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「ぴえんこえてぱおん」にも学術的説明が…!?【読書記録#20】【『言語の本質』今井むつみ・秋田喜美】

新書大賞2024の第1位という人気の書籍ということで購入。表紙を見てみると、どうやら各界の著名人が絶賛しているらしい。学生時代に言語学に関する本を少し読んだことがあり、気になったこともあり読み進めることに。

本書はオノマトペ研究の最前線を行くふたりが執筆している。ふたりがオノマトペについて話していると最終的に必ず「言語の本質とは何か」という問いに行きつくらしい。ということはオノマトペを紐解けば、言語の本質に近づくことができるのではないか。その考えから出発して、本書は論を進めていく。

学術的なテーマなので、数々の研究やちょっと大学の講義でかじったぐらいの人間でも聞いたことのあるような名前の研究者が出てきて、理解するのに時間がかかるが読み応えのある内容だった。

オノマトペが人間の言語習得においてどのような役割を担っているのか、核国のオノマトペに共通点はあるのか、などなどオノマトペだけでこんなに研究の幅が広がり、本質的な議論になるのだなと勉強になった。

本noteのタイトルにもあるが、近年「ぱおん」というオノマトペに新たな価値が付与された。もともとは象の鳴き声だったのだが、「ぴえんこえてぱおん」という若者言葉が流布したことで、「ぱおん」に非常に大きい失意や悲しみ、場合によっては喜びの感情を意味するようになった。

これは言語がどのように進化するのか述べられている章で、およそ2ページ程度で説明されているのだが、馴染みのある(?)言葉だったので親しみやすい内容となった。同時に、ある種ネタのような言い回しでも分析対象にし、今まで見出してきた言語のルールと相違ないと結論付けているのがまた面白い。

この表現は、もともと存在していた「ぱおん」というオノマトペに、ゾウの大きいイメージ、さらにその鳴き声が大きいというイメージをかぶせて作られたのだろう。人を動物に見立てるのは、「一匹狼」や「巣立ち」のような表現に見られる非常に一般的な隠喩である。また、音象徴的は、「ピエ pie」が「パオ pao」になるわけなので、第2章で見た「「あ」は大きく、「い」は小さい」というパターンに見事に合致している。

『言語の本質』P.147

「ぴえんこえてぱおん」ってどんなつながりなのだろうと考えたときに、自分では「「ぴえ」と「ぱお」が似ているし「ぱおん」ってなんか面白い響きだよね」ぐらいの浅はかな解釈しかできなかったが、知見のある人間が分析するとこうも違うのか、と衝撃を受けた。

本書の命題である「言語の本質とは何か」という問いには本noteではネタバレ回避のために伏せておく。普段何気なく使っているオノマトペについて、詳細に論じられていて納得のいく説明がたくさんなされているので、知的好奇心を満たしたい人にとって有意義な本だと思う。

ぜひ手に取って読んでもらいたい、おすすめの1冊である。


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