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202310環境デッキの詳細

シーズン終わりなので


0.緒注意

●全文無料ではあるが50000文字くらいある。
 長いので一気に読むのはおすすめしない
●文字数削減のためデッキやカード名称等、
 多くを略称で記載するため注意。
●記事単体での内容完結のため、
 一部項目が前記事と重複するため注意
●一か月程かけてゆっくり記載しているため、
 記載・文言が統一されずブレるので注意。

2024.01.07
記事内の一部間違いの箇所を修正しました。
追記はありません。失敬。

1.緒言

まず前回の記事について、いつもの記事の様に20人くらいが見てくれればいいと考えていたのだが、何たることか想定していた500倍多くの諸兄の目に入ったらしく感謝の極みである。

それと同時に記事を書くハードルが突然にとんでもなく上がってしまって頭を抱えた。こんなクソザコYPの誤字だらけの記事がどうしてこうなった。

いや、本当にどうしてこうなったのか。

恐らく参考文献のURLを上述の記事に貼っていたことにより文献の筆者様方に通知が飛んでしまい、そこから記事の存在が広がったことが原因に思う。

通知行くなんて思わなかった。
それ以上に、ご意見頂けるとは思わなかった。

いや、本当にありがたい話である。知見のある筆者様からの意見は本当の本当の本当にありがたい、ありがたい話ではあるのだが、目立つのが苦手な筆者であるためあまり記事を広めたりハードルを上げないで頂けるとありがたい。

本記事では参考文献の有料記事にあたる部分は記載しておらず実践的な内容は記載出来ていない。というか本当にたいしたこと書いてない。確実で詳細な内容を知るなら本記事なんてすっ飛ばしてもいいから是非、是非!参考文献の一読を強く推奨する


2.【スネークアイ】

炎属性炎族の下級モンスター達と
切り札となる《蛇眼の炎龍》から成るカード群

2.1.【スネークアイ】の特徴と動き

まず『スネークアイ』というギミックは1枚のカードから膨らむリソースの量に富んでおり、加えて《黒魔女ディアベルスター》から成る『罪宝』ギミックからもアクセス可能な姉弟テーマであることから、初動及び手数が非常に豊富なテーマである。

《黒魔女ディアベルスター》
《原罪宝ースネークアイ》

その特徴を活かし、例えば召喚権を『スネークアイ』ギミックで使用して妨害を受けたとき、今度は『罪宝』で召喚権を使わずに展開を継続する…といった動きが可能である。

《スネークアイ・エクセル》

テーマ内の下級モンスターが持つ共通効果も強力で、デッキから他のスネークアイをリクルートする効果を持ち、これにより切り札でもある《蛇眼の炎龍》へとアクセス出来る。《蛇眼の炎龍》は墓地からモンスターを2体蘇生してリンク数を伸ばしつつ相手のターンに妨害性能を有するモンスターの特殊召喚を可能にする。

《蛇眼の炎龍》
《賜炎の咎姫》

更に炎属のテーマであることから《賜炎の咎姫》を展開に絡めることで、リンク数のかさ増しと妨害の準備を同時にこなせるのも魅力。

《蛇眼の炎龍》と《賜炎の咎姫》の様なリンク数を伸ばす動作と妨害を同時に兼ね備えるギミックがあることで、次ターンの妨害と次々ターンの攻め手を1枚で生み出す驚異のリソース性能こそが『スネークアイ』の強みである。

後述する【炎王】【R-ACE】【ノイド】にも出張して動きの中枢を勤めることから『スネークアイ』は202310環境中期以降を先導したギミックであると言えるだろう。

ではエクセル1枚の基本展開を見ていこう。まだ研究が進められている最中の分野であるため、プレイヤーによって最終盤面が大きく異なるので注意の上参考にして欲しい。

エクセル1枚初動

①エクセル通常召喚
 ①の効果を発動してポプルスをサーチ
②ポプルスの①効果発動
 自身を手札から特殊召喚
③ポプルスの②効果発動
 デッキから蛇眼神殿をサーチ
④蛇眼神殿を発動
 デッキからエクセルを魔法罠ゾーンに設置
⑤ポプルスを素材にリンクリボーをリンク召喚
 ポプルス③効果で自身を魔法罠ゾーンに設置
⑥エクセルの②効果を発動
 自身と魔法罠ゾーンのポプルスをコストに
 デッキからオークを特殊召喚
⑦オークの①効果発動
 墓地のエクセルを特殊召喚
⑧オークの②効果発動
 自身と魔法罠ゾーンのエクセルをコストに
 デッキから炎龍を特殊召喚
⑨炎龍とエクセルでマスカレーナをリンク召喚
⑩炎龍の③効果発動
 墓地のエクセルとポプルスを特殊召喚
⑪マスカレーナとリンクリボーを素材にして
 咎姫をリンク召喚
⑫咎姫の②効果で墓地の炎龍を特殊召喚
⑬炎龍の①効果を発動
 墓地のマスカレーナを魔法罠ゾーンに設置
⑭咎姫とポプルスを素材にして
 サンライトウルフをリンク召喚
⑮墓地のリンクリボーの②効果を発動
 場のエクセルをコストに自身を
 サンライトウルフのリンク先に特殊召喚
⑯サンライトウルフの①効果発動
 墓地のエクセルを手札に加える
⑰サンライトウルフとリンクリボーを素材に
 ヒートソウルをリンク召喚
⑱ヒートソウルの①効果を発動
 LP1000払いデッキからカードを1枚ドロー

エクセル1枚初動のスネークアイ展開盤面

これで
①炎龍で特殊召喚したマスカレーナによる
 リトルナイト等のリンク召喚による妨害
②墓地の咎姫で破壊・妨害と自身の特殊召喚
③ヒートソウルの1ドロー
④次のターンの初動であるエクセル
という妨害とリソースの確保をエクセル1枚からの動きで賄う。

そしてこの展開は

○罪宝ギミックや手札の他の下級スネークアイを絡めることでいくらでも応用展開が可能
○《篝火》等の存在から初動が安定する
○《原始生命態ニビル》や《ドロール&ロックバード》といった仕事量の高い手札誘発に対して少ない被害で展開可能

という点において秀でている。
応用展開については書き出すと止まらない程に豊富であるためここでは割愛するが、ニビルを受ける場合の上記基本展開の例を見て行こう。
理由は後述するが今シーズンはメインデッキからのニビルの投入が多く、こちらの展開の方が実戦では多いかも知れない。④で分岐する。

①エクセル通常召喚
 ①の効果を発動してポプルスをサーチ
②ポプルスの①効果発動
 自身を手札から特殊召喚
③ポプルスの②効果発動
 デッキから蛇眼神殿をサーチ
④蛇眼神殿を発動
 デッキからオークを魔法罠ゾーンに設置
⑤エクセルの②効果を発動
 自身と魔法罠ゾーンのオークをコストに
 デッキから炎龍を特殊召喚
⑥炎龍とポプルスでマスカレーナをリンク召喚
⑦炎龍の③効果とポプルスの③効果を発動
 オークを魔法罠ゾーンに設置しつつ
 墓地のエクセルとポプルスを特殊召喚
⑧ここでニビルを打たなかった場合、
 相手は咎姫による1妨害を許してしまうため
 相手はマストでニビルを打つ必要がある
 なのでここではニビルを発動されたとする
⑨すると蛇眼神殿の③効果が発動出来る
 魔法罠ゾーンのオークを特殊召喚
⑩オークの①効果を発動
 墓地のポプルスを特殊召喚
⑪オークの②効果を発動
 自身と蛇眼神殿を墓地に送り
 デッキから炎龍2枚目を特殊召喚
⑫炎龍の①効果を発動
 墓地のマスカレーナを魔法罠ゾーンに設置
⑬最後にポプルスをリンクリボーに変換

エクセル1枚初動のニビル受けスネークアイ展開

ニビルを打たれなかった場合、

⑨マスカレーナとポプルスで咎姫をリンク召喚
⑩咎姫の②効果で墓地の炎龍を特殊召喚
⑪炎龍の①効果を発動
 墓地のマスカレーナを魔法罠ゾーンに設置
⑫咎姫とエクセルでアンブロをリンク召喚

エクセル1枚初動のニビル受けスネークアイ展開で
ニビルを受けなかった場合の盤面

となり、ニビルを打たれても打たれなくても最低限の妨害とリソースは構えることが出来る。

2.2.【スネークアイ】の強みと弱み

【スネークアイ】に限った話ではないが、今シーズンの盤面形成における非常に大きな特徴としてなんと言っても手札誘発に対する最低限の保証意識が挙げられる。要は「どんな手札誘発が飛んで来ても最低限1妨害は構えられる様に展開しよう」という意識である。トーナメントを覗くと《原始生命態ニビル》を貫通出来る条件が整っているにも関わらず、メイン戦だからと油断して意識を外した結果ニビルを重く貰って負け…なんて場面が今シーズンは心当たりのあるプレイヤーが多いのではないだろうか?

エクセルからの1枚初動の場合、エクセルの効果を無効にされても手札に《篝火》があれば《蛇眼の炎鱗》をサーチして展開を続けられる…というのは言うまでもないが、これを複数パターン複雑に織り混ぜて考えたとき、どんな手札誘発をどんなタイミングで相手が発動してきても、最後の盤面で1つは妨害を残す…といった意識を忘れずに持って展開するとき、前項で記載した様にリンク数を伸ばす動作と妨害を同時に兼ね備えるギミックがあることで、次ターンの妨害と次々ターンの攻め手を1枚で生み出すというリソースの性質が最高レベルの妨害保証性能を発揮する。これこそが【スネークアイ】の強みである。

そんな【スネークアイ】にもいくつか弱点はあり、デッキの性質的な弱点としては、手数はあるものの展開に一新性が無いことと、リソースと妨害の2要素を両立しているため、妨害性能だけなら決して高くないことが挙げられる。

だが最も無視出来ない弱点はメタゲームの標的であることだろう。昨今の流通構築のリストを眺めると、メインデッキからニビルや超融合といった攻撃的なハイリスクハイリターンのカードが入っていることが珍しくない。効果無効も対象除去もシステム効果の置物も多種多様なメタカードを一身に刺されながら手数で押しきることになる。昨今のサイドゲームからは《魂の解放》までもが引っ張り出される場面も見られるほどであり、メタカードの多様性にプレイヤーの思考が追い付く必要がある。トーナメントでは気持ちよく展開したあと不意の攻撃的なカードで負ける場面も多く、総じて対面のプレイヤーが【スネークアイ】に対してどんな対策を講じているか見極める、使い手のリスクアセスメントの技量が試される。

2.3.【スネークアイ】の構築

【スネークアイ】の構築例

《蛇眼の炎龍》といった初手に引きたくない不純物も存在するが《黒魔女ディアベルスター》《スネークアイ・エクセル》《蛇眼の炎鱗》《"罪宝狩りの悪魔"》《篝火》と初動にも手数にもなるカードがスロットの多くを占める。その安定した動作が可能な点から、手札誘発を採用出来る枠も決して少なくない。初動さえ引けていれば、炎龍もディアベルスターのコストで墓地に送って蘇生効果を使用可能である。

《スネークアイ・ワイトバーチ》

《スネークアイ・ワイトバーチ》は②の効果を自ターンに使えないが、①の効果で手数の1つになるのは勿論のこと、最終盤面に残しておくことでマスカレーナを魔法罠ゾーンから特殊召喚する前に炎龍が超融合等で除去されたとき、ワイトバーチの②効果で炎龍を供給する等の捲り札のケアにも使用出来る。

《裏切りの罪宝-シルウィア》

《裏切りの罪宝-シルウィア》は罪宝ギミックからアクセス出来る汎用無効カードであり、上述した【スネークアイ】の弱点を保管する意味で使用出来る。

《揚陸群艦アンブロエール》

また上述した展開例からも分かる通り《賜炎の咎姫》の登場時に注目された《揚陸群艦アンブロエール》は妨害性能というより《賜炎の咎姫》を墓地に送る手段として主に使用される。

2.4.【スネークアイ】のゲーム構成

【スネークアイ】のゲームメイクは先行なら盤面形成、後攻なら手数による捲りからの盤面形成による蓋を狙う、昔ながらの遊戯王である。

そして最優先すべき思考は上述した手札誘発に対する最低限の保証意識であり、想定されるどんな妨害を受けても最終盤面に必ず1つは妨害を有することを強く意識してプレイする。そのためアドリブ性が高く、トーナメントで勝ち上がることを意識してプレイするには高い練度が求められる。尚この保証意識は後攻のゲームも例外ではなく、盤面を捲ったあと必ず妨害を1つは残して相手にターンを返すことを意識することになる。

サイドゲームでは対面のサイドカードを予想し、それを重く貰わない様な保証を考慮しつつ展開してゲームを拾いに行くことになり、流行に対する知見も求められるゲームとなる。万能無効系妨害を構えられるかはプラン次第となり《拮抗勝負》等を重く貰う場面が多く、(OCG特有の文化ではあるが)思考時間が長くなりがちなゲームメイクであるためETEDに向けたタイムコントロールでそれを防ぐ場面も存在する。そういったゲームの場合、ギミック内にレベル1の下級モンスターを多く採用する展開を行うためナイチンゲールが強力な味方となる場面も多く、アーゼウス以外の用途を留意すること。

《LLーアセンブリー・ナイチンゲール》

2.5.【スネークアイ】の変遷

『スネークアイ』というギミックは7月のAGOVの時点で存在していたが、10月末のPHNIで大幅な強化を受けたことで環境入りしたテーマ。

PHNIのフラゲが広がった始めこそは《篝火》から《蛇眼の炎鱗》を経由して《原罪宝スネークアイ》を使用することで召喚権を使わずにリンクを1伸ばしつつ好きな炎属性のレベル1モンスターにアクセス出来るということで、流行していた【R-ACE】や頭角を現した【炎王】における出張が期待されていたが、いざ発売すると《蛇眼の炎龍》の非常に高いアクセス性能やパフォーマンスが瞬く間に広がり【スネークアイ】という単体ギミックだけで多くのプレイヤーを魅了することになった。

《フォーミュラ・シンクロン》

上述した下級スネークアイモンスターの連鎖による基本展開とは異なり《原罪宝-スネークアイ》から《ジェット・シンクロン》にアクセスすることが容易なためシンクロ召喚を積極的に狙うプランも非常に多く見られる。これは『罪宝』ギミックを手札誘発の貫通と後攻での手数として有効活用することを注視したゲームプランとなる。その分魔法罠による妨害を構えることが出来なくなるため、流行は地域差が非常に激しく現れた。

《スキルドレイン》

シーズン後半になると『スネークアイ』ギミックの動作に+αのゲームプランを立案する構築が増えた。《スキルドレイン》等のシステム効果の置物で相手のターンに強力な妨害を強いたあと自ターンに下級スネークアイモンスターの効果コストで置物を剥がすプランも注目された。

2.6.【スネークアイ】の参考文献


3.【炎王】

炎属性の鳥獣・獣戦士から成るカード群
自カードを自分で破壊する個性的な展開起点を持つ

3.1.【炎王】の特徴と動き

【炎王】は自分のモンスターを破壊することをトリガーに中規模の展開をするミッドレンジ…と言えばそれはそうなのだが、特筆すべきは環境における最高クラスの防御性能である。

【炎王】はとにかく固い。後述する基本展開は《増殖するG》に対して1ドローしか許さない展開であるにも関わらず、戦闘・効果破壊に対して圧倒的有利な盤面を形成可能であり、除去手段を戦闘・効果破壊に依存した【R-ACE】や【ラビュリンス】は苦戦を強いられる。墓地に存在する大型のリソースが固い妨害と共に出力になる点も魅了であり、攻め手に困ることも少ないだろう。

《スネークアイ・エクセル》

10月末になるとそんな【炎王】が上述した『スネークアイ』ギミックを得たことで【炎王スネークアイ】と呼ばれるデッキへ姿を変え、初動となる《真炎王 ポニクス》へのアクセス手段だけでなくポニクス以外のギミックの展開、リンクを使った妨害手段等を獲得して鬼に金棒となる。

前項で解説したが、【スネークアイ】は展開と妨害の準備を同時にこなし、展開終了時点で《蛇眼の炎龍》と《賜炎の咎姫》による妨害と次ターンのリソースを同時に構える。【炎王】はこれに加えて《聖炎王ガルドニクス》と《炎王神獣キリン》による強固な壁を築くことで磐石この上無い環境随一の生存力を発揮する。

では展開を見ていこう。
まずは純構築の【炎王】によるポニクス1枚からの動きを見てみる。

ポニクス1枚初動

①ポニクスを通常召喚して効果で聖域をサーチ
②聖域を発動して効果で孤島をリクルート
③孤島の効果を発動して場のポニクスを破壊
 デッキから聖炎王ガルドニクスをサーチ
④サーチしたガルドニクスの効果を発動
 自身を手札から特殊召喚
⑤ガルドニクスの特殊召喚成功時の効果を発動
 デッキのバロンを破壊して墓地へ送る
⑥これでターンエンド
⑦相手のターンのスタンバイフェイズ
 ポニクスの効果で自身を手札に戻す
⑧更にバロンの効果も発動
 (⑦と別のチェーンブロックになるため注意)
 デッキからキリンを手札に加える

ポニクス1枚初動の炎王展開

…これだけ?と思うかも知れない。
が、この盤面、実はとんでもない固さを誇る。

まず相手がガルドニクスを戦闘や効果で破壊すると、手札のポニクスが①効果で自身を特殊召喚することが可能。そのポニクスを戦闘や効果で破壊すると、今度は先程破壊したガルドニクスが①効果で自身を墓地から特殊召喚…となり、戦闘・効果による破壊では越えるハードルが高過ぎる壁となる。

…では破壊以外の除去をすればいいのでは?と思うかも知れない。が、ここで登場するのが基本展開でバロンからサーチしたキリンである。フリーチェーンで場のガルドニクスを破壊する効果を持つため、ガルドニクスを破壊以外の除去から守ることが可能なのだ。

尚、この盤面の本質はガルドニクスを墓地に送ることで真価を発揮する。下手に壊獣等でガルドニクスを除去してしまうと…

(壊獣等でガルドニクスを除去されたとする)
⑨キリンの①効果を発動
 手札のポニクスを破壊して自身を特殊召喚
⑩墓地のガルドニクスの①効果を発動
 自身を墓地から特殊召喚
⑪ガルドニクスの②効果を発動
 デッキから2枚目のキリンを破壊し墓地送り
⑫キリンの②効果を発動
 墓地のポニクスを特殊召喚しつつ
 場のカードを対象とらずに破壊可能
⑬ポニクスの②効果を発動
 炎王魔法罠(なんでもOK)をサーチ
⑭その後は相手のモンスター特殊召喚に対して
 場の聖域の効果を発動
 ガルドニクスとキリンでエタニティをX召喚
⑮エタニティ効果
 場の自身以外のモンスターを全破壊

ポニクス1枚初動の炎王展開で
相手ターンに妨害動作をした後の盤面

この様に複数妨害になりつつ、返しのターンで⑬でサーチした炎王魔法罠で場のエタニティを破壊すれば、8000のライフカットとなる。この基本展開は自ターンのチェーンブロックを作る特殊に対し《増殖するG》を打たれたと仮定した場合、Gによるドローを1枚しか許さない展開でもあり、優秀な中速展開と言える。

では次に、そんな【炎王】が『スネークアイ』ギミックを手に入れた【炎王スネークアイ】の展開を見てみよう。初動はエクセル1枚である。【スネークアイ】同様、現在進行形で研究が進められている分野であるためプレイヤーによって最終盤面は大きく異なるので注意。

エクセル1枚初動

①エクセルを通常召喚でポプルスをサーチ
②ポプルスの①効果で自身を特殊召喚
③ポプルスの②効果で原罪宝をサーチ
④ポプルスを素材にリンクリボーをリンク召喚
⑤ポプルスの③効果を発動
 自身を魔法罠ゾーンに設置する
⑥エクセル②効果を発動
 自身と魔法罠ゾーンのポプルスを墓地へ送り
 デッキか手札から炎龍を特殊召喚
⑦リンクリボーをコストに原罪宝を発動
 デッキからポニクスを特殊召喚
⑧ポニクスの②効果を発動で聖域をサーチ
⑨聖域を発動して孤島をリクルート
⑩孤島の効果を発動して場のポニクスを破壊
 デッキから聖炎王ガルドニクスをサーチ
⑪聖炎王ガルドニクスの①効果を発動
 自身を手札から特殊召喚
⑫ガルドニクスの②効果を発動
 デッキのキリンを破壊して墓地に送る
⑬キリンの②効果を発動
 墓地のポニクスを特殊召喚
⑭ポニクスとガルドニクスを素材にして
 マスカレーナをリンク召喚
⑮そのマスカレーナと炎龍を素材にして
 咎姫をリンク召喚
⑯炎龍の③効果を発動
 墓地のエクセルとポプルスを特殊召喚
⑰咎姫の②効果で墓地の炎龍を蘇生
⑱炎龍の①効果を発動
 墓地のマスカレーナを魔法罠ゾーンに設置
⑲咎姫とポプルスを素材にして
 サンライトウルフをリンク召喚
⑳墓地のリンクリボーの②効果を発動
 場のエクセルをリリースして
 自身をサンライトウルフのリンク先に蘇生
㉑サンライトウルフの①効果を発動
 墓地のキリンを手札に回収
㉒サンライトウルフとリンクリボーを素材に
 ヒートソウルをリンク召喚
㉓ヒートソウルの①効果を発動
 LP1000払いデッキからカードを1枚ドロー

エクセル1枚初動の炎王スネークアイ展開

プレイヤーによって最終盤面が異なるとしても、上述した【スネークアイ】の基本展開盤面と『炎王』による強固なギミックの壁が両立することで、捲るだけで一苦労の厚い盤面とゲームエンドを十分狙えるレベルの豊富なリソースを同時に抱えることが可能な点はあまり変わらない。

3.2.【炎王】の強みと弱み

9月の時点での【炎王】の強みは破壊以外のギミックのある不利対面のデッキ(エクソシスター等)が環境に少なく、加えて【R-ACE】【ラビュ】とサイドカード・メタカードなダブらないことだった。堅実な立ち位置に加え、フリースロットが多いため汎用カードを多く積めるミットレンジとして強みを得ていたが、そのフリースロットに『スネークアイ』が入ってきたことでデッキパワーが格段に上がり、大量のリソースで盤面を捲ったり捲られたりを繰り返せるタイプの脳筋ミッドレンジになった。

また【スネークアイ】の項目で記載したが、今シーズンの盤面形成における非常に大きな特徴として手札誘発に対する最低限の保証意識が挙げられる。この要素がゲームを左右するのは【炎王】も同じで、どんな手札誘発を受けても最終盤面に必ず妨害を残すことを意識したゲームにおいては『スネークアイ』だけでなく『炎王』というギミックも優秀な性能を有する。

【スネークアイ】との違いはその圧倒的な盤面の固さであり、妨害を崩され盤面を荒らされたとしても『炎王』ギミックが有する墓地のガルドニクスと手札のキリンが妨害・壁・次ターンの攻め手と様々な仕事をこなす。それにギミックが2種類あることによって単純に手数が増えることにも期待出来る。

しかしながら勿論弱点も存在する。
【炎王】で言うなら、まず《炎王の孤島》という分かり易いマストカウンターの存在だ。《灰流うらら》で無効にされるだけでも辛いのに、ポニクスからアクセスする関係で《ドロール&ロックバード》も重く貰う。そして何よりの弱点は出力や妨害手段の不足が挙げられ、せっかく先行のゲームで上振れても妨害の数を作れないことで、相手のリソースのサイクルを止められずパワーで押しきられたり、《三戦の才》によるコントロール奪取によるワンキルや《拮抗勝負》によるリソースの大幅な打撃と次弾の欠員を許すのは明確な弱みである。先行後攻問わず《墓穴の指名者》によるガルドニクスやキリンの狙い打ちが致命的である点も大きい。

次に『スネークアイ』を混合した【炎王スネークアイ】のゲームプランだが、パワー負けはほとんど無いレベルの補填が可能ながら、エクセルからのスネークアイ展開は《増殖するG》を重く受け、ポニクスからの炎王展開は《増殖するG》に強い反面《炎王の孤島》に対する《灰流うらら》を重く受ける。そのため裏目を引いて上手くゲーム出来ない場面が純構築に比べて増え、その上【炎王】に比べ【スネークアイ】に対するトップメタのサイドカードを重く受けることにもなり、重厚な動きが可能になった分向かい風も強くなる。

あとは余談ではあるが筆者は【炎王スネークアイ】で【破械】と対面したとき破壊以外の除去手段が枯渇して手も足も出ず負けた経験がある。攻め手を破壊に依存する単調さも弱点の1つと考えるべきかも知れない。

3.3.【炎王】の構築

【炎王】の構築例

上図は今年のYCSJ名古屋の優勝構築であり、厳密には9月から10月末にかけて流行した【炎王】ではなく少し『スネークアイ』のギミックが入っているが、この場では『スネークアイ』のギミックが薄いため便宜上【炎王】に分類して構築を見ていく。

《真炎王 ポニクス》
《炎王獣 ガネーシャ》

初動となる《真炎王 ポニクス》が2枚なのは召喚権が《炎王獣 ガネーシャ》と被るのを意識してのこと。メインフェイズ1にガネーシャの通常召喚から展開を始めることが出来れば、多くの手札誘発をガネーシャで無効にすることでストレスフリーに展開が可能。最終盤面まで残せば妨害にもなる。ただしガネーシャの無効効果を発動するには炎属性モンスターを確保する必要があり、展開を伸ばす手札の要求値が高くなってしまうため召喚権を使わずに《真炎王 ポニクス》に繋げることが出来る『罪宝』や《篝火》はフル投入されている。

相手のデッキによってはガネーシャよりも《炎王獣 ハヌマーン》の方が機能するので採用したり《真炎王 ポニクス》の枚数を3枚に増やす構築も珍しくない。

《炎王獣 ハヌマーン》
《炎王神天焼》

《炎王神天焼》はポニクスでサーチ可能な汎用除去であり、ポニクス1枚から妨害を構えるだけでなく《次元の裂け目》や《フォッシルダイナ・パキケファロ》といった地雷を踏み越える意味でも重要なカードである。尚、対象となった炎王モンスターが効果処理時に場に存在しなくても相手の場のカードを破壊することが可能である。

【炎王スネークアイ】の構築例

11月以降は【炎王スネークアイ】が流行した。【炎王】ではガルドニクスからデッキのバロンを破壊してキリンを回収していたが【炎王スネークアイ】になってからは《蛇眼の炎龍》の存在もあって場のモンスター数が非常に豊富となるため、ガルドニクスでデッキのキリンを破壊してリンク数を上げた後《転生炎獣サンライトウルフ》の効果でキリンを回収する形が主流となった。

《転生炎獣サンライトウルフ》
《転生炎獣 レイジング・フェニックス》
《世海龍ジーランティス》

面白いところでは《賜炎の咎姫》から《転生炎獣 レイジングフェニックス》をリンク召喚して《世海龍ジーランティス》をリンク召喚し②効果を発動することで、相手の場にモンスターを特殊召喚して墓地の《賜炎の咎姫》の効果発動条件を満たし、これにより《賜炎の咎姫》の効果で自分のモンスターが破壊されたら墓地の《転生炎獣 レイジング・フェニックス》の効果発動条件を満たして特殊召喚しライフカットするプレイも注目された。

3.4.【炎王】のゲーム構成

【炎王】はゲーム序盤は攻めの起点となる《聖炎王 ガルドニクス》や《炎王神獣 キリン》にアクセスしつつ、自分のライフを確実に守れる固い壁となる盤面の作成を目指す。後攻でも相手の盤面を荒らすと言うよりはリソースを稼ぎに行って固い盤面からのカウンターでライフカット出来る場面を狙う。『炎王』ギミックの性質上生存性能がとんでもなく高いので、墓地リソースによる展開起点を大事にしながら消耗戦によるロングゲームの勝利を目指す。コントロールに少し寄せたミッドレンジのゲームテンポを作りに行く。

プレイ時の小技と言う程でもないが、ダメージステップでも効果を発動するカード群であるため、なるだけ自爆特攻による戦闘を介したダメージステップに炎王モンスターの効果を発動することで相手の妨害のタイミングを制限しながらゲームすることも狙う。

サイドゲームからは、相手が《三戦の才》によるコントロール奪取や《超融合》による盤面荒らしからスピードのあるキルを狙ってくる可能性がある。アドバンテージ等に目移りせず、自分の負け筋を踏まない様に注視してプレイすることが求められる。

【炎王スネークアイ】の場合は【スネークアイ】と同様ゲームメイクは先行なら盤面形成、後攻なら手数による捲りからの盤面形成による蓋を狙い、最優先すべき思考は上述した手札誘発に対する最低限の保証意識であり、想定されるどんな妨害を受けても最終盤面に必ず1つは妨害を有することを強く意識してプレイする。【スネークアイ】の項目の繰り返しになってしまうが、後攻のゲームも例外ではなく盤面を捲ったあと必ず妨害を1つは残して相手にターンを返すことを意識すること。

【炎王】は《炎王の孤島》への《灰流うらら》が致命的だったが《原罪宝スネークアイ》の存在により《灰流うらら》のマストカウンターが散ることで誘発の踏み方を工夫すれば強気に展開することが可能な場面が増えた。

サイドゲームは【スネークアイ】よりも対面のメタカードが墓地除外や破壊以外の盤面荒らしに偏る傾向がある。ニビルや超融合を重く貰って相手にイージーゲームを許さない事を注視するという点では【炎王】も【炎王スネークアイ】も変わらない。

3.5.【炎王】の変遷

【炎王】がストラクチャーデッキでの大幅な強化を受け環境に躍り出たのは9月、その頃のトーナメントは202307環境の【ピュアリィ】【R-ACE】等が未だ継続して第一線を走っており《エクスピュアリィ・ノアール》《R-ACEタービュランス》を意識した『壊獣』《無限泡影》《エフェクト・ヴェーラー》等のカードが多く見られた。【炎王】はこれらのカードがほぼ効かず、メタを上手く避けた優位な立ち位置を獲得した。【R-ACE】への対策として注目されていた《無限泡影》や《エフェクト・ヴェーラー》を初動となるポニクスに打たれたとき、自壊による回避や《炎王の聖域》の素引きによる貫通は手札誘発の変遷に影響を与えた。

《炎王の聖域》

そうして持ち前の強固さを活かして評価を上げていたが【ピュアリィ】が明らかな不利対面だったことや、出力の低さから【R-ACE】のアウローラドンを使ったシンクロ先行展開を捲れない場面が多く、この時点では使用するプレイヤーもそこまで多いわけではなかった。

《蛇眼の炎龍》

そんな矢先、上述した『スネークアイ』ギミックの発売により、これを取り込むことで環境デッキとしての立ち位置を磐石とした。デッキの動きが【炎王】よりも【スネークアイ】に依ることになったが、それにより手に入れた爆発的な出力の高さと『スネークアイ』ギミック崩壊後にも残る『炎王』ギミックによる強固さが広く知られることになった。

3.6.【炎王】の参考文献


4.【R-ACE】

※前記事と内容の大部分が重複するため注意

炎属性の機械族と戦士族から成るカード群
優秀なモンスター効果と豊富な専用魔法罠が武器

4.1.【R-ACE】の特徴と動き

【R-ACE】は《R-ACEハイドラント》《R-ACEインパルス》《R-ACEプリベンター》といった単体性能の高いモンスターを多く携えたデッキテーマである。特に《R-ACEタービュランス》は現在のOCGのカードプールでもトップクラスのアドバンテージを稼ぐ性能を有する。

《R-ACEタービュランス》

②の効果を読んで欲しい。サラッとデッキからカードを4枚持ってくると書いてある。ヤバい。この《R-ACEタービュランス》のカードデザインの関係で、テーマ内の魔法罠のレパートリーも非常に充実しているのも特徴である。

こういったハイパワーのテーマはそれぞれのカードに制約を設けて他ギミックとの共存を規制するものなのだが【R-ACE】はそういった規制が無い。自由に展開の強化が可能なので将来性が高いのも重要だ。

以下は基本展開の紹介である。
まずは《R-ACEエアホイスター》1枚から。

《R-ACEエアホイスター》1枚から

①《R-ACEエアホイスター》を通常召喚
 効果で《EMERGENCY!》を手札に加える
②《EMERGENCY!》を発動
 《R-ACEハイドラント》を特殊召喚して
 場の《R-ACEエアホイスター》をリリース
③《R-ACEハイドラント》の効果発動
 《R-ACEタービュランス》を手札に加える
 墓地の《R-ACEエアホイスター》と
 《EMERGENCY!》を除外することで
 手札の《R-ACEタービュランス》を特殊召喚
④《R-ACEタービュランス》の効果発動
 《EMERGENCY!》《RESCUE!》
 《EXTINGUISH!》《CONTAIN!》をセット

《R-ACEエアホイスター》1枚からの盤面

このデッキは《R-ACEタービュランス》の効果を如何にして通すかが重要である。1枚から《R-ACEタービュランス》に繋がるカードは覚えておく必要がある。次は《黒魔女ディアベルスター》の1枚展開。

《黒魔女ディアベルスター》1枚から

①《黒魔女ディアベルスター》を特殊召喚
 効果で《原罪宝ースネークアイ》をセット
②《原罪宝ースネークアイ》を発動コストは
 《黒魔女ディアベルスター》
 デッキから《R-ACEハイドラント》特殊召喚
③《R-ACEハイドラント》効果で
 《R-ACEエアホイスター》を手札に加える
④《R-ACEエアホイスター》を通常召喚
 効果で《ALERT!》を手札に加える
⑤《ALERT!》を発動
 場に《R-ACEハイドラント》が存在するので
 デッキから《R-ACEタービュランス》サーチ
⑥《R-ACEハイドラント》と
 《R-ACEエアホイスター》の2枚を素材に
 《S:Pリトルナイト》をL召喚
⑦墓地の《R-ACEハイドラント》
 《R-ACEエアホイスター》の2枚を除外して
 手札の《R-ACEタービュランス》を特殊召喚
⑧《R-ACEタービュランス》の効果発動
 《EMERGENCY!》《RESCUE!》
 《EXTINGUISH!》《CONTAIN!》をセット

《黒魔女ディアベルスター》1枚から

《黒魔女ディアベルスター》は特殊召喚から《R-ACEタービュランス》まで繋げることが可能であり、強力過ぎる初動として活躍出来る。

《S:Pリトルナイト》

《S:Pリトルナイト》は《R-ACEタービュランス》の起動効果への《無限泡影》を防いだり《原始生命態ニビル》から《R-ACEタービュランス》を逃がしたりと、様々な運用が可能であり【R-ACE】におけるエースカードの1つである。そのため《R-ACEタービュランス》へは起動効果にチェーンするのではなく特殊召喚成功時に《無限泡影》を打つのが通説になったが、《賜炎の咎姫》の登場でそれも一変する。

《賜炎の咎姫》

先程の《黒魔女ディアベルスター》の展開の続きから見ていこう。

⑦墓地の《R-ACEハイドラント》
 《R-ACEエアホイスター》の2枚を除外して
 手札の《R-ACEタービュランス》を特殊召喚

ここで《R-ACEタービュランス》に対して
相手が《無限泡影》を発動したとする

⑧《S:Pリトルナイト》と
 《R-ACEタービュランス》を素材に
 《賜炎の咎姫》をL召喚
⑨《賜炎の咎姫》の効果を発動
 墓地の《R-ACEタービュランス》を蘇生
⑩《R-ACEタービュランス》の効果発動
 《EMERGENCY!》《RESCUE!》
 《EXTINGUISH!》《CONTAIN!》をセット

《賜炎の咎姫》で《R-ACEタービュランス》を蘇生する盤面

この様に《無限泡影》等を受けた《R-ACEタービュランス》を素材に《賜炎の咎姫》を出すことで、どの道を通っても《R-ACEタービュランス》の効果を通す貫通力を身に付けた。

加えて《賜炎の咎姫》は《R-ACEタービュランス》以外の妨害兼リソースとして機能する。先に述べた通り【R-ACE】の本質は単体性能の高いモンスター群であり《R-ACEプリベンター》等を使えばリンク数を爆発的に上げることが出来るのである。

《R-ACEプリベンター》

『スネークアイ』ギミック、特に《蛇眼の炎鱗》の登場により《篝火》が《R-ACEハイドラント》になるだけでなく、リンク数の底上げにもなる点でも強化を受けたと言える。

《蛇眼の炎鱗》

4.2.【R-ACE】の強みと弱み

【R-ACE】は各カードのスペックの高さからリソースの質が良く、1枚初動が重なれば重なるほど攻め手になる出力の機動性がある。

先行なら手札誘発を貫通して強固な盤面を作り、後攻なら大量の手数で相手の先行盤面を崩すという、10期の遊戯王を彷彿とする殴り合いのゲームなら誰にも負けない。

そんな【R-ACE】の弱みはあくまで10期の遊戯王であること。前時代的だ。現代遊戯王は手札誘発を貫通するのは当たり前、リソースは溢れて当たり前、なにより相手のターンに盤面展開する時代なのだ。他デッキと比べると暴力的なゲーム展開を《R-ACEタービュランス》に依存することしか出来ず、対戦相手の理不尽なゲームを許してしまい「今のはどうしようもない」という負けゲームを多く抱えることになるだろう。手札誘発をあまり多く積めないことも首を絞める。

それに加えて【R-ACE】特有の手札事故も存在する。【R-ACE】は《R-ACEタービュランス》の存在から『R-ACE魔法罠』をデッキに多く投入することになる。これらは重ね引きしてこそ強力だが基本的に1枚初動にならない、つまり事故要因でもあるのだ。前シーズンは《幻獣機オライオン》等の不純物のせいで不安定な側面もあったが、今シーズンはそれと比べると多少安定する様になった。

前シーズンとの違いで言えば《賜炎の咎姫》の流行による《超融合》の採用の広がりが《沼地のドロゴン》による対象耐性の流行に繋がり、《R-ACEタービュランス》によって伏せた魔法罠の期待値が下がったという点に注意したい。

《沼地のドロゴン》

4.3.【R-ACE】の構築

【R-ACE】の構築例

【R-ACE】を使用する場合、モンスター群の性能が高いからといって枚数を多く採用すれば強いわけではない。手数としてカウント出来る引き込んだ場合のリソースの役割と、デッキ内に眠らせて息切れしない様に立ち回るデッキ内リソースとしての役割、これらと自分のプレイでどこまでリソースを回せるか判断して枚数を決める。

そういった意味で【R-ACE】の構築はメインギミックの幅が広い。どんなに強力なカードもダブって引いてしまうと痛手なのであれば枚数を減らす択があり、加えて《R-ACEインパルス》の様に強力な効果ながら先行での動きの阻害にもなることもあり難しい。

《ハーピィの羽根帚》

このデッキの構築を大会入賞報告等から参考にする場合、メインデッキから《超融合》《ハーピィの羽根帚》を採用するであったりが見られるが、メタカードの選出に注視するというよりはメタカードのスロットの比率・比重を見ることが大切である。メインギミックを削れば先行での安定した展開からは遠のくが、手数のバランスを崩さない配分を意識して後攻札をどの様に投入するかのイメージが大切である。上手く自分のゲームプランと相談したい。

4.4.【R-ACE】のゲーム構成

メイン戦での先行は《R-ACEタービュランス》を確実に通すことを強く意識し、余裕があれば《R-ACEハイドラント》を構えたり《賜炎の咎姫》を墓地に送る等してリソースを構える。

サイドゲームからは《S:Pリトルナイト》+《R-ACEタービュランス》を目指すことで《原始生命態ニビル》や《拮抗勝負》によるリスクをケアして展開する。特に今シーズンは《ハーピィの羽根帚》《ライトニング・ストーム》のサイドインが非常に多く見られたことから《REINFORCE!》で返しのターンのリソースを確実に残すことを意識する。

《REINFORCE!》

相手がメインフェイズ1をドローゴーしてバトルフェイズに入った場合、《拮抗勝負》を警戒してバトルステップに《REINFORCE!》を発動してモンスターを守りつつ、《REINFORCE!》の墓地効果で次ターンの手数を死守する。

後攻のゲームは相手が展開した盤面の妨害を手数で踏んで盤面を荒らし、最後は《R-ACEタービュランス》等を蓋に使うことで制圧を狙う。手数で攻めるゲームは攻めきったあとの爽快感を味わえるだろう。昨今は理不尽なゲームを仕掛けてくる対面が多いため、サイドデッキから上手くメタカードを的確に積む必要性が、他のデッキよりも求められる点に注意である。

4.5.【R-ACE】の変遷

当初注目されていなかった【R-ACE】が環境に顔を出す様になったのは《R-ACEプリベンター》《EMERGENCY!》が新規で登場してからである。

《EMERGENCY!》

《EMERGENCY!》は《R-ACEタービュランス》の効果に対する《無限泡影》をサクリファイスエスケープ出来ることで注目を集めた。流行していた《次元障壁》に対して強い立ち位置であったことも功を奏している。その後《R-ACEタービュランス》の驚異が広く認知され、如何にして《R-ACEタービュランス》の効果を通すかが研究された。

《幻獣機アウローラドン》

様々なプランが起案されたが、最も流行したのは《R-ACEプリベンター》と《警衛バリケイドベルグ》からの《幻獣機アウローラドン》を使ったシンクロ召喚を使用する展開である。

《S:Pリトルナイト》

現在はオーバーパワーな展開ではなく、負け筋となる《原始生命態ニビル》や《増殖するG》を重く貰わないこと、手札誘発の重ね引きに対してもある程度耐性があることから《S:Pリトルナイト》を上手く運用する型に落ち着いた。今シーズンは《賜炎の咎姫》と《蛇眼の炎鱗》により環境での立ち位置を固めた。

4.6.【R-ACE】の参考文献


5.【ノイド】

炎属性悪魔族で通常召喚出来ない癖の強いテーマ
昔から好んで使うプレイヤーも多い

5.1.【ノイド】の特徴と動き

本記事では【ノイド】と省略しているが『インフェルノイド』という個性的なカード群を運用した高い爆発力を誇るデッキ。11月末にTW01で大幅な強化を受けたことでシーズン後半に環境でよく見る様になった。元々は2014年から存在するデッキであり様々な型が存在するが、本記事では大会入賞報告が多いことから『スネークアイ』ギミックを使用したものを扱う。

『インフェルノイド』の最大の特徴はモンスター群の共有効果である。

遊戯王カードWikiより

なんと通常召喚出来ないのである。びっくり。

このデッキは手札・墓地から『インフェルノイド』を除外して特殊召喚するという共有効果故に、手札か墓地が肥えれば肥える程モンスターが増えるという性質を持ち、強烈な効果のパワーカードで墓地を山のように肥やし、それをリソースに爆発力のある展開を狙って制圧力の高いゲームをするのが主なゲームプランとなる。

《アーティファクトーロンギヌス》

除外を介さなければモンスターを場に出すことすら出来ないギミックであるため、古くから《アーティファクトーロンギヌス》という天敵の流行を見て使用する必要がある使い辛いデッキだったが、『スネークアイ』ギミックのおかげで除外封じに対するある程度の耐性と妨害、それに加えて墓地肥やしの手段も得た

では『スネークアイ』ギミックからの動きを見ていこう。初動はエクセル1枚。

エクセル1枚から

①エクセル通常召喚してポプルスをサーチ
 ポプルス効果で自身を特殊召喚
 ポプルス効果で原罪宝スネークアイをサーチ
②その後ポプルス1体でリンクリボーをL召喚
 ポプルスの効果で自身を魔法罠ゾーンに設置
③場のリンクリボーをコストに原罪宝を発動
 デッキからデカトロンを特殊召喚して
 デカトロン効果でヴァエルを墓地へ
④エクセルの②効果で自身とデカトロン墓地へ
 デッキからオークを特殊召喚して
 そのままオーク効果でデカトロンを蘇生
 デカトロン効果でアスタロスを墓地へ送る
⑤オークの②効果で自身とポプルス墓地へ
 デッキから炎龍を特殊召喚
⑥炎龍とデカトロンでマスカレーナをL召喚
 炎龍効果でポプルスとデカトロンを蘇生し
 デカトロン効果でベルフェゴルを墓地へ送る
⑦マスカレーナとポプルスを素材に
 プロキシーFマジシャンをL召喚
⑧墓地のヴァエルとアスタロスを除外して
 墓地のベルフェゴルを特殊召喚
⑨プロキシーFマジシャンの効果を発動
 場のデカトロンとベルフェゴルを素材にして
 イヴィルを融合召喚
 イヴィル効果でベルフェゴルを除外して
 シャイターン、ベルゼブル、アスタロス
 ヴァエル、アドラメレク、リリスを墓地送り
⑩プロキシーFマジシャンとイヴィルを素材に
 賜炎の咎姫をL召喚
 イヴィル効果で煉獄の消華をサーチ
⑪墓地のシャイターンとベルゼブルを除外
 墓地のヴァエルを特殊召喚
⑫墓地のアスタロスとアドラメレクを除外
 墓地のリリスを特殊召喚
⑬賜炎の咎姫の効果で墓地の炎龍を蘇生
⑭炎龍の①効果を発動
 墓地のマスカレーナを魔法罠ゾーンに設置
⑮賜炎の咎姫とヴァエルでフラッドをL召喚
⑯煉獄の消華を発動して
 手札1枚を煉獄の狂宴に変換
⑰煉獄の狂宴をセットしてターンエンド

エクセル1枚からの盤面

相手のターンに《煉獄の狂宴》でデカトロン2枚を含む特殊召喚を行ってデカトロンの効果でリリスとネヘモスを墓地に送れば、《煉獄の狂宴》が3枚分の妨害となる。

この様に『スネークアイ』を使ったデッキは環境に多く存在するが【ノイド】はその中でも妨害数がトップとなる先行制圧盤面を誇る

5.2.【ノイド】の強みと弱み

【ノイド】の強みはなんといってもその爆発力でありデッキの持つパワーは環境イチである。
他の『スネークアイ』を使用したデッキと比べると最終盤面の妨害数は追随を許さず、特に《煉獄の消華》からの《煉獄の狂宴》による3妨害は破格の性能である。

《煉獄の狂宴》
《煉獄の消華》

加えて破格の性能と言えば《煉獄の虚夢》も挙げられる。後攻のゲームではこのカードからの《インフェルノイド・ティエラ》の融合召喚で爆発的な墓地肥やしを行える。先行後攻問わず高いパワーのカードを有し、それを振り回せるだけのデッキ全体の暴力性こそが【ノイド】の強みであり魅力でもある。

《煉獄の虚夢》
《インフェルノイド・ティエラ》

そんな【ノイド】の弱みはあくまで「回れば強い」ことであり、言ってしまえば手札事故及び初動の細さである。そもそも通常召喚出来ないカード群を大量にデッキに入れなければならないというデッキのコンセプト自体が弱みであり『スネークアイ』が絡まない場合はデッキとして動き出すだけでも一苦労である。長い年月を経て少しずつ改善されてきてはいるものの、やはりこの弱点は他のデッキと比べると非常に重くのしかかる。

《アーティファクトーロンギヌス》

加えて《アーティファクトーロンギヌス》はいつまで経っても天敵であり、これ1枚で動きがかなり制限されるのは『スネークアイ』を取り込んでも変わらない。もし《アーティファクトーロンギヌス》を【スネークアイ】に対するメタと重ね引きされると、初動が細いこのデッキが乗り越えるには高過ぎるハードルとなる。

5.3.【ノイド】の構築

【ノイド】の構築例

【ノイド】はテーマ内のモンスターが通常召喚出来ないことから不純物になる点と墓地肥やしカードへの依存度から、引き込みたくないカードを引かない様にする狙いとパワーカードのパフォーマンスを上げる狙いで、40枚での構築よりも厚いデッキになることがほとんどであり、広く使われるのは《隣の芝刈り》を使用する60枚構築である。

《隣の芝刈り》

少し前までは『推理ゲート』と呼ばれる《名推理》《モンスターゲート》で爆発的に墓地を肥やして、その山の様なリソースでモンスターを大量に特殊召喚してリンク数を伸ばす戦いが主流だった。しかし【ノイド】が流行るということは《アーティファクトーロンギヌス》が増えるということでもあり、【ノイド】の流行と共にロンギヌスを重く貰う『推理ゲート』を主軸にした型は減少する傾向にある。

《名推理》
《モンスターゲート》

その他にも勿論40枚程度の構築も存在するが、環境デッキと対峙する際にはパワー不足が致命的なことから、トーナメントで勝ち上がる構築は60枚であることが多い印象だ。

面白いところで言うと引き込んだ『インフェルノイド』モンスターを不純物ではなく初動に活かそうというゲームプランとして《融合》を採用する型や《ヘルフレイムバンシー》を採用した型も存在する。

《ヘルフレイムバンシー》

5.4.【ノイド】のゲーム構成

環境に存在する他の『スネークアイ』を使用したデッキの場合、展開中に相手から妨害を受けても最低限の妨害は残そうという保証意識が重要であるが、【ノイド】に関しては動き出しが細いので妨害を受けたら大人しく展開が止まってしまう。そのためなるだけパワーのあるカードを通して確実な展開を目指すのが【ノイド】のゲームメイクの切り口となる。

シンプルな例で言えば『スネークアイ』ギミックに《灰流うらら》を打って貰えれば《隣の芝刈り》の様なパワーカードが通り易くなる。たとえ『スネークアイ』を取り込んだとしても、マストカウンターとなるパワーカードを大事にプレイすることで大幅なリソースの確保を狙い、あとはそれによるゲームの制圧を行うことが【ノイド】のゲームとなる。脳筋だ。

まずはパワーカードを通して大量にリソースを確保し、その後先行なら制圧力の高い先行盤面を目指し、後攻なら盤面を荒らしてから《インフェルノイド・フラッド》等で蓋をしたり、リソースが潤沢なら高いリンク数のモンスターでのキルを狙いに行く。

サイドゲームからは《アーティファクトーロンギヌス》を重く貰わないゲームプランが必要…と言いたいが、あまりに打撃が大きいため引かれない様にお祈りする場面も多い。一応《墓穴の指名者》等の《アーティファクトーロンギヌス》を止められるカードは先行後攻問わず投入することになる。ロンギヌス以外にも盤面を崩しにかかる《拮抗勝負》等をサイドインされることが多いため、デカトロンでの効果のコピーをリリスにするかネヘモスにするかはサイドゲームは特に重要である。《超融合》による問答無用の除去には注意が必要であるため、先行展開に墓地の『インフェルノイド』モンスターを使い過ぎないことも重要。

あとは対面のサイドカードによっては除外されたカードの帰還手段がゲームに役立つ場面も多い。《スネークアイ・オーク》《煉獄の決界》《炎魔刃フレイムタン》による帰還の出番がサイドゲームでは増えると思われるので頭の片隅に入れておきたい。

《スネークアイ・オーク》
《煉獄の決界》
《炎魔刃フレイムタン》

5.5.【ノイド】の変遷

上述したが、元々2014年から存在する古いデッキでありながら、その独特の戦術と高い人気を誇るイラストや世界観でファンが多いデッキだった。特に2017年の「リンク召喚」の登場により『インフェルノイド』モンスターの特殊召喚の制限であるフィールドのモンスターのレベル条件がかなり緩くなったことで大きな恩恵を受ける。

《アークロード・パラディオン》

長く上述した『推理ゲート』と《隣の芝刈り》を使用した爆発的なリソース芸と《煉獄の虚夢》を使用したメイン戦で後手をとるゲームプランで、シングル戦等で多くのプレイヤーを魅了してきた。

《インフェルノイド・イヴィル》

そんな折に今シーズン、TW01による強化で11月末は多くのファンが『推理ゲート』型の【ノイド】を意気揚々と使用した。が、その後すぐに《アーティファクトーロンギヌス》も広まったため12月になってプレイヤーは減り、現在は『スネークアイ』との混合により《アーティファクトーロンギヌス》に耐性を持ったプランに変遷したという訳である。

5.6.【ノイド】の参考文献


6.【粛声】

23年前の儀式モンスター《ローガーディアン》等
過去の儀式モンスターのリメイクテーマ

6.1.【粛声】の特徴と動き

【粛声】は安定した儀式召喚で対象耐性・効果無効・攻撃対象誘導等の固い守りを成立させ、【スネークアイ】等の単調な攻めに対して圧倒的な防御性能を誇る中速のデッキである。見た目の派手さこそ無いが、参考文献の文言を借りると「ぱっと見突破しやすそうで突破できない、しても返しきれない」という強固で堅実な性能で環境入りしている。

本来、儀式召喚というギミックは①儀式魔法②リリースするコスト③儀式モンスターという3枚のカードを揃えるというハードルの高さと、儀式召喚をするだけで①②のカードを失うため大幅なディスアドバンテージを抱えるという性質があり、ロマン扱いというか、正直実践向きではない戦術のギミックである。そのため多くの儀式召喚テーマは、それを鑑みても尚余りあるギミックのリソース回収性能を有するカードデザインとなる。

《儀式の下準備》

今でこそ珍しくないが《儀式の下準備》は1枚のカードから2枚のカードを生み出すアドバンテージ性能でありながら、儀式召喚であるから許されている様なデザインであり、

《粛声の竜賢姫サフィラ》
《粛声なる結界》

テーマ内には《おろかな埋葬》にサーチ効果と儀式魔法が内包された3枚分のアドバンテージを全部1枚に詰め込んだカードや、《ピュアリィ・マイフレンド》《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》を内包した様な強力なカードが平気で存在する。

そんな【粛声】の基本動作を見てみよう。初動は《粛声の祈り手ロー》1枚から。

《粛声の祈り手ロー》1枚から

①ローを通常召喚して①効果発動
 デッキから結界を魔法罠ゾーンに置く
②結界の②効果を発動
 デッキから竜賢姫サフィラをサーチ
③竜賢姫サフィラの①効果発動
 自信を手札から捨て祈りを墓地に送り
 守護者ローガーディアンをサーチ
④竜賢姫サフィラの②効果発動
 場のローをリリースして
 守護者ローガーディアンを儀式召喚
 守護者ローガーディアン①効果と
 ローの③効果を発動して自信を特殊召喚
 ローガーディアンでモンスターをサーチ

《粛声の祈り手ロー》1枚からの盤面

最後のサーチは対面や自身の残りの手札と相談して後続を確保したい。この盤面は
①守護者ローガーディアンによる発動無効
②結界による対象耐性と攻撃対象誘導
③墓地の祈りによる実質耐性
を構えた盤面であり、流行の【スネークアイ】や【炎王】のギミックが有する対象をとる除去方法やAoEの破壊効果等にとっては突破が非常に高いハードルになる。

ここでもう1例、《宣告者の神巫》1枚からの展開も見てみよう。

《宣告者の神巫》1枚から

①神巫を通常召喚して①効果発動
 デッキからヒエラルキアを墓地送り
②ヒエラルキアの①効果発動
 場の神巫をリリースして自身を蘇生
 神巫の②効果を発動して
 デッキからローを特殊召喚
 そのままローの①効果を発動して
 結界を魔法罠ゾーンに置く
③ローを素材にリンクリボーをL召喚
④結界の②効果を発動
 デッキから竜賢姫サフィラをサーチ
⑤竜賢姫サフィラの①効果発動
 自信を手札から捨て祈りを墓地に送り
 守護者ローガーディアンをサーチ
⑥竜賢姫サフィラの②効果発動
 場のヒエラルキアをリリースして
 守護者ローガーディアンを儀式召喚
 守護者ローガーディアン①効果と
 ローの③効果を発動して自信を特殊召喚
 ローガーディアンでモンスターをサーチ

《宣告者の神巫》1枚からの盤面

《宣告者の神巫》からスタートすると《粛声の祈り手ロー》からスタートした場合より《リンクリボー》を1枚多く構えられる。《粛声なる結界》のおかげで攻撃誘導が可能なため《リンクリボー》の場持ちがいいという面白い使い勝手を味わえる。が《粛声の祈り手ロー》からのスタートと違い《原子生命態ニビル》の射程に入ることに注意。

6.2.【粛声】の強みと弱み

まず地域にもよるが、今シーズンの環境に分布するデッキは【ふわんだりぃず】の様な《増殖するG》の影響を受けないデッキはほとんどなく【神碑】もシーズン中盤以降はほとんど姿を見なくなった。《粛声の祈り手ロー》1枚からの基本展開のは《増殖するG》によるドローを2枚に抑えられるので、《増殖するG》のバリューを最も低く出来るデッキの1つだろう。そういった手札誘発の受けの良さは1つの強みだ。

だが【粛声】の一番のメリットは環境における立ち位置の良さであり、その防御性能が環境に完璧にマッチしていると言える。はっきり言って【粛声】は先行で大量に展開してゲームを制圧することもしなければ、なんとテーマ内に相手のカードに直接関与できるカードがほぼ存在しない。加えてギミックは底が浅く、少し回っただけですぐギミックが回りきってしまい戦術の使い分けの選択肢が少ない。そのくせ《増殖するG》の影響が少ないといっても多くの展開ルートでは大打撃であることに代わりは無い。弱みが沢山あるデッキである。

《粛声なる守護者ローガーディアン》

しかしながらそれを差し引いても余りある非常に恵まれた立ち位置を持ち、攻撃力上昇した《粛声なる守護者ローガーディアン》の4100と《粛声なる結界》による対象耐性、それこそが【粛声】の強みであると言える。環境序盤に分布が多かった【R-ACE】等は対象をとる魔法罠が主な妨害リソースであり火力も《R-ACEタービュランス》の3000が実戦的な最高打点アタッカーであり、環境終盤に分布が多かった【スネークアイ】【炎王】も《賜炎の咎姫》の対象をとる破壊効果と攻撃力上昇効果を使った《聖炎王ガルドニクス》の3900が実戦的な最高打点アタッカーとなる。これらは【粛声】にとってはカモである。繰り返しになるが攻撃力上昇した《粛声なる守護者ローガーディアン》の4100と《粛声なる結界》による対象耐性は環境に非常にマッチした性質であり、加えて《粛声なる祈り》による2枚目の《粛声なる守護者ローガーディアン》の供給は環境に非常にマッチした防御性能と言える。

6.3.【粛声】の構築

【粛声】の構築例

【粛声】は先行で固い盤面を築くのが狙いのデッキであるが、後攻で盤面を荒らすギミックはなく、それ故に後攻になったときに相手の盤面を弱化するための手札誘発を多く積む構築が主流である。昨今のミッドレンジのデッキはメインスロットの半分程度が自由枠であることが多いが、ギミック内のカードが優秀な【粛声】の自由枠はその中では比較的少ない。その少ない自由枠を後攻に寄せたカードで広く埋めるのが通説である。

上述の通り盤面を荒らすギミックが不足していることから、EXデッキは盤面に触れるカードを優先して採用したい。【ふわんだりぃず】や【エルドリッチ】で経験した諸兄も居ると思うが、EXデッキを使う機会が少ないデッキだからこそ、EXデッキの採用カードの選定は個人のプレイ意識が色濃く現れ、トーナメントの構築を参考にする際は多くの知見を得られるだろう。

《カオス・アンヘル-混沌の双翼-》

《宣告者の神巫》からのアクセスは《旧神ヌトス》だけでなく《トリアス・ヒエラルキア》を介してアクセス可能な《カオス・アンヘル-混沌の双翼-》が除外の性能も有している。

《天底の使徒》

盤面に触ることもリソースを爆発させることも出来る優秀さから『ドラグマ』のギミックを採用する構築も珍しくなく、そうなった場合EXデッキの選定は更にプレイヤーの意識が十人十色で現れる。トーナメントに限らず多くの構築を参考にするといいだろう。興味があれば遊戯王OCGの公式チャンネルからYCSJ名古屋2023のトーナメントの動画を観てみるといい。

6.4.【粛声】のゲーム構成

少しマイナスの話になるが、上述した様に【粛声】は少し回っただけですぐギミックが回りきってしまい戦術の使い分けの選択肢が少ない。そのため対面次第で大きくスタイルを変えたり戦術を使い分けたりする様な動きはほとんど無く、細かなプレイの幅は広いが根幹のゲームプランは単調である。

参考文献の言葉を借りよう。「万能無効を用意しながら対象耐性かつ攻撃誘導を行う41打点を盾に継続リソースとなるカードを用意することで相手に負荷を押し付けながら、相手とのアドバンテージを広げていく」のが【粛声】のゲームメイクである。

先行のゲームは盤面を作って上記ゲームを狙うことになるし、後攻のゲームなら手札誘発で相手の展開を弱化して《粛声なる守護者ローガーディアン》の4100打点で戦闘を介し場を荒らしてから上記ゲームメイクの流れとなる。

《サモンリミッター》
《魔封じの芳香》

サイドゲームでも大きくゲームメイクの方針が変わることは無い。サイドチェンジについては先行のゲームなら永続魔法罠を積極的に採用して《粛声なる守護者ローガーディアン》でそれを守るプランが多いように思う。採用する永続魔法罠は地域差が大きく、モンスターを横に並べさせないための《サモンリミッター》が多くみられる地域もあれば、【ピュアリィ】等に対応するため《魔封じの芳香》が多く採用される地域もあり、なんならとシンプルに《神の宣告》を採用する構築も見られる。後攻のときのサイドチェンジは《強欲で金満な壺》の枚数を減らしたり、プレイヤーによっては手札誘発を減らしてピンポイントに有効な捲り札にスイッチする等をよく見る印象だ。

6.5.【粛声】の変遷

10月にPHNIが発売してから11月のYCSJ名古屋2023で注目を集め、その後『宣告者』の儀式ギミックと併用した展開型の構築も存在していたが、トーナメントに分布するのはミッドレンジの型で安定する様になった。

今シーズン中盤に登場したデッキであるため歴史がまだ浅く、変遷に記載できることがほぼ無いのだが、新弾での強化が確定していることもあって今後に期待である。

6.6.【粛声】の参考文献


7.【覇王魔術師】

珍しいペンデュラム召喚を使用したデッキ
高い展開性能で好んで使うプレイヤーは多い

7.1.【覇王魔術師】の特徴と動き

まず【覇王魔術師】は従来の【EM魔術師】と大きく異なるデッキである。異なる点は多々あるが、最大の違いは自由枠の多さであり、それ故にトーナメントで勝ち上がる【覇王魔術師】の構築にはミットレンジ並みの手札誘発の採用が多く見られる。

では何故自由枠が増えたのか?その理由は展開の最適化にあり【EM魔術師】の様な多彩なモンスター効果による余多の戦術の使い分けは狙わず《覇王門の魔術師》を始めとしたモンスターの特殊召喚による連鎖的な展開のみに特化したことが大きい。それ故に大量展開をイメージするより準展開系のデッキに慣れたプレイヤーの手に馴染むだろう。【EM魔術師】は長年ペンデュラム召喚に魅入られてきたファンプレイヤーが多いデッキであり「昔から【EM魔術師】を使っているプレイヤー」が続投することが多いのだが【覇王魔術師】は比較的コンパクトにまとまったおかげで【EM魔術師】に触れて来なかったプレイヤーの使用が多いのも特徴である。

では展開例を見ていこう。1枚初動は基本的に存在せず、今回の初動は《覇王眷竜ダークヴルム》と《覇王門の魔術師》の2枚とする。

《覇王眷竜ダークヴルム》と《覇王門の魔術師》の2枚から

①ダークヴルムを通常召喚
 効果で2枚目の覇王門の魔術師サーチ
②覇王門の魔術師をPゾーンに設置
③覇王門の魔術師のP効果を発動
 自身を破壊して覇王門零を設置する
④手札の覇王門の魔術師の効果を発動
 EXデッキから該当モンスターを墓地送り
 自身を特殊召喚してすぐ②効果を発動
 光翼をサーチする
⑤ダークヴルムと覇王門の魔術師で
 エレクトラムをL召喚して効果発動
 アストログラフをEXデッキに送る
⑥光翼を発動してライトヴルムをサーチ
⑦ライトヴルムをPゾーンに設置
⑧エレクトラムの②効果でライトヴルム破壊
 アストログラフを回収
⑨エレクトラムの③効果を発動
 これに相手がチェーンなければ
 手札のアストログラフの効果を発動
 アストログラフを特殊召喚して
 デッキからライトヴルム2枚目をサーチし
 エレクトラムの③効果の処理で1ドロー
⑩エレクトラムとアストログラフを素材に
 エクシードをL召喚
 エクシードの①効果でライトヴルムを回収
⑪2枚のライトヴルムの1枚をPゾーンに設置
⑫エクシードの②効果を発動
 手札のライトヴルムを特殊召喚して
 ライトヴルムの①効果をすぐ発動
 EXデッキから覇王門の魔術師を回収
⑬エクシードとライトヴルムを素材に
 アポロウーサをL召喚
⑭ここでP召喚、EXデッキのダークヴルム、
 覇王門の魔術師、アストログラフと
 手札の覇王門の魔術師の4枚を特殊召喚
⑮2枚の覇王門の魔術師で
 オッドアイズアブソリュートをX召喚
⑯オッドアイズアブソリュートとダークヴルム
 を素材にマスカレーナをL召喚
 オッドアイズアブソリュートの効果で
 オッドアイズボルテックスを特殊効果

《覇王眷竜ダークヴルム》と《覇王門の魔術師》の2枚からの盤面

手札2枚から
○アポロウーサの2回モンスター効果無効
○オッドアイズボルテックスの万能無効
○マスカレーナからのリトルナイト
か成立する。

この様に2枚のPモンスターから連鎖的にリンクを上げていくことでアポロウーサを成立させ《原始生命態ニビル》に臆することなくP召喚することで盤面を作れる。これに《虹彩の魔術師》等の重ね引きが絡むと更に盤面の妨害は伸びる強力な制圧が可能となる。

7.2.【覇王魔術師】の強みと弱み

まず大量展開によって制圧盤面を築く類のデッキでありながら《原始生命態ニビル》に対して強気に動ける基本展開は非常に優秀であるが、このデッキの真の強みはP召喚のテーマであることである。昨今のOCGは強力な制圧盤面よりも次ターンのリソースを如何に上手く抱えるかが重視されるが、この【覇王魔術師】であればPモンスターのテーマであるというだけで次ターンのリソースは勝手に膨らんでくれる。

加えて個々のカードの優秀さもあり、手札誘発で相手の盤面の弱体化を狙うことも出来るし、捲り札で一気に固い盤面を剥がしたりも出来るし、強烈なアタッカーで攻めたり手数で攻めたり、なんでも出来るプレイの柔軟性も持つ。

そんな【覇王魔術師】の弱みは初動の細さである。【覇王魔術師】がペンデュラム召喚を使わずに場にモンスターを出す手段はギミック内で言うと基本的に以下の4つしかない。
①通常召喚
②おろ埋等によるダークヴルムの特殊召喚
③覇王門の魔術師の手札効果
④アストログラムの手札効果
これらを駆使して場にPモンスターを2枚並べるのが展開の起点となるのだが、これの邪魔をするのがデッキのコンセプトでもある自由枠に割かれた『手札誘発』の枠である。【EM魔術師】では起こりにくかったが、手札誘発を多く採用したことで攻めの起点となる特殊召喚手段を引き込めなくなって2枚目のPモンスターの着地が上手く決まらない…なんて負け方が【覇王魔術師】には存在する。自分のゲームプランに見合った手札を引き込む必要がある点で、ゲームが不安定になってしまう危険がある。

そして何より、P召喚のテーマであること自体は1つの弱みでもある認識が必要である。どういうことかというと、まず《魔封じの芳香》という天敵の存在である。

《魔封じの芳香》

【EM魔術師】であれば《紫毒の魔術師》等で対応することになるが【覇王魔術師】はそういった柔軟性のあるギミックを取り除くことでコンパクトな展開を実現しており【EM魔術師】と比べると痒いところに手が届かない場面が多い。

《蛇眼の炎龍》

そして何より環境で向かい風なのは《蛇眼の炎龍》の存在である。こいつは①の効果でモンスターを魔法罠ゾーンに設置する効果を持つ。つまり下手に相手の先行展開中に手札誘発でモンスターを墓地に送ってしまうと、こちらのPゾーンにモンスターを設置されてしまうことがあり得るのである。そのため今シーズンは【覇王魔術師】にとって天敵とも呼べる存在が環境に広く分布してしまい厳しい向かい風となった。

7.3.【覇王魔術師】の構築

【覇王魔術師】の構築例

まずメインデッキのうち展開で使用するスロットは23~25程度、上述した様に残り15~17枚の枠を自由に使用可能である。従来の【EM魔術師】ではスロットの圧迫から《増殖するG》等を削ることも少なくなかったが【覇王魔術師】であれば余裕あるスロットが実現する。

EXデッキの《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》は正規のS召喚することはほとんど無く《覇王門の魔術師》の特殊召喚のために使用する。《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》の存在から墓地の《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》の効果をコピーする機会も無くはないが、プレイヤーによってはこの枠を《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》にすることもある。

《覇王門の魔術師》
《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》
《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》
《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》

前項で記載した様に【EM魔術師】と比べると痒いところに手が届かない場面が多く、プレイヤーによっては《紫毒の魔術師》や《星霜のペンデュラムグラフ》や《調弦の魔術師》を採用して爆発力や貫通力を上げることも多く見られる。構築の段階で、天敵の《魔封じの芳香》の存在を意識することも重要である。

《紫毒の魔術師》
《星霜のペンデュラムグラフ》
《調弦の魔術師》

面白いところではシーズン後半に【炎王】等の流行から《時空のペンデュラムグラフ》等の破壊効果に不信感を持ち『魔術師』のギミックを減らして《死天使ハーヴェスト》を採用する型も見られた。

《死天使ハーヴェスト》

7.4.【覇王魔術師】のゲーム構成

まず【覇王魔術師】は戦術の幅を削ることでデッキに自由枠を確保しているデッキであるため、対戦相手によって戦術を使い分けたりスタイルを変える様な動きはほとんど無く、展開して制圧するか展開して盤面を荒らして捲ってから余力で蓋するかというシンプルな思考で良い。

上述したが【覇王魔術師】がペンデュラム召喚を使わずに場にモンスターを出す手段はギミック内で言うと基本的に以下の4つしかない。
①通常召喚
②おろ埋等によるダークヴルムの特殊召喚
③覇王門の魔術師の手札効果
④アストログラムの手札効果

これらを駆使して場にペンデュラムモンスターを2体並べ、リンク2のモンスターをリンク召喚することで展開の起点とする。そのため上記4つの手段のうち2つはなんとしても通したい

先行なら相手がこれらを止める手段は限られている。《おろかな埋葬》に対する《灰流うらら》等に警戒しながら負け筋となる誘発を重く貰わない様に展開し、盤面の制圧を狙う。【覇王魔術師】の先行制圧盤面は万能無効が環境と比較すると多いため、対面によって先行盤面を変える等の意識は今シーズンはあまり必要無く展開出来る。ただ意識外のタイミングで無効系誘発等を打たれて展開が伸びずに負け…なんてこともあるので、手札に手数をしっかりと確保しながら展開したい。

後攻なら従来の【EM魔術師】は物量と手数で相手の妨害を踏み切って高い貫通力で展開を通すことも出来たが、この【覇王魔術師】は手札誘発を有効に使って相手の盤面を弱化させてから捲りに行くプランとなる。前項でも触れたが、構築の時点で多彩なカードを採用しておけば相手の立てた妨害を手数で押し切ることも可能である。

サイドゲームでもあまりやることは変わらないが《拮抗勝負》等、サイドカードの流行を追って万能無効を優先して盤面に残す意識を持つといい。

7.5.【覇王魔術師】の変遷

【魔術師】は歴史の長いデッキなのでそれについてはここでは触れず、あくまで【覇王魔術師】に焦点を当てる。このデッキが生まれたのは7月のAGOVでの《覇王門の魔術師》の登場である。

《覇王門の魔術師》

登場当初は【EM魔術師】に採用され、デッキのパワーや安定性を底上げする役割や戦術の幅を広げる役割を担った。この時点ではあくまで【EM魔術師】でありデッキ内のほとんどのカードをPモンスターにすることで動作を安定させつつ、先行の高い展開性能と制圧力・後攻の捲り性能と貫通力で暴力的なゲームをするのが主流であった。入賞報告も少なくなかったが、環境にはAoEの《魔砲戦機ダルマ・カルマ》や《炎王神 ガルドニクス・エタニティ》が見え始め、ほどなく環境における分布は落ち着くことになる。

そして今シーズン、202310環境が始まると【魔術師】は転機を迎える。

《エフェクト・ヴェーラー》
《無限泡影》

【R-ACE】とそれによる無効系誘発の流行である。《R-ACEタービュランス》の効果を通されたとき、対面が『魔術師』の有識者であった場合【魔術師】の勝ち筋がほぼゼロになってしまうため【魔術師】は止む無く無効系誘発の採用を強いられた。しかしながらデッキ内のPモンスターを減らすと【EM魔術師】は安定を欠きトーナメントでの勝利が遠退く。そんな悩みにぶつかったとき《覇王門の魔術師》の存在が【覇王魔術師】という展開枠の最適化に特化した【魔術師】の新しい形を生み出し、見事【魔術師】を環境デッキに押し上げた。

とはいえ、上述の通り202310環境も後半になると【スネークアイ】と《魔封じの芳香》の流行から向かい風が強くなり、入賞は減少傾向にある。

7.6.【覇王魔術師】の参考文献


8.【ピュアリィ】

※前記事と内容の大部分が重複するため注意

『メモリースペル』によって様々な戦術を使い分け、
高い安定性と対応力で戦うエクシーズのデッキ

8.1.【ピュアリィ】の特徴と動き

基本戦術は2種類の下級モンスター《ピュアリィ》《ピュアリィ・リリィ》でデッキのピュアリィカードを拾ってリソースを増やし、エクシーズモンスターで妨害を構えたりライフカットしに行くことである。

《ピュアリィ》

《ピュアリィ》に名称ターン1が付いていないため、『メモリースペル』を使って複数回《ピュアリィ》を特殊召喚することでデッキから『ピュアリィ魔法罠』を拾い、リソースの消費を抑えながらの展開と手札誘発の確認を行うことが可能である。

以下に展開を記載するが、元々ゲームプランのアドリブ性が高いデッキであるため実践でこういった展開をする機会は少ない点、及び手札誘発等による妨害を考慮しない展開例である点を予め断っておく。

『メモリースペル』1枚から

①『メモリースペル』の効果でデッキから
 《ピュアリィ・リリィ》を特殊召喚
②《ピュアリィ・リリィ》の効果で
 《ピュアリィ・マイフレンド》をサーチ
③《ピュアリィ・マイフレンド》の効果で
 《ピュアリィ・デリシャスメモリー》サーチ
④《ピュアリィ・デリシャスメモリー》発動
 手札の魔法罠カードを捨てて《ピュアリィ》
 をデッキから特殊召喚
⑤《ピュアリィ》効果でデッキから
 『メモリースペル』を手札に加える
⑥《ピュアリィ・リリィ》の②効果を発動
 墓地の《ピュアリィ・デリシャスメモリー》
 を選択して《エピュアリィ・プランプ》を
 特殊召喚
⑦手札の『メモリースペル』を発動
 相手がこれに何もチェーンしなければ
 《エピュアリィ・プランプ》の効果を発動
 『メモリースペル』をX素材にする
⑧発動した『メモリースペル』で手札の魔法罠
 を捨ててデッキから《ピュアリィ》特殊召喚
 効果でデッキから『ピュアリィ魔法罠』を
 手札に加える
⑨《エピュアリィ・プランプ》効果発動
 『メモリースペル』の効果で捨てた魔法罠を
 2枚選択してX素材にすることで
 《エピュアリィ・プランプ》のX素材が5枚
⑩《エピュアリィ・プランプ》の上に重ねて
 《エクスピュアリィ・ノアール》をX召喚

『メモリースペル』1枚からの盤面

【ピュアリィ】というデッキを代表する展開であり大量の素材を有する《エクスピュアリィ・ノアール》という強固な制圧と《ピュアリィ・マイフレンド》維持による次ターンのリソースの確保を狙う。対面した相手は《エクスピュアリィ・ノアール》の処理に躍起になりがちだが、後ろに構える《ピュアリィ・マイフレンド》のリソース確保及び墓地回収効果を許すと《エクスピュアリィ・ノアール》の有無に関わらずゲームエンドとなるレベルの後述する展開が可能であり、非常に優秀な盤面である。場に残った《ピュアリィ》は《LLーアセンブリー・ナイチンゲール》や《S:Pリトルナイト》にして妨害や次ターンのリソースにする。《ピュアリィ・スリーピィメモリー》を上手く絡めることが出来れば次ターンにドローすることも可能だ。

しかしながら数々の規制により上記展開の様に『耐性付きノアール』を成立させることが難しくなったことや、広くプレイヤーにデッキの性質を理解されてしまった影響を受け、目まぐるしく戦い方が変化するのが【ピュアリィ】の特徴になりつつある。今シーズンはノアールや『エピュアリィ』を最低限の妨害を立てるために使用し、相手にそれを突破するリソースの消耗を要求することで《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》や《ピュアリィ・マイフレンド》を守り、返しのターンに《エピュアリィ・ハピネス》等でリソースを膨らませて盤面の制圧を狙うゲームプランが重視された。

また【ピュアリィ】は後攻で《エピュアリィ・ハピネス》を使用した殺意の高い強力な動きが可能であり、これは規制を受けても尚健在である。

《ピュアリィ・ハッピーメモリー》を使った後攻の動き

①《ピュアリィ》の②効果で
 《ピュアリィ・ハッピーメモリー》を使い
 《エピュアリィ・ハピネス》を特殊召喚
②《ピュアリィ・デリシャスメモリー》発動
 相手が何もチェーンしなければ
 《エピュアリィ・ハピネス》の効果で
 《ピュアリィ・ハッピーメモリー》をX素材
 相手の場に魔法罠があれば手札に戻し、
 更に相手の場の攻撃表示モンスターに
 戦闘破壊耐性を付与する
③戦闘破壊耐性を付与したモンスターに
 《エピュアリィ・ハピネス》で攻撃して効果
 戦闘ダメージを与えつつ
 《ピュアリィ・ハッピーメモリー》をサーチ
 更に戦闘破壊耐性モンスターの攻撃力を半減
④《ピュアリィ・ハッピーメモリー》を発動
 相手が何もチェーンしなければ
 《エピュアリィ・ハピネス》効果でX素材に
⑤これを繰り返す
 《エピュアリィ・ハピネス》が複数回攻撃し
 攻撃した数だけ相手モンスターの攻撃力は
 半減してダメージも増えていく

《エピュアリィ・ハピネス》による連続攻撃

この動きを使えば、相手の場にモンスターさえ居ればかなり低いハードルでキルを狙える。『メモリースペル』が追加で確保出来るなら《エピュアリィ・ビューティ》の効果を発動することで相手の場の守備表示モンスターの表示形式を変更してワンキルを狙うことも可能。このワンキルパターンを相手が警戒していた場合《ピュアリィ・ハッピーメモリー》の発動に何かカードをチェーンして発動することで《エピュアリィ・ハピネス》のX素材にする効果のタイミングを逃がすことが考えられる。が、その場合《エピュアリィ・ハピネス》で攻撃する前に《エピュアリィ・プランプ》等のエクシーズモンスターで自爆特効することで《ピュアリィ・マイフレンド》の効果を起動し、墓地の《ピュアリィ・ハッピーメモリー》を回収すれば問題なくキルをとれる。

この様に、その可愛らしい見た目に反して非常に優秀な制圧盤面と殺意の高いキルムーブを併せ持つのも【ピュアリィ】の特徴と言える。

8.2.【ピュアリィ】の強みと弱み

デッキの性質としては《ピュアリィ》《ピュアリィ・リリィ》が『メモリースペル』で捨てた手札を逐一補充しつつ《エクスピュアリィ・ノアール》という強固な制圧と《ピュアリィ・マイフレンド》による大量のリカバリがデッキのパワーを非常に上げており、これが【ピュアリィ】を長年環境に押し上げていた。全盛期は『メモリースペル』1枚から展開可能という驚異の安定性を武器としていたが、現在は多くの規制を受けて一般並みの安定性に落ち着き《エクスピュアリィ・ノアール》の制圧も環境に対峙するには控えめの印象である。

それでも【ピュアリィ】が環境で強く在り続けるのは、テーマ内の各種カードが持つ多様な戦術を使い分けを活かした安定性・対応力故である。根強いファンが根気強く研究を進めている印象もあり、デッキの息は長い。

《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》

《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》の存在から流行している《賜炎の咎姫》に対し強く出られる点や《次元の裂け目》を採用できる等、メタを意識した優位な部分を活かせる強みも存在する。

とはいえ、数々の規制によって受けた影響は大きく、安定した動作が難しくなった点は見過ごせない。《エクスピュアリィ・ノアール》が耐性を持たない場面が増え、はっきり言って妨害の質が環境で戦うには心もとないレベルまで落ちてしまっている。広くプレイヤーにデッキの性質を理解されてしまった影響もあり、《エピュアリィ・ハピネス》で上手くキルやリソースを稼げない場面も増えた。

手札の消費が非常に激しいことも弱みである。次ターンのためのリソースは《ピュアリィ・マイフレンド》や《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》等のリカバリ要素に依存しており、盤面を荒らされるだけでリソースが枯渇する場面も多い。

8.3.【ピュアリィ】の構築

【ピュアリィ】の構築例

『メモリースペル』がデッキの核であり、基本的には全種フル投入となる。また《ピュアリィ》の効果を多用するためデッキ内にピュアリィネームの魔法罠が多い程展開中のリソースのロスを抑えられるため、その割合を高くするのが通説である。また『メモリースペル』で捨てたカードを《エピュアリィ・プランプ》の効果で素材にするために、デッキ内のモンスターの割合は低い方がいいとされている。特に召喚権がブッキングする可能性を考えて《ピュアリィ・リリィ》の枚数を減らすことも少なくない。

《強欲で貪欲な壺》

『メモリースペル』の確保のため《強欲で貪欲な壺》で初動や手札誘発を引きに行く構築が現在は主流となっているが、今シーズンの後半に【スネークアイ】が流行すると『メモリースペル』を拾いに行くと言うより「リソースを犠牲にメタカードを拾いに行く」様な側面が強くなった。

《嗤う黒山羊》

【ピュアリィ】は「強力なパワーカードを採用して使わなかったら『メモリースペル』で捨てる」という考えも以前は出来たが、環境にパワーカードに対する対応力の高いデッキが広まると「とにかく手札を1枚でも腐らせないこと」の重要性が増し《嗤う黒山羊》の様な複数用途のカードを多く採用する傾向が見られる。手札から『メモリースペル』で捨てて墓地効果を使用するのは勿論、場に伏せて普通の通常罠として使用する場面もある。


8.4.【ピュアリィ】のゲーム構成

基本的には、先行なら上記の《エクスピュアリィ・ノアール》と《ピュアリィ・マイフレンド》の盤面を目指し、後攻ならワンキル、それが難しいなら《ピュアリィ・マイフレンド》や《エピュアリィ・ハピネス》によるリソースの確保を目指す。

《ピュアリィ・マイフレンド》

先行展開中に妨害され展開が伸ばしにくくなったら《ピュアリィ・マイフレンド》によるリカバリ手段を残しつつ『エピュアリィ』モンスターを立てて最低限の妨害を残すことを狙う。《ピュアリィ・マイフレンド》にアクセス出来る《ピュアリィ・リリィ》は名称ターン1効果であることから是非効果を通したいモンスターである。

上述の通り、今シーズンは無理に『耐性付きノアール』を目指すことはせず、ノアールや『エピュアリィ』を最低限の妨害を立てるために使用し、相手にそれを突破するリソースの消耗を要求することで《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》や《ピュアリィ・マイフレンド》を守り、返しのターンに《エピュアリィ・ハピネス》等でリソースを膨らませて盤面の制圧を狙う意識が重要である。

《賜炎の咎姫》の流行を受けて《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》の重要性が増したり、
《エピュアリィ・ハピネス》の魔法罠バウンスを使って相手の耐性付与魔法罠を剥がしてからキルを狙いに行く等、ギミック内のカード効果の広い理解を武器に、対面した相手に対して何が有効なのか逐一考えてプレイの指針を都度決めるゲームメイクの意識も重要。

余談にはなるが、プレイ難度がただでさえ高かったというのにアドリブ性が上がったことでより練度を求められる様になり、プレイヤーの人口は衰退の一途を辿ってしまっている。

8.5.【ピュアリィ】の変遷

《救いの架け橋》

【ピュアリィ】が頭角を表した際、《エクスピュアリィ・ノワール》と《ピュアリィ・マイフレンド》の布陣の強固さに着目し、自己展開中にアドバンテージを得つつ《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》で《ピュアリィ・スリーピィメモリー》によるドローを確実に狙うゲームプランとして《救いの架け橋》を採用した構築が現れた。安定したゲームが《三戦の号》等のパワーカードの採用を無理なく可能にした。

《三戦の号》
《次元障壁》

《三戦の号》がパワーカードとして注目されたのは、ミラーにおける《ドロール&ロックバード》や《次元障壁》の存在によるところが大きい。手札誘発を受けてからの《三戦の号》からの《次元障壁》によるターンスキップを積極的に狙いに行く環境が始まるかと思われたが、実際はそんなことにはならず、《次元障壁》に耐性のあるデッキテーマがここぞとばかりに名乗り出たため手札誘発の需要が減ることは無かった。

《暗黒界の狩人 ブラウ》

結果【ピュアリィ】も手札誘発を多く採用することになり、手札コスト不足問題を迎える。注目されたのは「手札から捨てられたときに手札を確保出来るカード」である。《救いの架け橋》と違い『メモリースペル』の要求枚数が少ない『暗黒界』は非常に安定してゲームが可能だった。

《強欲で貪欲な壺》
《次元の裂け目》

その後数多の制限改訂を受け【ピュアリィ】は『メモリースペル』の総枚数がどんどん減ることになった。これによりデッキの安定性に支障が出たことで『メモリースペル』の引き込みが重要視され、『メモリースペル』との重ね引きを要求する『暗黒界』も次第に姿を消すことになる。現在の【ピュアリィ】は《次元の裂け目》等のメタカードの採用や《強欲で貪欲な壺》の採用等、ある程度のリスクを抱えながらも【ピュアリィ】は根強く環境で息をしている。

8.6.【ピュアリィ】の参考文献


9.【ラビュ】

※前記事と内容の大部分が重複するため注意

通常罠を多用する闇属性悪魔族のテーマ
デザインが人気だがプレイ難度から挫折するプレイヤーも多い

9.1.【ラビュ】の特徴と動き

まず環境に鎮座する【ラビュリンス】は「家具型」と呼ばれる型である。「家具」とは《白銀の城の竜飾灯》《白銀の城の火吹炉》の2種類を指す。これらのカードの性能を極限まで活かすことでデッキパワーを破格に上げたのが現在の【ラビュリンス】だ。

【ラビュリンス】はテーマ内に妨害性能のある罠がほぼ存在しない珍しい罠ビートのデッキだ。主に《ビッグウェルカム・ラビュリンス》の①効果で自分の場のモンスターをバウンスし、《白銀の城のラビュリンス》の破壊効果や墓地の「家具」等の効果を誘発することでアドバンテージを稼ぐ。それに加えて《迷宮城の白銀姫》の効果でデッキ内にある妨害性能の高い通常罠をリクルートすることで、対戦相手のゲームを崩壊させることを狙う。

「家具」をはじめとした【ラビュリンス】テーマ内のモンスター群は相手のターンにもカード効果を発動できるため、非常に高い妨害性能を持つ手札誘発として機能するのも大きな特徴だ。

以下に基本展開を示す。まずは後攻での《白銀の城の狂時計》と「家具」の重ね引きから。

《白銀の城の狂時計》と「家具」の重ね引きから

①《白銀の城の狂時計》の①効果発動
②その後「家具」の効果を発動
 《ビッグウェルカム・ラビュリンス》セット
③墓地の《白銀の城の狂時計》の②効果発動
 自身を場に特殊召喚
④《ビッグウェルカム・ラビュリンス》を発動
 《白銀の城のラビュリンス》を特殊召喚して
 場の《白銀の城の狂時計》を手札に戻す
⑤場の《白銀の城のラビュリンス》の効果と
 墓地の「家具」の効果を発動
 カードを1枚破壊しつつ「家具」蘇生or回収

《白銀の城の狂時計》と
「家具」の重ね引きからの盤面

これが基本展開であり、ギミック内のカードだけで相手のターンに強力な妨害を仕掛けつつ、自分のターンの攻め手になる《白銀の城のラビュリンス》を特殊召喚できる。

次に《白銀の城の召使い アリアンナ》について見てみる。このカードはこのデッキ随一のパワーを持ち、1枚からどんな広がりになるのか見てみよう。

《白銀の城の召使い アリアンナ》1枚から

①《白銀の城の召使い アリアンナ》を召喚
 効果で「家具」を手札に加える
 (ここでは《白銀の城の火吹炉》)
②手札1枚を捨て《白銀の城の火吹炉》発動
 《ビッグウェルカム・ラビュリンス》セット

《ビッグウェルカム・ラビュリンス》セットまで

この状態でターンを相手に渡した場合、相手ターンに展開阻止のために

③《ビッグウェルカム・ラビュリンス》発動
 《白銀の城のラビュリンス》を特殊召喚し
 《白銀の城の召使い アリアンナ》バウンス
④《白銀の城のラビュリンス》の③効果と
 墓地の《白銀の城の火吹炉》の効果を発動
 相手のカードを破壊しつつ
 《白銀の城の火吹炉》を特殊召喚

相手のカードを破壊しつつ
《白銀の城の火吹炉》を特殊召喚

この様な盤面になることが予想される。もし、このままターンが返ってきた場合、《白銀の城の召使い アリアンナ》は真価を発揮する。

⑤《白銀の城の召使い アリアンナ》を召喚
 効果で《迷宮城の白銀姫》を手札に加える
⑥《迷宮城の白銀姫》を特殊召喚
⑦《白銀の城の火吹炉》《迷宮城の白銀姫》
 の2枚を素材にして
 《カオス・アンヘルー混沌の双翼ー》S召喚

《カオス・アンヘルー混沌の双翼ー》S召喚まで

この盤面で攻撃力が1600+2900+3500=8000となりライフを削りきることが可能である。《白銀の城の召使い アリアンナ》1枚から1妨害を構えつつターンを挟んでのゲームエンドまで計算することが可能であり、非常に強力なモンスターであることが分かるだろう。

9.2.【ラビュ】の強みと弱み

昨今の遊戯王は理不尽な展開で対戦相手にゲームを許さないことが多い。【ラビュリンス】はそういった理不尽なゲームメイクに対し、こちらも理不尽なゲームをやり返す形のデッキだ。【ラビュリンス】の強みはその妨害性能であり、相手のゲームメイクを崩すことにかけては環境で最も高い性能を誇る。上振れた【ラビュリンス】を相手にした場合は現環境のどんなデッキもまともにカードゲームは出来ない。

《白銀の城の執事 アリアス》

特に今シーズンは《白銀の城の執事 アリアス》の導入によって、より積極的に理不尽なゲームメイクを狙える様になった。《魔砲戦機ダルマ・カルマ》や《天龍雪獄》を手札から発動することで相手の先行展開を崩し、相手にゲームメイクを許さない動きが流行した。

罠ビートと呼ばれるデッキでありながらAoEに対する高い耐性も魅力だ。《次元障壁》や《異次元グランド》はターン中適用される効果であるため《ハーピィの羽根帚》《拮抗勝負》に耐性があるのは勿論、《ビッグウェルカム・ラビュリンス》《トランザクション・ロールバック》の様な墓地で発動する効果の罠が多いこと、妨害性能がモンスターによるところも大きいことが耐性の理由である。

しかしながら【ラビュリンス】は非常にムラがあるデッキだ。最初にドローした5枚のカードによって起こるデッキの強さの乱高下は計り知れない。「家具」はどんなに優秀な性能だとしてもデッキに3枚を2種類しか入れることが出来ず、しかも他のカードと合わせ引きしなければ性能を発揮できないため、デッキがそもそも動かないことも少なくない。

《灰流うらら》

AoEに耐性があるという話は前述したが、罠ビートでありながら各種手札誘発に弱いのも大きな弱点だ。特に《灰流うらら》は天敵とも言える存在であり、《ビッグウェルカム・ラビュリンス》を止められると妨害とリソース確保を同時に止められることになり、非常に苦しいゲームとなる。《トランザクション・ロールバック》のおかげで《灰流うらら》に対してある程度の耐性もできたが、依然として厳しいカードであることには変わりない。

9.3.【ラビュ】の構築

【ラビュ】の構築例

構築は参考文献から借りているのでここでは詳細は割愛し、通説のみ記載する。

《迷宮城の白銀姫》

今シーズンはエースアタッカーである《迷宮城の白銀姫》がアタッカーや通常罠のリクルートを行う場面が少なく、特殊召喚によるキルを狙う用途での使用が主であり枚数が前シーズンから減少傾向にある。とはいえ《迷宮城の白銀姫》を2枚並べてプラスアルファで2000の火力を稼いで8000のキルを狙う速効性から2枚採用も珍しくない。

《白銀の城の狂時計》

《白銀の城の狂時計》は構築によって1~3枚と幅広く投入される。3枚投入されるのは上述した基本展開を攻めのベースに安定して行うのが狙いであり、1枚しか投入しないのは重ね引きの仕事量が低過ぎることと「家具」と重ねて引くのが用途であれば《嗤う黒山羊》等他のカードでも代用可能で仕事が被ってしまうからと言われる。2枚採用はその間をとっており、特にロングゲームを見据えた場合「家具で捨てて蘇生するための狂時計」と「その家具で伏せたラビュリンス罠をすぐ発動するための狂時計」で役割をターン毎にシフトさせてリンク数を伸ばす狙いもある。そういった役割のターン毎のシフトを意識した《ウェルカム・ラビュリンス》の複数枚採用も珍しくない。

《白銀の迷宮城》

《白銀の迷宮城》はボードアドバンテージを稼げるフィールド魔法だ。《ウェルカム・ラビュリンス》等の罠カードは毎ターン供給可能であるため、このカードの維持はそのまま盤面の制圧に繋がる。②の特殊召喚効果もラビュリンスモンスターでアドバンテージを稼ぐだけでなく《カオスハンター》や《深淵の結界像》で相手の動きを止める役割も可能。とはいえ単体での妨害性能は皆無なので、採用が見送られることも珍しくない。昨今は【R-ACE】の《REINFORCE!》後の《R-ACEタービュランス》を破壊する等、対面次第で非常に優秀な働きをするため地域によっては積極的に採用される印象だ。

《トラップトリック》

《トラップトリック》は《白銀の城の執事 アリアス》の成立を安定させる狙いも勿論あるが、相手の《ハーピィの羽根帚》等にチェーンして《トランザクション・ロールバック》《嗤う黒山羊》を伏せる役割もある。

9.4.【ラビュ】のゲーム構成

先行の場合はゲームを落とすわけにはいかない。いつでも《魔砲戦機ダルマ・カルマ》の様なターンスキップ性能を有する通常罠のリクルートを狙いつつ《白銀の城のラビュリンス》の破壊効果を的確に打ち込みたい。

《トランザクション・ロールバック》

特に《灰流うらら》の警戒は怠らない。《トランザクション・ロールバック》は《ビッグウェルカム・ラビュリンス》を無効にされたあとに連続で《ビッグウェルカム・ラビュリンス》を発動できるため強力な貫通札になる他、単純にパワーのある通常罠を効果的に打ち込むことも狙える。《拮抗勝負》を採用する場合、《トランザクション・ロールバック》と組み合わせることで相手の盤面を全て除去するプレイも覚えておく必要がある。

後攻のゲームは初手の組み合わせから可能な妨害を考え、相手の先行1ターン目の展開を許さない姿勢で臨む。ただし非常にムラのあるデッキであるため、場合によってはターンが帰ってきてから《ビッグウェルカム・ラビュリンス》の墓地効果や《カオス・アンヘルー混沌の双翼ー》の除去効果を狙う。主に魔法罠以外の妨害を準備するのが役割の《白銀の城の召使い アリアーヌ》によるエクシーズであるが、《No.41 泥酔魔獣バグースカ》の攻撃宣言から《天霆號アーゼウス》も狙う場合がある。

《スキルドレイン》

サイドゲームからは相性の悪いカードをサイドアウトすることになるが、対面のデッキを考慮して効果的な通常罠を入れ替える形で投入する。罠ビート全般に言えることだが、対面がどんなカードをサイドインしてくるか想定してゲームプランを練る必要があるため、間違っても《ハーピィの羽根帚》の様なカードを投入されると分かっていて永続罠をサイドインするようなことは避けたい。《スキルドレイン》のような強力な永続罠を使用する際は注意が必要だ。ゲームメイクもAoEを警戒して、罠を一度に大量に伏せたり同一チェーンで複数回モンスターを特殊召喚するのは避ける等のプレイを心掛ける。

《幻創龍ファンタズメイ》

今シーズンは《白銀の城の執事 アリアス》による理不尽なゲームの押し付けがゲームプランになった。そのため、《幻創龍ファンタズメイ》《R-ACEインパルス》からの《R-ACEファイア・アタッカー》をサイドインするプランも広まった。

「家具」は《カオス・アンヘルー混沌の双翼ー》や各種リンクモンスターを狙える《白銀の城の火吹炉》を優先してしまいがちだが、《増殖するG》を非常に重く貰う可能性がある。「家具」のコストとなる手札の補充にもなるため《白銀の城の竜飾灯》とは状況に応じて使い分けが必要になる。

「家具」の使い方で言うなら《エフェクト・ヴェーラー》《無限泡影》に対してチェーンして「家具」を発動し、それにさらにチェーンして「家具」で捨てた《ビッグウェルカム・ラビュリンス》で《エフェクト・ヴェーラー》《無限泡影》の対象になったモンスターをバウンスすることで無効系誘発を無駄打ちさせるプレイも頭の片隅に入れておくと良い。

9.5.【ラビュ】の変遷

【ラビュリンス】が大会環境に現れたのは《ティアラメンツ・キトカロス》が禁止カードに指定され【イシズティアラメンツ】【鉄獣戦線スプライト】が大頭していた2023年の頭の環境だ。

《魔のデッキ破壊ウイルス》

他デッキと比べメインギミックにパワーが無い分、《次元障壁》《魔のデッキ破壊ウイルス》等のリクルートで環境デッキと渡り合った。その結果【ラビュリンス】は広く使われることになったが、一見したときのゲームプランの理解の難しさから、展開方法やゲームプランが各地で様々な変容を経ることになった。永続罠で盤面を制圧することでイージーウィンを狙うゲームプランが広まったり、《ビッグウェルカム・ラビュリンス》で「深淵の獣」を使いまわしたり、《絶対王 バック・ジャック》《タックルセイダー》《魔サイの戦士》《彼岸の悪鬼ファーファレル》等の「家具」で捨てられた際に妨害となるカードを採用したり、「家具」をはじめとした相手のターンに効果を発動できるラビュリンスモンスターを利用し、《能力吸収石》の魔石カウンターをコントロールしたり、《魔界発現世行きデスガイド》で《永遠の淑女 ベアトリーチェ》をX召喚して《トランザクション・ロールバック》を墓地へ送る等、様々な奇襲性のあるゲームプランを採用する形で変化している。今シーズンは《白銀の城の執事 アリアス》による理不尽なゲームの押し付けが主なゲームプランとなった。

《剣神官ムドラ》

【イシズティアラメンツ】が流行していた時期は《剣神官ムドラ》《宿神像ケルドウ》を「家具」で捨てて、相手の意識外からゲームを崩す動きが流行っており、状況によって自分が発動した《増殖するG》に対し相手が《墓穴の指名者》を発動したとき、この方法で《増殖するG》をデッキに戻せば対象を失った《墓穴の指名者》は不発となり《増殖するG》の効果を通すという動きも見られた。その後【クシャトリラ】等の流行を受けて姿を消していたが、昨今の【スネークアイ】【炎王】の流行から《剣神官ムドラ》《宿神像ケルドウ》もまた少しずつ姿を見せている。

9.6.【ラビュ】の参考文献


10.【神碑】

※前記事と内容の大部分が重複するため注意

多種多様な速攻魔法で相手を妨害し
デッキデスを狙うデザインのカード群

10.1.【神碑】の特徴と動き

大量の永続罠でゲームを停滞しテーマ内のカードで穴を埋めることで対面にゲームすら許さない環境随一の制圧力を誇るデッキ。《増殖するG》等が通用しない点も評価されている。その特徴はなんと言っても個性的な戦い方だ。

豊富なドローソースで《スキルドレイン》や《群雄割拠》といった拘束力の高い永続罠を複数枚引き込み、盤面を制圧・ロックした状態にしてから、《神碑の泉》で神碑カテゴリの速攻魔法を供給しリソースを枯らさず、時間をかけて相手のデッキをロストしていくという環境内でもかなり特徴的な戦術のデッキである。

今シーズンは拘束力の高い永続罠が規制を多く受けてしまったことから《激流葬》や《強制脱出装置》といった通常罠の採用であったり、《機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-》と《群雄割拠》《センサー万別》を使ったロックを狙いに行く等、様々な工夫の上で運用される。

これといった基本展開は存在しないが、各カードのプレイの幅を如何に広げるかが重要なデッキである。ここでは例としてEXデッキのカードの使い方について簡単に記載する。

《神碑の翼フギン》

手札を1枚捨てて《神碑の泉》をサーチする。捨てたカードが神碑速攻魔法ならサーチした《神碑の泉》ですぐリカバリ出来るため、通りさえすれば手札コストはあって無い様なもの。ただし《灰流うらら》《無限泡影》の流行から通りは非常に悪いので、ハイリスクなカードでもある。永続罠を十分に持っている場合は無理をして《神碑の泉》をサーチする必要も無いので、適宜判断が必要。このカードの昨今の主な用途は②効果による魔法罠の身代わりであり【R-ACE】の流行でほぼ必ずサイドインされる《ハーピィの羽根帚》と《ライトニング・ストーム》の無力化のため、このカードを出せる『神碑速攻魔法』は是非1枚は手元に残してゲームしたい。

《厄災の星ティ・フォン》

【神碑】の後手捲りの要の1つである。対戦相手の先行展開を傍観した後、返しのターンで不要な手札誘発がトンデモない捲り札に生まれ変わる。流行の《S:Pリトルナイト》を一方的に踏み潰せる他、【神碑】の天敵でもある《ナチュル・ビースト》を突破出来るのも魅力。

《神碑の鬣スレイプニル》

《神碑の鬣スレイプニル》はバトルフェイズにモンスターを駆除する性能を有し、これらの「神碑融合モンスター」は自分のライフを守る強力な性能を有するため、永続罠による拘束の穴を埋める役割として重要な立場になっている。

10.2.【神碑】の強みと弱み

強みは圧倒的なメイン戦の優位性だ。先行で永続罠を重ねて引ければメイン戦は勝ったも同然、引けた永続罠によっては1枚でも十分な制圧力を誇るだろう。後攻でも数多くの捲り札で盤面に触りに行ける。特に《インスペクト・ボーダー》等のカードは効果的だ。もし相手がサイドからも対策していない様なら圧倒的な勝利が可能である。サイドボードの軸が定まっていない環境序盤や2,3強の環境では無双も可能だ。

弱みは立ち位置に依存しすぎること。分布が固まってサイドボードの軸がしっかりとした環境では対策され易い。《コズミック・サイクロン》の流行の有無は《神碑の泉》の駆除手段の有無を示し、死活問題となる。《ハーピィの羽根帚》《ライトニング・ストーム》は《神碑の翼フギン》の存在から問題ないが、《拮抗勝負》の流行には目を光らせる必要がある。

手札誘発が少ないことで、初動を引けなかった場合の急場凌ぎが困難なデッキでもある。ここで言う初動とは永続罠のことであり、神碑速攻魔法しか初手に無い場面で《神碑の翼フギン》に《無限泡影》なんて喰らった日には貧弱なゲームしか出来ない。《No.41 泥睡魔獣バグースカ》での延命も《無限泡影》で解決されると苦しい。永続罠に依存したゲームメイクは首を絞めることになる。

10.3.【神碑】の構築

【神碑】の構築例

強く使える場面の多い神碑速攻魔法は3枚、場面の少ない速攻魔法は1枚の採用や不採用、そして異なる永続罠の重ね引きや《神碑の泉》の素引きを狙うため《命削りの宝札》《強欲で謙虚な壺》等のドローソースで構成されている。

以前はこのデッキの初動とも言える《スキルドレイン》《御前試合》《群雄割拠》《センサー万別》はフル投入が主流だったが、環境で流行のデッキを見て一部通常罠の採用も見られる。

《天岩戸》

《天岩戸》や《No.41 泥睡魔獣バグースカ》の採用も見られる。《インスペクト・ボーダー》と併用することはほぼ無く、流行のデッキに有効な選択肢をとりたい。《天岩戸》は強力なカードだがダブったとき《命削りの宝札》のドロー枚数が減ってしまうため投入を2枚に抑えることもあれば3枚投入されていることも多く、それだけパワーの高いカードであることが分かる。

10.4.【神碑】のゲーム構成

繰り返しになるが、先行のゲームは基本的に永続罠の重ね引きによる盤面の制圧を狙う。制圧後に時間をかけてデッキデスを行い、相手がサレンダーしない限り時間をかけて勝利を狙う。後攻のゲームは《天岩戸》や《輝く炎の神碑》で盤面を荒らし、安全に永続罠を開くことを狙う。デッキの性質上、1本目は確実な勝ちが欲しい。

2本目以降のゲームからは相手がメタカードをサイドインしてくるため、神碑魔法でデッキから除外されたカードを逐一チェックして、対面がサイドインしたカードをチェックしながらゲームを進行する。敗色が濃厚であっても粘るだけ粘ってETEDに持ち込みたい。

3本目のETEDではデッキデスでの勝利は望めないため、ライフ差での勝利を目指すのが主となる。そのため《神碑の翼ムニン》によるライフゲインが非常に重要となる。ターンの選択権のあるゲームで後攻を選ぶ等して《拮抗勝負》を打たせない等のゲームメイクも有効だ。

《ドロール&ロックバード》
《エフェクト・ヴェーラー》

神碑速攻魔法はバトルフェイズをスキップする効果を有しており、「どうせバトルフェイズに攻撃することは無い」等と考えていると以外にもライフカットが必要な場面が訪れる。メインフェイズ終了時にバトルフェイズの宣言を必ず忘れないようにして、必ずバトルフェイズを迎えられる態勢をとること。また、《ドロール&ロックバード》や《エフェクト・ヴェーラー》を意識してドローフェイズに神碑魔法を使うことを意識したい。

10.5.【神碑】の変遷

【神碑】はロック性能がゲーム性に響くため、他の環境デッキの変遷が構築傾向や採用カードに関わることになる。

《次元の裂け目》
《シンクロ・ゾーン》

【ティアラメンツ】全盛期には《次元の裂け目》の採用が主流であった。昨今の【スネークアイ】【炎王】の流行から、今シーズンもまた採用されるリストが見受けられる。昨今の流行は《シンクロ・ゾーン》だろうか。

《禁止令》
《パラドックス・フュージョン》
《魔宮の賄賂》

一時期はメタカードに対するメタカードをサイドインすることも多く見受けられたが、プレイヤーの練度に依存する傾向が増すにつれて徐々に採用が見送られることになった。

《ナチュル・カメリア》

またOCGでは活躍をあまり見ないが、海外のTCGでは『神碑』ギミックの特殊召喚効果を持つ魔法カードのリカバリ性能に目を付け『ナチュル』と混合して連鎖的にシンクロするデッキも流行した。これはシンクロしたモンスターで盤面を制圧したあとゆっくりとビートダウンするデッキであり、ゲームメイクが日本の【神碑】とは大きく異なるため驚かれた。

10.6.【神碑】の参考文献


11.環境の構成

この項目では実際の各種大会の分布や傾向から、環境の構成・構造を分析する。特に上記9デッキについて、環境における立ち位置や優位性・評価について触れる。

11.1.大会での分布の流れ

大会での環境デッキの分布傾向について触れるが、基本的に大会の規模や性質によって変わるので一概に傾向は言えないことを断っておく。大会が行われる地域の広さ、狭さ、開催頻度の多さ、少なさ、参加者の顔ぶれの変わらなさ、人の入れ替りの激しさ等によって判断したい。特に大会上位のプレイヤーがある程度固定されてしまっている場合、使用するデッキが強いのかプレイヤーが強いのか見間違えない様に注意するべきである。

そのためここからはあくまで一地域の一説として捉えてほしい。

まず今シーズンが開始した10月は前シーズンのデッキが続投されたのだが、【ティアラメンツ】が姿を消し【R-ACE】がトップメタに君臨して【ピュアリィ】【ラビュ】【神碑】が一歩引いた立ち位置になった。関東では一部のプレイヤーが熱心に研究して【ピュアリィ】が善戦していたが、多くの地域では【R-ACE】がトップシェアとなり、これに有効な《エフェクト・ヴェーラー》《ハーピィの羽根帚》《無限泡影》が流行した。

その後10月後半のPHNIの発売で《賜炎の咎姫》が登場し、その後すぐ開催されたYCSJ名古屋2023にて【炎王】が優勝したことで注目を集め、トーナメントでは【粛声】の存在感や、メインデッキへの《原子生命態ニビル》の採用の抵抗が薄れたことがあり、11月の大会環境では中国のCityChampionShipで注目された【炎王スネークアイ】が輸入されて高いデッキパワーと《原子生命態ニビル》への意識の高さから全国区で使われた。

11月末になるとTW01が発売し【ノイド】【霊獣】が大会環境で非常に多く見られたが、除外ギミックがヒットして【霊獣】が勝つ場面等あったもののデッキパワーがそこまで高くなかったことがあり、12月には《アーティファクトーロンギヌス》の流行で激減した。それに加えて【スネークアイ】【炎王】【R-ACE】に対するメタカードも固定化されつつある。【ピュアリィ】【ラビュ】【神碑】はここまでシーズンが進むとほとんど見なくなり、メタが薄れたタイミングでの入賞を狙う形になった。

11.2.サイドカード

このシーズンで広く使用される印象のサイドカードを記載する。「紹介するから使ってみて」ではなく「こいつらをサイドからインされる想定でゲームしようね」という意味での記載だと思って欲しい。

11.2.1.《原子生命態ニビル》《ドロール&ロックバード》

《原始生命態ニビル》
《ドロール&ロックバード》

今期はこれら2種の手札誘発がメインから採用されることも多かった。バリューの大きい手札誘発ではあるものの、今シーズンは手札誘発に展開を止める性能の期待を持つのではなく、奇襲性やケアを怠ったプレイヤーに対するイージーウィンを狙う意味での採用が意味を持った。

11.2.2.《屋敷わらし》《アーティファクトーロンギヌス》

《屋敷わらし》
《アーティファクトーロンギヌス》

《屋敷わらし》はシーズン前半に上記《原子生命態ニビル》《ドロール&ロックバード》が刺さらない【ラビュ】に対して有効なのは勿論だが《賜炎の咎姫》を構えたデッキに対してキルチャンスを作る用途でも使われる。
その後【ノイド】などが流行してからは《屋敷わらし》の枠は《アーティファクトーロンギヌス》にシフトしていった。先行でサイドインして《拮抗勝負》を止めるプレイも見られた。

11.2.3.《エフェクト・ヴェーラー》《無限泡影》

《エフェクト・ヴェーラー》
《無限泡影》

主に環境序盤は【R-ACE】に有効として採用されていたが中盤以降は広く用途があるため採用される機会が増えた。《賜炎の咎姫》の登場前後で【R-ACE】に対して打つタイミングが大きく変わったのも面白い。《エフェクト・ヴェーラー》《無限泡影》の対象不在を狙うギミックがテーマ内に存在するデッキが今シーズンは多かったため、サイドに忍ばせる運用も珍しくなかった。

11.2.4.《超融合》

《超融合》

シーズン中盤以降、《賜炎の咎姫》の存在から炎属性テーマが環境に多く存在したことと対象耐性が非常に有効で多く見られたこと、加えて安易にモンスターを破壊出来ない等の理由から採用率は非常に高かった。特にこのカードでなければ捲れない盤面が存在したり、このカードで特殊召喚した《沼地のドロゴン》による対象耐性付与が非常に強力だったりと活躍する場面がとにかく多く、今シーズンは先行展開で盤面を作る際にも「超融合を打たれても大丈夫か」を意識して展開する必要まであった。

11.2.5.《ハーピィの羽根帚》《ライトニング・ストーム》

《ハーピィの羽根帚》
《ライトニング・ストーム》

主に【R-ACE】に対する後攻のゲームでサイドインして《R-ACEタービュランス》で伏せられたカードを破壊する用途の採用である。このカードが無いとまともにゲームできない場面があるため、採用率は高かったが限定的な使用用途であるため出番は案外少なかった。《ハーピィの羽根帚》は負け筋を減らすためにメインインも見られた。

11.2.6.《三戦の才》

《三戦の才》

今シーズンは場にモンスターが存在すること自体が強力な意味を持ち、安易にモンスターを破壊出来ない上に、対象不在を狙うギミックがテーマ内に存在するデッキが多かった。そのため対象をとらないコントロール奪取は非常に重宝され、先行でのサイドインは勿論後攻でのインも多く見られた。

11.2.7.《魂の解放》

《魂の解放》

懐かしいカードが注目されたのはシーズン中盤以降で、中国で【炎王スネークアイ】のミラーが多くみられた際の有効な墓地リソースのカット手段として注目された。《賜炎の咎姫》《聖炎王 ガルドニクス》だけでなく【ノイド】の流行等にも対応出来た。

11.2.8.《拮抗勝負》

《拮抗勝負》

今シーズンは終始ほぼ全てのデッキに有効に働いた。ただしリソースを墓地に蓄えるデッキが多かったことと、《ハーピィの羽根帚》《ライトニング・ストーム》と役割が被る場面があったりと万能という訳ではなく、枚数を抑えての採用も珍しくなかった。

11.2.9.《魔封じの芳香》《スキルドレイン》

《魔封じの芳香》
《スキルドレイン》

先行のサイドイン札の中でも主に使われたのはこの2枚の印象である。《魔封じの芳香》は広い対面に使われて、特に【覇王魔術師】を意識しての採用が多かった。しかしながらこのカード1枚で動作を止められるデッキはそこまで多くなく、相手の手札との噛み合い次第の部分は大きかった。《スキルドレイン》は主に【炎王】【スネークアイ】で採用され、シーズン序盤は【炎王】で《炎王神獣キリン》《炎王神天焼》と合わせて使われ、シーズン終盤は自ターンに下級スネークアイモンスターの効果コストで捨てる等のプレイが注目された。


12.要点

12.1.使う側の意識

【スネークアイ】を使う場合、想定されるどんな妨害を受けても最終盤面に必ず1つは妨害を有することを強く意識してプレイする。後攻のゲームも例外ではなく、盤面を捲ったあと必ず妨害を1つは残して相手にターンを返すことを意識する。

【炎王】は攻めの起点となる《聖炎王 ガルドニクス》や《炎王神獣 キリン》にアクセスしつつ、自分のライフを確実に守れる固い壁となる盤面の作成を目指す。墓地リソースによる展開起点を大事にしながら消耗戦によるロングゲームの勝利を目指す。

【R-ACE】は《R-ACEタービュランス》を確実に通すことを強く意識するのは勿論、甘い考えで展開すると《原始生命態ニビル》や《ハーピィの羽根帚》で相手にイージーゲームを許す。ケアするカードを間違えずに油断なくプレイすることが重要。

【ノイド】に関しては動き出しが細いので妨害を受けたら大人しく展開が止まってしまう。そのためなるだけパワーのあるカードを通して確実な展開を目指す。サイドゲームからは一応《墓穴の指名者》等の《アーティファクトーロンギヌス》を止められるカードは先行後攻問わず投入することになる。

【粛声】は万能無効を用意しながら対象耐性かつ攻撃誘導を行う41打点を盾に継続リソースとなるカードを用意することで相手に負荷を押し付けながら、相手とのアドバンテージを広げていく。不用意に展開して次ターンの攻め手を無駄に場に出す等をして、リソースを枯らさない様に気を付けること。

【覇王魔術師】は意識外のタイミングで無効系誘発等を打たれて展開が伸びずに負け…なんてこともあるので、手札に手数をしっかりと確保しながら展開したい。サイドゲームでは《拮抗勝負》等を警戒して万能無効を優先して盤面に残す意識を持つといい。

【ピュアリィ】は欲張った展開をせず、ノアールや『エピュアリィ』を最低限の妨害を立てるために使用し、相手にそれを突破するリソースの消耗を要求することで《ストレイ・ピュアリィ・ストリート》や《ピュアリィ・マイフレンド》を守り、返しのターンに《エピュアリィ・ハピネス》等でリソースを膨らませて盤面の制圧を狙う。パワー負けが増えた分、キルや妨害のチャンスを逃さないこと。

【ラビュ】は理不尽なゲームの押し付けが勝ち筋になったため、相手にとって致命的になる妨害の打ち方のイメージからゲームエンドまでの道筋をイメージしてゲームすること。《灰流うらら》の警戒は怠らないこと。

【神碑】は多少無理してでも永続罠の重ね引き等でのロックを狙うこと。もし永続罠が引けなかった場合も諦めずに神碑融合モンスター等で妨害を立てたりして時間を稼ぐこと。1ターン凌げばトップで解決する可能性は大きい。

12.2.対面する側の意識

【スネークアイ】対面はマストカウンターに思える初動を連打してくる場面が多いため、妨害数が少ないと裏目を踏むリスクが非常に多い。そのため妨害は質より量を重視すること。特に超融合等のハイリスクハイリターンが望めるカードは、相手の意識外から発動してケアした動きを許さないことで損する打ち方をしないことが重要。また自ターンに①炎龍からのマスカレーナ②マスカレーナからのリンク召喚③④炎龍の2体蘇生⑤咎姫、で5体のモンスター特殊召喚があり得るため自ターンにニビルを打つ機会があったり、三戦の才によるコントロール奪取で炎属を退かして咎姫を誘発させない等、プレイによるリソースの損得を見逃さないこと。

【炎王】対面は安易に相手の場のモンスターを破壊しに行かないこととキルイメージを持つこと。《灰流うらら》は基本《炎王の孤島》に打つ。《三戦の才》《超融合》はキルをとる用途で使うと有効な場面が多い。手札誘発は展開を止めるのに使うのではなく《聖炎王 ガルドニクス》を場に残して《拮抗勝負》のバリューを上げる等の用途のイメージを持つこと。《炎王の孤島》は場に残すだけで相手の返しのターンにワンチャンを作ってしまうため、多少無理してでも場から退かす必要がある。

【R-ACE】対面はタービュランス止めるのは勿論として、どんなにリソース削っても手数が豊富なので攻めてくる場面が多い。手札誘発は初動に連打するイメージが有効だが、いくら連打しても1,2妨害は構えてくるので手札誘発に依存し過ぎないこと。恒久的な妨害を予め採用しておくか、速攻で8000削って終わらせるゲームプラン・キルイメージを用意しておくべき。AoEは一見すると有効に見えるが、相手が稼いだアドバンテージをプラマイゼロにするだけで、こちらがプラスになるわけではないので注意。それと構築の時点で《REINFORCE!》後の《R-ACEタービュランス》を超える手段を準備しておくこと。

【ノイド】対面はマストカウンターの見極めがそのまま勝ちに繋がる可能性が高い。大抵の手札誘発が有効で、相手はケアして展開可能だがケアしてくれると盤面が弱くなるので結局誘発は仕事する。《灰流うらら》は下手に打つより自分のターンに持って帰って《煉獄の狂宴》に打つ手もある。あと《サクリファイス・アニマ》が有効。《原子生命態ニビル》は《蛇眼の炎龍》の効果で蘇生した《インフェルノイド・デカトロン》の効果にチェーンして打つと有効なことが多い。あと《超融合》必須。

【粛声】対面は盤面が固い上に無理して捲っても次ターンのリソースを相手も抱えている。重要なのは盤面を荒らすことではなくアドバンテージを与えないことであるため、十分なリソースを自分がどうやったら抱えられるか考えてプレイすべきである。その他重要なのは【粛声】は盤面に触る手段のない対面なので、相手の《粛声なる祈り》等の有限リソースの残数を確認しつつ、とにかくモンスターを横に並べる意識が重要だったり、戦闘破壊耐性のギミックを大事にしたりする意識でゲームしたい。

【覇王魔術師】対面はPモンスターが2体並んだらもう展開は止められない。序盤はPモンスターを場に出すカードは全てマストカウンターだと思ってゲームしたい。《灰流うらら》は《おろかな埋葬》に打つのが通説で、展開中に発動した《光翼の竜》は《灰流うらら》を打ってもあまり意味が無い。が《光翼の竜》から動き出そうとした場合は手札が悪いことが予想されるため《灰流うらら》で止めることでイージーウィンを狙える。相手の展開を許してしまった場合は確実に妨害を踏んで捲りたいが、見えていない妨害となる手札誘発にも注意が必要なのと次ターンのP召喚を防ぐためにスケールを割っておきたい。低いスケールを《覇王門の魔術師》と《覇王門零》に依存している部分があるので、どちらかしか割れないなら低い方を割ること。

【ピュアリィ】と対面した場合、メタカードが薄くなった隙を突いたり《次元の裂け目》や《エピュアリィ・ハピネス》でのイージーゲームを狙ってくる。【ピュアリィ】をまだ使い続けているプレイヤーは大抵練度が高く、大抵のカードはケアしようとすればケアしてくるので、対策札を選んで用意するのではなく手元のカードを相手の意識外から直撃させて確実に有効に打つ意識が重要。昨今の【ピュアリィ】は脆いので誘発が仕事するだけで相手にとってはキツい。あと『メモリースペル』にフリーチェーンのカードをチェーンして、場の『エピュアリィ』の効果を不発にすることが想像以上に重要。

【ラビュ】対面は理不尽なゲームを押し付けてくるが、線が細いので相手が何を狙ってプレイしているのかを把握することが重要。フリーチェーンのカードは《迷宮城の白銀姫》を警戒して無駄打ちしないことと、妨害をマストなタイミングで躊躇わず打つことを意識する。また《トランザクション・ロールバック》で削れたライフを焼き切る手段は常に意識して残しておくことと、不意の永続罠への警戒は怠らないこと。《ハーピィの羽根帚》よりも《灰流うらら》の方が重要。あと《レッド・リブート》が最強。《コズミックサイクロン》は伏せずに手札に持っておいて「家具」で伏せたところを狙い打つ。

【神碑】対面も理不尽なゲームを押し付けてくる。このデッキに対する一番の対策は、デッキ構築の時点で妥協せず強く意識することである。それと3本目はETEDでのライフ差での勝利を狙ってくるため、迅速なプレイで2本目までの試合を早めに終わらせる意識も重要だ。もし意識が欠けてしまっていたり、対面した際にサイドカードの引き込みが悪い場合でも、対面が永続罠を開くまでの間に出来ることを落ち着いて考えるべきである。


13.結言

まずここまで拝読頂き感謝である。
ところどころおかしな箇所もあるかと思うのでDM等で指摘頂ければと思う。本記事が読者様の来期の遊戯王のモチベーションになって貰えたら、こんな長い記事を書いた甲斐があるというものである。


ここだけの話、この環境まとめ系の記事は友人がOCGに年単位で触れられない事情があるので、復帰するときの助けになったらいいなとか考えてまとめているものでもある。
もしこれを読んでいる諸兄の周りにやむを得ず引退しているプレイヤーが居るなら、是非この記事を薦めて欲しい。そうゆう方のご意見が本当に欲しい。


いや
というか
環境デッキの諸々、おれ以外にもまとめて記事にしてくれよ、誰か。
おれなんかべつに大会で勝ったりしてるわけじゃないし、そんなのあったら読みたいんよ。
そもそも目立ちたくないし。

来シーズンは誰かおれ以外にこうゆうのまとめる人、誰か、誰か





はい。

以上。

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