女王陛下のお気に入り
「敵が目の前にいなくなった今の方が怖い。どこから狙われているのかが見えないから」
2人の女性が女王の寵愛を争う、という18世紀英国版大奥みたいな物語。
耳に優しい言葉が愛なのか。噓はないが容赦なく厳しい言葉が愛なのか。孤独な女王はどちらを選ぶのか。
女性性が強い女性と、男性性が強い女性の駆け引きが、美しい宮殿の奥宮で続く。この王宮のなんと美しいこと!!!欧州に今も残るミュンヘンの王宮とかマドリッドの王宮とかを思い出す。その王宮内を、これまた豪華絢爛な衣装の女性らが行き来する。これだけでも眼福もの。
さらにカメラ!魚眼カメラみたいな広角カメラワークが随所に使われている。美しい王宮の両端は歪み、天井は床に、床は天井に迫る。左右の視野は広いのに、閉所恐怖症のように息苦しくなる。両生類の冷たい目でねっとりと見られているような感覚。そのいびつな空間の端っこに、たっぷりとした色とりどりのドレスを纏った、おすまし顔の女たちが行き交う。
... 怖い...
夜ともなれば、ロウソクの明かりだけでシーンが進み、この閉所感が更に倍増する。ここは魑魅魍魎の住まう場所。闇に紛れて何が潜むか、分かったものではない。
アップダウンを繰り返し、まばたきも出きないほどに魅入っていたら!
終わった...!!!!!
ここで終わるのかい!!!!ってところで幕切れして、思わずうがっと声が出た。
唖然呆然と、これまたデザイン工学的に美しいクレジットを眺めていたら、途中からびっくりするような仕掛けがあった。
この仕掛けは、絶対に映画館で体験して欲しい!!!!!!
目の前にいない敵。草原をゆらす風の音、カエルの鳴き声。雁の呼び声。どこまで気を張ればいいのか。神経を緩める時間などあるのか。何を信じればいい?どこまで欺瞞を続ければいい?
そんな緊張感が最後の最後まで続く、すごい作品でありました。ヨルゴス・ランティモス監督、すごい。
間もなく本上映は終わってしまうけれど、都内だと早稲田とか飯田橋ギンレイとかの2本立て映画館にカムバックするだろう。ぜひその時に!!
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