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記事一覧

【異常値は?】SpO2とPaO2はどっちが大事?【高すぎもダメ?】

SpO2,PaO2,どちらも酸素化の指標ですよね?

敷居が低いのはSpO2なのではないでしょうか?

クリニックから病院まで,外来から入院,もっと言えば,最近は新型コロナの影響もあり,一般の方がSpO2モニターを購入したりしますよね.

一方,PaO2は,動脈採血が必要です.

敷居がうんと上がります.

そこで浮かぶ考えがこう.

「わざわざ侵襲的な検査をしているので,PaO2の方が重要に違い

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「浮腫に利尿薬は使用しません」【浮腫治療における適切な利尿薬の使用方法を考える】

みなさん,浮腫に利尿薬は使用しますか?

「いや,使用するでしょ?」
「適応病名にも"浮腫"って書いてあるよ?」

そうですね.

利尿薬の適応病名には浮腫があります.

でも私は,滅多なことでは「浮腫に利尿薬は使用しません」.

➤浮腫に利尿薬が使用される理由
➤適切な利尿薬の使用方法

この点を解説していきます.

1.「浮腫に対して利尿薬は使用しません」タイトルとすこし変えたのわかりましたか

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「うっ血性心不全患者さんが入院しました」利尿薬・最初の一手【基本から私見まで】

心不全は,とてもありふれた病気です.

ともすれば,非専門でない医師であっても,うっ血性心不全の症例に出会うことはよくあります.

みなさんは,うっ血性心不全の症例をみたときの初期対応,できる自信はありますか?

「うっ血性心不全」とひとえに言っても,外来で対応できる軽症のものから,補助循環を要する超重症のものまで,幅広く存在します.

私自身,そんなさまざまな心不全症例すべてで完璧に初期対応がこ

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【意識障害を見抜く力】てんかん発作や痙攣の考え方【一過性意識障害は失神だけではない】

前回の記事で,失神と意識障害の病態の考え方を解説しました.

重要な点は,意識障害は脳の障害であり,失神は脳血流の障害であること.

失神は,脳血流のトラブルを病態に,一過性の意識障害を来します.

しかし,一過性の意識障害の鑑別は失神だけではありません.

特に重要なのが,”てんかん発作epilepsy seizure”です.

一過性の意識障害の原因検索として,失神とてんかん発作の鑑別は非常に

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【病態から鑑別】失神と意識障害【循環器内科医による意識障害の考え方】

失神と意識障害がごっちゃになっている人がいます.

先日も外来で相談があったのは,「房室ブロックで当科受診歴がある人で,意識障害で救急要請されました」

この時,私が思ったこと

「房室ブロックの情報は,ほぼ意味をなしていないな」

です.

ひらたく言うと

意識障害は,循環器疾患が関与しないことが多い

ということ.

でも,なんとなくごっちゃになっているのは,失神と意識障害の病態が混ざっちゃ

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【知っていると管理がしやすい】心拍数を診る!考える!【遅い・速いはなぜ悪い?】

心拍数(脈拍)と言えば,大事なバイタルサイン.

多くの医療者の方は,バイタルサインの1つとして心拍数(脈拍)を管理しますよね.

※この記事では,統一するために”心拍数”の話をします.
厳密には,心拍数と脈拍数は違います.
心拍数は,心臓が拍動する回数.
脈拍数は,脈を触れる回数です.
不整脈でなければ,これら2つは同じ値になります.つまり,脈拍数=心拍数です.
一方,頻脈性不整脈の時などは,脈

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【今さら聞けない】カテコラミンの使い分け,これだけ知っとけばok【保存版】

※2021/4/13,こちら☟のページに改訂・改良した記事を掲載しました.

以下は,改訂前の過去記事です.

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急性期の病院であれば,カテコラミンを使用しない病棟はほぼないかな,と思います.

「ショックの際のノルアドレナリン」

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低酸素血症のない急性冠症候群に酸素投与は不要なのか?【少し懐かしい知識を掘り返す】

現在,医療現場にいる方々は,学生の頃などに,心筋梗塞(特にST上昇型心筋梗塞)の初期対応として,MONA(塩酸モルヒネ、酸素、硝酸薬、アスピリン)を習いませんでしたか?

その1つに酸素投与があります.

しかし,現行のACSガイドライン(2018年改訂版)では,低酸素血症のない症例でのルーチンな酸素投与は推奨されていません.

先日,Twitterでのご質問にお答えしましたが,意外にこの推奨が浸

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【たいてい脱水】高ナトリウム血症の原因【尿崩症の鑑別方法】

最近,ナトリウムの調節機構に触れた流れで,今回は高ナトリウム血症についての解説です.

高ナトリウム血症の基本まず,水とナトリウムの関係を知っていた方がいいので,あまり良く知らないという方は,こちらの記事を先にご覧になってください.

高ナトリウム血症は,基本的に脱水だと思ってください.

高ナトリウム血症は脱水

  

高ナトリウム血症の成立:補正機構の破綻➀例えば,あなたが健常人だとして,高

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【血管拡張薬が心不全治療になる理由】循環動態の基礎➂【クリニカルシナリオ分類に対する私見あり】

第1回,第2回と,「循環動態の基礎」というタイトルで,フランクスターリング曲線に絡めて循環動態を考察してきました.

今回は,後負荷,すなわち,血管抵抗に関しての解説と,それに関連してクリニカルシナリオ分類に対する私見です.

 

1.血管抵抗とは血圧,いわゆる動脈圧は,心拍出量と体血管抵抗の積です.

動脈圧= 心拍出量 × 体血管抵抗

つまり,いくら心拍出が保たれていても,血管抵抗がなけれ

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【フランクスターリングの法則】循環動態の基礎➀【心不全・補液の基本とフォレスター分類】

心臓は,全身血液を送るポンプの臓器です.

心臓は,ゴムのように伸縮する心筋のかたまりです.

心臓がポンプとして,「いかに血液を送り出せるか」は,「心筋がどの程度伸びるかに」によることがわかっています.

これを,フランクスターリングの法則と呼びます.

今回はこのフランクスターリングの法則を知ることから見えてくる,循環動態の基礎を解説します.

話が長くなるので,今日は第一部.

 

1.心

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【代償機構のブレーキ】カルペリチド(ハンプ®)について【ARNiが流行る前に】

”ハンプ®といえば心不全の薬”

”なんか,心臓とか腎臓にやさしい利尿薬”

こんなイメージですかね?

今回は,カルペリチド(ハンプ®)の話.

これから流行るかもしれないARNi(アーニィ)(ネプリライシン阻害薬とARBの複合剤)の予習にもなるかもしれません.

■前提:心不全における体液貯留カルペリチドと言えば,利尿剤.

利尿剤ということは,体液貯留が治療ターゲットですよね?

 

では

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急性期NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の特徴・適応疾患・注意点

NPPV:Noninvasive Positive Pressure Ventilation は,日本語でいうと,非侵襲的陽圧換気,です.

気管挿管や気管切開などが必要となるIPPV:Invasive Positive Pressure Ventilation侵襲的陽圧換気と対比されますが,NPPVはマスクを介して行うので,”非侵襲的"という表現がされます.

そんなNPPVの特徴や適応,注意点

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浮腫の仕組みと原因【2つの要因×鑑別ポイント】

※2020/12/7大幅修正しました.

今回は浮腫の鑑別方法です.

浮腫形成の仕組み【2つの要因】浮腫の原因を考える上で,浮腫の仕組みを知っておくことが重要です.

要因➀血管内から間質への水移動血管内から間質への水分移動は,Stalingの式で規定されます.

Starlingの式:LpS×(Δ静水圧ーΔ膠質浸透圧)
Lp:透過係数
S:全毛細血管濾過面積

Δ静水圧とは,毛細血管の静水圧と

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