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数字を追わなくなったらコロナでも儲かった話 #ずるい文章術 vol.1

こんにちは、奥山晶二郎と申します。
朝日新聞でウェブメディアwithnewsの立ち上げに関わり、そのまま8年間、編集長をやっていました。

その時の経験を踏まえ「ずるい文章術」というタイトルで、私が気づいたこと、考えたことをお話しさせていただきたいと思います。

8年も一つのことをやってきたので、ライター、宣伝、広報、PRを仕事にしている人のお役に少しは立てるんじゃないかと思い、始めてみることにしました。

というのは表向きの理由で、なんだかウェブの世界が窮屈になっている気がしていて、それをちょっとでもいい感じに戻せないものか、という思いがあります。

一つの正解に縛られすぎ

みんな、読まれたい、シェアされたい、という気持ちが強いあまり、一つの正解に縛られすぎではないでしょうか?

結果、変な数字狙いの競争を生んでしまって、いわゆる「PV至上主義」みたいなものになっている気がしてなりません。

でっかい話題にいち早く飛びついてどこよりも先に情報を出す、とか。有名タレントの騒動にいっちょがみする、とか。
過激なタイトル、目をひくサムネイル写真を多用する、とか。

いったん、落ち着きましょう。

そうやって数字を稼いだ先に何があるんでしょうか。

別に新聞社出身だからといって、ジャーナリズムとかそういうことを言いたいわけではありません。
せっかく発信しているのにそういう読まれ方って、なんか面白くない。さらには、ビジネス的にも、数字狙いは儲からないと思うんです。

だから、その一見、正解っぽいやつを脇に置いて、別のルートを探してみましょう。

「ずるい」って聞くと悪いイメージがありますが、全然、そうじゃありません。

まじめな人ほど、一つの正解を信じてしまいがちです。
1回、正解が決まったらがむしゃらに成果を出そうとします。

そうして、いつの間にか数字だけが一人歩きして、何のためにがんばっていたのかわからなくなってしまいます

そうやってダークサイドに落ちてしまったウェブメディア界隈の人たちをたくさん見てきました。

とはいえ昔は数字には貪欲でした

ちなみに、withnewsでも普通に数字を求めていました
それもかなり貪欲に。

withnewsは昔、記事のタイトルの隣に読まれた数字を表示してたんです。
これは、デジタル空間では読まれないと意味がない、という決意表明でもありました。

書く側(と読む側)は当然、意識しますよね。
数字を稼ぐモチベーション刺激策として、これ以上のものはありませんでした。

結果、最高で月間1億5000万PVまでいきました。
当時、編集部員は10人程度。まあまあのパフォーマンスです。

そこで気づいたんですね。
この先に何があるんだろうか、と。

それで、数字をいったん脇に置いてみることにしました。
数字の表示はやめて、自分たちにしかできないことにこだわるようにしました。

その時、話題になっている出来事があっても、取材する前に、Yahoo!ニュースの検索で調べてみる。

ヒットしたらとりあえず取材はやめる。

それでも取り上げたいなら別の切り口を考える。

速報はしない。

他のメディアが取り上げていない特ダネっぽいやつをつかんでも慌てない。

自分たちらしい切り口で伝えられるまで寝かす。

数字は、どんどん下がりました。

そうこうしているうちに新型コロナです。
広告も影響を受けました。

ところが、です。

数字が落ちたのに広告は好調

連載が話題になる
筆者が色んなイベントに呼ばれる
連載をまとめたものが書籍になる
さらに、これまでなかった大型のビジネス案件が舞い込むようになったのです。

数字が落ちたのになぜ?
それは、キャラが強化されたからです。
たとえばこちらの記事。

女王アリが死んだ後の巣をあえて展示した多摩動物公園について取り上げたものです。

展示中と、展示が終わった後、2本も記事しています。
通常だとちょっと記事にし過ぎだと思われるかもしれません。

でも、それぞれ大事なメッセージが込められていると思い、何より、記者の熱意を大事に、それぞれ配信しました。

そうすると、どちらもたくさんの人に読まれました。
自分たちの身の回りにある身近な興味関心を大事にするwithnewsらしさがにじみ出る成果になりました。

こんな風に、withnewsにしかできないことにこだわった結果、withnewsなら頼みたいという相談が増えたんです。

結果、広告収入が伸びました。
これにはちょっと驚きました。

大事なのは、ありきたりの正解に惑わされないこと。
自分たちにとっての正解を見つけられたら、小手先の手段に頼らず気持ちよく勝負ができます。

当然、現場のモチベーションは上がる。さらに、ビジネス的にも悪くないというか、むしろ、成功といっていい状態になります。

なので、数字をいったん脇に置いておくこと、おすすめです。

といったことを『スマホで「読まれる」「つながる」文章術』という一冊の本にまとめました。ほかの事例、ちゃんとしたSEO施策とか、ネタがない時の対処法など、具体的な手法について紹介しています。よろしかったらぜひ。


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