浮腫の仕組みと原因【2つの要因×鑑別ポイント】

※2020/12/7大幅修正しました.

今回は浮腫の鑑別方法です.

浮腫形成の仕組み【2つの要因】

浮腫の原因を考える上で,浮腫の仕組みを知っておくことが重要です.

要因➀血管内から間質への水移動

血管内から間質への水分移動は,Stalingの式で規定されます.

Starlingの式:LpS×(Δ静水圧ーΔ膠質浸透圧)
Lp:透過係数
S:全毛細血管濾過面積

Δ静水圧とは,毛細血管の静水圧と,間質の静水圧の差
Δ膠質浸透圧とは,毛細血管の膠質浸透圧と,間質の膠質浸透圧の差

です.

この式で規定される血管内→間質の水移動が,リンパ管からの代償的ドレナージを上回ると,実際に浮腫形成が始まります

要因➁水とNa貯留

全身性の浮腫などでは,2-3Lの水分が溜まっていることも稀ではありません.

通常の循環血漿量はおおよそ3L程度なのに,なぜ循環血漿量減少性ショックにならないのか

それは,➀によって血管内容量が減少すると,代償機構として,RAA系などが亢進し,水とナトリウムの貯留が起きるからです.

この過程を挟むことで,「血管内の水が間質へ移動」→「水とナトリウムの貯留」→「その水の一部がまた,血管内から間質へ移動」→「水とナトリウムの貯留」→・・・

と繰り返す形になり,浮腫が形成が維持・増進されます.

浮腫は,Stalingの式で規定される「血管内→間質の水移動」が,リンパ管かあのドレナージを上回り,代償機構として水とナトリウムが体内に貯留することで,形成・維持される.


浮腫の原因【2つの鑑別ポイント】

病態別鑑別疾患

以上で説明した浮腫の要因をふまえて,鑑別疾患をリストアップします.

浮腫鑑別  ぷーオリジナル

鑑別ポイントを解説していきます.

鑑別ポイント➀浮腫の分布の確認

■局所性・片側性
炎症性浮腫(蜂窩織炎,関節炎など):局所の熱感や疼痛を伴うことが特徴
リンパ管や静脈閉塞(リンパ浮腫や深部静脈血栓症など)

■全身性・両側性浮腫
心不全
腎不全
低アルブミン血症
粘液水腫(甲状腺機能低下症)

など

鑑別ポイント②皮膚の状態

約10 秒間5mm の深さで圧迫したとき,圧痕が残る浮腫(edema)をPitting edemaと呼ばれ,圧痕が残らないedemaをnon-pitting edemaと呼びます.

これらの所見を,鑑別の参考にします.

■non-pitting edema
甲状腺機能低下症
リンパ浮腫(初期は除く)
蜂窩織炎
など

■pitting
その他ほとんどの浮腫 

 

実用的手順

➀non-pittinngでないか

non-pittinng edemaは原因が少ないので,浮腫を診たらまず圧してください.すぐに鑑別が絞れるかもしれません.

➁浮腫の分布をみる

局所性の浮腫は原因が限られているので,鑑別がかなり絞れます.

➂熱感疼痛の有無を調べる

熱感疼痛の有無も調べましょう.これらがあれば炎症性浮腫ほぼ確定

炎症性浮腫ならば,片側性・non-pittingedemaになるはずなので,そこに整合性があるか確認してください.

もし,整合性が取れなかった場合

「炎症性浮腫でない浮腫」+「発熱」

の可能性を考えましょう.

➃ここまで絞り切れなかった浮腫:熱感疼痛のない全身性pitting edema

ここまでのステップでだいぶ目星がついたはず.

ここまでの鑑別方法で,すべてmajolityをとってきた場合,最も鑑別が多いカテゴリーということになりますが,それは「熱感疼痛のない全身性pitting edema」ということになり,

最初に示した鑑別疾患のうち,以下の鑑別が残ります.

▼血管内静水圧上昇
:心不全,腎不全,妊娠・月経前浮腫
▼血管の膠質浸透圧低下
:低アルブミン血症
▼血管透過性亢進
:血管性浮腫,血管炎,膠原病,アレルギー,熱傷

あとは,病歴,採血結果,心機能腎機能などで考えていきましょう.


本日は以上です.

お疲れ様でした.

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