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読書感想文・2023年課題図書「高学年向け」本の選びかた byせたがや作文教室

低学年向け課中学年題図書紹介のつぎは、中学年? 
いえ、先に「高学年向け課題図書」の傾向と対策をいたします。

何せ、高学年は中学受験が控えています。
読書感想文は、なるべく書きやすいもので、さくっと書いてしまいたいもの。ですので、ずばり、書きやすい順にご紹介します。

しかし、課題図書は年々、子どもが書きやすい本を、わかりやすい本をと、余計なお世話をしすぎです。「いい本」ではなく「読書感想文が書きやすい本」に寄せているところが、嫌な感じです。個人的な見解です。

もちろん、お子さんのタイプによって、書きやすい、書きにくいというのがあるのですが。ただ今回、高学年の部に、あからさまに書きやすい本が、入っています。

それが、この本です。

「大地をうるおし平和につくした医師 中村哲物語」

はい、伝記です。しかも、結構最近の偉人です。
凶弾に倒れたニュースを、11歳、12歳は知っているかな? 知らないだろうなあ。アフガニスタンで、医師でありながら、
「飢餓と水不足を何とかしないと、人はどんどん死んでいく。」
と思い立ち、独学で土木を学び、水路をつくって、本当に水を引き、作物を作れるようにした人。

干ばつに苦しむ人たちのために、汚い水を飲んで下痢で死んでいく子供を減らすために、きれいな水が飲めるようにした人。命がけで、土木作業も担います。文章も読みやすい。

[読書感想文の書きかたアドバイス]

この本は、いい本なのです。まるで、課題図書になるために書かれたよう。

というのも、いろんなところに、問題提起が書かれています。
「日本は蛇口をひねればきれいな水が出てきますが、わずかな汚れた水しかない国もあるのです。それを飲んで、赤ちゃんや子どもは下痢を起こして死んでしまいます」など、この場面で、

「こんな問題について、こんなことを考えてみてね」

と、それぞれていねいに書かれています。だから、書きやすいのです。
その中で自分がひっかかった「問題提起」について、自分が思ったこと、考えたことを書けばいいだけ。

しかし、個人的には好きなタイプの本ではありません。
「こんな問題があって日本とこんなに違う。こういうことを考えてみてね。」と言われなければならないほど、小学校高学年は、幼稚でしょうか?

普通のノンフィクションとして中村医師を取り上げた本を課題図書にしても、そのくらいの問題意識は持てるでしょう。「問題点を手取り足取り教えている感」「課題図書を狙った感」が透けて見えて、自分が小学6年生なら、この本で読書感想文は書かないだろう。

いい本ではありますが、名著ではありません。

「ふたりのえびす」

青森県の伝統的な踊りを、「都会から転校してきた、女子が王子と呼んで注目する子」と、おちゃらけキャラの」主人公が、踊ることになった、と言う話。偶然なのか恣意的なのか、低学年の「これで、いい!」と同じく、「人の目」を気にする主人公が出てきます。彼は「キャラを演じている」と、自覚しています。

もちろん、最終的にキャラからの脱却を果たすのですが、いわゆる、友情やいじめ、上下関係、東日本大震災(今の高学年はこの年に生まれた!)などがからまり、「ザ・課題図書」と言う感じ。つまり、友情が絡んでハッピーエンドというパターンです。いいお話と言う意味ですよ。

[読書感想文の書き方アドバイス]

何より、「キャラを演じている」と思っているお子さんは、ぜひ、この本で読書感想文を書いていただきたい! この本の読書感想文が一番、読みたいですね。

ただ、これも課題図書を選んだ人が「書きやすいように」と、「キャラを演じる」ネタを選んだのかもしれないですが、本にあるようにキャラで自分を防御しているので、自分の正直な気持ちを書けるかどうか、がポイント。

でも、「キャラを演じている自分」が素直に、この本の感想をかけたら、賞がねらえます。ぜひ、ねらってください!

「5番レーン」

正直に申し上げましょう。この本は、6月末に図書館にリクエストしたにもかかわらず、入手が間に合いませんでしたわたしが申し込んだ時点で、100を超えるリクエストが入っており、大変人気の1冊です。

題名と、表紙も素敵ですよね。
「あ、この本を読んでみようかなー」って思うのって、そんなことがきっかけになること、けっこうありますよね。
というわけで、アマゾンのあらすじやその他もろもろのあらすじを見ますと、この本の舞台は、韓国。

「常勝を誇る小6女子カン・ナルは、水泳部のエース。でも、最近はライバルに負け続け、悩んでいた。ライバルの不正を疑ったことから引き起こしてしまった事件をきっかけに、大きく成長する姿を描く、瑞々しくさわやかな青春ストーリー」

[読書感想文の書き方アドバイス]

常勝、つまり、常に勝つ水泳のエースが、ライバルに負け続けて悩んでいた。たとえば、大谷翔平にライバルが登場して、その人がことごとく大谷くんに勝ち、大谷くんが悩む、というところでしょうか。うーん。想像できない。たとえが悪かった気がしますね。

水泳、つまり自分がやっているスポーツや習い事、そこにライバルがいる。これなら、あるあるな話ですねー。主人公に共感したり、自分度比べてどうなのか、という思ったこと、考えたこと、意見が書けそうです。

共感も、自分と比べてみることもいいのですが、誰かの視点、つまり主人公なのか、その友達なのか、ライバルなのか、誰でもいいので、自分が一番しっくりくる人を選んで「なぜ、その人はそういうことをしたのか」「なぜ、そういったのか」を、想像して、多めに書きましょう。それは、立派な「考えたこと」です。

ここがたくさん書ければ、賞がねらえますね。前出と同じく、「賞をねらいやすい本」です。

「魔女だったかもしれないわたし」

いきなり、学校の先生が、「わたし」の書いた字に怒って、その紙をひったくり、ビリビリと破く。それをくしゃくしゃに丸めて、ゴミ箱めがけて、投げた……なんてところから始まる。
「いつの話よ!?」

と思って奥付を見たら、日本語訳は今年出た本だった。ただ、著者のエル・マクニコルさんはロンドン在住。年齢はなし。著書多数。この本の主人公は、「自閉」の女の子だ。著者も、自閉スペクトラムと診断されたと書いてあった。外国の学校事情は知らないが、おそらく、自身の経験が混じっているのだろう。

[読書感想文の書きかたアドバイス]

目立たないようにしているのが一番。
ちょっとでも人と違うと、魔女と判断されて――。
残酷な史実を知って、とことん知らなければ気が済まない「自閉」の女の子は、「魔女狩り」について調べ始めて、ある行動を起こす。

彼女が、理解してくれる転校生に出会えたのが大きかった。だれしも、一人ではなかなかできないものだ。ふたりになれば、だんだんと3人になり、5人になり、と、波紋のように理解は深まっていくだろう。

この本のそれは「多様性」だ。感動作。だから、あまり詳しく内容は書かない。もしもわたしが○○だったら、と、思ったことや考えたこと、意見が書けそうだ。

ちなみに、いろいろな本で、よく話しているのだけど、「読書感想文」だから、「課題図書」だからと、「いい本だ」「感動した」とほめたたえなくてもいいのだとういことを、ご存じだろうか。

この本も、
「ロンドンならこういうふうに物事がすすむかもしれないけど、日本ではおとぎ話だろう。なぜかというと……。」

と、外国と日本の違いについて書いたり、たとえば冒頭、わたしが、個人的にあまり好きではないといった伝記にしても、たとえば、以下のように書いてもいいのです。

「小学6年生は、事実を知るだけで、何が問題なのかわかります」
「それについて考えようという気持ちもあって、この本を読んだのに、いちいち『こういう問題があるとか』などと書かないでほしい。なにもしらない子供だと、バカにされているような気がすます。」
「それなら、もっとこういう部分を詳しく知りたかった。」

これは悪口ではなく、「批評」。
批評は、立派な読書感想文です。

簡単な例でいうと、たとえば「シンデレラ」などのお姫様本を読んで、
「『結婚して幸せに暮らしました』で終わっているけど、どう幸せに暮らしたのか、そこが知りたかった。たぶん、結婚して子供を産んでという幸せだけなのだろう。」とか、「赤毛のアンの目指す生き方には、共感できません。なぜかというと……。」などと、納得がいかなければ、異論、反論、対案を書くのは、立派な読書感想文。

上手く書けたら、大賞も狙えるのに――。
「でも、先生が理解できないかもね。」
というと、誰も書いてくれない。当たり前かもだけど。

だれか、批評で読書感想文を書いてみてくれないかなー。ぜひ読みたいなあー。






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