千人伝(八十一人目~八十五人目)
八十一人目 鏡原
野原には草が生えている。鏡原には鏡が生えている。
鏡原に生える大小極大極小、ありとあらゆるデザイン、割れた鏡にこれから割れようとする鏡、無限に近い鏡の中で生まれたのが、地名と同じ名を持った鏡原である。
人である鏡原は鏡原に迷い込んで出られなくなった男女から生まれた。鏡原に生える鏡の中には、現物はなくとも食料を映し出す鏡があり、その前に立てば栄養を取れるし、稀に中に入ることの出来る鏡もあった。
ある日合わせ鏡の奥の奥まで入り込んでしまった鏡原の両親は帰ってく