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2024年7月25日の大雨による新庄市本合海での車の被災箇所について
(2024年7月28日公開、8月11日加筆)
2024年7月25日夜、活発化した梅雨前線の活動により山形県、秋田県付近で大雨となりました。この大雨に伴い、25日23時40分過ぎ頃、山形県新庄市本合海(しんじょうしもとあいかい)では少なくとも4台の車が流され、そのうち山形県警のパトカーに乗車していた警察官2人が行方不明となり、26日にうち1人の死亡が確認され、28日にもう1人も意識不明の状態で発見されたと報じられています。大変痛ましい被害が生じてしまいました。
報道の映像から、被災箇所は最上川の支川新田川沿いの低地面を北東-南西方向に横断する道路付近とみられます(図1)。地理院地図でこの道路の断面図(図2)を作成してみると、北東側、南西側どちらから通行した場合でも、山地あるいは台地側から比較的はっきりした下り坂となっており、低地面付近はほぼ平坦なように見えます。しかしよく見ると、平坦になったように見える、図中の始点から200m付近の標高は約50.2mなのですが、そこからも微妙に下がり続け、最も低いところでは約49.6mくらいになっています。
地理院地図の標高の精度は所によって異なり、この付近は比較的精度の良い領域ではあるのですが、それでも0.1m単位の違いをあまり厳密に議論できるほどの精度とは言えません。ですので大まかな話としてみるべきではありますが、一見平らな道に見えますが、数十cm規模での高低差があったとはみてよいかと思われます。
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この道は、どちら側から進入した場合でも、平らだと思って進んだら知らず知らずのうちに数十cm程度低くなっていたという形になっています。浸水していたのであれば、初めは通れると思っていたらどんどん深くなってしまった、という状況だったかもしれません。まだ現場に水が流れているときの下記の映像からも、道路上の浸水深に微妙な差があったことが伺えます。
風水害時に車で移動中の被災例が少なくなく、こうした「緩い下り坂」の先で被災というケースも珍しくないことは、当方の調査結果を基にこれまでもたびたび紹介してきました。ちょっと前の記事ですが、比較的詳しいものをひとつ挙げておきます。
浸水している中、ほんの数十cm程度の高低差があり、進めると思ったら進めなくなったしまった、という状況については、幸い助かった方の貴重な証言とドライブレコーダー映像をNHKがまとめられた記事があります。
被災箇所の北東約6.9kmのAMeDAS新庄の当時の降水量を見ると、図3,図4のようになります。7月25日は昼前から昼過ぎにかけて1時間20mm以上の強い雨が断続的に続き、19時前後には一時小康状態となりますが、20時過ぎからは激しい雨となり、22時には1時間67.5mmの非常に激しい雨も記録されました。新庄の観測開始以降最大値との比較(図4)は、車が被災した時間帯の7月25日24時時点の観測値で作図しています。この時点ですでに、1~72時間降水量の全て(細かく言うと計算しているのは1,2,3,4,5,6,12,24,48,72時間降水量)で既往最大値を上回っています。短時間も長時間も全ての継続時間において既往最大を上回るというのは、かなり大変な降り方です。
発災時刻頃は激しい雨が降り続き、夜間で視界も効かない状況だったかと思います。こうした厳しい状況と、「緩い下り坂」という地形的な特性が、痛ましい結果に繋がってしまったのかもしれません。
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国土交通省「重ねるハザードマップ」でみると、被災箇所付近は想定最大規模、計画規模のいずれについても洪水浸水想定区域の範囲外でした(図5)。こうした中小河川沿いについては、地形的に洪水の可能性がある場所であっても、浸水想定区域に指定されていないケースは珍しくありません。ここ数年急速にそうした作業が進んではいるところですが。
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しかし、地形分類図等で見れば、この場所は明らかに洪水の可能性のある低地と考えられます。重ねるハザードマップの「地形分類(自然地形)」では情報がありませんが(1kmほど下流の所まではあるのですが)、土地分類基本調査で見ると「谷底平野・氾濫平野」と表記されています(図6)。「谷底平野・氾濫平野」は地形的に洪水の可能性がある「低地」です。
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地形分類図は浸水想定区域(洪水ハザードマップ)の情報を補う有益な情報源と思いますが、繰り返し言っているところではありますが、非常に癖の強い情報で、ハザードマップ代わりに利用することは一般的にはおすすめできません。図6の中でも例えば
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「ここが谷底平野の訳ないだろう」と見る人が見れば一目瞭然ですが、「ハザードマップ」だと思われるとこのあたりは厳格に「谷底平野と表示されてる=低地=危険なのは洪水」と読み取られてしまう可能性があると思います。
地形分類図はまあ置いておいて、防災の話としては、「風雨が激しいときには浸水域に近づかない」「川と同じくらいの高さの所は洪水の可能性がある」(図8)ということを、繰り返し強調していくことが重要では、と考えています。
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