痩せすぎの健康被害

痩せる=健康???

肥満が様々な病気の原因となることはよく知られています。世界的にも肥満の人口は増え続けており、ダイエットは多くの人の関心を集めるトレンドです。 一方で、日本では過酷なダイエットによる若い女性の過度の痩せも問題になってきています。 欧米諸国では若年層の肥満増加が問題になっていますが、わが国では若年層に低体重が増えてきています。

痩せた女性(BMI 18.5 kg/m2未満)の比率が先進諸国の中で最も高く、特に若年女性では、痩せ願望を反映してその比率が約20%と極めて高くなっています。 そして痩せていることは肥満と違った機序で健康を脅かすことが徐々に明らかになってきています。 その一つが糖尿病です。

痩せた女性に糖尿病候補生が多い!?

"体重が増えて、太ってくると糖尿病になりやすくなる" これは一般の方にも広く認知されていることです。 しかし昨今の研究で、意外なことに痩せていても肥満と同等に糖尿病のリスクが高いことがわかってきました。

インスリンの投稿でも紹介しましたが、インスリンとは血液から栄養を細胞に取り込み、筋肉や脂肪といった身体の組織を作るためのホルモン、いわば太るためのホルモンです。 しかし、このインスリン分泌量は日本人含むアジア人は欧米人と比較しても少ない傾向にあります。つまり我々日本人はアメリカ人のような肥満体型になるのは難しく、太る前にインスリン分泌能力が低下して、糖尿病になることが多いのです。

これに加えて、過度なダイエットにより、運動量を増やさずに食事量を減らすエネルギー低回転タイプの人は糖尿病の前段階である耐糖能異常が起きやすいことも分かっています。 そして今回の研究はあえて「若年層」をターゲットを絞り、病気とは無縁のような若い女性でも、過度なダイエットにより耐糖能異常が起きるのかどうかを調べられています。  

瘦せ型と標準体重で比較

今回の研究の概要です。 被験者は全て18-29歳の若年女性。 BMIに基づいて、痩せ型グループ(BMI 16.0-18.49 )と標準体重グループ(BMI 18.5-23.0)に分けます。 どちらのグループも、耐糖能異常かどうか判定するための臨床検査である75g 経口糖負荷試験を行い、耐糖能異常(糖負荷2時間後140mg/dl以上)の割合を調査しました。 これは砂糖水を一気飲みしてもらい、その後の血糖の下がり方を見る検査です。 正常であれば、口から食べた糖を身体が吸収し、血糖が上昇します。それを感知してインスリンホルモンを分泌して血糖が徐々に下がってきます。 もし耐糖能異常があれば、この下がり方が遅く、いつまでも血糖が高い状態が維持されます。  

痩せ型の女性では耐糖能異常の割合が約7倍高い

その結果は驚きです。 標準体重に比べて、痩せ型の女性では耐糖能異常の割合が約7倍高いことが明らかになり(13.3% vs 1.8%)、その率は米国の肥満者における割合(10.6%)よりも高い率でした。

    な、なんということでしょう...。 瘦せ型の人は、肥満体型と同等もしくはそれ以上に糖尿病のリスクにさらされている可能性がある....!!!  

理由は筋肉量の少なさと脂肪過多の食事

なぜこのような結果になったのでしょうか。 論文の中では2つの要因が指摘されています。 1つ目が筋肉量が少ないこと。 耐糖能異常はインスリンの量が減ること、インスリンの効きがわるくなることで発生します。 筋肉はこのインスリンの効きをよくする作用があるのですが、運動量を増やさずに痩せた結果、筋肉量が極端におち、それに付随してインスリンの効きが悪くなってしまった可能性が指摘されています。 実際に体内のインスリン抵抗性(インスリンの効きの悪さ)や脂肪組織の状態を測定すると、痩せているのにも関わらず中年肥満者と同程度ということがわかりました。やせているのに肥満と同じ状態、っていうことです。これを代謝性肥満と呼びます。

  2つ目は脂肪の多い食事です。 脂っこいものを食べていなくても、食事量全体を減らしているために"相対的に"脂質の割合が増えます。この相対的に食事の脂肪割合が増えると、インスリン抵抗性が悪化することが分かっています。

これはあくまで推測ですが、ミルクティーやフラペチーノ、菓子パンなどの、若い女性が好きな洋菓子系の食べ物は脂質が多い傾向にあります。 これらを食べつつも、太るのを嫌って普通の食事を避ける、いわばお菓子で食事を置き換えることを続けると、全体量は少なくても、相対的に脂質過多の食事になってしまっているのではないかと考えられます。  

運動してればOK

詳細なメカニズムや今後の対策に関しては今後の研究に期待されますが、ひとついえることは、運動しないダイエットは太ることと同じくらい健康に良くないということです。 痩せるには食事を減らすだけじゃなくて運動も必要と散々言われておりましたが、今回の研究はそれを科学的に裏付けるものだと言えます。やっぱ運動は必要。

まとめ

・食べない動かないダイエットは糖尿病まっしぐら
・体重は痩せてても肥満と同じ状態になりうる


引用
Prevalence and features of impaired glucose tolerance in young underweight Japanese women Motonori Sato et al. Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism
日本人低体重若年女性の耐糖能障害(IGT)の割合と特徴  

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