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第7章 『「香港バリケード」書評』へのコメント

遠藤誉(著),深尾葉子・安冨歩(共著)『香港バリケード――若者はなぜ立ち上がったのか』(明石書店)に対する吉成学人さんの書評へのコメントです。

香港のトップを選ぶ「普通選挙」が実施されないことを知った若者たちが始めた抗議活動。市民も加わり、巨大な運動へと発展していった。だが、ある時期から市民の支持を失い79日間で幕を閉じた。雨傘革命とは何だったのか。社会・政治状況の分析と現地の人へのインタビューで多面的に考察し、今後の行方を展望する。

 下記ブログで、安冨先生『香港バリケード』の出版経緯を次のように報告しています。


遠藤誉 (著), 深尾葉子・安冨歩 (共著)

という変わった表示になっているのは、本全体の過半を遠藤氏が、残りを私たちのグループが書いたからである。グループには、編集者・ジャーナリストの刈部謙一氏、獨協大学の学部生の伯川星矢氏が参加している。

これはもともと、遠藤氏が香港雨傘革命についてリアルタイムでさまざまの背景や情報を調べあげ、本を書く用意をしており、一方で、我々の研究グループが、中国社会の語りの構造を通じた秩序形成という観点からこの運動に注目し、香港の関係者への取材を通じて、現場の声を届ける調査を行っており、報告書を作ろうとしていたことに、端を発する。深尾と遠藤とがたまたま連絡をとり、両者が同じテーマの本の、相互補完する内容を企画していたことがわかり、合流することになったわけである。とはいえ分量としては遠藤が過半を占めているので、上記のような表示となった。

(中略)

日本人にとってこの事件は、対岸の火事ではなく、東アジアという同じ地域の内部の出来事であり、我々の将来に直接関わってくる出来事である。ゲラを読みながら私は、これは現代東アジアを理解する上での必読の書だ、とつくづく思った次第である。
     (近刊!『香港バリケード――若者はなぜ立ち上がったのか』)

 中国での出来事は決して他人ごとではなく、日本にも大いに関係するため、それらをきちんと知り、考えておくことは重要です。しかしながら、吉成さんがご感想で述べられておりますように、意外とアジアや近隣の国々のことを知らないのは、確かに、多くの日本人にとってそうであると思われます。『香港バリケード』には、香港の方々のインタビューも掲載されております。こうした当事者の方々でないと分からない実体験に基づく声を、ひいては日本社会の理解にも活用することで、そこで生きる私たちのよりよい生き方につなげていきたいものですね・・・。

 なお、下記のブログでも紹介されていますが、本書で安冨先生ガンディーについて、以下のように述べています。

 ガンディーの「サティヤーグラハ」は「真理把持」という意味だが、それではなんのことかわからないので、「非暴力的抵抗運動」と訳す。ガンディーの運動は極めて挑発的で徹底的であり、殴られても蹴られても、挙げ句の果てには殺されても、抵抗をやめない、決して服従しない、という性質のものである。
 積極的に逮捕されるようなことをみんなでやるのは常套戦術である。南アフリカでの戦いでは、何千人ものインド人がわざと逮捕されて、刑務所を満員にする、という作戦で、インド人に対する差別的法律を撤廃させることに成功している。また、有名な「塩の行進」も、違法な塩の製造をみんなで海岸に行っておおっぴらにやって逮捕される、というものであった。
 しかしどういうわけか日本人は、これをまちがって「ガンディーの無抵抗主義」とよく書いたり言ったりしている。たとえば「学研まんが世界の歴史」というシリーズで『アジアの植民地化と無抵抗主義者ガンジー』という本が1993年に堂々と出版されており、今も絶版にならずに売られている。長澤和俊という早稲田大学名誉教授の東洋史学者が監修しているというのだから、驚きである。
 私はこれは単なる勘違いではなく、日本人の心性が反映しているのだと思う。「抵抗=暴力」「非暴力=無抵抗」というような思い込みが心理的構造のなかにあり、「非暴力かつ抵抗」という組み合わせが、論理的に矛盾しているように感じられるのであろう。だがガンディーの精神からすれば、暴力を用いないと抵抗できないと思うのは「弱虫」ということになる。
                   『香港バリケード』 pp. 220-201
  第5回:「暴力」との付き合い方ー「学習の回路」を守る「心」   https://asrztymz.com/wp/kw5-helpyoursoul/#toc11

 こうしたガンディーの思想が安冨先生の選挙への出馬および選挙運動にも影響を与えたことは、以下のブログでも紹介されています。

#代読ダイアローグ #安冨歩 #生きる #香港 #明石書店 #書評 #学問への愛を語ろう #ガンディー #2021年の出会い

※1/26に以下を追記しました。


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