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キャリアメンターとして転職相談を受けた際に「転職を考えることが怖いです」と述べた彼女に伝えたこと

 どうも、えんどう @ryosuke_endo です。

枕にかえて

 「転職相談」や「キャリアメンタリング」など言い方は各種あれど職務範囲をこれまでに取り組んできた環境から一転させる人もいれば、これまでの路線の延長上で更なる高みを目指そうとする人もいて、そんな帰路に立った際に相談に乗り助言をすることの総称を指すことには違いがない。

 そんな相談に乗っていると「はじめての転職」に出会すことも少なくない。また、2回目3回目の転職だとしても「気軽に職を変えること」ができる人は決して多数派ではないだろう。少なからず、これまでとは異なる環境で勝負をしなければならない以上は緊張みたいなものを抱くのも仕方ないことである。

 今回は転職相談をしてきたある女性に対して述べたことを書き連ねていく。内容は決して個人的なものではなく、広く出回っていい情報であるため、共有するつもりで記載していくことにしよう。

▶︎ そもそも転職は既に”一般的なもの”

 おそらく、30代や40代の方々は1、2回転職のある方が多いのではないだろうか。そもそも転職をしたことがない人の方が少数派で転職をしない人生の方が稀有なのである。

 しかし、60代以上の世代では「転職をする=継続できない人間」などとレッテルを貼っていただろうし、そんなふうにそしりを受けた人もいることだろう。

 転職自体を理解されないなんて光景は令和に入ってからあり得ない光景となりつつある。つまり、すでに「転職をすること」は一般的なものであり、職務を全うしている人間にとって当然あるべき選択肢となっている。

 昭和や平成の初期を想像すると「年功序列」や「終身雇用」といった言葉が頻繁に聞かれたものだが、そもそもそんな雇用制度を設けている企業など大企業以外にはなかったのである。

▷ 1990年代で終わっていた「転職をする=継続できない」なんて図式

 では、転職が広く一般的なものとなったのはいつからなのか。

 答えとしては「定着していなかった」。どういうことかといえば、そもそも年功序列や終身雇用といった雇用慣習や就労規約や就業制度は日本にある法人中の99.7%を占める中小企業では定着などしていなかったのだ。

 中小企業では定着してなかったとする根拠は総合研究開発機構より2009年に公表されている『終身雇用という幻想を捨てよ 産業構造変化に合った雇用システムに転換を』によって明らかにされている。

 内訳としてはこうだ。

 (2009年に公表されている内容だとすると)そもそも1990年代からしてそうであったと言えるが、正規雇用者の平均勤続年数は20年に満たなかった。新卒一括採用を前提とする終身雇用とするならば38年(学士保有者: 大卒)や40年(高校卒業程度)を超えるはずだが、その半分程度で離職している。

 それだけではない。終身雇用といえる制度をもつ組織は1,000名を超える「大企業」であり、属性としては「男性」に限られた特権でしかなかった。

 しかも、労働人口比で8.8%に過ぎないという数値的な事実からすると、一部の労働者にしか認められない特権としか言いようがない。「終身雇用」なんてものは限られた少数派への特権的な施しでしかなかったのである。

 しかし、そんな特権的な施しは現代において大企業も維持できなくなってきているが、早期退職や希望退職を募る動きがあることは象徴的な態度だといえるだろう。

富士通、早期退職実施 50歳以上の幹部社員対象
武田、管理部門で希望退職募集
博報堂DY、早期退職100人 コスト改革急ぐ
フジテレビ、4年ぶりに早期退職募集
希望退職、2年連続1万5000人超 コロナでアパレル打撃
(上記全て日経新聞より)

 ただ、希望退職を募ったところで抜けていくのは優秀層からであることを、総合家電メーカーであるPanasonicが実証済みである。過去にも類似の事例はあるが、直近でみるとPanasonicの楠見雄規CEOが述べた『会社が目指す姿を明確に発信していれば、期待していた人まで退職することにはならなかった』とする発言が印象的である。

パナソニックの優秀人材流出、早期退職制度は人材の“焼畑農業”だ

▷ なぜ我々は転職をするのか

 ここで一旦冷静になって考えてみたい。我々はどうして一つの組織で満足できず、他の組織へ転籍しようとするのか。はたまた、事業主として独立したり起業したりと挑戦的な態度を取ろうとしてしまうのだろうか。

 会社経営者と話せば、当人の人生を背負っているという自負を抱き、給与未払いなどの粗相が決してあってはならないことであると強く意識しつつ、その家族にまで思考を及ばせていることは小規模事業者であるほどに意識せざるを得ないのかもしれない。

 しかし、翻って労働者側はどうかというと、そんな意識を持たれていることを疎ましく思ってしまっているかもしれないし、いい迷惑だとすら考えている可能性だってある。そう考えると経営者とは非常に孤独なものだと慰めたくもなるが、それはある意味では仕方がないことだろう。

 結局のところ、いくら経営者側が気負ったところで他人の人生を預かることなどできようもないのだ。その気概は認められるべきだろうし労働者側も認識しておいて損はないだろうが、詰まるところ「仕事以外の部分にまで責任なんて持てない」といえてしまう以上、そこまでだ。

 労働者側からすれば「掃いて捨てるほどに替えがきくこと」を自覚しているからこそ、会社におんぶに抱っこなんてされていようとは思わない。いや、思えない。

 自分がいなくなったところで回るような状況や環境があることを自覚しているからこそ、経営者側が思っていることを真正面から受け止めることなどはできないのである。

 反面、経営者側も経営者側で業務を仕組み化することで人がいなくても円滑にするように努めるのだから、これはある意味では仕方のないことだろう。

 だからこそ、労働者側は自らのスキルや経験を踏まえ次なる環境で「年収」や「時間」といった各種条件と、「家族」や「推しごと」との天秤にかけて「適度な就業環境」を模索しようとする。

 仮に、運よく長期間就労できていたとしても、常に「このままでいいのか」といった自問自答を繰り返すことに変わりはない。可能性を模索すること自体は悪いことでもなんでもないのだから、転職をするのではなく転職せざるを得ないといった方がいいのかもしれない。

▷ 転職は自身の労働市場価値を測るもの

 転職をするとして、各種条件が下がってしまうことは労働者側も本意ではないだろう。これまでの環境を捨ててまで飛びつき先で「これまでよりも条件が下がってしまいます」なんて事態は悪夢に他ならない。

 年収が下がってしまったとしても家族との時間を増やすことができたり、家族との時間が少なくなってしまう代わりに年収が上がったりと何かしらトレードオフとなってしまうケースはあるだろうが、少なくとも叶えたいと願っている最も高い優先順位が何かを明確になっていれば迷わない。

 場合によっては時間も収入も大いに確保することを実現する超絶優秀な人間もいるだろうが、おおおよその場合、時間を確保できるかどうかは業務遂行の”スキル”や”さばき方”、同僚を含めた仕事仲間たちとの”関係構築(信頼)”にも寄る。

 それも業務遂行における包括的なスキルだとしたら、転職によって環境を変えることは「場合によって」有効な手段となることは間違いない。

 なぜなら、現在の所属で自身の評価に不満とは言わずとも満足を得られていないのだとしたら、その状況が何を基点にして生じているのかをみてみるとわかるからだ。

 評価項目として存在しないのか。同僚との関係構築ができていないのか。上司が無能なのか。会社に解決できるだけの仕組みがないのか。自身のスキル不足なのか。

 自身のスキル不足なのであれば解決するために研鑽を積む他にないが、他の項目は環境を変えることによって解決できる可能性もある。特に所属先に自分を評価できるだけの制度が存在しないのであれば、それを評価できる会社に籍を移すことによって評価が向上することは大いに期待できる。

 現在の所属先で不遇な評価をされていたとしても、それが労働市場内における絶対的なあなたの評価だとはいえない。結局、市場価値とは需給のバランスによって成り立つもので、あなたの価値を高く評価せざるを得ない組織は確かに存在する。

 それを見定めるためには、定期的に転職エージェントやヘッドハンターなどとコンタクトを取り、自分の価値がいくらなのかを把握しておくことが必要だ。健康診断を受けて健康状態を把握することを繰り返すのと一緒で、労働市場の価値変動を確認し続けるべきだ。

 そんなことを僕の元へ相談に来た女性に伝えると、彼女はそれまでの不安げな表情から一変、清々しい表情を見せてくれた。

 大したことはできたとは思わないが、少しでも彼女の人生が前向きに動いてくれたら嬉しい次第である。

 ではでは。

 えんどう

▶︎ おまけ

▷ 紹介したいnote

大企業で課長クラスにいたほどだから、優秀な人だ。文章から出ているそつのない佇まいからも、それとなく優秀さを感じ取ることができる。結局、早期退職や希望退職はこのように優秀な人材から抜けていくのが常なのだろうなと感じざるを得ない。

みずほFGが就労環境にテコ入れをし始めているが、結局は月額の固定費を引き下げようと考えているであろうことは明らかだ。それだけ溢れている人材がいることの証左なのかもしれない。いずれにしても今後は個人の年収は副業も含め、個人で高めていく他にないのは事実だろう。

今後も規模の大きな日本企業で希望退職が増加していくことは目に見えている。日本の株価がアベノミクスにより首相就任当初から二倍となったといいながらも、それが従業員に還元されていたとはいえない。なぜなら、平均所得は変わっていないのだから。結局、人件費がツラいのだろう。

▷ 本noteに関連する紹介したい書籍

motoさんの書籍を紹介する機会が増えているが、その理由は明白だ。本文でも述べているように、転職を前提にした働き方こそが日本の中でもスタンダードなのだから、どうやって個人年収や世帯年収を高めていくのかを計算しながら仕事をしていくことが必要だからだ。

▷ 著者のTwitterアカウント

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