牛山素行

静岡大学防災総合センターで、豪雨災害を主な対象とした災害情報学を専門に研究しています。twitter: https://twitter.com/disaster_i 古くからのホームページ http://www.disaster-i.net

牛山素行

静岡大学防災総合センターで、豪雨災害を主な対象とした災害情報学を専門に研究しています。twitter: https://twitter.com/disaster_i 古くからのホームページ http://www.disaster-i.net

    マガジン

    • 静岡新聞「時評」寄稿記事

      静岡新聞「時評」欄に著者(静岡大学防災総合センター・牛山素行)に2,3ヶ月に1回程度の間隔で,災害に関係して筆者が考えることなどを寄稿しています.これらの記事を,紙面掲載後にこちらに転載しています.記事は字数制限がありますので,いろいろと追記している場合もあります.

    • 2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害調査メモ

      2022年9月23日夜~24日朝にかけて、台風15号の影響により発達した雨雲による大雨で静岡県中部・西部を中心に豪雨災害が生じました。静岡大学防災総合センターの牛山素行による本災害についての調査報告などをとりまとめています。

    • 風水害の「避難」について

      洪水・土砂災害など、風水害時の「避難」に関係して書いた記事をとりまとめています。

    • 風水害犠牲者調査について

      筆者はここ十数年以上にわたり,風水害による犠牲者の発生状況の調査を続けています.その調査結果に関係する記事をまとめておきます.

    • 災害関係のいろいろなトピックス

      災害、防災関係で書いたことで、災害事例や特定の話題にかかわらず横断的な内容の記事をまとめました。

    最近の記事

    自然災害の『教訓』 基礎知識が対応力育む

    (2023年3月25日付静岡新聞「時評」欄への寄稿記事)  過去に起こった自然災害の「教訓」を伝える、学ぶ、といったことの重要性は今更言うまでもないだろう。手元の明鏡国語辞典で「教訓」を引くと「教えさとすこと。また、その言葉や内容」とあった。個々の災害事例でみられた事実や、次の災害時に向けた教えとなるような(プラス・マイナス両面からの)出来事を伝えていくことなどが、災害の「教訓」に当たろう。  災害の「教訓」として、特定の災害事例で現実に起こった事実を知ることは無論重要だ

      • 2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害に関する調査報告

         2022年9月23~24日にかけて、台風15号の影響により静岡県内を中心に発生した豪雨災害についての日本自然災害学会誌「自然災害科学」に投稿した調査報告が掲載決定となりました。紙版は5月頃刊行予定ですが、同学会WebでPDF版が先行公開されています。 牛山素行・北村晃寿:2022年9月23日~24日の静岡県における豪雨災害の特徴、自然災害科学、Vol.42、No.1、(掲載決定)、2023 上記報告の「おわりに」の内容を下記に転記しておきます。

        • 災害情報の要約 『分かりやすく』の難しさ

          (2023年1月25日付静岡新聞「時評」欄への寄稿記事) ※画像は気象庁ホームページより 2022年9月24日05時の1時間降水量と「線状降水帯の雨域」  災害情報を「分かりやすく」との声をよく聞く。そうした声に応え「分かりやすく」するために情報を要約することがよく行われるが、「よかれ」と思って行われたであろう工夫がかえって危険なメッセージになってしまっているのでは、と感じることがある。  例えば水害時の行動として「浸水が何センチを上回る時の避難は危険」といった趣旨の「

          • 『緊急安全確保』の意味  避難所より次善の行動

            (2022年11月23日付静岡新聞「時評」欄への寄稿記事  災害時に市町村が出す避難情報には、「警戒レベル3 高齢者等避難」、「警戒レベル4 避難指示」、「警戒レベル5 緊急安全確保」の3段階があり、そのうち災害が既に発生または切迫した際(発生直前あるいは未確認だが発生の可能性が極めて高い状況)に発令できる情報が「緊急安全確保」である。9月の県内での豪雨時にも浜松市などで発令された。  緊急安全確保は、2019年3月の内閣府「避難情報に関するガイドライン」改定で新設された

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          • 2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害調査メモ
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          • 2021年7月3日の静岡県熱海市での土砂災害に関するメモ
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            2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害(第5報) 磐田市神増の土砂災害現場の現地踏査から

             10月1日、磐田市の段丘崖沿いで生じた土砂災害現場などを見てきました。まず、磐田市神増地区。道路標識が土砂に埋没している様子が見えます。こうした標識は看板下部の標準高さが1.8mなので、だいたい1.5mくらい土砂が堆積しているのではと思います。なおこの看板は土砂流出箇所直下から横方向に50mほど離れた場所なので、土砂の堆積高さは少なめにはなっていると思われます。  先の埋没した道路標識の土砂流出箇所を横(北側)からみます。道路啓開が進んでますが土砂流出箇所直下では2mほど

            2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害(第4報) 静岡市清水区・興津川流域の現地踏査から

             9月30日は、今回の豪雨による被害を受けた静岡市清水区の興津川上流域をみてきました。この地区に固有にみられることではないですが、印象に残った現場の写真をいくつかまとめておきます。  まず、河川沿いの道路で河川側の護岸は残っているが道路部分だけが崩落したケースを下流側から撮影しています。静岡市清水区中河内地区。  こうしたケースで人的被害が生じた例が今回の豪雨でもあったことは、先日のnote記事でも報告しました。  上流側からズームして撮影。昔の護岸らしきものが見えるの

            2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害(第3報) 発災当日の写真から

             2022年台風15号に伴う豪雨による災害で、発災当日の9月24日にツイートした写真を、若干加筆してまとめておきます。  まず、0630-0700頃に静岡大学周辺の小河川付近をざっとみました。周辺では多数の床上浸水をもたらしたような痕跡は認められないが、ほとんどの道路は路面上を水が流れた痕跡(草や木くずなどの散乱)がみられました。部分的な越流はあった模様で、これは小鹿沢川。橋の欄干上部まで流下物の付着がみられ、手前の泥の堆積部付近まで浸水したとみられます。ここは前日23日夜

            2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害(第2報) 降水量の概要

             2022年9月23~24日の台風15号の影響による静岡県での豪雨について、降水量の特徴を簡単に速報します。9月29日時点でまだ検討途中の速報であり、今後数値や見解などが変わっていく可能性があります。 降水量データについて  まず、いくつかの継続時間ごとの降水量について、9月23日から24日の間の最大値と、その観測所における観測史上最大値に対する今回の最大値の比(既往最大値比)を分布図で示します。この2日間の最大値なので、記録された時刻は観測所によって異なります。また、デ

            台風15号による記録的豪雨 地形の危険性 把握重要

            (2022年9月28日付静岡新聞「時評」欄への寄稿記事)  9月23日夜から24日朝にかけ、県内は台風の影響で活発化した雨雲により記録的な豪雨に見舞われた。いまだ多くの方が大変な思いをされている状況下にある。まずは被災された皆さまにお見舞い申し上げたい。  静岡県資料によれば9月26日時点の県内の被害は、死者・行方不明者3人、住家の全壊・半壊、一部破損、床下・床上浸水が計4,374棟で、家屋被害はすでに2019年台風19号の同2,829棟を上回る甚大なものになった。比較的

            2022年9月23~24日の静岡県内での豪雨災害(第1報) 人的被害の概要

             9月23日夜から24日朝にかけて、静岡県内は台風15号の影響により発達した雨雲が生じ、県中部、西部を中心に大雨となりました。9月27日13時現在の静岡県の資料によれば、死者・行方不明者3人、住家の全壊・半壊・床上浸水が計1,661棟などのまとまった規模の被害が生じています。  当方では,最近二十数年間の日本の風水害による人的被害(死者・行方不明者)の発生状況についての調査研究を続けています。そのあらましについては下記記事をご覧下さい。  今回の災害についてもこれまでと同

            災害時の避難行動 〝成功例〟より基礎固め

            (2022年8月3日付静岡新聞「時評」欄への寄稿記事)  災害時の避難行動などに関する取材や講演などの際、「成功例や先進事例を教えてほしい」とよく聞かれる。筆者は基本的に「どこかにうまい話があるという考え方をまず見直してください」と回答している。  風水害などの発生時に「積極的な避難で被害が軽減された」といった話は時折聞く。ただ、こうした事例をよく見ると「積極的な避難」があったことは事実でも、そもそも人的被害を引き起こす規模の深い浸水や建物の激しい損壊などが生じていないケ

            土砂キキクル・土砂災害警戒情報の「除外格子」

             8月上旬の東北地方の大雨の際に土砂キキクルをみていると、いささか違和感のある表示が散見されたのですが、これは土砂キキクル(あるいは土砂災害警戒情報と言ってもよい)にある、「除外格子」という概念の影響と考えてよいと思います。  一例として8月9日14:20の青森県西部の表示を挙げます。この時刻には何の意味もありません。たまたま画面キャプチャしたのがこの時刻だったというだけのことです。まず、解析雨量をもとにした24時間降水量の積算値、気象庁ホームページの言葉で言うと「今後の雨」

            土砂災害警戒区域 住家ない場所注意必要

            (2022年6月8日付静岡新聞への寄稿記事)  がけ崩れ、土石流などにより、住民などの生命・身体に危害が生ずるおそれのある場所は、都道府県により「土砂災害警戒区域」に指定される。土砂災害警戒区域は2001年施行の土砂災害防止法で制度化されたが、それ以前からある「土石流危険渓流」「急傾斜地崩壊危険箇所」など、「土砂災害危険箇所」と総称される仕組みも存在する。土砂災害警戒区域や土砂災害危険箇所は、国土交通省「重ねるハザードマップ」で表示できるほか、各市町村作成のハザードマップに

            民生委員の痛ましい事故 まず自身の安全確保を

            (2022年4月6日付静岡新聞への寄稿記事) ※写真は被災箇所付近。2022年12月筆者撮影  昨年8月14日、長崎県西海市で73歳女性と70歳女性が用水路付近で溺死して発見された。73歳女性は発見場所近くの住民、70歳女性は73歳女性からの「怖いから来てほしい」との電話を受け訪ねた民生委員だったと報じられている。  遭難時刻は明確でないが同日午後とみられる。当時雨脚は弱まっていたが同日未明から昼前には強い雨が降り続いており、発見された水路も増水していたと思われる。遭難状

            災害情報の「空振り」 丁寧な議論を重ねて

            (2022年2月9日付静岡新聞への寄稿記事)  災害を警告したり避難を呼びかける情報が出たが結果的に格別被害が生じなかった、といったケースを「空振り」と呼ぶことがある。  気象状況が悪化したが「空振り」に伴う混乱や批判を懸念して避難指示などの発出をためらっていたところ災害が発生してしまった、といった事例は珍しくない。こうした背景もあり近年では「空振りをおそれるな」「空振りでよかったと考えよう」との指摘もある。内閣府「避難情報に関するガイドライン」にも「いわゆる『空振り』の

            災害時の死者・行方不明者名公表 平時に冷静な議論を

            (2021年12月2日付静岡新聞への寄稿記事)  自然災害による死者・行方不明者の氏名を、家族等の同意なく行政機関が公表すべきか、という議論がここ数年繰り返されてきた。筆者は法的なことは専門外だが、見聞きする範囲ではこうした公表は法律等で明確に禁じられてはおらず、基本的には自治体の判断に委ねられているようである。  筆者は、災害時の死者・行方不明者の氏名や年齢、およその住所等は原則として公表してよいと考えている。まず行方不明者は、公表により行政だけでは把握できない情報を広