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障害者枠で働くってどういう事?

障害者雇用枠だから年収が低い、そんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。前の記事でも少し触れたとおり今回は私の体験から障害者枠で働くってどういうことなのかを書いていきます。

障害者枠と一般枠の違い

そもそも障害者枠というのは配慮が必要な障害者に対して、この仕事なら配慮を提供しながら雇用できますよ、という求人です。一般枠は言うまでもなくですが、原則そのような配慮はなく雇用されます。
日本には障害者雇用促進法により、障害者雇用率制度があるため、このような障害者枠というものがあります。これについても賛否あると思いますが、個人的には障害者にとっては働くことに対するハードルが下がってよいのではないかと考えます。
余談ですが、このような法律がある国は多くなく、海外では雇用の入り口が同じことが多いです。これについては、教育課程から障害者と健常者が分かれていないということも大いに関係していると思うのでどちらが良い悪いと言う事ではないと思います。
 本題に戻りますが、自分がどちらの入り口から仕事に入っていくのか、配慮が必要なのか要らないのか、そのことを自分で考えて選択をすることが最初の一歩になります。配慮が必要な場合はどのような配慮なのか、オフィス環境や通勤法など物理的な物なのか。就業時間や通勤時間帯など、時間的な物なのか。職務内容や指示の受け方など業務上の配慮なのか。いろいろなパターンがありますよね。その配慮によっては一般枠とは違う給与体系になるかもしれません。
 例えば、定期通院などで就業時間が短い場合は労働時間によって給与は少なくなりますし、業務内容によっても仕事量が変われば対価の給与は少なくなるかもしれません。大事なのは労働に見合った対価をもらえるかどうかになるので、一般枠と比べるという考え方はそもそも難しいと思います。
逆に言うと時間や業務内容も一般枠の社員と変わらず、同じ成果を上げているのに障害者枠だから年収が低いというのはおかしな話です。それは障害者差別解消法によって禁止をされているので、そのような会社はだいぶ無くなって来ているのではないかと思いたいところです。ではなぜ、障害者枠は給与が上がらないのでしょうか。。。

障害者枠で入った後の難しさ

私は2社目となる前職も障害者枠の契約社員で入社をしました。
障害者求人ではよくあるオープンポジション(その人の障害や経験によって配属先を検討するポジジョン)で入社し、何の経験もなかった私は目の行き届く人事に配属されました。
もともとある職務ではないため、あらかじめ決められた仕事がない状態からのスタートでした。簡単な伝票処理、入社書類のパッキングなど本当に簡単な仕事を1か月ほどやっていました。当時、自信を喪失していた私には自己効力感が上がるといい機会となりました。
 しかし、人間とは欲張りなもので慣れてくるとだんだん物足りなくなってくるのです。そのうち時間を持て余すようになったり、同じチームの先輩たちは会議をしているのに自分だけ呼ばれていないことに不安になったりしました。今思えば、議題に関係のない仕事をやっている私が会議に呼んでもらったところで話にもついていけず、時間の無駄になるだけだなと思います。でも当時は何で自分だけ呼んでもらえないんだろうか、契約社員だから?など邪推をして疎外感を感じていました。当時、障害者枠で人事に入った社員は私だけだったので、おそらく上司や先輩はそこまで意識が回っていなかったと思います。当時の上司にはすごくお世話になり、その後も15年間同じ部署内で仕事をしてきました。先日もお宅にお邪魔をして昔話をしていたのですが、「君が入った時は何をさせてよいのかわからなかった」と言っていました。今となっては懐かしい話ですが、私と同じような経験をしている人も多いのではないかなと思います。
 障害者枠という入り口は入りやすいのですが、上司や同僚からすると通常と違う入り口から入ってきたというように見られます。なのでどう接してよいのか、何をさせればよいのか、そんな戸惑いもあるのだと思います。

「障害者枠だから」は苦しくなる

私はオープンポジションで入ったので自分の決められた業務は殆どありませんでした。手が空けば、何かできることありませんか?と聞いて忙しい先輩からできそうな仕事を振ってもらう。そんな形で3か月ほど過ごしてきました。私にとってはこのおかげで幅広い業務を見ることが出来たのでありがたかったなと思います。しかし、自分から動かなければ仕事がなかったのも事実です。
 障害者枠の仕事は一般事務が多く、中でもサポート業務が多いため、言葉を選ばなければ退屈な仕事が多いと思います。そのため、やりがいを感じられなかったり、自分は本当に必要なのだろうかと思ったりします。
そこで大事なのは自分がこの会社で何をしたいか、もしくはどういう人生を実現したいかを考えられるかどうかではないでしょうか。「障害者枠だから」という見方をしてしまうとそこで自分の思考が止まってしまいます。
 また、上司同僚も障害者枠の人に違う仕事を頼んでよいのかと迷っているかもしれません。本来であれば、上司がタスクをマネジメントし、部下の希望などを聞いてステップアップしていくのが望ましいです。障害者・健常者に関わらず現実的にそれが出来ている現場は残念ながら少ないと思います。私も上司として完璧に出来ていたかと聞かれたら苦しいところです。
 仕事を任せてもらうには周りからの信頼が必要です。上司や同僚の「障害者枠だから」を打ち崩すには信頼を得るという、仕事をする上で当たり前の事が重要です。仕事ができるかわからない人に仕事を頼むというのは出来ないですから。

負のキャリアスパイラルに陥らない

上に書いた様に障害者枠の仕事はサポート業務が多いです。そうするとやりがいを感じられず転職を考えたりします。でも転職の時にベースになるのは、これまでの経験です。それを見て企業も選考をしますし、入社後の仕事もそれを基に決定します。そうするとまたサポート業務で同じような経験が待っていることになってしまいます。私はこれを「負のキャリアスパイラル」と呼んでいます。採用担当をしていてこういう経歴の方をたくさん見てきました。そしてこれを繰り返すことで余計に「障害者枠だから」と仕事を諦めてしまっている方も多いのではないかと思います。
 障害者枠は入り口の一つでしかありません。そこから入ってどのようなキャリアを築くのかは自分次第だと思います。障害者枠は学歴制限も一般枠よりは緩く、選択肢の数としては健常者の方より恵まれているという見方もできるかもしれません。これを一つの特権としてとらえることもできるのかなと思います。

最後に雇用する側について

今回は障害者枠について障害者の方向けの記事となりました。ただ、人事、上司として思う事は受け入れる側の体制もとても重要だと感じています。
雇用する方の障害の特性を理解し、必要な配慮すること。特別扱いではなく公平な評価・機会を与える事。そうすることで活躍する障害者はもっと増えていくのではないかなと考えています。
Diversity&Equityの両方があって初めて真の多様性社会になるのではないでしょうか。

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