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THE ミートソースムービー

イタリア料理には「ソフリット」と呼ばれるものがあります。

玉ねぎ、人参、セロリをみじん切りにしてオリーブオイルでじっくり炒め、野菜の旨味を最大限に引き出した旨味の素です。主に煮込み料理に使われる事が多いです。基本的な割合は、玉ねぎ2個に対して人参1本とセロリ1本。
もちろん最終的な仕上がりのイメージや作り手の考え方によって変化します。

そんなソフリットを使用する一番身近な料理といえば「ミートソース」です。

カリッと焼いた挽肉にソフリットを混ぜ合わせ、赤ワインをドボドボドボっと注ぎ、水分がほとんどなくなるまで煮詰めたら、トマトホール缶をドボドボドボっと入れて、じっくりコトコト煮込むこと1〜3時間。この辺も個人差があります。ちなみに私ははあまり煮込まない派なので、長くても一時間です。


話は変わりますが、
「ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド」という映画があります。

クエンティン・タランティーノ監督が、シャロン・テート殺人事件を題材に、豪華俳優陣を使い、タランティーノ節を炸裂させ歴史を塗り替える映画です。
これがまさに一級品のミートソースのような映画でした。


ソフリットには、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、ダコタ・ファニングを要し、完璧な旨味の素を作り上げています。
そして、ミートソースの花である挽肉は、マーゴット・ロビー。美しさとかわいらしさを交え、悲劇のヒロイン⁈であるシャロン・テートを愛嬌たっぷりに演じています。
更にアル・パチーノ率いる名脇役達が、上質な赤ワインの如く映画に深みを与え、
その全てをタランティーノ監督がジューシーなトマトホール缶になりすまして、今世紀最高のエンターテイメントにまとめあげます。

これはもう「青の洞窟シリーズ」などといったレベルではないです。完全に三つ星、いや、
「ファイブスター」という規格外のレストランのミートソースです。

知識、技術、経験、センス、全てが合わさって
はじめて作り出される味わい。

161分ある映画が私には一瞬でした。
もっと浸かっていたい、もっと見ていたい。
そう思わせてくれる最高の映画でした。


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