ゲームは子どもの発達に有害なのか

枕にかえて

どうも、えんどう @ryosuke_endo です。

少し古いデータになってしまうが、平成26年度全国家庭児童調査結果の概要(厚生労働省発表) にある『1日のうち、ゲームやパソコンで遊ぶ時間』についての結果をみてみると、小学校5〜6年生では約7名に1名は2時間以上が費やされていることがわかっている。

一方、携帯電話やスマートフォンを利用する時間はどうか。厚労省のデータが少し古いため(2014年)想定以上に多くはない印象を受ける。

ところが、ビデオリサーチ社が2006年から毎年実施している『メディア定点調査』によると、各種メディアへの接触時間が2010年から2020年にかけて60分以上増加していることがわかる。

それらを踏まえると、メディアの接触時間は2014年(平成26年)当時よりも増加しており、これらの懸念を評した発信や書籍なども増えてきている印象だ。特に『スマホ脳 (アンディシュ・ハンセン(著),久山葉子(翻訳)新潮新書)』はその危険性を丁寧に解説してくれている。(オススメ)

メディアへの接触が増えたことによって生活者は何を目にしているのか。

その多くは「動画」であることが上記の調査からわかっている。

このようなメディア接触の際は同様にゲームが槍玉に上げられることが多いが、今回は『「学力」の経済学』で脚光を浴びた中室牧子の行った研究からゲームへの批判的な見方は妥当なのかどうかをみていきたい。

▶︎ ゲームは子どもの発達に有害とはいえない

学力の経済学の中でも中室が触れているが「テレビやゲームが子どもの発達に負の影響を与えること」はそれほど顕著なものは観察されていない。

テレビやゲームが手放しに賞賛され推奨されうるものかでいえば、就学期の(1)家庭内外の問題行動(BPI)、(2)学校への適応度合い(POS)に好ましくない方向で影響を与えることが確認されてはいるが、負の影響度合いは従来予想されていたものよりは小さいことがわかっている。

テレビやゲームは子どもの発達に有害なのか―21世紀出生児縦断調査のデータを用いた検証―

無論、長時間も嗜むものであるかどうかでいうと、負の影響を与える可能性が飛躍的に高くなることも観測されているため注意が必要ではあるが、テレビやゲームをやめさせても子どもの学習時間はほとんど増えないこともわかっている。

つまり、強制的に子どもたちが熱中しているテレビやゲームの時間を奪ったとしても、それが学習時間に代替されないのである。

一点、重要な指摘として中室は上記の中で、子どもの発達に影響を与えるのは日常における生活習慣であると結論づけている。

子どもの生活習慣は、幼い頃から共に過ごす時間の長い保護養育者の責任であることは明白だ。食事や睡眠時間は幼い子どもたちは自身で用意することができない以上、その決定権や履行権を有しているのは共に暮らす成人である。

子どもたちの発達や成長が阻害される要因を他責的にゲームなどの環境要因に押しつけるのではなく、あくまでも保護養育者としての責務であると捉え向き合う必要があるのだ。

▷ 学習においては親の関与が重要

強制的に子どもたちのゲーム時間を奪い取ったところで学習時間に転化されることがない旨はすでに記載した。我々はそれを経験上わかっているし、それをわからない親たちは頭ごなしに叱りつけることをしなければならないと考えている可能性がある。

子どもと生活をする保護養育者であれば、どうもゲームを長時間もやらせてしまうことに後ろめたさや危険に思う心を抱いてしまうことに対し、少なからず理解できる部分はあるだろう。

理解できるからといって、無理矢理にでもゲームから学習への態度変容を求めてしまうことは効果的なのか。ぼくたちは「ゲームをやっているとバカになる」と指摘を受けてきたわけだが、同類な過去の子ども諸君にとって非常に力強い後ろ盾が科学の力で証明されている。

以下の乾との共同研究で中室は「テレビやゲームの制限よりも親の関与が重要」だと結論づけ、「ゲームをやめなさい」といった”ことばだけで行動を伴わない親の態度”が子どもから親への信頼感を損ねるのに打ってつけの態度であると示している。

子どもはテレビやゲームの時間を勉強時間とトレードするのか-小学校低学年の子どもの学習時間の決定要因-

よくよく考えればわかりそうなものだ。

無理矢理に学習をさせようものなら、むしろ親子関係にヒビが入る可能性の方が高いし、どう考えてもそちらの方が有害だ。さらに、そのような硬直的な態度を取ろうものなら親子関係において長期的な損失を被ることになるのは明白であるといわざるを得ない。

「学力」の経済学内で中室も書いているが、テレビやゲームは有害だと断ずることはロックンロールを聞くと不良になるとステレオタイプ的で無根拠な批判と何ら変わりはないことであり、まさに養老孟司『バカの壁』だといえる。

▷ ゲームだろうがなんだろうが付き合い方次第だ

ゲームに限らず、メディアとの関係を甘くみない方がいいことについては反論するつもりもないし、十分に気をつけるべきだとぼくだって思う。

以下、五十嵐鮎子が指摘するように、メディアとの付き合い方次第では心身への悪影響が出ることは存分に検討しておくべきことだし、それを無視し子どもたちの欲望が赴くままに提供し続けるような状況は産むべきではない。

子どもとメディア(脳と発達第53巻 第6号)

単一メディアへの接触時間が長くなればなるほどに没入時間が増えることから、他のことができなくなる点が大きな懸念すべきことだろう。

たとえば、ソーシャルメディアで交友関係のあるユーザー同士でやり取りを重ねている間、他のことができなくなってしまう。合間でこなすことは可能になるが、没頭するだけの時間を確保することが難しくなるため、作業や業務効率は悪くなるだろう。

同時に、仮に交友関係においてヒビが入ってしまった状態が長期間継続してしまえば、心身に影響が出てしまってもおかしくはないだろう。また、ゲームだろうが他のメディアだろうが関係なく、盲信的に安心と安全だと述べるつもりはない。

我々は有限的な時間を生活に落とし込んで行かなければならない以上、うまく配分していかなければならない。その付き合い方は実際に体験してみなければ生活時間に組み込むことが難しいのはいうまでもないだろう。

役割として保護養育を担当するものは、常にそういうメディアなどに自身が触れながら制御する術を身につけつつ、子どもたちとも模索して行く姿勢なのだろう。

▷ ゲームが悪者なのではなく保護養育者が率先して向き合う

ぼく自身、ゲームが好きなのもあるが子どもたちがゲームに触れて行くことを真っ向から否定しないし、むしろ共に楽しみたいと考えている。

彼らがポケモンを捕まえるのであれば負けじと捕まえたいし、クリア困難だと思い込んでいたスクロールゲームのあるステージを乗り越えたと聞けば実際にレクチャーしてもらいたい。

ゲームはそれ自体が悪者なのではない。ポケモンの名前を覚えるのは好きだからであり興味と関心があるからこそであって、これこそ「学習」だろう。

学習とは能動的で活発な記憶定着活動で、ぼくたちの行動を変容する力をもたらしてくれる大きな原動力だといえる。

ポケモンの名前を覚えることができるなら英単語を覚えなさい。とかそんなに手先を動かすのであれば鉛筆を握って物書きをしなさい。なんてつまらないことを述べる大人だと、子どもたちは共に過ごす時間を徐々に与えてくれなくなるのではないか。

保護養育を担当する大人こそ、子どもたちと共にポケモンの名前を覚えればいいし、スクロールゲームで必死に指先を制御する体験をすべきだ。

その姿勢で約束ごととしてゲームに限らず各種メディアとの付き合い方を決めていけばいい。

大人だからと行ってなんでもできるわけでもないことは自覚しているはずで、それを子供にばかり求めるのは些か都合がよすぎる。

子どもに向き合うのであれば、子どもたちが何に熱中するのかを探る意味でも大人が率先して各種メディアに向き合ってみるべきなのではないか、なんてことを思う次第である。

ではでは。

えんどう

▶︎ おまけ

▷ 紹介したいnote

「信長の野望」って、子供の教育にとって素晴らしいゲームだと思う。
信長の野望は光栄がつくりだした最高の日本型ゲームの一つだと考えている。そもそも光栄(現コーエーテクモホールディングス)はぼくの大好きだったウィニングポストシリーズも制作したし、真・三国無双も制作した素晴らしいゲーム制作企業である。

「はじめてゲームプログラミング」は、任天堂プログラミング教育の37年の集大成
我が家にもある。先日、長男くんが自作したゲームをプレイさせてくれた。その時の彼がした表情が忘れられない。本当に自分がつくったことに満足感を得ながら他人がプレイすることを喜んでいる表情だ。これこそが制作の喜びを学習するすばらしい機会ではないだろうか。

「ゲームは悪」の当たり前を壊せ!『ゲーム×教育』の可能性【日経COMEMOテーマ企画】
ゲームは共同戦線を張るなどのオンラインゲームで協調性や役割の重要性などチーム戦術や戦略を理解するのにも役立つ。ゲームを馬鹿にしている人たちはゲームをやったことがない人たちが大半なのだろうが、ゲームはビジネスよりも熾烈な状況に置かれるのである。

▷ 本noteに関連する紹介したい書籍

岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス)
任天堂といえば岩田さんだろうし、岩田さんといえば任天堂だ。もう、ずっとゲーマーなんだろうなぁなんて思える人柄が詰め込まれている書籍で、これを読むことで任天堂や岩田さんのファンになる人が増えることは間違いないと思うのだ。それほどにすぐれた人物であった。

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