う。一緒に生活してみて、特に不自由も感じなかったので、結婚しても大丈夫だと思ったのだ。

しかし、そこで思わぬことが発覚した。頼りがいのある人だと思っていたが、実際には自分で何も決められず、肝心なことを話そうと思うと、いつも口論になり、最終的に逃げ出してしまうということがわかったのだ。

最初に夫が家出をした時は、私だけでなく、一緒に住んでいた夫婦も夜を徹して夫の行方を探してくれた。結局その日、夫は帰宅せず、みんな寝不足のまま仕事に出かけた。

翌日の夜、夫は何事もなかったように帰宅した。みんなで行方を探したと伝えても「ありがとう」でもなければ「ごめん」でもなく、ただ、しれっとそこに存在していた。

その後も、2組の夫婦で暮らしていた2年間で、夫は数回家出した。そんなとき、一緒に住んでいた友だち夫婦はいつも私を慰めてくれた。

今回、夫の家出について証言してくれるとしたら、当時一緒に住んでいた友だち夫婦以外にないと思った。問題は、離婚調停のために証人として証言してくれるかどうかだ。私のために証言をしてくれるということは、夫にとって不利なことになる。それを共通の友だちが受けてくれるのだろうか……。

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